このブログを検索

自己紹介

著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<著作物の定義> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 重要判例<著作物の定義> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年11月18日火曜日

判例/マンモスの3DCG画像の著作物性を認定した事例

 

マンモスの3DCG画像の著作物性を認定した事例

平成240425日知的財産高等裁判所[平成23()10089]

() 本件各画像は,平成14年(2002年)にロシア連邦サハ共和国のユカギル地方において発見され,平成17年に愛知県で開催された「2005年日本国際博覧会」(愛知万博)において展示されたマンモス(学名「ケナガマンモス」の個体。本件マンモス)の頭部の標本についてのものである。 本件画像1は,本件マンモスの頭部について,CT装置(コンピュータ断層撮影装置)による撮影(CT撮影)によって得られた断層像のX線CTデータ(本件CTデータ)を基にして,本件画像2は,本件CTデータを3次元画像として再構築したボリュームレンダリング像(本件三次元再構築モデル)を基にして,それぞれ作成された,3DCG画像である。

 

(1) 本件各画像の著作物性

ア 著作権法上の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)であり,ここでいう「創作的」に表現したものといえるためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の個性が表現されたもので足りるというべきである。

イ 本件画像1について

本件画像1は,本件CTデータからコンピュータソフトウェアの機能により自動的に生成される本件三次元再構築モデルとは異なり,本件CTデータを素材としながらも,半透明にした本件マンモスの頭部の三次元画像の中に,本件マンモスの水平断面像を並べて配置する構成としている点において,美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されているものということができる。

加えて,本件画像1では,半透明の三次元画像の中に配置する本件マンモスの水平断面像とし,これらの水平断面像を並べる間隔について,本件マンモスの頭蓋骨内にある「エアセル」の構造が見える部分は,当該構造が見やすいように他の部分よりも広い間隔で配置している点,画像のアングルとして,本件マンモスの頭部を正面やや斜め右上の方向から見るアングルを選択している点において,作者の個性が表現されている。とりわけ,全体の色彩を深い青色としている点,色調の明暗について,頭蓋骨内にある「エアセル」の構造が見える部分は青色が濃く暗めの色調としているのに対し,キバの部分は白っぽく明るい色調としている点などにおいても,様々な表現の可能性があり得る中で,美術的又は学術的な観点に基づく特定の選択が行われて,その選択に従った表現が行われ,作者の個性が表現されているということができる。

ウ 本件画像2について

本件画像2は,本件三次元再構築モデルを特定の切断面において切断した画像それ自体とは異なり,2枚の同じ切断画像を素材とし,一方には体表面に当たる部分に茶色の彩色を施し,他方には赤,青,黄の原色によるグラデーションの彩色を施した上で,後者の頭部断面部分のみを切り抜いて前者と合成することによって一つの画像を構成している点において,美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されているものということができる。

加えて,本件画像2では,本件三次元再構築モデルを切断する面として,本件マンモスの頭部の中心ではなく,キバの基部と副鼻腔の双方が断面に現れるように,双方の部位をいずれも通る,中心からややずれた切断面を選択している点においても,作者の個性が表現されている。さらに,白いキバの部分に茶色の濃淡による陰影をつけることによって,キバの立体的形状を表現している点などにおいても,様々な表現の可能性があり得る中で,美術的又は学術的な観点に基づく特定の選択が行われて,その選択に従った表現が行われ,作者の個性が表現されているということができる。

エ 控訴人の主張について

控訴人は,本件各画像における上記の各点について,いずれもありふれた表現方法や画像を見やすくするための技術的調整等にすぎず,本件各画像に創作性を認める根拠とはならない旨主張する。

しかしながら,著作物としての創作性が認められるためには,必ずしも表現の独創性が求められるものではなく,作者の個性が表現されていれば足りるところ,その創作性の判断は,本件各画像における表現の要素を総合してされるべきであり,控訴人の上記主張は採用することができない。

オ 小括

以上の次第であるから,本件各画像は,いずれも,思想又は感情を創作的に表現したものであり,学術又は美術の範囲に属するものであって,著作権法上の著作物に当たるものということができる。

For more information

 

2025年10月28日火曜日

判例/「手続補正書」の著作物性が争点となった事例

 

「手続補正書」の著作物性が争点となった事例

▶平成230427日東京地方裁判所[平成22()35800]

1 争点(1)(本件手続補正書の著作物性)について

(1) 編集著作物としての著作物性

原告は,本件手続補正書[注:原告が実用新案登録出願の願書に添付した明細書及び図面を補正するため特許庁に提出した手続補正書のこと。]は,「ごはん」,「おにぎり」,「ふりかけ」,「具」,「型当て板」の各素材を編集した編集著作物であり,その選択及び配列に創作性が認められると主張する。

