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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<特殊な著作物> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年11月26日水曜日

判例/仏画又は曼荼羅を原図とする復原画の二次的著作物性

 

仏画又は曼荼羅を原図とする復原画の二次的著作物性

▶平成241226日東京地方裁判所[平成21()26053]

(1)ア 前記前提事実のとおり,原告仏画1は,いずれも国宝又は重要文化財として指定されている仏画又は曼荼羅を原図とし,これを復原する意図で制作されたものであり,F氏が,既存の著作物である原図1ないし10に依拠し,各原図においてその制作者により付与された創作的表現を,その制作当時の状態において再現・再製するべく制作したものであると認められる。

そうすると,原告仏画1において,各原図の制作者によって付与された創作的表現ないし表現上の本質的特徴が直接感得できることは,当然に予定されているものというべきであるところ,これに加えて,原告仏画1に,各原図における上記創作的表現とは異なる,新たな創作的表現が付加されている場合,すなわち,復原過程において,原図の具体的表現に修正,変更,増減等を加えることにより,F氏の思想又は感情が創作的に表現され,これによって,原告仏画1に接する者が,原告仏画1から,各原図の表現上の本質的特徴を直接感得できると同時に,新たに別の創作的表現を感得し得ると評価することができる場合には,原告仏画1は,各原図の二次的著作物として著作物性を有するものと解される。その一方で,原告仏画1において,各原図における具体的表現に修正,変更,増減等が加えられているとしても,上記変更等が,新たな創作的表現の付与とは認められず,なお,原告仏画1から,各原図の制作者によって付与された創作的表現のみが覚知されるにとどまる場合には,原告仏画1は,各原図の複製物であるにとどまり,その二次的著作物としての著作物性を有することはないものと解される。

なお,原告仏画1の復原画としての性質上,原告仏画1において,各原図の現在の状態における具体的表現に修正等が加えられているとしても,上記修正等が,各原図の制作当時の状態として当然に推測できる範囲にとどまる場合には,上記修正に係る表現は,各原図の制作者が付与した創作的表現の範囲内のものとみるべきであり,上記修正等をもって,新たな創作性の付与があったとみることはできない。

イ 原告らは,原告仏画1の創作性に関し,F氏の復原手法が独自のものである旨主張する。しかし,原告仏画1の著作物性については,上記アでみたとおり,原告仏画1において,各原図の制作者によって付与された創作的表現とは別の創作性が,具体的表現として表れているか否かによって検討するべきであり,独自の復原手法を採用した結果として,F氏の個性が原告仏画1の具体的表現において表出していれば別論,手法の独自性から,直ちに原告仏画1の創作性が導かれるものではない。

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2025年11月17日月曜日

判例/方位の吉凶を示す方位盤は著作物か

 

方位の吉凶を示す方位盤は著作物か

▶平成170928日東京地方裁判所[平成16()4697]

本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり,気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えているというのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである。

したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。

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2025年10月29日水曜日

判例/編集著作物性,編集著作権の侵害性

 

編集著作物性,編集著作権の侵害性

平成140328日東京地方裁判所[平成10()13294]

著作権法12条1項は,「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,著作物として保護する。」と規定するところ,編集著作物に該当する具体的な編集物に記載,表現されているもののすべてが編集著作権の対象となるものではなく,編集著作権の対象として,その選択,配列の創作性が問題とされる素材が何であるかは,具体的な事案に即して当該編集物の性質,内容によって定まるものである。そして,定期刊行物である雑誌についていえば,編集著作権は,個別の記事を構成する文章や写真の著作権と区別して観念することができるものであるところ,この場合に編集著作権の対象となるのは,当該号全体を通じての主題(特集号など)を決定し,掲載する記事やグラビア等の写真の主題を定め,掲載する個別の記事,写真,イラスト等を取捨選択して,その配列等を決定するという編集者の知的創作活動の結果としての,雑誌における全体的構成,記事,写真等の選択,配列であるというべきである。

これを本件についてみると,本誌は,季刊の美容業界誌であり,本件との関係において,本号で選択・配列の創作性の素材として編集著作権の対象となるのは,「美容室 TAYA」チェーンを展開する株式会社T及びその代表取締役であるCを紹介する内容の記事を特集記事として雑誌の中核となる部分に一定の頁数を配し,同社の履歴,Cの経歴等,同社の代表的美容師の経歴等を説明し,同社の美容室において使用されている化粧品やその経営に係る各美容室(サロン)を紹介する内容の記事及びこれらに関する写真を配列した点にあるものというべきである。すなわち,本号における本件特集記事は,株式会社Tを対象とする特集であることを示す扉頁(本号20頁)以下,同社の履歴(同21頁),Cの経歴・人物(同22,23頁),同社を代表する3人の美容師の経歴等(同24~29頁),同社の作品である髪型(同26~43頁),同社の美容室において使用されている化粧品(同44,45頁)及びその経営に係る各美容室(サロン)(同132,133頁)を文章及び写真により紹介するものであるが,これらの一定の主題の下にまとめられた文章及び写真の,選択及び配列に編集著作物としての創作性が認められるものということができる。したがって,記事中の個々の文章表現や個別の写真に付された説明文の表現内容,配置等は,編集著作権の対象となるものではない。

そうすると,本件において原告会社が編集著作物についての著作者人格権及び編集著作権の侵害として主張する改変部分については,いずれも,個々の文章表現や個別の写真に付された説明文の表現内容,配置に関するものであって,編集著作物の対象としての素材の選択・配列を改変するものではないから,そもそも編集著作物についての著作者人格権の侵害や編集著作権の侵害を問題とする余地はないというべきである。

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判例/編集著作権と素材の著作権の関係

 

編集著作権と素材の著作権の関係

平成27312日東京地方裁判所[平成25()28342]▶平成28224日知的財産高等裁判所[平成27()10062]

[控訴審]

しかし,一般に,編集著作権とそれを構成する素材の著作権は,別に観念することができ,また,それぞれ別個独立して譲渡の対象となり得るものであるとはいえるが,編集著作権を有する者と素材の著作権を有する者が同一である場合に,編集物の著作権を譲渡するとき,編集著作権のみを譲渡する趣旨であるのか,それを構成する個々の素材の著作権を含め譲渡する趣旨であるのかは,個別具体的な契約締結に至る経緯,契約内容,その他の事情により,判断されるべきものである。著作権法61条2項を類推又は準用して,編集著作物に該当する編集物に係る著作権の譲渡契約において,編集物を構成する素材の著作権を譲渡する旨特掲されていないときは,これが譲渡人に留保されたものと推定するべきであるとする控訴人教文社の上記主張は独自の見解であって,採用の限りでない。

