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ラベル 重要判例<映画著作物> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年10月21日火曜日

判例/劇場用映画のトリミング、劇場用映画へのCMの挿入は同一性保持権を侵害するか

 

劇場用映画のトリミング、劇場用映画へのCMの挿入は同一性保持権を侵害するか

平成7731日東京地方裁判所[平成4()5194]▶平成10713日東京高等裁判所[平成7()3529]

2(一)以上によれば、本件映画は、ビデオ化及びテレビ放送される際に、トリミングにより、画面の一部切除が行われ、改変されたものと認められる。

しかし、ビスタサイズの映画をテレビ放送し、又はテレビ画面で鑑賞されるビデオに複製するについては、映画の画面をテレビ画面に合わせて調整する作業は必要なものであることは前記のとおりであり、本件映画のテレビ放送当時、前記②の方法(いわゆるノートリミング)のみにより放送されることは稀であったものである。そして、前記認定のとおり、原告は、本件映画がビデオ化、テレビ放送されることは承諾していたもので、映画製作者であり、本件映画の著作権者である被告伊丹プロが、テレビ放送やビデオ化するに当たって、前記認定のとおり、本件映画の製作において、総指揮者として、その編集、ダビング等を自ら取り仕切ったAが、それぞれの方法の長短を考慮したうえでトリミングを行ったのであり、これは、著作権法202項4号の「著作物の性質並びに利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に当たるものと認められる。

()

【(二) ところで、ビスタサイズの劇場映画をビデオに複製したり、テレビ放映するに際しては、トリミングしてスタンダードサイズに改変する必要があることは右に述べたとおりであるとしても、映画監督の了解なしに行って良いかどうかは別の問題である。

一般に、映画監督は、撮影する映画の視聴者に与える影響等を考慮して、スタンダードサイズとするか、ビスタサイズとするか、シネマスコープサイズとするかを考慮した上で選択しているものであり、そのサイズの改変は、当該映画の映画監督が事前又は事後に了解を与えていた場合や、同意を得ないでの改変も正当化されるような特段の事情が認められない限り、著作権法201項に規定する「意に反」する「改変」に該当し、監督の著作者人格権を侵害するものであるからである。しかも、トリミングをするにしても、その具体的な方法としては、前記認定のとおり、種々の方法があるのであり、本件映画のトリミングに際しても、①の方法だけでなく、②や、③方法も行われていたのであるから、監督の了解については、その具体的なトリミングの方法についての了解を得るか、同意がなくても改変できるような特段の事情の存在が必要と解される。本件映画について、対外的に「監督」として作品の評価を受けるのは、控訴人であって、監督である控訴人の了解を得ないで行う改変行為は、監督の著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものといわなければならない(もちろん、本件映画は、被控訴人伊丹プロの作品としても、また、製作総指揮に当たったAの作品としても、対外的な評価の対象となるから、被控訴人伊丹プロとしても、A個人としても、その映画の内容や、構成に強く関心を持つことは当然であるとしても、それだけで、監督の了解を得ないでする改変行為が正当化されるものではない。また、本件映画の撮影の最後の段階では、Aが編集等を取り仕切っており、その段階では、控訴人が何らの異議も述べていなかったとしても、その段階では、編集内容等について、控訴人も意見を述べる機会があったのであるから、その段階で何らの異議を述べていなかっただけで、直ちに、その後の改変に同意をしていたことにはならない。)。

そして、本件では、具体的なトリミングの方法についても、控訴人が了解を与えていたことを的確に認めることができる証拠はない。

しかし、前記認定のとおり、控訴人は、本件映画がビデオ化されること、ビデオ化される際には、トリミングが行われることについて了解を与えていたこと、ビスタサイズの映画がビデオ化される際には、スタンダードサイズにトリミングされることが当時では通常であったこと、Aが、本件映画の製作総指揮として、本件映画の編集、ダビング、特殊撮影や、合成部分の仕上げ等の業務を行い、このようなAの編集等の参与について控訴人が特段の異議も述べていなかった事情を総合すると、本件改変行為当時としては、Aが、監督としての控訴人の了解を得ないでトリミングをしても差し支えないと判断し、その行為に出たとしても、本件改変行為当時としては、その行為は、妥当なものでなかったということはできず、著作権法2024号の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するものと認めるのが相当である。Aとしては、トリミングの具体的な方法について控訴人から一任を得るか、トリミングを行ったビデオについて控訴人に意見を述べる機会を与えることが当時としても望ましかったとはいえ、前記認定の本件映画の撮影完了に至るまでの経緯及び当時としてはビスタサイズの映画のビデオ化についてはトリミングが行われるのが通常であったことに鑑みると、Aが、本件映画の製作総指揮者あるいは本件映画の著作権者である被控訴人伊丹プロの代表者として、別紙の内容の改変を行ったとしても、当時としては、容認される程度のものと認めるのが相当である。】