しかしながら,編集著作物とは,編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するもの(著作権法12条1項)をいうところ,本件手続補正書は,本件願書に添付した明細書及び図面を補正するために作成されたものであって,「ごはん」,「おにぎり」,「ふりかけ」,「具」,「型当て板」の各用語も,本件明細書の本文中において,使用する器具又は具材を示すものとして通常の意味,方法で用いられているにすぎず,それ以上に,何らかの編集方針に基づいて,上記各用語が編集の対象である素材として選択され又は配列されているとは認められない。したがって,本件手続補正書は編集著作物とは認められない。

原告は,「ごはん」に「型当て板」を当て,「ふりかけ」をかけて「ごはん」に模様を入れる料理法は,本件出願当時,どの料理雑誌にも載っていない初めての料理法であり,当然同料理法の説明書もなかったものであるから,その素材である「ごはん」,「ふりかけ」,「具」,「型当て板」の取捨選択にも個性が表れているし,この料理を作る順序による素材の配列にも個性,独自性が現れているとして,新しい料理法(思想)の説明書(表現)は個性,独自性のある表現であると主張する。

しかし,著作権法上の保護を受ける著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,アイデアや着想がそれ自体として著作権法の保護の対象となるものではなく,この理は編集著作物においても同様である。これを本件についてみると,上記料理法は,御飯に模様を入れる料理法というアイデアそのものであるから,それ自体は著作権法によって保護されるべき対象とはならない。したがって,原告の上記主張は失当というほかない。

以上によれば,本件手続補正書に編集著作物としての著作物性を認めることはできない。

(2) 言語の著作物としての創作性

ア A部分につき

A部分は,本件明細書の「3 考案の詳細な説明」の「例Ⅰ おにぎり(5’)の上に型当て板(1)を当て上からふりかけ,ごま,桜でんぶ,青のり等粒状の具(6)をくりぬき部(2)にうめ込んで型当て板(1)をとりのぞけばおにぎり(5’)に花や動物等の絵や模様や字がえがき出されて美しいおにぎりとなっている。」とある部分である。

原告は,A部分は,原告が独自に考え思い付いたものを説明したものであって,言語による表現で何らかの個性,独自性があり,他人の真似,模倣でないものが言語で表現されている創作的部分である旨主張する。

しかし,A部分は,実施例についての記述であり,実施例に表れた技術的思想や実施例に示された実施方法それ自体は,アイデアであって表現ではないから,それ自体は著作権法によって保護されるべき対象とならないことは上記(1)に説示したところと同様である。

そして,A部分の具体的表現も,①おにぎりの上に型当て板を当て,②上から,ふりかけ,ごま,桜でんぶ,青のり等の粒状の具をくり抜き部に埋め込んで,③型当て板を取り除くと,④おにぎりに花や動物等の絵,模様や,字が描き出されて,⑤美しいおにぎりができあがるということを,一般に使用されるありふれた用語で表現したものにすぎず,表現上の創作性を認めることはできない。

したがって,A部分に言語の著作物としての創作性を認めることはできない。

イ B部分につき

B部分は,本件明細書の「4.図面の簡単な説明」の「1:型当て板」,「5:ごはん」,「6:具」とある部分である。

原告は,B部分における用語の選択は,原告の考えによるもので,個性,独自性がある旨主張する。

しかし,B部分は,明細書中の図面の簡単な説明の部分であって,願書に添付した図面に図示された符号の説明を記載したものにすぎず,その具体的表現にも創作性を認めることはできない。

したがって,B部分に言語の著作物としての創作性を認めることはできない。

ウ C部分につき

C部分は,本件図面のうち第5図~第7図の部分である。

原告は,C部分について,第5図のごはんの上に型当て板を載せた用語の配列,第6図及び第7図のおにぎりの上にふりかけの具による模様入りの配列図に原告の考えによる個性,独自性があり,創作的部分である旨主張する。

しかし,C部分のうち図自体は,言語若しくはそれに類する表現手段による表現がなされているものではないから,そもそも言語の著作物には当たらない。

また,C部分の図について美術又は図形としての著作物性をみても,第5図は「模様を入れている側面透視図」,第6図は「模様入りおにぎりの正面図」,第7図は「模様入りおにぎりの側面図」であって,いずれもおにぎりの上に型当て板が載っている様子又はおにぎりの上に具が載っている様子を正面ないし側面から極めてありふれた手法で図示したにすぎず,何ら個性のある表現とはいえないから,創作性を認めることはできない。

C部分のうち,日本語で「第5図」,「第6図」及び「第7図」と記載されている部分は,単に図の番号を記載したものにすぎず,創作性を認めることはできない。

エ 以上によれば,本件手続補正書のうち原告が言語の著作物として創作性を主張するA部分~C部分は,いずれも創作性を認めることはできず,著作物であると認めることはできない。

For more information

判例/磁石は著作物か

 

磁石は著作物か

▶平成131011日東京地方裁判所八王子支部[平成12()2772]

