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ラベル 重要判例<著作権の帰属と移転> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年11月4日火曜日

判例/「特掲」(法61条2項)の意義と程度

 

「特掲」(612)の意義と程度

▶平成181227日東京地方裁判所[平成16()13725]

著作権法612項は,「著作権を譲渡する契約において,第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは,これらの権利は,譲渡した者に留保されたものと推定する。」と規定するところ,これは,著作権の譲渡契約がなされた場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれがあることから,二次的な利用権等を譲渡する場合には,これを特に掲げて明確な契約を締結することを要求したものであり,このような同項の趣旨からすれば,上記「特掲され」たというためには,譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要であり,契約書に,単に「すべての著作権を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず,譲渡対象権利として,著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げることにより,当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があるというべきである。

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判例/著作権の黙示的譲渡を認定した事例

 

著作権の黙示的譲渡を認定した事例

平成160513日東京高等裁判所[平成15()5509]

これらの事実と,本件モニュメントは,岐阜駅南口に設置することが当初から予定されており,それ以外の用途が考えられないものであったことをも考慮すれば,控訴人は,本件モニュメント製作に当たり,被控訴人会社との間で,その提供した図面等に描いたモニュメントのデザイン(本件著作物に当たるもの)について,これが美術の著作物に当たり,著作権により保護されるとしても,被控訴人会社に対し,その著作権を譲渡すること(被控訴人会社は,その後,上記委託業務契約に基づき,被控訴人県に対し,すべての著作権を譲渡することになる。)を,少なくとも黙示的には合意した上で,上記モニュメントに関するデザインを提案し,その対価として,被控訴人会社から,控訴人が要求したとおりの金額でその報酬を得た,と認めるのが相当である(仮に,著作権譲渡の合意について明確な合意があったと認めることが困難であるとしても,控訴人は,少なくとも,被控訴人会社が,被控訴人県の委託に基づいて,控訴人のデザインを一部採用した本件モニュメントのデザイン設計業務を行い,被控訴人県がこれに基づいて本件モニュメントを建設することを当初から基本的な前提条件として黙示に了承した上で,上記のとおり本件モニュメントについてのデザインを提案し,その対価を得たことを認めることができることは,明らかである。)。また,上記認定の事実からすれば,控訴人が本件著作物について,本件著作者人格権を有するとしても,控訴人は,被控訴人県が,控訴人のデザインの一部を採用したり,採用しなかったりすること,及び,控訴人のデザインを必要に応じ,修正した態様で採用した上で,本件モニュメントを建設することを当初から了承していた,と認めるのが相当である。

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2025年10月31日金曜日

判例/法61条2項の趣旨

 

612項の趣旨

平成151219日東京地方裁判所[平成14()6709]

法61条2項は,通常著作権を譲渡する場合,著作物を原作のままの形態において利用することは予定されていても,どのような付加価値を生み出すか予想のつかない二次的著作物の創作及び利用は,譲渡時に予定されていない利用態様であって,著作権者に明白な譲渡意思があったとはいい難いために規定されたものである。そうすると,単に「将来取得することあるべき総ての著作権」という文言によって,法27条の権利や二次的著作物に関する法28条の権利が譲渡の目的として特掲されているものと解することはできない。この点につき,法28条の権利が,結果的には法21条ないし法27条の権利を内容とするものであるとして,単なる「著作権」という文言に含まれると解釈することは,法61条2項が,法28条の権利についても法27条の権利と同様に「特掲」を求めている趣旨に反する。

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判例/市が実施した中学校改築工事の基本設計コンペに提出された設計図書の帰属が争点となった事例

 

市が実施した中学校改築工事の基本設計コンペに提出された設計図書の帰属が争点となった事例

▶平成1389日東京高等裁判所[平成13()797]

2 東中実施設計図の著作権の帰属について

(1) 証拠によれば,次の事実が認められる。

() 小諸市は,同市立小諸東中学校の改築工事を実施するに当たって,複数の建築設計業者から構成される設計監理共同企業体を一つの応募単位として,同改築工事の基本的な設計を競わせ(東中コンペ),応募させる設計図書(付近見取図,配置図,各階平面図,立面図,説明書)を審査したうえ採否を決定し,採用した設計図書の作成者には,改築工事の実施に当たり,実施設計・監理を委託し,これに対する報酬を支払うという方針を立て,昭和63年12月23日に,応募説明会を催した。その際の応募要領には,「採用した設計図書等の著作権は小諸市に帰属するものとし,この使用については小諸市が自由に行えるものとする。」と記載されていた。

