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2025年11月17日月曜日

判例/適切な著作権表示がされることは法律上保護に値する利益に当たるか(再掲)

 

適切な著作権表示がされることは法律上保護に値する利益に当たるか(再掲)


平成230304日東京地方裁判所[平成21()6368]▶平成24131日知的財産高等裁判所[平成23()10028]

ア 前記の認定事実と前記争いのない事実等を総合すると,被告日本教文社は,本件昭和49年契約に基づいて出版した著作権者を原告社会事業団とする本件①の書籍1について,原告社会事業団の許諾を得ずに,原告社会事業団の理事長を表す「理長」の文字の印影の検印(本件検印)が押印されていた初版の奥付を変更し,18版及び19版の奥付において,「by A1,Ph.D.」,「ⒸC1,X1,1932」との記載(本件表示)及び「〈検印省略〉」の記載をしたものと認められる。

万国著作権条約3条1項は,著作権者の許諾を得て発行されたすべての著作物の複製物に最初の発行時から,「Ⓒ」の記号,「著作権者の名」及び「最初の発行の年」によって構成される著作権表示を付さなければならない旨規定している。本件表示は,ここにいう著作権表示に該当するものと認められる。

我が国の著作権法においては,著作権の発生に何らかの方式の履行を要件としていないので,著作権表示は,著作権の発生とは関係のない事実上の行為であるが,「Ⓒ」の記号は,一般的に著作権の存在を示すマークとして使用されており,著作権の存在についての注意喚起や情報提供の役割を果たしていることは公知の事実である。

そうすると,著作権者から出版権を設定された出版社においては,著作権者の表示につき正しい表示をすべき注意義務が出版契約における契約上の付随的な義務として生ずるものと解され(なお,昭和49年契約書の約款13条は,「使用者は権利者のために,万国著作権条約加盟の方式国,例えば米国に於いて著作権を取得し且つ保全するため,同条約第三条に基づきⒸ表示など権利保全のため必要な措置をとるものとする。」と規定している。),また,著作権者において著作物の複製物に正しい著作権表示がされることは法律上保護に値する利益に当たるものと認めるのが相当である。

【本件①の書籍1の18版及び19版が発行された当時,本件①の書籍1の著作権者は被控訴人社会事業団に帰属していたところ,本件表示は,本件①の書籍1の著作権が「A,X」(亡A及び控訴人X)に帰属することを示す表示と理解されるから,誤った表示といえる。

イ 出版の許諾等を得た者が,著作物を複製,出版するに当たり,著作権の帰属を表記する際に,誤りのない表記をすべきことはいうまでもない。しかし,本件においては,本件寄附行為がされた昭和21年から,長い期間が経過していること,本件確認書及び本件覚書のいずれにも本件①の書籍1の題号が記載されていなかったこと,被控訴人社会事業団は,長期にわたって,印税の支払等を受けていなかったこと等の諸事情があること,その他加害行為の態様及び被害の程度等の一切の事情を総合的に考慮するならば,控訴人日本教文社が本件①の書籍1の18版及び19版について,著作権者の帰属に関する表示に適切を欠いたこと及び「〈検印省略〉」の記載をした行為について,これを不法行為と評価するほどの違法性があると解することはできない。

以上のとおり,本件表示及び「〈検印省略〉」の記載をした控訴人日本教文社の行為は,不法行為を構成しない。】[注:【 】内は控訴審での変更部分]

 

[控訴審]

まず,債務不履行に基づく請求の当否から判断する。被控訴人社会事業団の控訴人日本教文社との間で締結された昭和49年契約書の約款13条には,「使用者は権利者のために,万国著作権条約加盟の方式国,例えば米国に於いて著作権を取得し且つ保全するため,同条約第三条に基づきⒸ表示など権利保全のため必要な措置をとるものとする。」と規定されている。同規定は,著作権を取得し且つ保全するためにⒸ表示などの措置を要する国においては,そのための必要な措置を採ることを使用者に対して義務づけたものと解されるが,上記約款の条項から,著作物の複製物に著作権者の表示をする義務,及び「〈検印省略〉」の記載をしない義務を控訴人日本教文社に負わせたものと解することはできない。他に,被控訴人社会事業団と控訴人日本教文社との間において,同控訴人が著作物の複製物に著作権者の表示をする義務又は「〈検印省略〉」の記載をしない義務を負う旨の合意をしたと認めるに足りる証拠はない。したがって,控訴人日本教文社がした本件表示及び「〈検印省略〉」の記載が,債務不履行に該当すると認めることはできない。

また,控訴人日本教文社がした本件表示及び「〈検印省略〉」との記載行為が不法行為を構成すると認められないことは上記に記載したとおりである。

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2025年10月25日土曜日

判例/写真フィルムの所有権の帰属が問題となった事例

 