()

しかし,編集著作物を出版するについて,編集物を構成する素材の著作権者から使用許諾を受けるのみならず,編集著作権者からも使用許諾を受ける必要があるとしても,上記各使用許諾は法的には別個独立の契約であるから,編集物を構成する素材についての使用許諾を解約するにつき,その意思表示を契約当事者ではない編集著作権者と共に行わなければならない理由はない。

また,編集著作権者と編集物を構成する素材の著作権者は,著作権を共有しているわけではないから,編集物を構成する素材についての使用許諾を解約するにつき,共有著作権者ではない編集著作権者の同意を得なければならない理由はない。

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判例/二次的著作物の原著作者の権利

 

二次的著作物の原著作者の権利

令和5127日東京地方裁判所[令和5()70139]▶令和7924日知的財産高等裁判所[令和6()10007]

イ 本件テレビ作品は、亡Bの本件小説を原作として制作されたものであり、本件小説を原著作物とする二次的著作物であるところ、原著作物の著作者である亡Bは、二次的著作物である本件テレビ作品の利用に関し、本件テレビ作品の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有し(著作権法28条)、本件テレビ作品については、亡Bの権利と、二次的著作物である本件テレビ作品の著作者の権利とが併存することとなった(最高裁平成13年10月25日第一小法廷判決)。そのため、亡Bは、二次的著作物である本件テレビ作品の原作の著作者として、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利、すなわち、本件テレビ作品についての著作権(複製権又は翻案権、譲渡権、公衆送信権)を専有していたものであり(著作権法28条)、亡B死亡後は、亡Aが遺産分割によりこれを取得し、亡A死亡後は、控訴人X2、控訴人X3及び控訴人X4が遺産分割によりこれを取得したものである。

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2025年10月24日金曜日

判例/誰が編集著作者と言えるか/『智惠子抄』の編集著作者が誰であるかが争点となった事例

 

誰が編集著作者と言えるか/『智惠子抄』の編集著作者が誰であるかが争点となった事例

▶昭和631223日東京地方裁判所[昭和41()12563]▶平成40121日東京高等裁判所[昭和63()4174]

[控訴審]

著作者が企画案ないし構想を提供する第三者の進言により、はじめて著作を決意し、その協力により著作物を完成するという経過をたどることは、決して稀ではなく、その場合進言をした第三者が当然に著作権者となるものではない。著作物をもととして完成される編集著作物について、第三者が進言した場合でも同様である。

編集物で著作物として保護されるのは、「その素材の選択又は配列によって創作性を有する」ことが必要であるから(著作権法121項)、Aが「智惠子抄」の編集著作権者であるというためには、その素材となったCに関するBの作品を自ら選択し配列したと認められることが必要である。

[控訴審]

編集物で著作物として保護されるのは、「その素材の選択又は配列によって創作性を有する」ことが必要であるから(著作権法121項)、Aが「智惠子抄」の編集著作権者であるというためには、その素材となったCに関するBの作品を自ら選択し配列したと認められることが必要である。すなわち、Aの編集著作というためには、「荒涼たる歸宅」のように後日制作された作品を除き、可能な限り、Cに関する作品全てを認識し把握したうえで、これら作品について必要な取捨選択を経て配列を完成するという作業がA自身によりなされることが何よりも先ず必要であって、それによってはじめて控訴人らが主張するBとCの愛を浮き彫りにした創作性ある編集著作がなされたと認め得る余地があるのであり、かかる作業がなされないまま、Bの作品の一部を集めても、それはBとCの愛を浮き彫りにするという編集著作という観点からは、企画案ないし構想の域にとどまるにすぎないものというべきである。

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判例/米国公文書館所蔵の合計160万ページの中から選択収録した文書の編集著作物性を認定した事例

 

米国公文書館所蔵の合計160万ページの中から選択収録した文書の編集著作物性を認定した事例

▶平成24131日東京地方裁判所[平成20()20337]▶平成24910日知的財産高等裁判所[平成24()10022]

(2) 上記認定事実によれば,原告書籍収録文書は,単に米軍押収文書を時系列に従って並べたり,既に分類されていたものの中から特定の項目のものを選択したりしたというものではなく,原告が,未整理の状態で保存されていた160万ページにも及ぶ米軍押収文書の中から,南北朝鮮のどちらが先に朝鮮戦争を仕掛け,戦争を主導したかを明らかにする文書という一定の視点から約1500ページ分を選択し,これを上記(1)のとおり原告の設定したテーマごとに分類して配列したものといえる。

したがって,原告書籍収録文書は,全体として,素材たる原資料の「選択」及び「配列」に編者の個性が顕れているものと認められるものであり,編集著作物に当たるというべきである。

(3) これに対し,被告らは,原告書籍収録文書における素材の選択及び配列は,米軍押収文書から出版物を作成する場合にとられる標準的なものであり,創作性があるとはいえないと主張し,その根拠として,原告書籍より先に刊行された北韓関係資料集に収録されている資料の中に,原告書籍収録文書と同じ資料が少なからず存在することなどを挙げる。

しかしながら,証拠及び上記(1)掲記の各証拠によれば,北韓関係資料集と原告書籍とは,米軍押収文書の中から編者が選択した資料を掲載しているという点では同じであるもの,北韓関係資料集に収録されている文書と原告書籍収録文書が共通するのは,原告書籍収録文書全体の1割にも満たないものであり,北韓関係資料集の収録文書全体に占める割合は更に低いものであって,両書籍における資料の選択及び配列の仕方には,共通点が乏しいものと認められる。また,このほかに,原告書籍収録文書における素材の選択及び配列がありふれたものであることを認めるに足りる証拠はない。

したがって,被告らの上記主張を採用することはできない。

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判例/音楽アルバムの編集著作物性に言及した事例

 

音楽アルバムの編集著作物性に言及した事例

▶平成70222日東京地方裁判所[平成6()6280]