(以下略)

(2) 上記認定の事実によれば,A共同企業体名義で提出し,採用された東中コンペ案及びこれを前提にした実施設計図(東中実施設計図)は,その著作者が控訴人であるかA共同企業体であるかにかかわりなく,その著作権が小諸市に帰属していることが明らかである。

(3) この点について,控訴人は,原審において,東中コンペに合格したとしても,採用された設計図書の著作権全部が小諸市に移転するものではなく,東中学校を建設するのに必要な範囲で著作権の一部が小諸市に譲り渡されるにすぎず,それ以外は設計者である控訴人に残存する旨主張している。

しかしながら,小諸市の応募要領には,前記のとおり,「採用した設計図書等の著作権は小諸市に帰属するものとし,この使用については小諸市が自由に行えるものとする。」と記載されており,応募者は,この条件を受け入れることを前提として,東中コンペ案を提出し,これが採用されたのであるから,小諸市と応募して採用された者との間には,採用された設計図書の著作権を小諸市に移転することについての合意が成立していると認められる。そして,小諸市の応募要領には,小諸市に移転するべき著作権の範囲について何らの限定もなく,また,上記権利移転の合意について何らかの制限があったことを窺わせるものは,本件全証拠を検討しても見いだすことができない。

(4) そうすると,東中コンペ案についてもこれを前提にした東中実施設計図についても,控訴人が,これに基づく著作権主張をなし得ないことは,明白というべきである。

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判例/著作権の帰属につき、著作権登録(第一発行年月日登録)の事実を援用した事例

 

著作権の帰属につき、著作権登録(第一発行年月日登録)の事実を援用した事例

令和7217日大阪地方裁判所[令和5()11871]

() 原告は、平成21年4月22日、文化庁に対し、本件作品1(別紙として本件作品2を含むもの)の著作権者として、第一発行年月日の登録を申請したところ、同年6月5日、原告の申請に係る登録がされた(登録番号第3364815 号の1)。なお、被告は、原告が同申請を行うことについて異議を述べなかった。また、原告が、本件作品1及び同2を製作したことは争いがない。

(2) 本件作品1について検討する。

本件作品1が、原告の単著論文であることには争いがない。そして、被告が、原告に対し、本件作品1の執筆を指示したとはうかがわれず、本件作品1にも、原告の肩書として被告における職位等は何ら記載されていない。一方、被告は、原告が、本件作品1につき、文化庁に著作権の登録をしたことについても是認している。

そうすると、仮に本件作品1が職務著作に該当するとしても、少なくとも、被告は、原告が本件作品1の著作権者とすることを認めていたものと認められる(著作権法15条1項は、個別の著作物についてなお被使用者に著作権を留保することを否定するものではない。)。

被告は、上記のような取扱いや、本件覚書等は、原告の被告における職位に合わせた対応をしたのみであり、著作権者であることを認めたものではないと主張する。しかし、将来の改変に際し、原告の許諾を要するかを検討する場合は別段、一度公にすればその段階で内容が変更されることのない本件作品1について原告名義での著作権の登録を是認していたことに鑑みれば、少なくとも本件作品1に関する限りでは、被告の主張は採用できない。

よって、本件作品1は、職務著作に該当するか否かにかかわらず、原告が著作権等を有するものと認められる。

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2025年9月9日火曜日

判例/学会への論文投稿により著作権を喪失したと認定した事例

 

学会への論文投稿により著作権を喪失したと認定した事例

令和6627日大阪地方裁判所[令和5()3064]▶令和61129日大阪高等裁判所[令和6()1544]

1 争点4(一審原告は、原告表の共有著作権を喪失したか)について

事案に鑑み争点4から判断する。

(1) 補正の上引用した前提事実(4)によれば、本件共同著作者及び一審被告が会員である日本教育工学会においては、甲5論文が同学会へ投稿された当時、同学会論文誌に採録されることが決定された論文等の著作権は同学会に移転する旨が投稿規定に定められていたと認められる。そうすると、同学会の会員である本件共同著作者がした同学会への甲5論文の投稿は、同学会の内部規範である投稿規定に従ってされたものと解されるから、甲5論文が同学会論文誌に採録されることが決定されたことにより、甲5論文の著作権は、同学会に移転したものと認められる。そして、その移転の効果は、甲5論文全体に及ぶと解すべきであるから、甲5論文中に、甲5論文の著作者である本件共同著作者が甲5論文作成前に作成した著作物を含めているのなら、その著作物の著作権も甲5論文と一体のものとして同学会に移転したと解すべきである。