まず,本件作品がM社の製作している本件磁石の著作権に違反するか否かという点について検討すると,本件磁石は,量産される工業製品であるから著作権法2条1号の「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と認めることはできず,同条の「著作物」に該当しないと解されるので,その再製行為は,そもそも著作権違反の問題になり得ないというべきである。

For more information

判例/創作性の要件(既存の著作物に依拠して作成されたイラストの創作性・二次的著作物性を否定した事例)

 

創作性の要件(既存の著作物に依拠して作成されたイラストの創作性・二次的著作物性を否定した事例)

平成271225日東京地方裁判所[平成27()6058]▶平成28627日知的財産高等裁判所[平成28()10005]

(1) 著作権法による保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることを要する(著作権法2条1項1号)。ここで「創作的に表現した」というためには,当該成果物が,厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でなく,作成者の個性が表れたものであれば足りるというべきであるが,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,既存の著作物と実質的に同一のものを作成したにすぎないものは,既存の著作物の複製物であって,作成者の個性が発揮されたものとはいえないから,創作的な表現とは認められない。

 

[控訴審同旨]

既存の著作物につき,その表現上の本質的な特徴を損なわない限度において,具体的表現に修正,増減,変更等の改変を加えた場合,当該改変により,思想又は感情の創作的な表現が新たに加わり,二次的著作物が創作されるに至っていなければ,それは既存の著作物からの改変があったとしても,「複製」(著作権法2条1項15号)であると評価されるところ,以上によれば,本件イラストとNALシステム構成図の相違点の全てを考慮に入れてもなお,本件イラストにおいて,NALシステム構成図の表現上の本質的な特徴が損なわれたとはいえず,また,後記のとおり,思想又は感情の創作的な表現が新たに加わり,二次的著作物が創作されるに至ったとも認められないから,本件イラストにおいて,NALシステム構成図との同一性は失われていないと認められる。

()

以上によれば,本件イラストは,控訴人の原著作物とは認められない。

また,本件イラストは,NALシステム構成図に,思想又は感情の創作的表現が新たに加わったものとは評価できないのであって,控訴人の二次的著作物とも認められない。

   For more information

2025年9月22日月曜日

判例/インターネット展示システムは著作物に当たるか

 

インターネット展示システムは著作物に当たるか

令和31111日大阪地方裁判所[平成31()2534]▶令和4713日知的財産高等裁判所[令和4()10023]

ア 著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法2条1項1号)。したがって,著作物といえるためには,思想又は感情を表現したものであること,その表現に創作性があること,文学,学術,美術又は音楽の範囲に属するものであることを要する。

イ 前提事実(等)によれば,原告は,旧展示システムからの移行として本件展示システムを構築するに当たり,本件購入契約及び本件構築契約に基づき,本件展示システムの機能を実現するために必要な機能を選定し,性能,セキュリティ対策ないし費用等の面から必要かつ最適と考えるサーバ機器及びネットワーク機器等を,その組合せも踏まえた上で選定し,各機能等を分担させて本件展示システムを構築することとして,本件サーバ設計書を【作成し】,これに基づき,本件展示システムを構築したことが認められる。

【その上で、控訴人は、本件展示システム全体に著作物性があるとして、システムの機能を実現するための設計・構築については、控訴人による選択の幅が広く、どのようなソフトウェアやハードウェアを用い、それらをどのような構成で組み合わせ、どのように機能分担させるかに関する選択(必要機能の選定、機能分割設計、分割した機能単位の配置計画という設計行為)は、控訴人の技術者としての知識や経験が表出したものであるから、思想又は感情の創作的な表現である旨を主張する。

しかし、本件展示システムについて求められる機能のほか、基本的な構成やその構築に当たっての要件等は、本件購入仕様書及び本件構築仕様書において相応に具体的に定められており、控訴人による選択は、あくまでそれらの制約の中で行われるものである。また、本件展示システムは、公営の自然保護センターである本件センター[注:被告の運営する福井県自然保護センターのこと]における展示のためのインターネットに接続されるシステムであり、その性質上、システムの設計・構成については、あくまで円滑かつ安定した展示に資するとともにセキュリティ対策についても必要十分なものとするといった、その実用品としての機能を発揮させるべく、専ら技術的観点から行われるものと考えられる。

そして、設計され構築される本件展示システムは、実用的な工業製品である個々のハードウェアやその設定、ハードウェア間やインターネットとの間の接続、ソフトウェアといった個別的な要素の集合体として構成され、またそのような集合体として通常は観念されるもので、その全体が一まとまりに表現されたものとして存在するものともいい難い(なお、本件において、例えば、本件展示システム自体が本件センターにおける展示対象に含まれており、それゆえ上記の個別的な要素の集合体にすぎないものを超えて、一まとまりに表現されたものとなっているなどといった事情も認められない。)。