一方、「アルバム」は、複数の曲が一定の数だけ集められ、特定の順序で配列されて収録されたものであるが、これは、アルバム製作者が、一定のコンセプト、イメージ等に基づいて、複数の曲の中から、収録する一定数の曲を選択し、その配列の順序を決定した上で製作するものであって、編集著作物となりうるものである。

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2025年10月18日土曜日

判例/法27条及び法28条の趣旨(関係)

 

27条及び法28条の趣旨(関係)

平成151219日東京地方裁判所[平成14()6709]

(1) 法27条について

法27条は,「著作権者は,その著作物を翻訳し,編曲し,若しくは変形し,又は脚色し,映画化し,その他翻案する権利を専有する。」と規定し,法28条は,「二次的著作物の原著作物の著作者は,当該二次的著作物の利用に関し,この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定する。このように,法27条は,文言上,「著作物を編曲する権利を専有する」旨定めており,「編曲する」という用語に「編曲した著作物を放送する」という意味が含まれると解することは困難である。そして,法27条とは別個に,法28条が,編曲した結果作成された二次的著作物の利用行為に関して,原著作物の著作権者に法21条から27条までの二次的著作物の経済的利用行為に対する権利を定めていることに照らせば,法27条は,著作物の経済的利用に関する権利とは別個に,二次的著作物を創作するための原著作物の転用行為自体,すなわち編曲行為自体を規制する権利として規定されたものと解される。

原告会社は,二次的著作物を放送する行為に対しても,法27条の権利侵害が成立すると主張するが,そのように解すると,「編曲」の意味を法27条に例示された形態以上に極めて広く解することになるし,著作権法が法27条とは別個に法28条の規定を置いた意味を無にするものとなるから,法27条を理由とする同原告の主張は,採用することができない。

(2) 法28条について

本件において,甲曲について法27条の権利を専有する原告会社の許諾を受けずに創作された二次的著作物である乙曲に関して,原著作物である甲曲の著作権者は,法28条に基づき,乙曲の複製権(法21条),放送権(法23条)及び譲渡権(法26条の2)を有するから,原告会社の許諾を得ずに乙曲を放送,録音し,録音物を販売した被告に対しては,法27条に基づくのではなく,法28条に基づいて権利行使をすることができると解すべきである。

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2025年10月2日木曜日

判例/スクール講座情報誌の分類・インデックス・アイコン一覧等の編集著作物性ないしその侵害性が争点となった事例

 

スクール講座情報誌の分類・インデックス・アイコン一覧等の編集著作物性ないしその侵害性が争点となった事例

平成170329日東京高等裁判所[平成16()2327]

() 控訴人は,各種学校等(以下「スクール」)及びその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(以下「控訴人情報誌」といい,その首都圏版,関西版及び東海版を総称して「控訴人各情報誌」という。)を編集,発行しており,被控訴人は,これと同様の情報を掲載した情報誌「ヴィー・スクール」(以下「被控訴人情報誌」といい,その首都圏版,関西版及び東海版を総称して「被控訴人各情報誌」という。)を編集,発行している。

控訴人は,原審において,被控訴人に対し,(1)被控訴人による被控訴人各情報誌の編集,発行は,①控訴人各情報誌平成14年4月号のモノクロで印刷され,広告主から出稿されたスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類,配列されて掲載されている部分(以下「分野別モノクロ情報ページ」),②同分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセル,③同「学べる内容から探せるスーパーINDEX」(以下「スーパーインデックス」),④同スーパーインデックスの大分類・小分類表示,⑤同「通学アイコン一覧表」(以下「控訴人通学アイコン一覧表」)及び⑥同「通信アイコン一覧表」(「原告通信アイコン一覧表」)の各編集著作権を侵害すると主張して,被控訴人各情報誌の製作,印刷,製本,発売及び頒布の差止めなどを求めた。

原判決は,上記(1)①は,個々の具体的な広告記事を素材としてとらえた場合には,編集著作物に該当するが,被控訴人各情報誌は,控訴人の編集著作権を侵害するものではなく,上記(1)①~④の編集体系自体,⑤及び⑥は,編集著作物ということはできず,また,被控訴人に不法行為に該当する行為も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。

 

2 各著作物の編集著作物該当性及び被控訴人による著作権侵害の成否について

2-1 分野別モノクロ情報ページについて

(1) 分野別モノクロ情報ページの編集著作物該当性について

ア 上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

() 控訴人情報誌東海版平成14年4月号には,モノクロで印刷され,控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載された分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)があり,これらのページは,紙面の前小口の端から約1.5センチメートル内の部分に当該ページに掲載されているスクール・講座情報の内容を端的に示す文言がツメ見出しとして記載され,本文部分は,1ページに1ないし9校の通学講座に関するスクール・講座情報が掲載され,各スクールごとに,①スクール名,②住所,③最寄駅,④スクールの特徴を示すアイコン(「スクール便利ポイント」),⑤カプセル(講座内容を表す分類指標),⑥講座の特徴を示すアイコン(開講時間,受講制度,レベル,講師に関する事項等,講座・コース独自の特長及びメリットに関する「特長アイコン」と,受講料の支払方法及び割引に関する特長,メリットに関する「○得情報アイコン」がある。),⑦資料請求番号,⑧コース名,⑨講座開講日時・費用,⑩入学金・受講料の割引を示すマーク,⑪コース内容,⑫スクール情報,⑬地図,⑭交通案内及びフリースペースから構成され,これらの情報は,「情報の見方」(74頁)の記載に従って配置されている。

() 上記分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)において,スクールは,ツメ見出しの分類により,「英会話」(106頁~121頁),「外国語&語学の仕事」(121頁~126頁),「パソコン」(126頁~139頁),「デジタルクリエイティブ」(140頁~148頁),「エンジニア」(149頁~152頁),「ビジネス資格&スキル」(152頁~158頁),「建築・インテリア・CAD」(159頁~169頁),「フラワー」(170頁~178頁),「マスコミ・ファッション・デザイン」(179頁~180頁),「キレイ」(181頁~190頁),「癒し&健康」(191頁~197頁),「医療&福祉・教育」(198頁~204頁),「専門スキル」(205頁~206頁),「フード&料理」(207頁~212頁),「ミュージック」(213頁~217頁),「絵画・アート・書&クラフト」(218頁~221頁),「文化教養」(221頁~223頁),「スポーツ&乗り物」(224頁~228頁),「ダンス」(228頁~234頁)の順に配列されている。