写真フィルムの所有権の帰属が問題となった事例

平成170117日大阪地方裁判所[平成15()2886]

9 争点(9)(本件フィルムの所有権の帰属)について

(1) 著作権は、創作的な表現を保護するものであるから、著作物の表現媒体についての所有権と、その著作物についての著作権とは、別個に観念することができ、またすべきものである。例えば、絵画の著作物について、その著作権の所在と表現媒体となった絵画の所有権の所在とは、別個になることが当然あり得るものであり、これは、写真の著作物について、その著作権の所在とフィルムの所有権の所在との関係においても同様である。

したがって、本件においても、本件契約に基づいて原告が撮影した写真のフィルムで、被告エスピー・センターが保管しているものの所有権の帰属についても、その写真の著作権の帰属とは別個に検討する必要がある。

(2) 本件契約は、前記1で検討したとおり、原告が写真を撮影し、現像の上、その中から「ツーユー評判記」への掲載に用いるのに適した写真を選別して、そのフィルムを被告エスピー・センターに引き渡し、同被告は、原告に対し、その対価とフィルム代、現像代等を支払うというものである。

ここで、原告は、同被告に引き渡した本件フィルムについて、その保管状況のみならず、フィルムの点数すら把握していないこと(原告本人)、原告自身、同被告に引き渡した本件フィルムは、同被告に預けたものとしつつも、本人尋問において、そのフィルムが「役に立たなくなれば、エスピー・センターから私に返してくれてもいいし、役に立たなくなってしまえば、それはそのまま預けっぱなしです。」と供述し、しかもそのような話は同被告としたことがないとも供述していることに照らせば、原告は、同被告に引き渡した本件フィルムについて、自らの所有物であるという認識を有していなかったものと推認することができる。

このような原告の認識に加え、引き渡された本件フィルムは同被告の所有に属するという同被告の主張や、上記のとおり、フィルム代及び現像代は同被告が出捐していることを考慮すれば、本件契約の内容として、原告がこれに基づいて撮影し、同被告に引き渡したフィルムの所有権については、同被告が有するものと合意していたものと認めるのが相当である。

したがって、原告は、本件フィルムの所有権を有しているとは認められないから、所有権に基づく本件フィルムの返還請求は理由がない。

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2025年10月8日水曜日

判例/ライブハウスの関係者のみに配布された映像を「未公表」としなかった事例

 

ライブハウスの関係者のみに配布された映像を「未公表」としなかった事例

平成231031日東京地方裁判所[平成21()31190]

6 争点(2)-3 著作物3の著作者人格権(公表権)侵害の成否について

Yは,著作物3は,ロックバンドのライブ映像を収録したDVDの映画の著作物であるところ,ライブハウスの関係者のみに配布する趣旨で提供され,ファン等の一般向けに相当部数が提供されたものではないから,未公表の著作物に該当し,被告が,著作者人格権者である同原告の許諾を得ることなく,著作物3を複製し不特定人に頒布することにより,公衆に提供したことは,同原告の公表権(著作権法18条)を侵害すると主張する。

そこで,検討するに,著作権法18条は,「著作者は,その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。・・・)を公衆に提供し,又は提示する権利を有する」と定めている。他方,著作物は,発行された場合において「公表」されたものとされ(同法4条1項),著作物の「発行」については,著作物の性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が,複製権(同法21条)を有する者によって作成され頒布された場合において,「発行」されたものとされる(同法3条1項)。

著作物3については,著作者であるYが複製頒布したものであるから,複製権者が著作者の同意を得て複製頒布したものであり,その複製頒布がその性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数に達している限り,公表されたものといえることになる。

前提となる事実のとおり,著作物3は,同原告が,被告による頒布行為の前に,ライブハウスの関係者にのみ記念として配布する趣旨で,同関係者らに複製頒布したものであり,その数量は少数であることが窺われるが,本件の著作物3のようなDVDに収録された「映画の著作物」については,作成頒布された複製物の数量が少数であったとしても,著作物の性質上,かかる場合においても,公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が複製頒布されたものと認められるから,同原告は,被告による頒布行為以前に,当該著作物を公表したと解するのが相当である。

したがって,著作物3について,被告が,同原告の許諾を得ることなく,著作物3を複製し不特定人に頒布したとしても,同原告の著作者人格権(公表権,同法18条)の侵害は成立しない。

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判例/特定業務担当者の4人を「特定かつ少数」と認定した事例

 

特定業務担当者の4人を「特定かつ少数」と認定した事例

平成190530日東京地方裁判所[平成17()24929]

ア 送信可能化権の侵害の有無

原告は,主位的に,上記において認定した,本件デジタルデータをサーバに保存した被告の行為が,本件デジタルデータを自動公衆送信し得るようにするものであり,本件交付ポジフィルム写真のうちの対象となったものの送信可能化権を侵害する旨主張するので,以下,検討する。