上記の点を考慮すると、控訴人が主張する本件展示システムの設計・構築に当たっての選択は、基本的に、上記の制約等の下で特定の機能を果たすべきシステムの設計・構築を合理的に行おうとした際に考え得る技術上のアイディア又は個々のアイディアの集合体にすぎず、法2条1項1号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」には当たらないというべきである。そして、本件全証拠をもってしても、本件展示システムについて、上記と異なって、控訴人の思想又は感情が創作的に表現されているといえるような特徴を有するものであるというべき事情は認められない。】

For more information

2025年9月11日木曜日

判例/“額に汗”の法理(企業情報の編集著作物性を否定した事例)

額に汗の法理(企業情報の編集著作物性を否定した事例)

平成220127日東京地方裁判所[平成20()32148]

1 争点(1)(原告各図表が編集著作物といえるか)について

()

(10) 原告の主張について

原告は,原告各図表が,原告が長年の実績と経験を基に相当の労力を費やして初めて取得することができるデータを,原告が独自の創意工夫を凝らして編集して作成したものであるから,編集著作物に該当すると主張する。

しかしながら,原告は,原告が編集著作物と主張する原告各図表に凝らしたとする「素材の選択又は配列」についての「独自の創意工夫」の具体的な内容について,主張立証するものでなく,前記(1)ないし(9)において認定したとおり,原告各図表と同様の素材を選択し,原告各図表と同様の配列をした図表は,従前から数多く存在していることが認められる。そうすると,当該データの収集に相当の労力を要したり困難性が認められるか否かはさておくとしても,原告各図表自体は,いずれもありふれた一般的な素材を選択し,一般的な配列をしたものにすぎないといわざるを得ず,これらが編集著作物であると認めることはできない。

したがって,原告の前記主張は,採用することができない。

なお,原告は,原告各図表で使用したデータが,収集に相当な労力を伴うものであり,たやすく収集できるものではない旨るる主張するところ,仮に,編集著作物における素材それ自体に価値が認められたり,素材の収集に労力を要するものであったとしても,素材それ自体が著作物として保護されるような場合を除き,それらの素材や労力が著作権法により保護されるものではない。したがって,仮に,原告がデータの収集に相当の労力を費やし,その保有するデータに一定の価値を認め得るものであるとしても,当該データ自体に著作物性が認められるものでない以上,それらの労力やデータが,原告各図表の編集著作物としての著作物性を根拠付けるものとはなり得ず,原告の前記主張は,失当である。 

For more information

2025年8月30日土曜日

判例/編み物の編み目(スティッチ)は著作物に当たるか

 

編み物の編み目(スティッチ)は著作物に当たるか

令和41014日大阪高等裁判所[令和4()265]

編み物の編み目(スティッチ)は、毛糸によって小物又は衣類を作成するに当たっての技法のアイデア又はその技法により毛糸が編まれた編み物の最小構成単位にとどまるものであって、思想又は感情の表現とは認められないから、それ自体を著作物と認めることはできず(知的財産高等裁判所平成24年4月25日判決参照)、控訴人Bがこれを控訴人動画で紹介していたとしても同控訴人が著作権を有するということはできない。

[参考]

平成24425日知的財産高等裁判所[平成24()10004]

当裁判所も,「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される原判決図面記載の構成は,表現ではなく,そのような構成を有する衣服を作成する抽象的な構想又はアイデアにとどまるものと解されるから,上記構成を根拠として原告編み物に著作物性を認めることはできず,原告編み図についても著作物性を認めることはできないと判断する。

For more information

判例/編み物・編み図の著作物性

 

編み物・編み図の著作物性

▶平成231226日東京地方裁判所[平成22()39994]▶平成24425日知的財産高等裁判所[平成24()10004]

以上を前提に,原告編み物の著作物性について検討する。

ア 著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品等に思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表現上の創作性がないものについては,著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。

イ そこで検討すると,原告は,原告編み物について,いずれも「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される別紙図面記載の構成(本件構成)を有するものであって,この点に創作性が存在すると主張するものであるところ,確かに,前記でみたとおり,原告編み物は,Aモチーフの中心部分で編み目の方向が変わるとともに,寄せ目部分で編み目が重なることにより編み目が直線状に浮き上がって見え,この線が,原告の主張する別紙図面記載のAの線として看取できるものとなっており,また,隣接するA,B,Cモチーフをそれぞれ異なる色とすることにより,モチーフ同士のとじ目を境として両側の色が異なるものとなり,その境界部分がB又はCの線として看取できるものとなっていることが認められる(なお,原告は,Bの線について,Aモチーフをパッチワークのように円環的にとじ合わせることにより,別紙図面記載Bの線をとじ目として見て取ることができるようになると主張するが,A,B,Cモチーフはいずれもメリヤス編みによって作成されており,これらを同色によって作成してとじ合わせた場合には,とじ目は目立たないものとなることが認められるので,B又はCの線がとじ目として表現されているものとはみることができず,この点に関する原告の上記主張を採用することはできない。)。