()

【(五)(1) Aが本件映画のテレビ放映に際し、販売及びレンタル用のビデオと同様にトリミングをした上、テレビ・コマーシャルの挿入箇所を指定した本件テレビ放映用ビデオを作製したことは当事者間に争いがなく、また、劇場映画を民間放送で長時間にわたり放映する場合には、テレビ・コマーシャルを挿入する必要のあることが通例であることは、弁論の全趣旨により認められる。そして、検証の結果(当審)によれば、テレビ・コマーシャルの挿入指定箇所は、六箇所であることが認められる。

(2) 一般に、テレビ・コマーシャルの挿入が必要であるとしても、著作者である監督の了解を得ないで行われたその挿入は、当然に正当化されるものではなく、その挿入の回数、時間、挿入箇所等の内容によっては、当該劇場映画が視聴者に与える印象に影響を及ぼすものと認められるから、その態様如何によっては、著作権法201項に規定する「意に反」する「改変」に該当する場合があると解される。本件では、具体的なテレビ・コマーシャルの挿入箇所の指定につき、Aが、控訴人の了解を得たことを的確に認めることのできる証拠はない(本件映画の最終段階で、控訴人が、Aの編集等につき、特段の異議を述べていなかったとしても、それだけで、控訴人が具体的なテレビ・コマーシャルの挿入に了解していたことにならないことは、本件映画のビデオ化について述べたところと同じである。また、Aが本件映画の製作総指揮の地位にあることによって、改変行為を正当化することができないことも、本件映画のビデオ化について述べたところと同じである。)。

(3) しかし、前記認定のとおり、本件では、控訴人が本件映画のビデオ化、テレビ放映などの二次的利用を広く承諾していたものであり、その中には、当然、民間放送でのテレビ放映も含まれ、しかも、テレビ放映の際の六箇所のテレビ・コマーシャルの挿入部分の指定も、前記トリミング及び改変と同様、本件映画の製作総指揮として編集等を実質的に取り仕切ったAにより慎重な配慮に基づいて行われたものであり、その回数、時間、挿入箇所等を併せ考えても、これらのテレビ・コマーシャルの挿入箇所の指定は、控訴人の了解の範囲内にあるものと認められるから、著作権法2024号に規定する「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない改変」に該当するものと認めるのが相当である(本件映画のビデオ化におけるトリミングと同様に、Aとしては、事前に著作者人格権を有する監督としての控訴人に意見を述べる機会を与えることが望ましかったとはいえるが、それを怠ったからといって、「やむを得ないと認められる改変」に該当しないものということはできない。)。

(4) 控訴人は、六箇所のテレビ・コマーシャルの挿入のうち、別紙のとおりシーン六七(食堂)とシーン六八(地下通路)の間にテレビ・コマーシャルを挿入したことが音楽を中断させるものであって問題であると主張するが、この点を考慮するとしても、その他の挿入箇所に控訴人の指摘によっても特段の問題が認められない以上、本件映画のテレビ放映におけるテレビ・コマーシャルの挿入全体としては、右に述べたとおり、「やむを得ないと認められる改変」に該当するといわなければならない。

(六) 以上のとおり、監督の著作者人格権に基づく控訴人の廃棄請求は、認めることができない。】

[控訴審同旨]

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2025年10月20日月曜日

判例/携帯向けSNS釣りゲームの侵害性が争われた事例

 

携帯向けSNS釣りゲームの侵害性が争われた事例

▶平成24223日東京地方裁判所[平成21()34012]▶平成240808日知的財産高等裁判所[平成24()10027]

[控訴審]

1 「魚の引き寄せ画面」に係る著作権及び著作者人格権の侵害の成否(争点1-1)について

(1) 翻案権及び同一性保持権について

著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は,既存の著作物の翻案に当たらない(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決参照)。

また,既存の著作物の著作者の意に反して,表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に変更,切除その他の改変を加えて,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを創作することは,著作権法20条2項に該当する場合を除き,同一性保持権の侵害に当たる(著作権法20条,最高裁昭和55年3月28日第三小法廷判決参照)。

()

オ まとめ

以上のとおり,被告作品の魚の引き寄せ画面は,アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告作品の魚の引き寄せ画面と同一性を有するにすぎないものというほかなく,これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,翻案に当たらない。

(4) 小括

被告作品の魚の引き寄せ画面の表現から,原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできない。よって,第1審被告らが魚の引き寄せ画面を含む被告作品を製作したことが,第1審原告の原告作品に係る翻案権を侵害するものとはいえず,これを配信したことが,著作権法28条による公衆送信権を侵害するということもできない。また,同様に,第1審被告らが魚の引き寄せ画面を含む被告作品を製作したことが,第1審原告の原告作品に係る同一性保持権を侵害するということもできない。

(以下略)