本件デジタルデータが保存されたサーバは,SVD[注:「小学館ビジュアル・データベースシステム」を意味する。]の準備作業を行っていた,被告の担当者4人のコンピュータ端末との関係においてサーバ機能を有するにすぎず,他の被告社員の個々のコンピュータ端末から閲覧することはできなかったのであって,上記担当者4人は,特定かつ少数であり,特定かつ多数の者を含む「公衆」(著作権法2条5項)には該当しないから,他の要件について検討するまでもなく,上記行為は,送信可能化には当たらず,これによる送信可能化権の侵害は認められない。

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2025年8月30日土曜日

判例/独禁法と著作権の行使/独禁法上の不公正な取引方法に当たり不法行為を構成する、との主張を退けた事例

 

独禁法と著作権の行使

▶平成30823日知的財産高等裁判所[平成30()10023]

なお,一般論としては,被控訴人が報道機関として取材によって得た映像や資料を独占する立場にある(そもそも報道機関でなければ取材自体が許されない現場ないし場面が存することは,経験則上明らかであって,その場合,当該報道機関は取材によって得た映像や資料を独占する立場にあるといえる。このことは,取材を行える報道機関に一定の資格要件が課される場合は,なお一層明らかであるといえる。)ことからすると,事情によっては,第三者による当該映像等の使用を許諾すべき義務が生じることがあるといえ,そのような場合にまで,著作権や著作者人格権を盾にしてその許諾を拒むことは,独占禁止法上,違法と評価される余地も存するというべきであるが,本件においては,そのような事情が存するものとまでは認められない。

 

独禁法上の不公正な取引方法に当たり不法行為を構成する、との主張を退けた事例

▶平成30221日東京地方裁判所[平成28()37339]▶平成30823日知的財産高等裁判所[平成30()10023]

9 争点8(原告が,被告からの本件各映像の利用許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は,被告に対する不法行為を構成するか)について

被告は,原告による行為①ないし同④の一連の行為が,独占禁止法2条9項1号イ(共同の取引拒絶)又は同項6号イ,一般指定2項(単独の取引拒絶)に定める不公正な取引方法に当たり,被告の使用及び表現の自由並びに本件映画の上映権及び頒布権を侵害する不法行為になると主張する。

しかし,行為ないし同は,いずれも原告による著作権及び著作者人格権の行使に他ならないところ,著作権及び著作者人格権の行使は,当該権利行使が著作権制度の趣旨を逸脱し,又はその目的に反するような不当な権利行使でない限り,独占禁止法の規定の適用を受けるものではない(独占禁止法21条参照)。

原告による著作権及び著作者人格権の行使が権利の濫用に当たると評価できないことは,前記6において認定説示したとおりであるが,行為ないし同についてなお具体的に検討するに,前記認定事実によれば,被告は,原告に対して映像の使用許諾を求める際,本件映画について「沖縄地上戦から現在までの沖縄の歴史,とりわけ沖縄米軍基地の存在による地域抑圧や性暴力の実態を,沖縄・アメリカの双方に取材してまとめた2時間30分(予定)の作品です。」と極めて簡単な説明を付記するにとどまり,このような説明のみしか情報が与えられていない原告が,著作権者として映像の使用を許諾しなかったこと(行為①)が,著作権制度の趣旨を逸脱するとか,その目的に反する不当な権利行使に当たるとは評価できない。そして,前記認定事実によれば,被告は,原告の許諾を得ないまま,本件各映像を使用した本件映画の公開に踏み切り,その本件映画には原告の名称が一切表示されていなかったのであるから,その後,原告が本件各映像の入手先の開示や重ねての謝罪を求め(行為②),事前に許諾を得て映像を使用させる場合よりも高額な使用料の支払を求めたとしても(行為③),著作権者による権利行使として著作権制度の趣旨を逸脱するとか,その目的に反する不当な権利行使であるなど評価することは困難である。同様に,本訴を提起したこと(行為④)が不当な権利行使ということもできない。

したがって,原告による行為ないし同の一連の行為が,独占禁止法所定の不公正な取引方法に当たり,被告に対する不法行為をも構成するとの主張は採用することができない。

 

[控訴審同旨]

(5) 行為ないしの違法性について(争点8関係)

控訴人は,被控訴人の行為①ないし④は,独占禁止法2条9項1号イ(共同の取引拒絶)又は同項6号イ,一般指定2項(単独の取引拒絶)に定める不公正な取引方法に当たり,かつ,被控訴人の権利濫用として,控訴人に対する不法行為に該当するとして,この点に関する原判決の認定判断には誤りがあると主張する。

しかしながら,被控訴人の行為①ないし④が,いずれも被控訴人による著作権及び著作者人格権の行使にほかならないところ,著作権及び著作者人格権の行使は,当該権利行使が著作権制度の趣旨を逸脱し,又はその目的に反するような不当な権利行使でない限り,独占禁止法の規定の適用を受けるものではないと解すべきことは,原判決が説示するとおりである。