そうすると,原告編み物は,前記認定のとおり,編み目の方向の変化,編み目の重なりなどにより,線を浮き上がらせることによってAの線を表現し,かつ,隣接する各モチーフの色を異なるものとすることによってB,Cの線を表現しているものであり,編み地が平面的で均一なものであることなどと相まって,A,B,Cの線で構成される直角三角形の形状を強調し,全体として,直角三角形をパズルのごとく組み合わせたような面白さや斬新な印象を表現しようとしたものと認められるのであって,原告編み物においては,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択,編み地の選択等の点が,その表現を基礎付ける具体的構成となっているものということができる。そうすると,原告編み物は,これらの具体的構成によって,上記の思想又は感情を表現しようとしたものであって,これらの具体的構成を捨象した,「線」から成る本件構成は,表現それ自体ではなく,そのような構成を有する衣服を作成するという抽象的な構想又はアイデアにとどまるものというべきである。

(略)

以上を前提に,原告編み図の著作物性について検討する。

ア 当該作品等が著作物に該当するものとして著作権法による保護の対象となるためには,当該作品に思想又は感情が創作的に表現されていることを要し,思想,感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの又は表現上の創作性がないものについては著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならないところ,原告は,前記に係る原告編み図の各表示のうち,本件構成を表示した部分に著作物性があると主張しているものであって,前記でみた原告編み図の表示のうち,2枚目に記載された展開図について,原告編み図の【著作物性】があると主張するものと解される。

イ 原告は,原告編み図には衣服のデザインとして本件構成が表現されているのであって,この点に原告編み物と同様に著作物性が認められるべきであると主張するが,争点(1)アに関する判断でみたとおり,本件構成自体は,そのような形の衣服を作成するという抽象的な思想又はアイデアにすぎず,上記思想又はアイデアを編み物として具現化する過程において,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択等によって具体的表現となるに至るものであるから,原告編み図に本件構成が表示されている点は,思想又はアイデアを表示したにとどまるものというべきであり,この点をもって,原告編み図に著作物性を認めることはできない。

 

[控訴審同旨]

当裁判所も,「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される原判決図面記載の構成は,表現ではなく,そのような構成を有する衣服を作成する抽象的な構想又はアイデアにとどまるものと解されるから,上記構成を根拠として原告編み物に著作物性を認めることはできず,原告編み図についても著作物性を認めることはできないと判断する。(中略)

なお,上記構成におけるB線をとじ目として見て取ることができるとしても,原告編み物においては,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択,編み地の選択等の点が,その表現を基礎付ける具体的構成となっているということができるのであって,これらの具体的構成を捨象した「線」から成る上記構成は,そのような構成を有する衣服を作成する場合の構想又はアイデアにとどまり,著作物性の根拠となるものではないことに変わりはないというべきである。

For more information

判例/著作物に「情報としての価値」や「芸術性」は必要か

 

著作物に「情報としての価値」や「芸術性」は必要か

平成140415日東京地方裁判所[平成13()22066]

言語の作品について,情報としての価値があるか否かは,思想及び感情の創作的表現であるか否かの判断に影響を与えるものということはできない(。)

令和4915日東京地方裁判所[令和4()14375]

著作物性が認められるためには、思想又は感情が創作的に表現されていれば足り、必ずしも当該表現に芸術性が備わっている必要はない。

For more information

2025年8月21日木曜日

判例/総選挙の当落予想表の著作物性を認めた事例

 

総選挙の当落予想表の著作物性を認めた事例

▶昭和6133日東京地方裁判所[昭和58()747]▶昭和620219日東京高等裁判所[昭和61()833]

二 原告原稿[注:来るべき総選挙において全国130選挙区より立候補を予定している者の名簿に、当落の予想をして、○は当選圏内、△は当落線上より上、▲は当落線上より下との意味で、○△▲の符号を付した原稿のこと]が原告著作にかかる著作物といえるかについて検討する。

原告原稿が著作物といえるためには、そのものが思想又は感情を創作的に表現したものであること、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであることが必要である(著作権法第2条第1項第1号)ところ、「思想又は感情」とは、人間の精神活動全般を指すものと解され、「創作性」は、厳格な意味で独創性とは異り、著作物の外部的表現形式に著作者の個性が現われていれば十分であると解され、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属す」というのも、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものと解するのが相当である。

そうすると、成立に争いのない(証拠等)によると、原告原稿は、各立候補予定者氏名上に、個別に、当選圏内、当落線上より上、当落線上より下なる同種記載を繰り返す煩雑さを避け、表現の簡略化のために、符号を付したものであり、原告の、知的精神活動の所産と解され、その表現形式に原告の個性が現われていると認められるから、原告著作にかかる著作物ということができる。