() 上記ツメ見出し及びカプセルは,読者による各スクール・講座情報の検索や比較検討を容易にするため,控訴人において,上記記載の方針に従って設定したものであり,控訴人情報誌東海版平成14年4月号におけるカプセルの種類は866,ツメ見出しの種類は19である。

イ 上記認定の事実によれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)は,広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,読者の検索及び比較検討を容易にするため,五十音順等の既存の基準ではなく,控訴人の独自に定めた分類,配列方針に従って配列したものであり,その具体的配列は創作性を有するものと認められるから,編集著作物に該当するということができる。しかしながら,上記ア()の配置方針自体は,スクール名,住所,最寄駅,コース名,地図などの読者が当然に必要とする情報を誌面に割り付ける際の方針,すなわち,アイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分である。また,上記ア()の分類自体も,同様にアイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分であると認められる上,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,スクール・講座情報を掲載する情報誌において,読者による検索の便宜のため,同種のスクールをまとめて分類する必要があることは,当然のことであり,その分類項目も,英会話,外国語,パソコン,資格など,実用性の高いスクール・講座情報を先に,音楽,海外,スポーツなど,趣味性の高いスクール・講座情報を後に,かつ,類似するものが近接したページに掲載されるよう19種類のツメ見出しの分類に従って配列したにすぎないものであるから,その選択,配列に表現上の創作性を認めることはできない。

控訴人は,上記具体的なスクール・講座情報及び具体的な編集物である控訴人情報誌東海版平成14年4月号を離れ,分類,配列体系の項目である「学ぶ内容」ないし編集体系を構成する分類項目を素材とし,編集体系を表現としてとらえるべきであると主張する。しかしながら,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),アイデアなど表現それ自体でない部分は,著作権法の保護の対象ではないと解すべきところ,控訴人の主張する具体的な編集物を離れた編集体系自体は,上記のとおり,選択,配列のアイデアにすぎないというべきであり,また,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,その選択,配列に表現上の創作性を認め得ないものであるから,これを著作権法の保護の対象と解することはできない。したがって,控訴人の上記主張は,いずれにしても採用することができない。

(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について

 ア 控訴人は,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害すると主張するので,検討する。

上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

()

イ 上記認定の事実によれば,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号)のカテゴリー別スクール情報ページは,被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,上記ア()()の配置方針及び分類により掲載したものであるところ,その配置方針及び分類は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)の配置方針及び分類と類似しているものの,これらの点は,いずれも上記控訴人情報誌の表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分である。

そこで,進んで,スクール情報・講座情報の具体的配列について見ることとし,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌とも,スクール・講座情報は,スクールごとに掲載されているから,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるスクールの配列と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号におけるスクールの具体的配列を対比する。

() 控訴人情報誌東海版平成14年4月号において,スクールは,例えば,「英会話」(106頁~121頁)の分類中では,「CROSSROADS」(106頁上段),「NOVA」(同頁中,下段),「ECC」(107頁)・・・「YHG英語セミナー」(121頁上段中)の順に,「パソコン」(126頁~139頁)の分類中では,「きりゅうパソコン教室」(126頁下段左),「日本パソコン学院アビバ」(127頁),「Winパソコン塾」(128頁上段),「NECパソコンファミリースクウェア名駅校/新岐阜校」(同頁中,下段)・・・「おさや総合スクール」(139頁上段右),「パソコンカレッジガリレオ」(同段左),「中部大栄教育システム」(同頁中,下段)の順に配列されている。

() これに対し,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号において,スクールは,上記「英会話」に対応する「英語,英会話をマスターしたい!」(174頁~185頁)の分類中では,「ルクス」(174頁上段左),「NOVA」(同頁中,下段),「KTC英会話名古屋校」(175頁)・・・「REDWOODS ACADEMY」(185頁上段右)の順に,上記「パソコン」に対応する「パソコンを自由に操りたい!」(187頁~200頁)の分類中では,「ももたろうパソコン教室矢場校」(187頁上段左),「ももたろうパソ

コン教室昭和橋校」(同頁中段右),「ももたろうパソコン教室春日井校」(同段左),「中部コンピュータ学院本校」(同頁下段)・・・「アルファ・インストラクタ・アカデミー」(200頁)の順に配列され,その配列が上記()の配列と同一性又は類似性があると認めることはできず,他の分類に係る配列についても,両者の配列に同一性又は類似性があると認めることはできない。そして,このことは,被控訴人情報誌東海版同年11月号及び同12月号について見ても同様である。

ウ 以上対比したところによれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページは,配置方針及び分類は類似しているものの,その具体的配列は,同一性又は類似性があると認めることはできず,上記類似性を有する部分は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって,上記各カテゴリー別スクール情報ページから上記分野別モノクロ情報ページの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,上記各カテゴリー別スクール情報ページは,上記分野別モノクロ情報ページを複製ないし翻案したものということはできない。

また,控訴人は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおける素材が,特定のスクール講座の広告記事であるとしても,そこに掲載される広告の広告主と,被控訴人情報誌東海版各号のカテゴリー別スクール情報ページに掲載される広告の広告主は,多くが一致していること,被控訴人が,被控訴人情報誌東海版の対象とする地域を,控訴人情報誌東海版と同一の東海地方に設定し,控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を見て,その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであることなどを挙げて,素材であるスクール・講座情報に関する依拠性も明らかであると主張する。しかしながら,被控訴人が控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を対象に営業を行ったとしても,そのこと自体は,何ら違法ということはできず,また,広告主の多くが一致していたとしても,当該広告主から控訴人に出稿されたスクール・講座情報と被控訴人に出稿されたスクール・講座情報は,別のものであるから,控訴人主張の上記事実をもって,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページが控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに依拠しているということはできない。

エ 以上検討したところによれば,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。

(以下略)

3 被控訴人の不法行為の成否について

控訴人は,被控訴人は,被控訴人各情報誌において,控訴人各情報誌の広告記事・インデックスの配列方法,アイコン一覧表,レイアウト及びFAXシートを模倣し,また,控訴人の運営する控訴人サイトの手法を模倣し,被控訴人サイトを運営して,被控訴人各情報誌を発行する行為は,控訴人の獲得してきた媒体としての信用にただ乗りし,控訴人の顧客を奪取するという不正競争的意図を有するものであって,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を違法に侵害するものとして,不法行為を構成すると主張する。