しかるところ,被控訴人による著作権及び著作者人格権の行使をもって権利濫用とすべき根拠ないし事情が認められないことは,前記(4)のとおりであるから,控訴人の主張はその前提を欠く。

なお,一般論としては,被控訴人が報道機関として取材によって得た映像や資料を独占する立場にある(そもそも報道機関でなければ取材自体が許されない現場ないし場面が存することは,経験則上明らかであって,その場合,当該報道機関は取材によって得た映像や資料を独占する立場にあるといえる。このことは,取材を行える報道機関に一定の資格要件が課される場合は,なお一層明らかであるといえる。)ことからすると,事情によっては,第三者による当該映像等の使用を許諾すべき義務が生じることがあるといえ,そのような場合にまで,著作権や著作者人格権を盾にしてその許諾を拒むことは,独占禁止法上,違法と評価される余地も存するというべきであるが,本件においては,そのような事情が存するものとまでは認められない。

したがって,その余の点について判断するまでもなく,争点8に関する控訴人の主張は理由がない。

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判例/著作権の行使と独占禁止法21条

 

著作権の行使と独占禁止法21

▶平成130801日公正取引委員会審判審決[平成10年(判)第1]

独禁法21条[注:『この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。』と規定する]の規定は,著作権法等による権利の行使とみられるような行為であっても,競争秩序に与える影響を勘案した上で,知的財産保護制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反すると認められる場合には,当該行為が同条にいう「権利の行使と認められる行為」とは評価されず,独占禁止法が適用されることを確認する趣旨で設けられたものであると解される。

▶平成30221日東京地方裁判所[平成28()37339]

著作権及び著作者人格権の行使は,当該権利行使が著作権制度の趣旨を逸脱し,又はその目的に反するような不当な権利行使でない限り,独占禁止法の規定の適用を受けるものではない(独占禁止法21条参照)。

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2025年8月21日木曜日

判例/著作権の存続期間満了が満了した絵柄への「C」表示が問題(不正競争性)となった事例

 

著作権の存続期間満了が満了した絵柄への「C」表示が問題(不正競争性)となった事例

▶平成19102日大阪高等裁判所[平成19()713]

1審原告は,被告表示1・2は,著作権の存在を示すものとして広く一般に認識されているCそのもの又はそれと酷似する表示を含むところ,取引の実情を踏まえるとCのみでも十分な警告的作用を有するし,1審被告はかかる作用を期待して被告表示1,2を使用するものであり,被告表示1については,万国著作権条約上はCのみでは著作権は保護されないが,通常の需要者はこれを知らず専門家に確認もしないから,百貨店のようにトラブルを極力回避する取引先との実際の取引は阻害されるなどと主張し,(証拠)がこれに沿うかのごときである。

しかし,引用にかかる原判決の認定・説示のとおり,Cの記号は,自国の法令に基づき一定の方式の履践を著作権の保護の条件とする万国著作権条約の締約国において,著作権の保護を受けるための方式として要求されるものを満たしたと認めるための要件として,著作者その他の著作権者の許諾を得て発行された当該著作物のすべての複製物がその最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに,これを表示することを要求されたものであって(同条約3条1項),C表示(Cの記号,著作者名,最初の発行年の記載)には,当該著作物につき当該著作者を著作権者とする著作権が存続している旨を積極的に表明するとの側面も有するものであり,その著作物を無断で使用する場合には著作権侵害になることを需要者又は取引者に対し警告するという機能を有することは否定できないが,他方,単なるCの記号のみには法的にかかる機能はないものであり,上記証拠をもっても取引の実際上もかかる機能があるとまで認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はなく,被告表示1が本件絵本の原画について日本においては著作権存続期間が満了しているのに未だこれが存続しているかのように誤認させるような表示とまではいえない。

また,1審原告は,被告表示2については,上記に加えて,FW社の著作権表示と共になされているから,著作権の存在を誤認させる可能性を更に高めるものであり,需要者においてコピーライツグループの企業名は周知・著名でなく,複製権と同じ名称の会社の表記としての頭文字「C」を「○」で囲んで複製物の近くに表記すると需要者は原画の著作権の存在を誤認するとも主張する。

しかし,引用にかかる原判決の認定・説示のとおり,Cの記号のみではかかる表示といえないものであり,需要者の通常の判断能力を前提として観察すれば,被告表示2はコピーライツグループのロゴとして使用されていると認識されるといえ,これをもってFW社ないし1審被告もその構成員となっているコピーライツグループが本件絵本の原画(原著作物)の著作権を有していることを表示しているものとは外観上も解することができないから,被告表示2が本件絵本の原画について日本においては著作権存続期間が満了しているのに未だこれが存続しているかのように誤認させるような表示とまではいえない。