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判例/放置系RPGアプリゲームの侵害性

 

放置系RPGアプリゲームの侵害性

▶令和3218日東京地方裁判所[平成30()28994]

そして,本件のような携帯電話機等を用いたゲームについては,通常の映画とは異なり,システムないしルールが決められ,プレイヤーはシステムないしルールに基づいてプレイするところ,このようなゲームのシステムないしルール自体はアイデアそのものであり,著作物ということはできず,システムないしルールに基づき具体的に表現されたものがある場合に,初めてその創作性の有無等が問題となるというべきである。

また,このようなゲームは,プレイヤーが参加して楽しむというインタラクティブ性を有しているため,プレイヤーが必要とする情報を表示し,又はプレイヤーの選択肢を表示するための画面(ユーザーインターフェース)を表示する必要があり,また,ディスプレイ上に表示される画面は常に一定ではなく,プレイヤーが各画面に設置されたリンクを選択することによって異なる画面に遷移し,これを繰り返してゲームを進めるという仕組みになっているところ,一連のまとまった表現として把握される複数の画像が,プレイヤーの操作・選択により,又はあらかじめ設定されたプログラムに基づいて,連続的に展開することにより形成されている場合には,一連のまとまった表現を構成する各画像自体の創作性及び表現性のみならず,その組合せ・配列により表現される画像の変化も,著作権法による保護の対象となり得る。もっとも,このようなゲームにおける各画像及びその組合せ・配列については,プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性,操作等の利便性の観点から機能的な面に基づく制約を受けざるを得ないため,作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず,上記制約を考慮してもなおゲーム作成者の個性が表現されているものとして著作物性(創作性)を肯定し得るのは,他の同種ゲームとの比較の見地等からして,特に特徴的であり独自性があると認められるような限定的な場合とならざるを得ないものというべきである。

以上を前提にして,原告ゲーム(基本的構成,具体的構成,利用規約及びゲーム全体)及び原告ソースコードについて著作権侵害の成否を検討する。

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2025年8月19日火曜日

判例/法29条1項の「参加約束」とは/法29条1項の「参加約束」の意義

 

291項の「参加約束」とは

平成28225日東京地方裁判所[平成25()21900]

参加約束について

著作権法29条1項所定の「著作者が…映画の著作物の製作に参加することを約束し」たとは,「著作者が,映画製作に参加することとなった段階で,映画製作者に対し,映画製作への参加意思を表示し,映画製作者がこれを承認したこと」を意味すると解すべきである。

 

291項の「参加約束」の意義

▶令和5531日東京地方裁判所[令和3()13311]

著作権法29条1項は、映画の著作物の著作権について、著作者が映画製作者に参加約束をすることにより、当該映画製作者に帰属する旨を規定しているところ、同項は、著作者の映画製作者に対する参加約束があれば、法律上当然に著作権が映画製作者に移転する効果が生じることを定めたものであり、意思表示により著作権が移転するとの効果を定めたものではない。そして、著作者が映画製作に参加する場合、必ずしも映画製作者との間で参加に係る契約を締結するとは限らず、著作者が所属する法人と映画製作者との間で契約が締結されたり、映画製作者と第三者との間で契約が締結され、更に当該第三者と著作者との間で契約が締結されたりして、著作者が映画の製作に参加するような場合もあり得ると考えられ、そのような場合に参加約束を認めなければ、同項が設けられた意味がなくなるというべきである。したがって、同条における参加約束は、映画製作者に対して必ずしも直接される必要はなく、映画の製作に参加しているという認識の下、実際に映画の製作に参加して、その製作が行われれば、著作者が映画製作者に対して映画製作への参加意思を表示し、映画製作者もこれを承認したといえ、黙示の参加約束があったと認めることができるというべきである。

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2025年8月15日金曜日

判例/「映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物」の著作者の権利行使

 

映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物」の著作者の権利行使

▶平成170830日知的財産高等裁判所[平成17()10009]

著作権法16条本文は,「映画の著作物の著作者は,その映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者を除き,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする」と規定しているところ,同規定の趣旨は,映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者(いわゆるクラシカル・オーサー)については,映画の著作物の著作者とは別個に映画の著作物について権利行使することができることをいうものと解すべきである。

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2025年7月15日火曜日

判例/ゲームソフトの著作物性(「バイオハザード2」などの著作物性を認定した事例)

 

ゲームソフトの著作物性(「バイオハザード2」などの著作物性を認定した事例)

平成111007日大阪地方裁判所[平成10()6979]