しかしながら,控訴人各情報誌の配列方法,アイコン一覧表,レイアウト及びFAXシート並びに控訴人の運営する控訴人サイトの手法は,著作権法上の保護を受けるものではなく,控訴人がその独占的使用を主張し得る筋合いのものではないから,被控訴人においてこれらのノウハウを使用する行為は,それがデッド・コピーに当たるなど自由競争の範囲を逸脱したものと認められる特段の事情がある場合を除き,何ら違法性を帯びるものではないところ,被控訴人各情報誌及び被控訴人サイトは,控訴人各情報誌及び控訴人サイトをデッド・コピーしたものであると認めることができないことは,以上の判示に照らして明らかであり,他に,上記の特段の事情の存在をうかがわせるに足りる証拠はない。

したがって,被控訴人に控訴人主張のような不法行為に該当する行為を認めることはできないから,控訴人の不法行為に基づく請求も,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。

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2025年8月20日水曜日

判例/「編集権」「編集構成権」なる権利は認められるか

 

「編集権」「編集構成権」なる権利は認められるか

▶平成13829日東京高等裁判所[平成13()147]

著作権の対象となる著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)ところ、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、特殊小型変形版の大きさ及びソフトカバーの表紙仕上げを採用し、右頁に物語を配し、これに相応する絵を左頁に配し、右頁の右下方に小さなカットを挿入し、活字配列を左右9行を基本とし、表紙に各物語のシンボルとなる絵を描き、最上段に「名作アニメ絵本シリーズ」又は「アニメ昔ばなしシリーズ」を配し、右側にタイトル番号を付し、裏表紙に出版するシリーズ本の内訳一覧広告を掲載するなどの構成を採用したという点については、これらの構成自体、いずれも思想等の表現ではなく創作に係る要素もないから、著作物とは認められず、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合に編集著作物(同法12条1項)として著作物性が認められるかどうかが問題となるにすぎない。また、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、物語内容、絵等に独自の翻案をした点は、新たに付加された部分に創作性がある場合に二次的著作物(同法2条1項11号)として保護される範囲が問題とされる。このように、著作権法は、翻案に創作性がある場合は二次的著作権により、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合は編集著作権により、それぞれ著作物として保護を図ることを予定しており、同法上明記されたこれらの権利とは別個に、控訴人の主張する編集権及び編集構成権という法令上の規定を欠く権利を解釈上認めるべき法的根拠はない。

控訴人書籍には、物語内容、絵等に独自の翻案をした点はあるが、控訴人が被控訴人会社により盗作されたと主張するこれらの点について、被控訴人会社が二次的著作権を侵害するものでないことは上記の原判決引用部分に判示されたとおりであり、その余の構成については、一般的にありふれた構成であって、特に控訴人書籍のこれらの構成について素材の選択又は配列による創作性を認めるに足りる証拠はなく、編集著作権の侵害にも当たらない。

したがって、控訴人の主張する編集権及び編集構成権を解釈上認めることはできず、これらの権利に該当するものとして控訴人の主張する点は、二次的著作権又は編集著作権として保護を受けることもできないから、結局、この点に関する控訴人の主張は、理由がない。

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判例/リレーショナル・データベースの著作物性及び侵害性を認定した事例

 

リレーショナル・データベースの著作物性及び侵害性を認定した事例

平成140221日東京地方裁判所[平成12()9426]

1 争点1(原告データベースが著作権法にいうデータベースの著作物に該当するか)

(1)著作権法2条1項10号の3は,データベースとは「論文,数値,図形その他の情報の集合物であつて,それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。」と規定し,同法12条の2第1項は「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは,著作物として保護する。」と規定する。このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうのであるところ,前記前提となる事実によれば,原告データベースは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能を持つ「リレーショナル・データベース」と呼ばれるものである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるのであるから,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。

(2)そこで,原告データベースの創作性について検討するに,前記前提となる事実によれば,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等に対する販売を目的とするものであり,同データベースを用いて,新築分譲マンションの平均坪単価,平均専有面積,価格別販売状況等を集計したり,検索画面に一定の検索条件を入力して,価格帯別需給情報等の情報を,表やグラフのような帳票形式で出力したりすることができるものである。そして,原告データベースは,別紙図1のとおりの構造を含むと認められるところ,そのテーブルの項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方について敷衍して述べると,PROJECTテーブル,詳細テーブル等の7個のエントリーテーブルと法規制コードテーブル等の12個のマスターテーブルを有し,エントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,マスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ,期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,効率的に必要とする情報を検索することができるようにしているものということができる。すなわち,客観的にみて,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等が必要とする情報をコンピュータによって効率的に検索できるようにするために作成された,上記認定のとおりの膨大な規模の情報分類体系というべきであって,このような規模の情報分類体系を,情報の選択及び体系的構成としてありふれているということは到底できない。加えて,他に原告データベースと同様の情報項目,体系的構成を有するものが存在するとも認められないことは,原告データベースを含む構造(別紙図1)をMRC社のデータベースが含む構造(別紙図3),不動産月報,不動産の表示規約),株式会社東京カンテイの新築マンション詳細情報(1)等と比較精査しても明らかである。

したがって,原告データベースが含む構造(別紙図1)は,その情報の選択及び体系的構成の点において,著作権法12条の2にいうデータベースの著作物としての著作物性を認めるに足りる創作性を有するものと,認めることができる。

2 争点2(被告データベースが原告データベースの複製であり,その著作権を侵害しているか)

〔争点2(1)被告データベースが原告データベースに依拠して作成されたものか〕

(1)前記前提となる事実に証拠を総合すれば,本件の事実経過として,以下の事実を認めることができる。

()

(2)被告データベースの内容は,上記のとおり,別紙図2のとおりの構造を含むと認められるところ,前記前提となる事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合して,このような被告データベースを含む構造と原告データベースを含む構造とを,テーブルの内容(種類及び数),各テーブルに設定されたフィールド項目の内容,各テーブルの関連付けのあり方について対比すると,その結果は,以下のとおりであると認められる。

()