(2) 本件において一審原告は、甲5論文の草稿段階の論文である甲3論文案に掲載された「表2 実地指導者に対するアンケート調査」と題する表の一部(原告表)について有すると主張する共有著作権に基づき、一審被告による著作権侵害を主張しているところ、一審原告の上記主張は、原告表が甲5論文に掲載された甲5表と異なる著作物であることを前提にいうものである。

しかし、原告表と、甲5表のうち原告表に対応する部分(別紙・甲5表)とを比較すると、その相違点は別紙・甲5表の下線付き太字部分の限りであり、最も大きい相違点であっても、「指導計画と準備」・「学習者や学習環境の分析や確認を行う」欄の「行動記述」中、原告表では二重取消線が引かれていた下2欄の記述(ただし、容易に読み取ることができる。)につき甲5表では二重取消線が外されている程度であり、その余の相違点は、原告表の「相手」あるいは「対象者」が「学習者」に改められ、「おこなう」が「行う」に改められるなどの違いに限られるから、原告表と甲5表は表現が実質的に同一であって、原告表が著作物であるとしても、甲5表は原告表の複製物にすぎず、それらは異なる著作物であるとはいえない。

(3) したがって、一審原告を含む本件共同著作者は、甲5論文中に甲5表を含めることによって、甲5論文作成前に作成した原告表を甲5論文に含めたものということができるから、その甲5論文を日本教育工学会に投稿し、同学会論文誌への採録が決定されたことにより、原告表が著作物であって著作権が認められるとしても、原告表の著作権は甲5論文の著作権と一体のものとして同学会に移転し、その結果、本件共同著作者のうちの一人である一審原告は、その著作権を喪失したということになる。

(4) これに対し、一審原告は、甲5論文について、乙2著作権規程所定の著作権譲渡に係る承諾書を同学会に提出しておらず、同学会との間で著作権譲渡契約書を取り交わしてもいないから、原告表の著作権はもとより、甲5論文の著作権も同学会に移転していない旨を主張する。

しかし、証拠によれば、乙2著作権規程は、甲5論文が同学会により受理された令和2年1月17日(甲5)よりも後である令和4年8月1日に施行されたものであると認められるから、甲5論文の投稿に適用されるものとは解されない。また、証拠によれば、確かに、同学会のホームページに著作権譲渡契約書のひな型が掲載されている事実は認められるが、そのひな型には、それが乙2著作権規程等に基づく著作権譲渡について合意するためのものである旨の記載があることからすると、同学会のホームページに著作権譲渡契約書のひな型が掲載されているとの事実を根拠として、乙2著作権規程が施行される前に投稿された甲5論文の著作権の移転について、著作権譲渡契約書の取交しを要するものであったと解することはできない。また、乙2著作権規程の施行時期の点をおいたとしても、甲5論文の受理される遥か以前から施行されていた投稿規定であっても、同受理後施行された乙2著作権規程であっても、論文採録が決定された段階で著作権は移転する旨が規定されている以上、承諾書や契約書の提出を待つことなく著作権は同学会に移転するのであり、承諾書や契約書の提出は権利帰属を明確にするため念のため作成し提出することを求められるものにすぎないものと解されるから、それらの書面を提出していないからといって、著作権は移転していないということにはならないというべきである。

25 したがって、一審原告の上記主張は採用することができない。

2 結論

以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、一審原告の請求は理由がないから棄却すべきであるところ、これと異なる原判決は失当であり、本件控訴は理由があるから、原判決を取り消すこととする。

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2025年8月19日火曜日

判例/法29条1項の「参加約束」とは/法29条1項の「参加約束」の意義

 

291項の「参加約束」とは

平成28225日東京地方裁判所[平成25()21900]

参加約束について

著作権法29条1項所定の「著作者が…映画の著作物の製作に参加することを約束し」たとは,「著作者が,映画製作に参加することとなった段階で,映画製作者に対し,映画製作への参加意思を表示し,映画製作者がこれを承認したこと」を意味すると解すべきである。

 