一 争点1について

1 著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(211号)と定義するとともに、「映画の著作物」を著作物の例示として挙げている(1017号)。「映画の著作物」について、著作権法には、著作者の範囲(16条)、著作権の帰属(29条)及び著作権の保護期間(54条)に関する特則が置かれているほか、その利用に関する権利として、他の著作物一般には認められていない上映権及び頒布権(26条)を著作権者が専有する旨の規定が置かれている。また、著作権法は、「映画」の概念の定義については、明示的な規定は置いていないが、「映画の著作物」には、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。」としている(23項)。右のとおり、著作権法上の「映画の著作物」には、劇場用映画のような本来的な意味の映画以外のものも含まれるが、著作権法の規定に照らすと、映画の著作物として著作権法上の保護を受けるためには、次の要件を満たす必要があると解される。

() 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること(表現方法の要件)

() 物に固定されていること(存在形式の要件)

() 著作物であること(内容の要件)

被告らは、本件各ゲームソフトが映画の著作物であることを争うが、主として右要件のうちの()()を争うものである。

2 「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること」について

() 前記のとおり、著作権法は「映画」を所与の概念とし、その定義規定を置いていないところ、映画の一般的な意味(例えば、岩波書店「広辞苑」第五版では「長いフィルム上に連続して撮影した多数の静止画を、映写機で急速に(一秒間一五こま以上、普通は二四こま)順次投影し、眼の残像現象を利用して動きのある画像として見せるもの」としている。)や、本来的な意味の映画であることが明らかな劇場用映画の表現方法のほか、著作権法が映画の著作物の「上映」について、「著作物を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴って映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。」と定義していること(2118[注:17])を考え併せると、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」ているとは、右に述べた「映画」と同様の視覚的又は視聴覚的効果を生じさせるもの、すなわち、多数の静止画像を映写幕、ブラウン管、液晶画面その他の物に急速に連続して順次投影して、眼の残像現象を利用して、「映画」と類似した、動きのある影像として見せるという視覚的効果、又は右に加えて影像に音声をシンクロナイズさせるという視聴覚的効果をもって表現されている表現物をいうものと解するのが相当である。

() 被告らは、映画の著作物に該当するためには、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法」により「思想又は感情」が表現されていなければならないところ、「映画の著作物」により表現される「思想又は感情」とは、「一本の映画全体を貫く思想又は感情」をいい、当該著作物全体を貫く思想又は感情を視聴者に伝達しない連続影像は映画の著作物とはいえないのであり、ゲームソフトはプレイごとに出現する連続影像が異なるから、右のような意味での連続影像を有さず、映画の著作物には当たらない旨主張する。

なるほど、「映画の著作物」に該当するためには、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法」により「思想又は感情」が表現されていなければならないが、「映画の著作物」といえるための表現方法の要件としての「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」ていることというのは、その規定の文言から見て、「映画の効果」としてその視覚的又は視聴覚的側面を捉えたものと解するのが自然であり、「映画の著作物」たり得るための表現方法の要件としては、被告らの主張のような意味での連続影像を有しなければならないと解すべき根拠はない。「思想又は感情」が一本の映画全体を貫く思想又は感情をいうとの被告らの所論は、表現方法の要件というよりは、むしろ、著作物性の要件に関わる問題というべきであるから、後記4で検討する。

確かに、劇場用映画においては、カメラワークの工夫、モンタージュやカット等の手法、フィルム編集等の知的な活動を通じて、その構図等において創作的工夫に係る影像を作成し、これを選択して一定の順序で組み合わせ、音声をシンクロナイズすることによって映画フィルムが作成され、これを上映することによって一定の思想又は感情の表現としての連続影像がもたらされるものであり、それ故、映画フィルムの複製物たる複数のプリント・フィルムを多数の映画館において上映することによって、多数の観客に対して、時間的・空間的な隔たりを超えて同一の思想・感情の表現としての同一の視聴覚的効果を与えることが可能である。これに対して、ゲームソフトは、プレイごとにディスプレイ上に具体的に出現する連続影像が異なってくるという違いがある。しかし、後記二の2でも示すとおり、著作権法にいう「映画の著作物」は、本来的な意味での映画である劇場用映画ないし劇場用映画の特質を備えるものに限られるわけではないのであって、劇場用映画に特有な右のような特徴に限定して「映画の著作物」の表現形式上の要件を解釈する必要はない。

() 現在我が国で製造、販売されているゲームソフトにも、影像や音声の面での表現内容には種々のものがあるから、当該ゲームソフトが右にいう「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」た著作物に該当するか否かは、個別具体的に判断すべきものと考えられる。

そこで、これを本件各ゲームソフトについて検討するに、証拠によれば、本件各ゲームソフトは、それぞれ、全体が連続的な動画画像からなり、CG(コンピュータ・グラフィックス)を駆使するなどして、動画の影像もリアルな連続的な動きをもったものであり、影像にシンクロナイズされた効果音や背景音楽とも相まって臨場感を高めるなどの工夫がされており、一般の劇場用あるいはテレビ放映用のアニメーション映画に準じるような視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているといって差し支えない程度のものであることが認められる。したがって、本件各ゲームソフトは、いずれも、著作権法23項にいう「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」ているものというのに十分である。

