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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年9月10日水曜日

判例/建築設計図の侵害性

 

建築設計図の侵害性

▶平成120308日名古屋地方裁判所[平成4()2130]

三 争点2(被告設計図は、原告設計図を複製したものか。)について

1 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、本件において、複製の事実が認められるためには、①被告設計図が原告設計図に依拠して作成されていること、②原告設計図と被告設計図との間に同一性が認められることが必要である。

2 証拠によれば、被告I設計代表者は、被告設計図を作成する以前に、被告T建設から原告設計図書を渡されており、原告設計図を横に置いて被告設計図を作成したのであり、被告設計図のうち、原告設計図を見ないで作成したものはなく、外注した設備図面についても、外注先に、原告設計図書と、被告設計図のうち被告I設計代表者が作成したものを渡しているというのであるから、依拠の機会があったことは明らかである。

被告I設計代表者は、原告設計図を見てはいるが、原告設計図を写す意思(依拠の意思)はなく、被告設計図は独自に作成したものである旨供述する。

しかし、被告I設計代表者の供述を全体として見れば、結局、被告I設計代表者は、被告Hフーヅに依頼されたように、本件建物の建築費を8億円まで下げるためには、原告設計図を大幅に改変する必要があったところ、右改変は、設計変更という程度を越えて、独自に設計したと評価できる程度まで達していた旨述べているにすぎない。

そして、本件で著作物とされるのは図面であるから、たとえ被告I設計代表者が独自に本件建物の設計をし直したとしても、それが図面として表現された場合に、原告の表現と同一と認められる部分があれば、原告設計図を見ている(依拠の機会がある)以上、実際にもそれに依拠しているものと認めざるを得ない。

3 ②の要件である同一性の判断にあたっては、複製であると主張されている被告図面と原告図面を比較することになるが、その際、両図面が全く同じであることは必要でなく、原告図面の内容及び形式を覚知させるに足る同一性があれば、②の要件を満たすものといえる。したがって、異なる部分があったとしても、それが、量的あるいは質的に微細であって、図面全体の同一性が損なわれる程度のものでなければ、右部分の存在は、同一性ありとの判断に影響を及ぼすものではない。

逆に、同じ部分があるとしても、異なる部分の存在により、量的あるいは質的に別の著作と観念される程度に至ったものは、複製ということはできない。

よって、被告図面について、原告図面と同一性があるかについて、判断する。

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