291項の「参加約束」の意義

▶令和5531日東京地方裁判所[令和3()13311]

著作権法29条1項は、映画の著作物の著作権について、著作者が映画製作者に参加約束をすることにより、当該映画製作者に帰属する旨を規定しているところ、同項は、著作者の映画製作者に対する参加約束があれば、法律上当然に著作権が映画製作者に移転する効果が生じることを定めたものであり、意思表示により著作権が移転するとの効果を定めたものではない。そして、著作者が映画製作に参加する場合、必ずしも映画製作者との間で参加に係る契約を締結するとは限らず、著作者が所属する法人と映画製作者との間で契約が締結されたり、映画製作者と第三者との間で契約が締結され、更に当該第三者と著作者との間で契約が締結されたりして、著作者が映画の製作に参加するような場合もあり得ると考えられ、そのような場合に参加約束を認めなければ、同項が設けられた意味がなくなるというべきである。したがって、同条における参加約束は、映画製作者に対して必ずしも直接される必要はなく、映画の製作に参加しているという認識の下、実際に映画の製作に参加して、その製作が行われれば、著作者が映画製作者に対して映画製作への参加意思を表示し、映画製作者もこれを承認したといえ、黙示の参加約束があったと認めることができるというべきである。

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判例/ゴーストライター事件(著作権の譲渡に関する判示部分)

ゴーストライター事件(著作権の譲渡に関する判示部分)

平成281215日大阪地方裁判所[平成26()9552]▶平成291228日大阪高等裁判所[平成29()233]

4 争点3(被告には本件楽曲に係る損失があるか)について

(1) 本件で,被告は,原告が,本件楽曲に係る使用料を支払うことなく,実施された本件公演において本件楽曲を演奏させたことについて,使用料相当額の不当利得が成立すると主張していることから,これが認められるためには,まず,被告が本件楽曲の著作権を有していたことが必要となるところ,P2は,会見において,本件楽曲を含む被告の作品として発表されている楽曲については,その著作権を放棄したいと述べ,被告との間で本件確認書を作成していることからすれば,P2において,少なくとも,本件楽曲の財産的な著作権を被告に対して譲渡したものと解するのが相当である。

これに対し,原告は,仮に譲渡契約があるとしても,その実質はゴーストライター契約であるから,著作権法121条に反する,あるいは公序良俗に反するもので無効である旨主張する。しかし,【本件確認書の内容は認定事実のとおりであるから,】本件確認書に係る著作権譲渡合意が,それ自体としてゴーストライター契約であるとは認められない。また,本件楽曲に関して,被告とP2との間で,著作権譲渡合意とともに,原告主張のような趣旨の合意がされたとしても,本件確認書が,真の作曲過程の発覚後に,なお著作権の譲渡だけを特に確認することを対象として作成されていることからすると,被告とP2との間で,著作権譲渡合意が上記の本件楽曲に関する合意と不可分一体のものとされていたとまでは認められず,また,性質上不可分一体のものとも認められない。そして,著作権法121条は,著作者名を詐称して複製物を頒布する行為を処罰の対象とするにすぎず,著作権を譲渡することを何ら制約するものではないから,本件確認書自体が同条に反するものではなく,また,そのことは公序良俗違反についても同様であるから,被告とP2との間における本件楽曲の著作権譲渡合意は無効とはいえない。

[控訴審同旨]

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2025年7月17日木曜日

判例/譲渡契約の成否(応募要項の事例)

 

譲渡契約の成否(応募要項の事例)

平成1389日東京高等裁判所[平成13()797]

控訴人は,原審において,東中コンペに合格したとしても,採用された設計図書の著作権全部が小諸市に移転するものではなく,東中学校を建設するのに必要な範囲で著作権の一部が小諸市に譲り渡されるにすぎず,それ以外は設計者である控訴人に残存する旨主張している。

しかしながら,小諸市の応募要領には,「採用した設計図書等の著作権は小諸市に帰属するものとし,この使用については小諸市が自由に行えるものとする。」と記載されており,応募者は,この条件を受け入れることを前提として,東中コンペ案を提出し,これが採用されたのであるから,小諸市と応募して採用された者との間には,採用された設計図書の著作権を小諸市に移転することについての合意が成立していると認められる。そして,小諸市の応募要領には,小諸市に移転するべき著作権の範囲について何らの限定もなく,また,上記権利移転の合意について何らかの制限があったことを窺わせるものは,本件全証拠を検討しても見いだすことができない。