3 固定性について

() 著作権法は、映画の著作物についてのみ、「物に固定されていること」を要件としている。これは、ベルヌ条約2(2)の「もっとも、文学的及び美術的著作物の全体又はその一若しくは二以上の種類について、それらの著作物が物に固定されていない限り保護されないことを定める権能は、同盟国の立法に留保される。」との規定に対応するものと考えられる。

そこで、右の固定性の要件の意義について検討すると、現行著作権法の制定に先立って、昭和37年から昭和41年にかけて著作権制度の改正について審議した著作権制度審議会において、映画の著作物について担当した第四小委員会は、主にテレビの生放送番組の取扱いを念頭に置いて映画の著作物の固定性の要件について検討し、昭和405月、映画的著作物をその効果、すなわち、影像の連続を感得せしめることによって著作物として機能するという効果のみで捉えることは、現段階では問題が多いと考えられるとした上で、「映画的著作物および映画に類似する方法で得た著作物とは、影像または影像および音の固定物であって、それを用いることによって影像の連続が平面的に再現され得るものと考えることとした。」旨の最終報告を発表し、右の報告の趣旨に沿って映画の著作物に固定性の要件を必要とする著作権法案が作成され、これが現行著作権法として成立していること、ベルヌ条約のストックホルム改正会議において、放送用映画の取扱いとともに、映画の著作物について固定性の要件を要求するか否かについての議論があり、結局、前記のとおり、著作物一般について、固定性を要求するか否かは各国の立法に委ねることにされたこと、我が国著作権法において、著作物一般については固定性を要件とせず、映画の著作物についてのみ固定性を要件としていることなどを併せ考えれば、著作権法上の映画の著作物の要件としての固定性は、これを映画の著作物としての性質に関わるものと見るのは相当でなく、むしろ、単に放送用映画の生放送番組の取扱いとの関係で、これを映画の著作物に含ましめないための要件として設けられたものであると考えるべきである。そうすると、右固定性の要件は、生成と同時に消滅していく連続影像を映画の著作物から排除するために機能するものにすぎず、その存在、帰属等が明らかとなる形で何らかの媒体に固定されているものであれば、右固定性の要件を充足すると解するのが相当である。

() 被告らは、「物に固定されている」とは、著作物が何らかの方法により物と結びつくことにより、同一性を保ちながら存続し、かつ、著作物すなわち特定の表現(映画の著作物でいえば連続影像群)を再現することが可能な状態をいうと主張する。しかし、ベルヌ条約上は、映画の著作物について固定性を保護の必要条件とはせず、物に固定されていない映画の著作物を保護することは立法的に採用可能であること、前記のとおり、立法過程における審議においては、固定性の要件はもっぱら生放送番組の取扱いとの関連で議論されたものであること、その他、現行著作権法が特に被告らの主張するような意味内容を映画の著作物の固定性の要件に担わせていると解すべき根拠も見当たらないことからすれば、被告らの主張は採用することはできない。

() そこで、右の固定性の点を本件各ゲームソフトについてみるに、前記第の事実によれば、本件各ゲームソフトは、CDーROM中に収録されたプログラムに基づいて抽出された影像についてのデータが、ディスプレイ上の指定された位置に順次表示されることによって、全体として連続した影像となって表現されるものであり、そのデータはいずれもCDーROM中に記憶されているものであるから、右に述べたところの固定性の要件に欠けるところはない。

() テレビゲームは、同一のゲームソフトを使用しても、プレイヤーによるコントローラの具体的操作に応じて、画面上に表示される影像の内容や順序は、各回のプレイごとに異なるものとなるから、画面上に表示される具体的な影像の内容及び表示される順序が一定のものとして固定されているわけではない。しかし、これらの影像及びそれに伴う音声の変化は、当該ゲームソフトのプログラムによってあらかじめ設定された範囲のものであるから、常に同一の影像及び音声が連続して現われないことをもって、物に固定されていないということはできない。劇場用映画のように、映画フィルムを再生すれば常に同一の連続影像が再現されるのでなければ、「物に固定されている」とはいえないと解すべきものではない。