 

[控訴審]

二 まず、控訴人原稿が控訴人著作にかかる著作物といえるか否かについて検討する。

控訴人原稿が著作物といえるためには、それが「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要である(著作権法第2条第1項第1号)ところ、「思想又は感情」とは、人間の精神活動全般を指し、「創作的に表現したもの」とは、厳格な意味での独創性があるとか他に類例がないとかが要求されているわけではなく、「思想又は感情」の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現われていれば足り、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」というのも、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものと解するのが相当である。

本件についてこれをみるに、成立に争いのない(証拠等)によれば、控訴人は、株式会社政治広報センター(以下「政治広報センター」という。)発行、控訴人編著の「政治ハンドブツク」(昭和571月版)に記載されている、昭和55622日に施行された第36回総選挙(衆議院議員)の結果分析(立候補者ごとの得票数、得票率、得票増減等)や政治広報センター備付のコンピユータによる判断結果を参考にし、控訴人自身の政治評論家としての知識、経験に基づいて、総選挙の立候補予定者につき当落の予想をしたが、立候補予定者名簿に、個別に、当選圏内、当落線上より上、当落線上より下という、同種の記載を繰り返す煩雑さを避け、表現の簡略化のために○△▲の符号を付し、また、○の符号については「1」、△の符号については「1マイナス1」、▲の符号については「0プラス1」として換算し(したがつて、△と▲の合計が1となる。)、右により換算したものの和が各選挙区の定員数と同一となるように(ただし、宮城二区、山形二区、兵庫三区を除く。)、右各符号を付して控訴人原稿を完成したものであることが認められ、右認定事実によれば、控訴人原稿は、国政レベルにおける政治動向の一環としての総選挙の結果予測を立候補予定者の当落という局面から記述したもので、一つの知的精神活動の所産ということができ、しかもそこに表現されたものには控訴人の個性が現われていることは明らかであるから、控訴人の著作に係る著作物であると認めるのが相当である。

For more information

2025年8月14日木曜日

判例/万年歴(万年カレンダー)は著作物か

 

万年歴(万年カレンダー)は著作物か

▶昭和590126日大阪地方裁判所[昭和55()2009]

本件カレンダーの万年暦と索引表の組合わせ、左右に暦年を配し、上段に各月を配し、その交点に長方形の色彩を配する万年暦の構成は、回転型式やスライド型式で既知のものとなつている万年暦の構想を、索引表と標識体の組合わせによるカレンダー方式に置き換えただけのものであつて、右既知の万年暦の思想を伝達するものとして特に学術的な創作的表現といい得るかどうかには、それが実用新案法上、新規な考案として認め得るにしても、いまだちゆうちよを覚える。

のみならず、本件カレンダーの構成は、本件考案が実施された結果の具体的表現形態そのものであり、本件カレンダーは結局のところ本件考案の一実施例品というべきものである。そうだとすると、考案を考案それ自体として実用化した作品は、たとえその考案が学術的なものであり、新規独創性を有するにせよ、単なる実用品であつて当該思想(考案)を「創作的に表現する」著作物には該らない(考案の内容を説明するための記述や図表は学術思想の表現として著作物性を有するが、考案の実施である作品そのものには著作物性がない)ものと解すべきである。

For more information

判例/実用品(工業製品)は著作物か

 

実用品(工業製品)は著作物か

令和3629日知的財産高等裁判所[令和3()10024]

本件商品のような実用に供される工業製品であっても,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合には,著作権法2条1項1号の「美術」の著作物として,著作物性を有するものと解される。しかし,そのような美的特性を備えていると認められない場合には,著作物性を有することはないものと解される。以上の点は,著作権法に明文の規定があるものではないが,実用に供される工業製品は,意匠法によって保護されるものであり,意匠法と著作権法との保護の要件,期間,態様等の違いを考えると,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合はともかく,そうでない場合は,著作権法ではなく,もっぱら意匠法の規律に服すると解することが,我が国の知的財産法全体の法体系に照らし相当であると解されるからである。これに反する控訴人の主張を採用することはできない。

▶平成131011日東京地方裁判所[平成12()2772]

本件磁石は,量産される工業製品であるから著作権法21号の「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と認めることはできず,同条の「著作物」に該当しないと解されるので,その再製行為は,そもそも著作権違反の問題になり得ないというべきである。

For more information

2025年7月27日日曜日

判例/ある法律問題についての見解(それ自体)は著作物か

 

ある法律問題についての見解(それ自体)は著作物か

▶平成27130日東京地方裁判所[平成25()22400]

ある法律問題についての見解や手続における留意事項自体は著作権法上保護されるべき表現とはいえず,これと同じ見解を表明することや手続における留意点を表記することが著作権法上禁止されるいわれはない(。)