そうすると,東中コンペ案についてもこれを前提にした東中実施設計図についても,控訴人が,これに基づく著作権主張をなし得ないことは,明白というべきである。

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判例/登録しなければ対抗できない「第三者」とは/著作権取得の対抗要件(登録なしに不法行為者に対抗できるか)

 

登録しなければ対抗できない「第三者」とは

平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]

7 著作権の権利主張についての対抗要件の要否について

被告は,原告が著作権移転のための対抗要件である登録をしていないので,被告に対し,著作権を有していることを対抗できないと主張する。

しかし,著作権の移転を登録しなければ対抗できない「第三者」(著作権法77条)とは,登録の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者であると解されており(大審院昭和7年5月27日判決参照),単なる著作権の侵害者はこれにはあたらない。よって被告の主張は失当である。


著作権取得の対抗要件(登録なしに不法行為者に対抗できるか)

平成27924日大阪地方裁判所[平成25()1074]

原告は,本件ピクトグラムの著作権を取得したとして,その著作権を被告らに対して主張し得るかについて

前記のとおり,原告は,本件ピクトグラムの著作権を取得したと認められるところ,著作権を取得した者は,著作権を侵害する不法行為者に対し,何ら対抗要件を要することなく自己の権利を対抗することができると解されるから,原告は,被告大阪市に対し,著作権侵害に基づく損害賠償を請求することができる。

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判例/著作権移転登録の法意

 

著作権移転登録の法意

▶平成25131日東京地方裁判所[平成23()40129]▶平成250620日知的財産高等裁判所[平成25()10015]

1 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について

(1) 原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。

【ア そこで検討するに,法は,著作権は著作物の創作によって発生し,著作権の発生に登録その他の方式の履行を要しないとする無方式主義を採用しており(法17条2項),著作権の発生を登録する制度は存在しない。

一方で,法は,著作権は,その全部又は一部を譲渡することができ(法61条1項),著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)は,登録しなければ第三者に対抗することができないと規定し(法77条1号),著作権の移転を公示する登録制度を設けて,当事者の意思表示によって生じた著作権の譲渡(移転)について登録を第三者に対する対抗要件としている。そして,著作権の移転登録は,申請又は嘱託により,文化庁長官が著作権登録原簿に記載し,又は記録して行うものとし(法78条1項,著作権法施行令15条1項),登録の申請は,原則として登録権利者及び登録義務者が共同で(著作権法施行令16条ないし19条),著作物の題号,権利の表示,登録の原因及びその発生年月日,登録の目的等の所定の事項を記載した申請書を登録の原因を証する書面等の所定の添付資料とともに文化庁長官に提出して行わなければならないとしている(著作権法施行令20条,21条)。

文化庁長官は,①登録を申請した事項が登録すべきものでないとき,②申請書が方式に適合しないとき,③申請書に必要な資料を添付しないとき,④申請書に登録の原因を証する書面を添付した場合において,これが申請書に記載した事項と符合しないとき,⑤登録免許税を納付しないときなどの却下事由(著作権法施行令23条1項各号)の有無を審査し,却下事由が認められないときは,登録の申請の受付けの順序に従って著作権の移転登録を行うものとされているが(著作権法施行令22条),この却下事由には,移転登録の対象とされた著作権の客体が法2条1項1号の「著作物」に該当しないことは含まれていないから,文化庁長官の審査権は,上記「著作物」の該当性に及ぶものではない(なお,文化庁長官官房著作権課が平成23年6月に発行した「登録の手引き」には,「著作権の登録に関するQ&A」の「Q13 文化庁に登録されている著作物は,公的に認められた価値あるものなのでしょうか。」に対する「答」として,「A 著作権に関する登録の審査は,…登録の前提となる事実が行われているか否かを申請書等から形式的に審査するものであり,文化庁は登録されている著作物の内容には関知しておりません。との記載がある。)。

以上によれば,著作権の移転登録は,当事者の意思表示によって生じた著作権の権利変動を公示し,第三者に対する対抗要件となるものではあるが,移転登録の対象とされた著作権が発生していることや,その著作権の客体が法2条1項1号の「著作物」に該当することを公示すらするものでないことは,著作権の移転登録の制度上明らかであるから,文化庁長官は,著作権の移転登録申請があった際に,申請者に対し,その申請に係る登録がされたからといって著作権が発生するものではないとか,著作権の権利者という地位が保証されるものではないなどの説明を著作権の移転登録事務を担当する文化庁の担当職員(本件担当職員)にさせるべき職務上の法的義務を負うものとはいえないし,文化庁長官がかかる法的義務を負うものとする法令の定めや根拠はない。