4 著作物性について

本件各ゲームソフトは、それぞれ前記のような内容であるが、証拠によってその具体的内容を検討するに、いずれも著作者の知的精神的創作活動の所産が具体的に表現されたものと認めるに十分であるから、これらの著作物性を肯定することができる。本件各ゲームソフトは、前示のとおり、プレイヤーの各回のプレイごとに具体的に画面に表示される連続影像が異なるものであるが、そもそもテレビゲームは、各プレイごとのプレイヤーの操作によって、具体的に出現する連続影像が同一にならないことを前提として、それ故にこそゲームをプレイできるという性格のものであって、ゲームソフトの著作者は、右のようなプレイヤーの操作による影像の変化の範囲をあらかじめ織り込んだ上で、ゲームのテーマやストーリーを設定し、様々な視覚的ないし視聴覚的効果を駆使して、統一的な作品としてのゲームを製作するものである(本件各ゲームソフトについても同様である。)。したがって、本件各ゲームソフトを含むゲームソフトは、ゲームソフト自体が著作者の統一的な思想・感情が創作的に表現されたものというべきであり、プレイヤーの操作によって画面上に表示される具体的な影像の内容や順序が異なるといったことは、ゲームソフトに「映画の著作物」としての著作物性を肯定することの妨げにはならないものというべきである。本件各ゲームソフトは、各回のプレイによって現出する連続影像が、被告らが映画の著作物の要件として主張する「一本の映画全体を貫く思想又は感情を視聴者に伝達する連続影像」に相当すると認めるに足るものである。

また、ゲームソフトの右のような性質からすれば、ゲームソフトは、プレイヤーのプレイを待たずに完成した著作物というべきことが明らかであるから、未編集の映画フィルムと同視して論じることも相当ではない。

5 証拠によれば、最近、インタラクティブ(双方向的)映画と呼ばれる、あらかじめ決まった一連の動画影像ではなく、観客の反応に応じて画面上の動き、表情、筋書き等が変化するという形で、複数用意された影像が選択されてストーリー展開が変化するという形式の劇場用映画が試験的にではあるが現れていることが認められる。右のように、現行著作権法の制定時に観念されていた劇場における映画の上映、あるいは、放送媒体による一方的な送信形態による映画の公衆送信などとは異なる表現形式の著作物が既に出現しているのであり、これらを映画の著作物の概念から除外する合理的な根拠ないし必要性があるとも考えられない。

したがって、右のような映画の著作物の現状に照らせば、ゲームソフト等のインタラクティブな表現形式を取る著作物について、「映画の著作物」から排除すべき合理的な理由はないというべきである。

6 以上によれば、本件各ゲームソフトは、著作権法上の「映画の著作物該当するものというべきである。

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判例/「映画の著作物」における固定性の要件の意義

 

「映画の著作物」における固定性の要件の意義

平成130329日大阪高等裁判所[平成11()3484]

右の立法経過に照らすと、ベルヌ条約が、映画の著作物に関し、創作性を他の一般著作物と同様のものとし、次に、著作物性に重点を置いた影像のモンタージュやカット等の手法的な類似性によって映画類似の著作物を捉えてテレビジョン著作物をも含めて固定のいかんにかかわらず映画に類似する方法で表現されているものが映画としての保護の対象となるが、国内法で固定を要求することができるものとし、現行著作権法がこれに基づきテレビの生放送番組のように放送と同時に消えて行く性格のものを映画の著作物としては保護しないということにして固定の要件を規定したのであるから、法23項は、第一に、創作性につき他の一般著作物と同様のものとし、第二に、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で「表現され」ることを求めているのであって、表現の内容たる「思想・感情」や表現物の「利用態様」における映画との類似性を求めていないというべきである(この点は、法24項[写真の著作物の定義]が「この法律にいう『写真の著作物』には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む」として映画の著作物に関する法23項と異なり「製作方法」の類似性に着目した表現で規定して区分けされていることによっても裏付けられる。)。そして、第三に、表現が「物に固定」されることは、テレビの生放送番組のように放送と同時に消えて行く性格のものを映画の著作物として保護しないということで要件とされたのであるから、一定の内容の影像が常に一定の順序で再生される状態で固定されるというような特別の態様を要求するものでないことは明らかであり、法2114号にいう「録画」の定義としての「影像を連続して物に固定」するのとは異なるというべきである。

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2025年7月14日月曜日

判例/法29条1項の立法趣旨と「映画製作者」の意義

 

291項の立法趣旨と「映画製作者」の意義

令和6328日知的財産高等裁判所[令和5()10093]

4 争点3(本件映像の著作権者)について

⑴ 著作権法29条1項は、「映画の著作物の・・著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」と規定している。

前記2のとおり、本件映像は映画の著作物であると認められるから、本件映像の著作権の帰属については、著作権法29条1項が適用され、本件映像の著作者である控訴人が、映画製作者に対し、本件映像の製作に参加することを約束しているときは、本件映像の著作権は当該映画製作者に帰属することになる。

この点に関して、被控訴人は、著作権法29条1項は劇場用映画を想定した規定であり、本件書籍の従たる付属物として作成された本件映像には適用されないと主張するが、同項が映画の著作物のうち劇場用映画のみに適用されると解すべき根拠、あるいは本件映像が映画の著作物と認められるにもかかわらず同項が適用されないと解すべき根拠はなく、被控訴人の上記主張は採用することができない。

⑵ 著作権法29条1項にいう「映画製作者」は、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」である(同法2条1項10号)。