For more information

判例/「歴史」に関する著作物性

 

「歴史」に関する著作物性

平成261219日東京地方裁判所[平成25()9673]▶平成27910日知的財産高等裁判所[平成27()10009]

… 歴史上の事実や歴史上の人物に関する事実は,単なる事実にすぎないから,著作権法の保護の対象とならず,また,歴史上の事実等についての見解や歴史観といったものも,それ自体は思想又はアイデアであるから,同様に著作権法の保護の対象とはならないというべきである。他方,歴史上の事実等に関する記述であっても,その事実の選択や配列,あるいは歴史上の位置付け等において創作性が発揮されているものや,歴史上の事実又はそれについての見解や歴史観をその具体的記述において創作的に表現したものについては,著作権法の保護が及ぶことがあるといえる。

 

[控訴審]

歴史上の事実又は歴史上の人物に関する事実(歴史的事項)の記述であっても,その事実の選択や配列,あるいは歴史上の位置付け等において創作性が発揮されているものや,歴史上の事実等又はそれについての見解や歴史観をその具体的記述において創作的に表現したものについては,著作権法の保護が及ぶことがある。

For more information

2025年7月16日水曜日

判例/”額に汗”の法理

 

”額に汗”の法理

平成261224日 東京地方裁判所[平成26()4088]

思想又は感情の創作的な表現というためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表現されたもので足りると解すべきであるが,事実若しくは事件それ自体など思想又は感情でない部分,思想,感情若しくはアイデアなど表現でない部分又は表現であっても他の表現をする余地が小さく若しくは表現がありふれたものであるなど表現上の創作性がない部分は,いかに思想への想到若しくは事実の発見などに多大な労力を要し,又は思想として独創的なものであろうと,思想又は感情の創作的な表現たり得るものではない。

この点,原告は,本件三文献の解読及び分析に20年の歳月を費やして本件問答集を完成させたこと,従前は類書が存在せず,本件解題に記載された分析も原告が初めてなしたものであること等を,創作的表現の根拠として主張するが,上記のとおり,著作権法は,学術的な思想や発見それ自体を保護するものではないから,本件三文献の解読及び分析に多大な労力を費やしたこと及びそれが原告によって初めてなされたことそれ自体が,著作権法によって保護される創作的表現となるものではない。むしろ,本件解題のように,史料を分析して歴史的な事実を明らかにしようとする場合,個々の分析結果は,他の方法により表現する余地が小さく,学術的な思想ないし発見された事実それ自体であって,創作的表現とならないことが多いというべきである。

For more information

判例/”額に汗”の法理

 

”額に汗”の法理

▶平成60218日東京地方裁判所[平成4()2085]

報道すべき主題の発見、取材源の探知、素材の収集は著作権による保護の対象ではないから、それがいかに苦心して発見、探知、収集されたものであっても、既に報道された新聞記事によってその記事が主題とした事項や取材源を知り、その取材源から同様の素材を収集し、その結果、元の記事と同様の事実を含む記事が作成されたとしても、元の記事の著作権を侵害するものとはいえない。

For more information

判例/CGで作成した作品の著作物性

 

CGで作成した作品の著作物性

平成151218日大阪地方裁判所[平成14()8277]

() 本件で問題となった「原告作品」は、原告が被告専門学校に学生として在籍中、同校の実習設備を用いてコンピュータグラフィックス(「CG」)で作成した次の作品である。

「原告作品①」…人間型のロボットが佇立した姿勢のまま、右腕を肩の高さまで持ち上げた後、その前腕部分が分離し、ロケット噴射しながら飛び出していくという情景を描いたもの

「原告作品②」…軍用ヘリコプターが洋上を飛行中に爆発する情景を描いたもの

「原告作品③」…戦闘機を描いたもの

 

イ 請求原因(2)イ(著作物)について検討する。

() 著作権法により保護される著作物であるというためには、思想又は感情を創作的に表現したものでなければならない(著作権法2条1項1号)。

思想又は感情を表現するとは、単なる事実にとどまらず、精神的な活動の成果を表現することを意味し、また、創作的に表現するとは、必ずしも独創性が高いことを要せず、作成者の何らかの個性が表現されていることを意味するというべきである。

() そこで、原告作品①ないし③につき、それぞれ、著作物と認められるかについて検討する。

a 原告作品①

原告作品①は、前記のとおり、人間型のロボットが佇立した姿勢のまま、右腕を肩の高さまで持ち上げた後、その前腕部分が分離し、ロケット噴射しながら飛び出していくという情景を描いたものである。

(証拠等)によれば、ロボットの形状は、原告が考えて作成し、ロボットの表面の質感や火花の出方も、原告が条件を設定して作成したことが認められ、それらの点に原告の精神的活動の成果が表現されており、また、そこに原告の個性の発現としての創作性が認められる。