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2025年8月20日水曜日

判例/「編集権」「編集構成権」なる権利は認められるか

 

「編集権」「編集構成権」なる権利は認められるか

▶平成13829日東京高等裁判所[平成13()147]

著作権の対象となる著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)ところ、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、特殊小型変形版の大きさ及びソフトカバーの表紙仕上げを採用し、右頁に物語を配し、これに相応する絵を左頁に配し、右頁の右下方に小さなカットを挿入し、活字配列を左右9行を基本とし、表紙に各物語のシンボルとなる絵を描き、最上段に「名作アニメ絵本シリーズ」又は「アニメ昔ばなしシリーズ」を配し、右側にタイトル番号を付し、裏表紙に出版するシリーズ本の内訳一覧広告を掲載するなどの構成を採用したという点については、これらの構成自体、いずれも思想等の表現ではなく創作に係る要素もないから、著作物とは認められず、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合に編集著作物(同法12条1項)として著作物性が認められるかどうかが問題となるにすぎない。また、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、物語内容、絵等に独自の翻案をした点は、新たに付加された部分に創作性がある場合に二次的著作物(同法2条1項11号)として保護される範囲が問題とされる。このように、著作権法は、翻案に創作性がある場合は二次的著作権により、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合は編集著作権により、それぞれ著作物として保護を図ることを予定しており、同法上明記されたこれらの権利とは別個に、控訴人の主張する編集権及び編集構成権という法令上の規定を欠く権利を解釈上認めるべき法的根拠はない。

控訴人書籍には、物語内容、絵等に独自の翻案をした点はあるが、控訴人が被控訴人会社により盗作されたと主張するこれらの点について、被控訴人会社が二次的著作権を侵害するものでないことは上記の原判決引用部分に判示されたとおりであり、その余の構成については、一般的にありふれた構成であって、特に控訴人書籍のこれらの構成について素材の選択又は配列による創作性を認めるに足りる証拠はなく、編集著作権の侵害にも当たらない。

したがって、控訴人の主張する編集権及び編集構成権を解釈上認めることはできず、これらの権利に該当するものとして控訴人の主張する点は、二次的著作権又は編集著作権として保護を受けることもできないから、結局、この点に関する控訴人の主張は、理由がない。

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2025年8月15日金曜日

判例/無方式主義と著作権表示

 

無方式主義と著作権表示

平成231031日知的財産高等裁判所[平成23()10020]

著作権が成立するためにはいかなる方式の履行も必要ではなく(著作権法172項),著作権者であることを表示していなければ権利行使ができないものではない(。)


平成27910日大阪地方裁判所[平成26()5080]

著作物に著作権者の表示がなされていなくとも,当該著作物は著作権法上保護の対象となるのであり,現に,著作権表示のない著作物は多数存在している。そして,原告イラストは,美術の著作物として著作権の対象となることは明らかなものである。そうすると,仮に原告のホームページにおいて,原告イラストについて©マークによる著作権表示がなかったとしても,著作権放棄である旨の表示がない限り,原告イラストは著作権放棄ではないと考えるのが自然であ(る)。

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2025年7月27日日曜日

判例/著作権(©)表示の意義/著作権表示が適切にされないことは(一般)不法行為に当たるか

 

著作権(©)表示の意義/著作権表示が適切にされないことは(一般)不法行為に当たるか

▶平成2334日東京地方裁判所[平成21()6368]▶平成240131日知的財産高等裁判所[平成23()10028]

万国著作権条約3条1項は,著作権者の許諾を得て発行されたすべての著作物の複製物に最初の発行時から,「Ⓒ」の記号,「著作権者の名」及び「最初の発行の年」によって構成される著作権表示を付さなければならない旨規定している。本件表示は,ここにいう著作権表示に該当するものと認められる。

我が国の著作権法においては,著作権の発生に何らかの方式の履行を要件としていないので,著作権表示は,著作権の発生とは関係のない事実上の行為であるが,「Ⓒ」の記号は,一般的に著作権の存在を示すマークとして使用されており,著作権の存在についての注意喚起や情報提供の役割を果たしていることは公知の事実である。

そうすると,著作権者から出版権を設定された出版社においては,著作権者の表示につき正しい表示をすべき注意義務が出版契約における契約上の付随的な義務として生ずるものと解され(なお,昭和49年契約書の約款13条は,「使用者は権利者のために,万国著作権条約加盟の方式国,例えば米国に於いて著作権を取得し且つ保全するため,同条約第三条に基づきⒸ表示など権利保全のため必要な措置をとるものとする。」と規定している。),また,著作権者において著作物の複製物に正しい著作権表示がされることは法律上保護に値する利益に当たるものと認めるのが相当である。

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2025年7月17日木曜日

判例/登録しなければ対抗できない「第三者」とは/著作権取得の対抗要件(登録なしに不法行為者に対抗できるか)