また、著作権法29条が設けられたのは、①従来から、映画の著作物の利用については、映画製作者と著作者との間の契約によって、映画製作者が著作権の行使を行うものとされていたという実態があったこと、②映画の著作物は、映画製作者が巨額の製作費を投入し、企業活動として製作し公表するという特殊な性格の著作物であること、③映画には著作者の地位に立ち得る多数の関与者が存在し、それら全ての者に著作権行使を認めると映画の円滑な市場流通を阻害することになることなどを考慮すると、映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属するとするのが相当であると判断されたためであると解される。

著作権法2条1項10号の文言及び同法29条1項の上記趣旨からみて、「映画製作者」とは、映画の著作物を製作する意思を有し、同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことの反映として同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者のことであると解するのが相当である。

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2025年6月23日月曜日

判例/テレビ番組はすべて「映画の著作物」に当たるか/法2条3項の立法趣旨

 

テレビ番組はすべて「映画の著作物」に当たるか

▶平成16521日東京地方裁判所[平成13()8592]

まず,著作権法2条3項において,同法において保護される「映画の著作物」には,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物を含むものとされているところ,同規定によれば,物に固定されていないような表現は,視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているものであっても,同法において保護される「映画の著作物」には該当しないこととなると解される。

 被告が同時再送信するテレビ番組は,テレビドラマのように録画用の媒体に固定され,しかる後に放送される番組もあるが,生放送番組のように媒体に固定されずに放送される番組もあることは当裁判所に顕著である。このような,媒体に固定されずに放送されるテレビ番組は上記の「映画の著作物」に該当しないものと解されるところであって,およそテレビ番組はすべて「映画の著作物」に該当することを前提とする被告の主張を採用することはできない。

 

23項の立法趣旨

平成130329日大阪高等裁判所[平成11()3484]

現行著作権法は、以上のベルヌ条約ブラッセル規定に即応し、同条約ストックホルム改正規定をも踏まえて立法されたものであり、保護すべき著作物の一として映画の著作物を明示的に規定し、独創性を有する映画と独創性を欠く映画とを区別しないこととし、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的方法で表現されたものであることを要するとともに、テレビの生放送番組のように放送と同時に消えて行く性格のものを映画の著作物として保護しないということで固定の要件を規定し、現行法23項を設けた。

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2025年6月17日火曜日

判例/「映画の著作物」に該当するための要件

 

「映画の著作物」に該当するための要件

昭和590928日東京地方裁判所[昭和56()8371]

1 著作権法は、著作物の一類型として「映画の著作物」を掲げ(第10条第1項第7号)、この類型の著作物については、他の類型の著作物と異なり、特に、「上映権」及び「頒布権」を認め(第26条)、著作権の帰属(第29条)、保護期間(第54条)等について特則をおいている。そして、この「映画の著作物」には、本来的意味における「映画」のほかに、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」を含むものとされている(第2条第3項)。「パツクマン」が本来的意味における映画に該当しないことは明らかであるから、以下、右の定義規定の解釈について、右の特則の立法趣旨等も勘案しながら、本件に必要な範囲で判断を示す。

2 前記定義規定によれば、本来的意味における映画以外のものが「映画の著作物」に該当するための要件は、次のとおりである。

(一)映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること

(二)物に固定されていること

(三)著作物であること

「著作物」については、更に定義規定がある(第2条第1項第1号)から、右(三)の要件は、次のとおり言い換えることができる。

(三)′思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

右のうち、(一)は表現方法の要件、(二)は存在形式の要件、(三)は内容の要件であるということができる。

3 表現方法

表現方法の要件は、前記(一)のとおりであるが、そこでは、「視覚的又は視聴覚的効果」とされているから、聴覚的効果を生じさせることすなわち音声を有することは、映画の著作物の必要的要件ではなく、視覚的効果を生じさせることが必要的要件であると解される。

映画の視覚的効果は、映写される影像が動きをもつて見えるという効果であると解することができる。右の影像は、本来的意味における映画の場合は、通常スクリーン上に顕出されるが、著作権法は「上映」について「映写幕その他の物」に映写することをいうとしている(第2条第1項第19号)から、スクリーン以外の物、例えばブラウン管上に影像が顕出されるものも、許容される。したがつて、映画の著作物の表現方法の要件としては、「影像が動きをもつて見えるという効果を生じさせること」が必須であり、これに音声を伴つても伴わなくてもよいということになる。

本来的意味における映画は、映画フイルムに固定された多数の影像をスクリーン上に非常に短い時間間隔で引続いて連続的に投影する方法により、人間の視覚における残像を利用して、影像が切れ目なく連続して変化しているように見せかけることによつて、右の「影像が動きをもつて見える効果」を生じさせるものであるから、映画以外の映画の著作物においても、物に固定された影像を非常に短い時間の単位で連続的にブラウン管上等に投影する方法により、右の効果を生じさせることが予想されているものと解することができる。