エ 以上ア~ウによれば,被告データベースは,テーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の名称,テーブル間の関連付けのすべての点からして,原告データベースの構造の一部分とほぼ完全に一致すると認められる。なお,被告らは,被告データベースにあって原告データベースにないものとして,6個のマスターテーブル(LAW4LAW8テーブル,状況マスターテーブル)や,その他いくつかのフィールド項目がある旨主張するが,これをア~ウで認定した一致部分の規模と比較するならば,ごく僅かの相違にすぎないと評価すべきであるから,上記のように,被告データベースが原告データベースの構造の一部分とほぼ完全に一致するといって妨げないというべきである。

(3)また,両データベース間で素材とする情報が重なっているかどうかをみるに,証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告データベースに格納されている具体的なデータについて,以下の事実が認められる。

()

(4)上記の(1)~(3)によれば,被告データベースが素材とする情報が原告データベースと重なっており,制作されたテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに設定されたフィールド項目の内容,各テーブル間の関連付けのあり方のすべての点において共通しているということができる。

(5)以上を総合すれば,被告データベースは,原告データベースに依拠して作成されたというべきであって,原告データベースを含む構造は,被告データベースを含む構造とその内容の点で同一であるといわなければならない。

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2025年8月15日金曜日

判例/法13条の意義と解釈

 

13条の意義と解釈

昭和520330日東京地方裁判所[昭和49()2939]▶昭和57422日東京高等裁判所[昭和52()827]

三 著作権の発生と帰属

1 旧法第11[注:現13条に相当。以下同じ]1号によれば、官公文書は、著作権の目的から除外されているところ、これは、官公文書が一般に公示され、周知徹底されるべき性質を有するものであり、何人にも自由に利用できる状態に置かれなければならないものであることに基づくのであるが、これに反し、官公庁の発行する文書でも高度に学術的意義を有し、必ずしも一般的に周知させることのみを意図しないものは、学術に関する著作物として、著作権の保護を受けるべきものと解するのが相当である。

しかして、右二の1に認定した各事実と前示(証拠等)を総合すれば、本件著作物[注:「日本人の海外活動に関する歴史的調査」と題する調査報告書のこと]は、前示認定のとおり、官公庁の編さんした著作物であるが、近代における日本及び日本人の海外経済活動に関する調査を経済史的見地から分析整理して叙述したものであつて、海外諸地域における政治、経済、統治関係などの事項を含み、史料的、学術的価値の高いものであること(本件著作物が右のような価値を有することは、当事者間に争いがない。)、また、本件著作物は、必ずしも一般国民に対し、周知徹底させることを目的としたものではなく、むしろ政府部内の執務資料とすることを意図したものであつたこと、なお、本件著作物には調査会の印章、署名がないこと(右事実は、当事者間に争いがない。)が認められ、前示(証拠)の記載部分をもつて、これを左右するに足りず、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

右認定の事実によれば、本件著作物は、官公庁としての調査会の印章、署名がないので、旧法第11条第1号にいう官公文書とはいえないうえ、本件著作物は、学術に関する著作物として、著作権により、保護されるべきものと解するのが相当である。

 

[控訴審]

一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は理由があるものと判断するが、その理由は、次に訂正付加するほか、原判決の理由と同一であるから、これをここに引用する。

()

三 本件著作物が、旧著作権法第11条第1号にいう「官公文書」に該当する旨の主張について

旧著作権法第11条には、著作権の目的とならない著作物として、第1号において、法律命令及び官公文書を挙げ、また、現行著作権法第13条も、権利の目的とならない著作物として、憲法その他の法令(第1号)、国又は地方公共団体の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの(第2号)、裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行なわれるもの(第3号)を挙げている。このことからみても、旧著作権法第11条第1号の「官公文書」とは、現行著作権法第13条第2号、第3号の規定で具体的に列挙されている如き官公庁が公務上作成する文書のうち一般公衆に公示する目的の文書をいうものと解すべきである。したがつて、国又は地方公共団体の発行した文書でも、高度に、学術的意義を有し、必ずしも一般に周知徹底させることを意図していない文書は、学術に関する著作物として著作権の目的となりうべきものであることは明らかである。

この点、控訴人は、国民の「知る権利」を実質的に保障すべきこと、旧著作権法には、現行著作権法第32条第2項の規定の如き「転載」形式の刊行物利用の道がなかつたことなどを根拠として、旧著作権法第11条第1号の「官公文書」の範囲は広く解すべきであつて、国、地方公共団体が作成した著作物で高度の学術的意義を有するものであつても、その著作物が一般公衆に周知さるべき目的、性質を少しでも有するものであれば、「官公文書」に該当すると主張する。

しかしながら、国民の知る権利を、後に権利濫用の主張の判断においても言及する如く、著作権法の分野における問題の検討に当つても尊重すべきこと、国、地方公共団体の著作活動も究極には国民の福祉を目的としており、かつ、これらの著作活動が国民の負担で賄われることなどについての控訴人の主張が理念として理解しうるものとしても、控訴人の旧著作権法第11条第1号の「官公文書」の概念の理解は、すでに正当な解釈論の範囲を逸脱したものであつて採用することはできない。

そうすると、本件著作物は、官公庁が編さんした著作物であるとはいえ、その内容は、近代における日本及び日本人の海外経済活動に関する調査を経済史的見地から分析整理して記述したものであり、海外諸地域における政治、経済、統治関係などの事項を含むことから、今日、史料的学術的価値の低くないものであるが、本来、本件著作物は、終戦直後に、近い将来予想される連合国に対する賠償問題や在外資産を失つた日本人への補償問題に対処するための国家機関の内部執務資料を整備保存する必要から、原判決理由二認定の如き経緯によつて作成が発意され、完成をみるに至つたものであつて、本件著作物は、政府部内の執務資料であり、一般に公示して周知させるべき性質の著作物でないことは明らかである。たしかに、控訴人が主張する如く、本件著作物の「序」には、「連合国に対する弁解という意図からでは勿論なく、吾々の子孫に残す教訓であり、参考書でなければならない。」などの記述がある(当事者間に争いがない。)が、これらの記述は、本件著作物の内部資料としての価値に言及したものと理解すべきであるから、控訴人指摘の各記述を検討しても、本件著作物が、前叙の如く、本来、終戦直後に予想された連合国に対する賠償問題や海外において蓄積した財産を失つた日本人に対する補償問題に対処するための内部的執務資料であることを否定することはできない。