 

登録しなければ対抗できない「第三者」とは

平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]

7 著作権の権利主張についての対抗要件の要否について

被告は,原告が著作権移転のための対抗要件である登録をしていないので,被告に対し,著作権を有していることを対抗できないと主張する。

しかし,著作権の移転を登録しなければ対抗できない「第三者」(著作権法77条)とは,登録の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者であると解されており(大審院昭和7年5月27日判決参照),単なる著作権の侵害者はこれにはあたらない。よって被告の主張は失当である。


著作権取得の対抗要件(登録なしに不法行為者に対抗できるか)

平成27924日大阪地方裁判所[平成25()1074]

原告は,本件ピクトグラムの著作権を取得したとして,その著作権を被告らに対して主張し得るかについて

前記のとおり,原告は,本件ピクトグラムの著作権を取得したと認められるところ,著作権を取得した者は,著作権を侵害する不法行為者に対し,何ら対抗要件を要することなく自己の権利を対抗することができると解されるから,原告は,被告大阪市に対し,著作権侵害に基づく損害賠償を請求することができる。

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判例/著作権移転登録の法意

 

著作権移転登録の法意

▶平成25131日東京地方裁判所[平成23()40129]▶平成250620日知的財産高等裁判所[平成25()10015]

1 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について

(1) 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。

【ア そこで検討するに,法は,著作権は著作物の創作によって発生し,著作権の発生に登録その他の方式の履行を要しないとする無方式主義を採用しており(法17条2項),著作権の発生を登録する制度は存在しない。

一方で,法は,著作権は,その全部又は一部を譲渡することができ(法61条1項),著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)は,登録しなければ第三者に対抗することができないと規定し(法77条1号),著作権の移転を公示する登録制度を設けて,当事者の意思表示によって生じた著作権の譲渡(移転)について登録を第三者に対する対抗要件としている。そして,著作権の移転登録は,申請又は嘱託により,文化庁長官が著作権登録原簿に記載し,又は記録して行うものとし(法78条1項,著作権法施行令15条1項),登録の申請は,原則として登録権利者及び登録義務者が共同で(著作権法施行令16条ないし19条),著作物の題号,権利の表示,登録の原因及びその発生年月日,登録の目的等の所定の事項を記載した申請書を登録の原因を証する書面等の所定の添付資料とともに文化庁長官に提出して行わなければならないとしている(著作権法施行令20条,21条)。

文化庁長官は,①登録を申請した事項が登録すべきものでないとき,②申請書が方式に適合しないとき,③申請書に必要な資料を添付しないとき,④申請書に登録の原因を証する書面を添付した場合において,これが申請書に記載した事項と符合しないとき,⑤登録免許税を納付しないときなどの却下事由(著作権法施行令23条1項各号)の有無を審査し,却下事由が認められないときは,登録の申請の受付けの順序に従って著作権の移転登録を行うものとされているが(著作権法施行令22条),この却下事由には,移転登録の対象とされた著作権の客体が法2条1項1号の「著作物」に該当しないことは含まれていないから,文化庁長官の審査権は,上記「著作物」の該当性に及ぶものではない(なお,文化庁長官官房著作権課が平成23年6月に発行した「登録の手引き」には,「著作権の登録に関するQ&A」の「Q13 文化庁に登録されている著作物は,公的に認められた価値あるものなのでしょうか。」に対する「答」として,「A 著作権に関する登録の審査は,…登録の前提となる事実が行われているか否かを申請書等から形式的に審査するものであり,文化庁は登録されている著作物の内容には関知しておりません。との記載がある。)。

以上によれば,著作権の移転登録は,当事者の意思表示によって生じた著作権の権利変動を公示し,第三者に対する対抗要件となるものではあるが,移転登録の対象とされた著作権が発生していることや,その著作権の客体が法2条1項1号の「著作物」に該当することを公示すらするものでないことは,著作権の移転登録の制度上明らかであるから,文化庁長官は,著作権の移転登録申請があった際に,申請者に対し,その申請に係る登録がされたからといって著作権が発生するものではないとか,著作権の権利者という地位が保証されるものではないなどの説明を著作権の移転登録事務を担当する文化庁の担当職員(本件担当職員)にさせるべき職務上の法的義務を負うものとはいえないし,文化庁長官がかかる法的義務を負うものとする法令の定めや根拠はない。

したがって,文化庁長官がかかる法的義務を負うことを前提に,文化庁長官の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとする控訴人の主張は,その前提を欠くものとして,理由がない。

[控訴審同旨]

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2025年7月14日月曜日

判例/著作権の保護対象ではない錦絵を被写体とする写真の無断転載行為が問題となった事例(所有権と著作権の関係)

 

著作権の保護対象ではない錦絵を被写体とする写真の無断転載行為が問題となった事例(所有権と著作権の関係)