したがって,文化庁長官がかかる法的義務を負うことを前提に,文化庁長官の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとする控訴人の主張は,その前提を欠くものとして,理由がない。

[控訴審同旨]

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2025年7月14日月曜日

判例/法29条1項の立法趣旨と「映画製作者」の意義

 

291項の立法趣旨と「映画製作者」の意義

令和6328日知的財産高等裁判所[令和5()10093]

4 争点3(本件映像の著作権者)について

⑴ 著作権法29条1項は、「映画の著作物の・・著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」と規定している。

前記2のとおり、本件映像は映画の著作物であると認められるから、本件映像の著作権の帰属については、著作権法29条1項が適用され、本件映像の著作者である控訴人が、映画製作者に対し、本件映像の製作に参加することを約束しているときは、本件映像の著作権は当該映画製作者に帰属することになる。

この点に関して、被控訴人は、著作権法29条1項は劇場用映画を想定した規定であり、本件書籍の従たる付属物として作成された本件映像には適用されないと主張するが、同項が映画の著作物のうち劇場用映画のみに適用されると解すべき根拠、あるいは本件映像が映画の著作物と認められるにもかかわらず同項が適用されないと解すべき根拠はなく、被控訴人の上記主張は採用することができない。

⑵ 著作権法29条1項にいう「映画製作者」は、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」である(同法2条1項10号)。

また、著作権法29条が設けられたのは、①従来から、映画の著作物の利用については、映画製作者と著作者との間の契約によって、映画製作者が著作権の行使を行うものとされていたという実態があったこと、②映画の著作物は、映画製作者が巨額の製作費を投入し、企業活動として製作し公表するという特殊な性格の著作物であること、③映画には著作者の地位に立ち得る多数の関与者が存在し、それら全ての者に著作権行使を認めると映画の円滑な市場流通を阻害することになることなどを考慮すると、映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属するとするのが相当であると判断されたためであると解される。

著作権法2条1項10号の文言及び同法29条1項の上記趣旨からみて、「映画製作者」とは、映画の著作物を製作する意思を有し、同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことの反映として同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者のことであると解するのが相当である。

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2025年6月28日土曜日

判例/著作権の譲渡を認めなかった事例(古文単語の語呂合わせの募集広告があった事例)

 

著作権の譲渡を認めなかった事例(古文単語の語呂合わせの募集広告があった事例)

平成11930日東京高等裁判所[平成11()1150]

(二一) 原告語呂合わせ21につき、原告は、Cから著作権を譲り受けた旨主張し、その根拠として、原告語呂合わせ21は、一審原告が著作した受験参考書に掲載した「ごろあわせ募集広告」に応じて寄せられた作品の中から適当なものを選び、改訂時に語呂合わせと作者名を掲載しているものであるが、広告の文面及び一審原告の出版物がいずれも受験参考書であることを考慮すれば、応募者は受験の記念として掲載を望むのみであり、著作権等については一審原告に無償で譲渡する意思であると解するのが、当事者の意思の合理的解釈である旨主張する。

(証拠等)によれば、一審原告は、自己の著作した古文の受験参考書に、「∧あなたもゴロあわせを作ってこの本にのせよう∨ 自分で工夫した単語の覚え方を下記までお送りください。採用作品はあなたの作品であることを明記しこの本にのせます。なお、採用された方にはあなたの作品がのったこの本を郵送します。」との広告を掲載し(なお、の原告書籍二は、1993420日発行の第10刷であるが、それ以前から、一審原告主張の古文の受験参考書には一審原告主張の募集広告が掲載されていたものと認められる。)、Cもこの広告に応じて自己の創作した原告語呂合わせ21を一審原告に送付したことが認められるが、右広告には、応募作品の著作権は一審原告に帰属する旨を明記した記載はなく、また、右募集広告の文言のみから、原告書籍三に掲載された投稿作品の著作権を一審原告に帰属させる旨の合意が成立したものと認めることはできない。

したがって、原告語呂合わせ21の著作権侵害を理由とする一審原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

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