したがつて、本件著作物は、旧著作権法第11条第1号に規定する「官公文書」とはみられず、学術の範囲に属する著作物として著作権の目的となりうるものである。

この点の控訴人の主張は、肯認できない。

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2025年7月8日火曜日

判例/英和辞典の編集著作物性を認めた事例

 

英和辞典の編集著作物性を認めた事例

▶昭和590514日東京地方裁判所[昭和50()480]▶昭和601114日東京高等裁判所[昭和59()1446]

1 「要語集」

(一) 前記(証拠)によれば、「要語集」は、3000前後の標準的なアメリカ語の単語、熟語、慣用句を使用頻度に従つて選び出した上、これらを見出し語としてアルフアベツト順に配列し、各見出し語に続けて、その日本語訳を付し、その大部分のものについて、見出し語を用いた慣用句、文例及びこれらの日本語訳を付し、場合により、見出し語の発音記号、見出し語の各日本語訳に対応する英語による言換え、語法の簡単な説明等をした「註」、「注意」等をも付したアメリカ語に関する英和辞典の一種であること、並びに右の文例は、昭和21年ころから昭和29年ころまでの間にわたり、ニユーズ・ウイーク、タイム、リーダーズ・ダイジエスト、ニユーヨーク・タイムズ等の雑誌、新聞やわが国の大学入試問題等に掲載された文章の中から、原告自身が適切であると考えたものを選択したものであることが認められる。

(二) 右の認定の事実と前記一の事実によれば、「要語集」は、原告がアメリカ語を素材にしてその選択と配列に創意をこらして創作した一個の編集著作物と認めることができる。

原告は、「要語集」に掲げられたアメリカ語の新しい語法及び文例について著作権及び著作者人格権を有する旨主張するけれども、アメリカ語の新しい語法を示すものとして原告が集録した単語、熟語、慣用句は言語それ自体を表記したに過ぎないものであつて、原告の思想又は感情の表現ではないことが明らかであるし、文例も原告が創作したものではないこと前記認定のとおりであるから、原告の右主張は失当である。

なお、単語、熟語、慣用句、文例等の日本語訳及び見出し語の英語による言換えは、原告の知的活動の結果表現されたものであると考えられるが、いずれも、日常的によく用いられている単語、熟語、慣用句又は短文の英語を日本訳又は他の英語に置き換えたものであつて、長い文章の翻訳と異なり、英語の語意を正しく理解する能力を有する者であれば、誰が行つても同様のものになると認められるから、原告のみの創作的表現ということはできない。

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判例/漢文訓読文の二次的著作物性を認定した事例

 

漢文訓読文の二次的著作物性を認定した事例

昭和570308日東京地方裁判所[昭和51()8446]

() (漢文)訓読」とは、漢文の語順構成を維持しながら、訓点を付して日本語の文体に置き換えて読解すること。

 

右のように和臭の変体漢文を訓読するについては、原典が成立した年代、その時代の用語、文法、当時の政治的、経済的、社会的背景、原著作者の地位身分、写本成立の年次、その伝来の系統、写本作成者の学殖等原典の文意を解釈するについての諸条件を考究し、この研究の結果から訓読者が解釈した原典の文意を、あるいは原典の成立した時代の読み方に近付けて書き表わし、あるいは現代人に理解できる文章に書き改めることが必要であるが、この作業の各々について、訓読者各自の諸般にわたる学識、文章理解力、表現力の差異等により、訓読者各自の個性の表現ともいうべき異なつた結果が生じるものであり、本件訓読文は、これに先立つて公表されている「将門記」についての他の訓読文と比較すれば、幾多の点で相違し、原告Aの学識経験に基づく独自の訓読文として完成されている。

以上の事実が認められ、これを覆えすに足る証拠はない。

右認定の事実によれば、本件訓読文は、「真福寺本」による「将門記」を原著作物とし、その内面形式を維持しつつ、原告Aの創意に基づきこれに新たな具体的表現を与えたものであつて、著作権法第2条第1項第11号の規定にいう著作物を翻案することにより創作した著作物に該当すると解して何の差支えもない。

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2025年6月23日月曜日

判例/新聞(特定の日付けの紙面全体)の編集著作物性

 

新聞(特定の日付けの紙面全体)の編集著作物性

平成50830日東京地方裁判所[平成3()6310]▶平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]

前記認定事実によれば、債権者新聞の紙面は、その新聞社の従業員である記者等が作成する原稿に基づいた報道記事、社説が主要な部分を占め、その他に株式相場、先物取引相場等の各種相場表、広告等によって構成されているところ、債権者新聞のこのような紙面構成は、債権者の従業員である編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また債権者新聞の個性を形づくるものであるから、紙面を構成するこれらの記事、写真、広告等の選択及び配列について創作性があるというべきであり、そしてこのような編集著作権は、債権者新聞を発行する債権者に帰属するというべきである。

 

[控訴審同旨]

前記認定事実によれば、被控訴人新聞の紙面は、報道記事、社説・論評が主要な部分を占め、その他に各種相場表、広告等によって構成されているところ、被控訴人の従業員である編集担当者は、そのもとに集められた多数の記事等の中から、被控訴人新聞の一定の編集方針に従い、またニュース性を考慮して、情報として提供すべきものを取捨選択し、その上で各記事等の重要度や性格・内容等を分析し、分類して紙面に配列しているものであって、被控訴人新聞のこのような紙面構成は、編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また被控訴人新聞の個性を形成するものであるから、特定の日付けの紙面全体は、素材の選択及び配列に創作性のある編集著作物と認めるのが相当であり、その編集著作権は、被控訴人新聞を発行する被控訴人に帰属するものというべきである。

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判例/模写作品は原画の複製物か、それとも二次的著作物か

 

模写作品は原画の複製物か、それとも二次的著作物か

▶平成18511日東京地方裁判所[平成17()26020]▶平成181129日知的財産高等裁判所[平成18()10057]