平成27924日大阪地方裁判所[平成27()731]

ところで原告は,本件において,本件教材への本件錦絵の掲載が,原告の許諾を受けて撮影された本件錦絵写真をさらに複写ないし撮影するなどの方法でなされたことを問題にしているが,そこで利用の対象となっているのは,有体物である本件錦絵そのものではなく,有体物である本件錦絵を撮影して得られた写真から感得できるところの本件錦絵の美術の著作物としての面,すなわち無体物としての面であるから,被告の行為は,その行為態様だけでなく,その利用対象の面においても,有体物である本件錦絵の排他的支配権能をおかすものでないことは明らかである。

したがって,そこでは本件錦絵の所有権侵害は問題となり得ないから,原告が予備的請求原因として主張する所有権侵害の主張はこの点で明らかに失当である。

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判例/著作物の公正使用と権利濫用

 

著作物の公正使用と権利濫用

▶昭和601017日東京高等裁判所[昭和59()2293]

… もし、文化的価値の高い著作物が死蔵されるべきでないとして、著作権者の許諾なしにその利用が許容されるならば、権利として保護する必要性の高い著作物ほど、その侵害が容易に許容されるという不当な結果を招来しかねない。著作権法は、同法第1条所定の目的のもとに、著作権を権利として保護すると同時に、その保護期間を限定し、かつ、適法引用等著作物の公正な利用に意を用いた規定を設けており、著作権の保護期間内であつても、法の定める公正な利用の範囲内であれば、著作権者の許諾を要せず、著作物を利用することができるものとしているのであり、このような法の仕組みのもとにおいては、著作権者の許諾もなく、公正な利用の範囲をも逸脱して著作物を複製し、著作権を侵害する行為があつた場合にこれを公けの文化財あるいは文化的所産の利用の名のもとに許容すべき法的根拠はない。…

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したがつて、本件書籍の出版が前述するような文化的意義を有するものであつても、それが著作権侵害行為に該当する以上、前記認定の事情のもとにおいて、被控訴人が著作権侵害を理由に、控訴人に対し本訴を提起し、侵害の停止等必要な措置を請求し、かつ、侵害によつて被つた損害の賠償を請求することは、法律上認められる正当な権利の行使であつて、これをもつて権利濫用とすることはできない。…

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2025年7月9日水曜日

判例/わが国で「公正利用(フェアユース)の法理」は一般的に認められるか

 

わが国で「公正利用(フェアユース)の法理」は一般的に認められるか

▶平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]

著作権法1条は、著作権法の目的につき、「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と定め、同法30条以下には、それぞれの立法趣旨に基づく、著作権の制限に関する規定が設けられているところ、これらの規定から直ちに、わが国においても、一般的に公正利用(フェアユース)の法理が認められるとするのは相当でなく、著作権に対する公正利用の制限は、著作権者の利益と公共の必要性という、対立する利害の調整の上に成立するものであるから、これが適用されるためには、その要件が明確に規定されていることが必要であると解するのが相当であって、かかる規定の存しないわが国の法制下においては、一般的な公正利用の法理を認めることはできない。


▶平成1527日名古屋地方裁判所[平成14()2148]▶平成1634日名古屋高等裁判所[平成15()233]

法1条は,法の目的につき,「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作権者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と定め,法30条以下には,それぞれの立法趣旨に基づく,著作権の制限に関する規定が設けられているところ,これらの規定から直ちに,我が国においても,一般的に「公正な利用(フェア・ユース)の法理」が認められると解するのは相当でない。著作権に対する公正利用の制限は,著作権者の利益と公共の必要性という,対立する利害の調整の上に成立するものであるから,実定法主義を採る我が国の法制度の下で,これが制限されるためには,その要件が具体的かつ明確に規定されていることが必要であると解するのが相当であって,かかる規定が存しない以上,一般的な「公正な利用の法理」を認めることはできないことはもちろん,明文の規定を離れて著作物の公正な利用となる場合があることを認めることはできないというべきである(東京高等裁判所平成6年10月27日判決参照)。

 

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2025年6月28日土曜日

判例/著作権表示(マルC表示:©)の意義と効用

 

著作権表示(マルC表示:©)の意義と効用

▶平成190130日大阪地方裁判所[平成17()12138]

C表示の意義についてみるに,(中略)Cの記号は,自国の法令に基づき一定の方式の履践を著作権の保護の条件としている万国著作権条約の締約国が,その締約国で著作権の保護を受けるための方式として要求しているものを満たしたと認めるための要件として,「著作者その他の著作権者の許諾を得て発行された当該著作物のすべての複製物がその最初の発行の時から著作権者の名及び最初の発行の年とともに」これを表示することを要求したものである。