右に述べた要件は、映画から生じるところの各種の効果の中から、「視覚的効果」と「視聴覚的効果」とに着目し、そのうち特に「視覚的効果」につき、これに類似する効果を生じさせる表現方法を必須のものとしたものであるから、「映画の著作物」は本来的意味における映画から生じるその他の効果について類似しているものである必要はないものと解される。

したがつて、現在の劇場用映画は通常観賞の用に供され、物語性を有しているが、これらはいずれも「視覚的効果」とは関係がないから、観賞ではなく遊戯の用に供されるものであつても、また、物語性のない記録的映画、実用的映画などであつても、映画としての表現方法の要件を欠くことにはならない。

なお、本来的意味における映画の影像は、現在のところ、視聴者の操作により変化させることはできないが、影像を視聴者が操作により変化させうることは、「視覚的効果」というべきものではないから、この点は、表現方法の要件としては考慮する必要がないものと解される。

4 存在形式

映画の著作物は「物に固定されていること」が必要である。

「物」は限定されていないから、映画のように映画フイルムに固定されていても、ビデオソフトのように磁気テープ等に固定されていてもよく、更に、他の物に固定されていてもよいと解される。

また、固定の仕方も限定されていないから、映画フイルム上に連続する可視的な写真として固定されていても、ビデオテープ等の上に影像を生ずる電気的な信号を発生できる形で磁気的に固定されていてもよく、更に、他の方法で固定されていてもよいと解される。一般に著作物においては、物に固定されていることが要件とされていないから、原稿のない講演や楽譜のない音楽のように、一過性のものでも著作物たりうるが、映画の著作物においては、テレビの生放送のように、一過性のものはこれに含まれないものとするために、物に固定されていることが要件とされているものと解される。したがつて、物に固定されているとは、著作物が、何らかの方法により物と結びつくことによつて、同一性を保ちながら存続しかつ著作物を再現することが可能である状態を指すものということができる。

5 内容

(一)内容の要件は、更に次の二つに分けて考えることができる。

(1)思想又は感情を創作的に表現したものであること

(2)文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

(二)右(1)の要件のうち、「思想又は感情」は、厳格な意味で用いられているのではなく、およそ思想も感情も皆無であるものは除くといつた程度の意味で用いられているものであつて、人間の精神活動全般を指すものであると解するのが相当である。したがつて、「思想」と「感情」の区別も特に問題とする必要がないといえる。

また、「創作性」については、いわゆる完全なる無から有を生じさせるといつた厳格な意味での独創性とは異なり、著作物の外部的表現形式に著作者の個性が現われていればそれで十分であると考えられる。

(三)前記(2)の要件のうち、「文芸、学術、美術又は音楽」というのも、厳格に区分けして用いられているのではなく、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものであると解するのが相当で、該著作物がどの分野に属するかを確定する実益はない。

なお、知的、文化的精神活動の所産といいうるか否かは、創作されたものが社会的にどのように利用されるかとは、必ずしも関係がないというべきである。すなわち、創作されたものが、芸術作品として鑑賞されようと、学究目的で利用されようと、全くの娯楽目的で利用されようと実用目的で利用されようと、また、本件に即していえば、遊戯目的で利用されようと、そのことは、著作物性に影響を与えるものではないと解するのが相当である。

6 次に、映画の著作物には、特に上映権と頒布権が認められているが、このことから、映画の著作物の範囲について何らかの限定をしなければならないかどうかについて検討する。

映画の著作物について特に上映権と頒布権が認められている立法趣旨は、主として、劇場用映画のフイルム配給の実態を保護するためであるといわれている。しかし、著作権法は、劇場用映画に限り上映権等を認めているわけではなく、広く映画の著作物全般についてこれらを認めているから、劇場用映画でない映画の著作物、例えば市販されているビデオ・カセツトや16ミリフイルムに収録されている映画、家庭内で撮影されたビデオテープや8ミリフイルムでその内容が著作物性を有するものについても、上映権等が認められているものと解するほかはない。

そして、少なくとも、市販の16ミリフイルムに収録された映画や家庭内で撮影された8ミリフイルムでその内容が著作物性を有するものが立法当時広く存在していたことは明らかであるから、著作権法が映画の著作物全般にわたり上映権等を認めたことは、前記の立法趣旨だけでは充分に説明し切れないものである。しかしながら、立法の動機がどのようなものであつたにせよ、著作権法が、劇場映画とは全く取引実態を異にするものであつても、映画の著作物に該当する以上、上映権等を認めるとの立場をとつたものと解すべきであることが明らかであり、取引実態が異なることを理由に上映権等を制限したり、映画の著作物に該当しないものとしたりすることは、現行法の解釈としては採用できないというべきである。

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