(1)ア 原告絵画が,本件原画を模写して作成されたことについては,当事者間に争いがない。 「模写」とは,「まねてうつすこと。また,そのうつしとったもの。」(岩波書店「広辞苑」参照)を意味するから,絵画における模写とは,一般に,原画に依拠し,原画における創作的表現を再現する行為,又は,再現したものを意味するものというべきである。したがって,模写作品が単に原画に付与された創作的表現を再現しただけのものであり,新たな創作的表現が付与されたものと認められない場合には,原画の複製物であると解すべきである。これに対し,模写作品に,原画制作者によって付与された創作的表現とは異なる,模写制作者による新たな創作的表現が付与されている場合,すなわち,既存の著作物である原画に依拠しかつ,その表現上の本質的特徴の同一性を維持しつつ,その具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が原画の表現上の本質的特徴を直接感得することができると同時に新たに別な創作的表現を感得し得ると評価することができる場合には,これは上記の意味の「模写」を超えるものであり,その模写作品は原画の二次的著作物として著作物性を有するものと解すべきである。

イ 機械や複写紙を用いて原画を忠実に模写した場合には,模写制作者による新たな創作性の付与がないことは明らかであるから,その模写作品は原画の複製物にすぎない。また,模写制作者が自らの手により原画を模写した場合においても,原画に依拠し,その創作的表現を再現したにすぎない場合には,具体的な表現において多少の修正,増減,変更等が加えられたとしても,模写作品が原画と表現上の実質的同一性を有している以上は,当該模写作品は原画の複製物というべきである。すなわち,模写作品と原画との間に差異が認められたとしても,その差異が模写制作者による新たな創作的表現とは認められず,なお原画と模写作品との間に表現上の実質的同一性が存在し,原画から感得される創作的表現のみが模写作品から覚知されるにすぎない場合には,模写作品は,原画の複製物にすぎず,著作物性を有しないというべきである。

ウ 原告は,機械的模写でない限り,模写については模写制作者による創作性が認められることは,模写制作の各過程(認識行為と再現行為)において,それぞれ模写制作者の創作性が発揮されることからも明らかであるから,仮に原画と模写作品が酷似していても,常に創作性が認められると主張する。

しかし,著作権法は,著作者による思想又は感情の創作的表現を保護することを目的としているのであるから,模写作品において,なお原画における創作的表現のみが再現されているにすぎない場合には,当該模写作品については,原画とは別個の著作物としてこれを著作権法上保護すべき理由はないというべきである。したがって,原画と模写作品との間に表現上の実質的同一性が存在する場合には,模写制作者が模写制作の過程においてどのように原画を認識し,どのようにこれを再現したとしても,あるいは,模写行為自体に高度な描画的技法が採用されていたとしても,それらはいずれもその結果として原画の創作的表現を再現するためのものであるにすぎず,模写制作者の個性がその模写作品に表現されているものではない。

また,原告は,美術界における模写行為の創作性及びその芸術的意義を強調し,尾形光琳と酒井抱一の各模写作品を比較検討し,その表現上の違いから,尾形光琳らによる創作性の付与を指摘すると共に,尾形光琳の模写作品は重要文化財として高く評価されているし,横山大観やゴッホらも多くの模写作品を残しているとも主張する。しかし,模写作品が二次的著作物として著作権法上の保護を与えられるべきか否かについては,個々の模写作品毎に,著作権法に基づく法的な判断,すなわち,著作権法における著作物性の概念を前提に判断されるべきであり,本件においては,本件原画と比べた原告絵画の著作物性について論じれば足り,美術界において論じられている模写行為の創作性及び模写作品の芸術的意義一般について論じる必要性はないし,また,著名な画家が過去に制作した模写作品の著作物性を本件において論じる必要性もない(尾形光琳と酒井抱一あるいは横山大観,ゴッホらの各模写作品の著作物性については,別途詳細に議論されるべき問題であり,本件においては,本訴の訴訟物である原告絵画の著作物性について検討すべきである。)。原告絵画が本件原画の二次的著作物か複製物にすぎないかは,本件原画と原告絵画を比較し,原告絵画について新たな創作的表現が付与されたと認められるか否かにより判断すべきである。

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2025年6月18日水曜日

判例/編集著作物とは

 

編集著作物とは

平成121130日東京高等裁判所[平成10()3676]

著作権法によって保護されるのが、「表現したもの」すなわち現実になされた具体的な表現のみであることからすれば、思想又は感情自体に保護が及ぶことがあり得ないのはもちろん、思想又は感情を創作的に表現するに当たって採用された手法や表現を生み出す本(もと)になったアイデア(着想)も、それ自体としては保護の対象とはなり得ないものというべきである。そして、この理は、対象が編集著作物であっても同様であると解すべきである。

すなわち、著作権法は、編集著作物について、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」(121項)と規定しているものの、編集物もまた、「著作物」の一種にほかならず、そこでは、著作物性の根拠となる創作性の所在が素材の選択又は配列に求められているというだけで、前述した「著作物」の意義に鑑みれば、たとい素材の選択又は配列に関する「思想又は感情」あるいはその表現手法ないしアイデアに創作性があったとしても、それが「思想又は感情」あるいは表現手法ないしアイデア(以下、これらをまとめて「発想」ということがある。)の範囲にとどまる限りは、著作権法の保護を受けるものではなく、素材の選択又は配列が現実のものとして具体的に表現されて、はじめて、表現された限りにおいて、著作権法の保護の対象となるものと解すべきである。逆に、編集著作物にあっては、その素材の選択又は配列に関する発想において創作性を有しなくても、これに基づく現実の具体的な素材の選択又は配列に何らかの創作性が認められるなら、その限りにおいて著作権法の保護を受け得ることになるのである。

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判例/「編曲」の意義

 

「編曲」の意義

▶平成140906日東京高等裁判所[平成12()1516]

歌曲「どこまでも行こう」は、控訴人Aの作詞に係る歌詞と同人の作曲に係る楽曲(甲曲)との、いわゆる結合著作物と解されるところ、本件では、後者すなわち歌詞を除く楽曲としての音楽の著作物に係る著作権(編曲権)の侵害が問題となっている。著作権法は、楽曲の「編曲」(同法2条1項11号、27条)について、特に定義を設けていないが(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約2条(3)、12条も同じ。)、同法上の位置付けを共通にする言語の著作物の「翻案」が、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決)のに準じて、「編曲」とは、既存の著作物である楽曲(以下「原曲」という。)に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が原曲の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物である楽曲を創作する行為をいうものと解するのが相当である。

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