このように,Cの記号は,ある著作物がいずれかの締約国で著作権の保護を受けるための条件として一定の方式を満たすことを要求している場合に,当該締約国において著作権の保護を受けるための方式を満たしたと認められるために表示されるものであって,それ自体として当該著作物について著作権を創設するものではないことは明らかである。また,日本のように,著作権の保護について上記のような方式主義を採用していない国においては,その表示が義務づけられているものではないことはもちろん,Cの記号の表示(©表示)の有無によって著作権の保護の有無が法的に左右されるものではない。したがって,日本においては,C表示が付されていないからといって著作権の保護を受けないというものではないし,逆に,C表示が付されているからといって,当然にそれが著作権の保護を受ける著作物と認められるものではなく,C表示の有無とこれを表示した著作物が日本国内において保護されるか否かは,法律上はまったく無関係である。

しかしながら,C表示は,その現実的な機能として,著作者及び最初の発行年の記載と相まって,いまだ当該著作物について,当該著作者を著作権者とする著作権が存続している旨を積極的に表明するとの側面をも有するものであり,その著作物を無断で使用する場合には著作権侵害になることを需要者又は取引者に対し警告するという機能を有することを否定することはできない。

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判例/著作権法の目的と資本主義経済の関係

 

著作権法の目的と資本主義経済の関係

平成130329日大阪高等裁判所[平成11()3484]

すなわち、著作権法は、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とするものであり、そもそも、「思想及び感情を創作的に表現したものであって、文学、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である著作物自体、公衆に広く公開・利用・鑑賞されることを本来的目的として包含しており、その内実に沿った利用を認める一方、著作者の権利を保護することにより、創作のインセンティブを図り、もって社会と公衆の文化の発展を図る点が眼目であって、著作権法による著作物の保護は社会公共の利益との調和の下において実現されなければならないものである。そして、資本主義経済の繁栄と拡大の前提をなす所有権の絶対と自由契約を内容とする自由な商品生産・販売市場の維持、保護は、右社会公共の利益の大きな部分を占めるものであり、現代資本主義市場経済の下における著作権の保護は、自由な商品生産・販売市場の発展のうちにその実現が保障される関係となっている。

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2025年6月22日日曜日

判例/著作権法は発見や仮説そのものを保護するか

 

著作権法は発見や仮説そのものを保護するか

平成141114日東京高等裁判所[平成12()5964]

被侵害部分に記載されているような地層を発見し,その構成を特定し,その層序を決めることは,豊富な経験知識を前提に,膨大な現地調査とそれに基づく根気強い分析をすることを要するものであろうことは,想像に難くない。また,その結果得られた発見や仮説が大きな価値を有することもいうまでもないところである。しかし,著作権法は,発見や仮説そのものを保護し,これらを発見者や仮説の提唱者に独占させようとするものではない。控訴人ら主張のように,素材の取捨選択等の内容の重視を押し進めて,それが独創的であるとの一事をもって,表現に創作性がある,としたり,あるいは内容が同一であることから,表現にも同一性がある,としたりすると,その背後にある発見(発見された事実)や仮説の他者による表明が,事実上極めて困難となり,結局,発見や仮説そのものを保護し,発見者や提唱者によるその独占を認めることにならざるを得ない。このような結果は,著作権法の立場と両立し得ないことが明らかであり,このような結果をもたらす控訴人らの解釈を採用することはできない。

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2025年6月17日火曜日

判例/内国民待遇の原則

 

内国民待遇の原則

平成161130日京都地方裁判所[平成15()2018]

著作権法6条3号は,条約により我が国が保護の義務を負う著作物は,著作権法による保護を受ける旨規定している。そして,著作権関連条約としては,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(1886年に制定された後,数回の改正がなされているところ,本項においては,それらの改正を含めて,単に「ベルヌ条約」という),万国著作権条約,TRIPS協定,ベルヌ条約20条の「特別の取極」としてのWIPO著作権条約等がある。我が国及びアメリカ合衆国は,ともにベルヌ条約に加盟しているところ,同条約は,著作権を保護するに際して特段の方式を必要としないとする無方式主義を採用し,同条約の同盟国は,他の同盟国の著作者にも自国の著作者に与えている保護と同様の保護を与えなければならないとする内国民待遇の原則を採用している。なお,ベルヌ条約においては,内国民待遇の原則の例外として,一部,本国における保護の限度で著作権保護を行えば足りるとする相互主義の適用が認められているけれども,これは,著作権の保護期間,応用美術の著作物の保護,追及権等に関しての例外を定めるものであって,その余の点にまで一般化されるものではない。

したがって,上記内国民待遇の原則に照らし,我が国においては,上記の例外を除き,我が国の著作権者に対して保護が与えられるのと同様の権利が,他国の著作権者に対しても等しく保障されるのであり,本件アメリカ合衆国の各法人の著作権についても,我が国の著作権法に基づく送信可能化権にかかる保護が及ぶことは明らかである。

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