人間型のロボットが従前から存在し、人間型のロボットが佇立した姿勢のまま、右腕を肩の高さまで持ち上げた後、その前腕部分が分離し、ロケット噴射しながら飛び出していくという情景を描いたアニメーションなどが従前存在したとしても、従前存在したものの中に、原告作品①のロボットの形状や質感、火花の出方などが同一のものが存在することを認め得る証拠はないから、それらのアニメーションなどが従前存在したことによって原告作品①が原告の著作物であることが否定されることはないというべきである。

また、前腕が発射される際の噴射火炎が、CG作成用ソフトウェアであるエイリアス・パワーアニメーターの機能のうち、ダイナミックス機能でパーティクルエフェクトを実行したことにより作成されたとしても、(証拠等)によれば、その機能を実行するに当たっての条件の設定は原告が行ったものと認められる。

したがって、原告作品①は原告の著作物であると認められる。(証拠等)のうち、この認定に反する部分は、採用することができない。

b 原告作品②

原告作品②は、前記のとおり、軍用ヘリコプターが洋上を飛行中に爆発する情景を描いたものである。

(証拠等)によれば、海面とヘリコプターを組み合わせることは原告が考えたこと、ヘリコプターの原型は、無料で使用できるサンプルデータ中にあったものであるが、燃料タンク部分のデータを削除しないと着色ができないというバグがあったので、原告が燃料タンク部分を削除して形状を補正したこと、ヘリコプターの着色、質感、爆発の時の煙の量や流れ方の様子、海面の質感は、原告が条件を設定して作成したことが認められ、それらの点に原告の精神的活動の成果が表現されており、また、そこに原告の個性の発現としての創作性が認められる。

したがって、原告作品②は原告の著作物であると認められる。(証拠等)のうち、この認定に反する部分は、採用することができない。

c 原告作品③

原告作品③は、前記のとおり、戦闘機を描いたものである。

(証拠等)によれば、原告作品③は、実在する戦闘機の遠距離から撮影した3枚の写真を基に、原告が、写真に撮影されていない部分の図面を作成するなどして戦闘機の形状を作成し、質感、光の当たる様子を、原告が条件を設定して作成したことが認められ、それらの点に原告の精神的活動の成果が表現されており、また、そこに原告の個性の発現としての創作性が認められる。

したがって、原告作品③は原告の著作物であると認められる。(証拠等)のうち、この認定に反する部分は、採用することができない。

For more information

判例/著作物に求められる「創作性」とは

 

著作物に求められる「創作性」とは

▶令和3114日大阪高等裁判所[令和1()1735]

ある表現物が著作物として同法上の保護を受けるためには,「思想又は感情を創作的に表現したもの」でなければならない。第1に,思想又は感情自体ではなく「表現したもの」でなければならないということであり,第2に,「創作的に表現したもの」でなければならないということである。そして,創作性があるといえるためには,当該表現に高い独創性があることまでは必要ないものの,創作者の何らかの個性が発揮されたものであることを要する。

表現がありふれたものである場合,当該表現は,創作者の個性が発揮されたものとはいえず,「創作的」な表現ということはできない。また,ある思想ないしアイデアの表現方法がただ1つしか存在しない場合,あるいは,1つでなくとも相当程度に限定されている場合には,その思想ないしアイデアに基づく表現は,誰が表現しても同じか類似したものにならざるを得ないから,当該表現には創作性を認め難い。

For more information

判例/著作物に求められる「創作性」とは

 

著作物に求められる「創作性」とは

▶平成141029日東京高等裁判所[平成14()2887]

著作物と認めるためのものとして要求すべき「創作性」の程度については,例えば,これを独創性ないし創造性があることというように高度のものとして解釈すると,著作権による保護の範囲を不当に限定することになりかねず,表現の保護のために不十分であり,さらに,創作性の程度は,正確な客観的判定には極めてなじみにくいものであるから,必要な程度に達しているか否かにつき,判断者によって判断が分かれ,結論が恣意的になるおそれが大きい。このような点を考慮するならば,著作物性が認められるための創作性の要件は厳格に解釈すべきではなく,むしろ,表現者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りるという程度に,緩やかに解釈し,具体的な著作物性の判断に当たっては,決まり文句による時候のあいさつなど,創作性がないことが明らかである場合を除いては,著作物性を認める方向で判断するのが相当である。

For more information

2025年7月14日月曜日

判例/運動トレーニング方法に関する独創的な理論は保護されるか

 

運動トレーニング方法に関する独創的な理論は保護されるか

▶平成17712日大阪地方裁判所[平成16()5130]▶平成180426日大阪高等裁判所[平成17()2410]

本件において原告Aは,「初動負荷」,「終動負荷」という表現が,自己の創作した著作物であると主張する。

同原告の主張によれば,「初動負荷」とは,「その運動の主動筋を最大限に伸長させたポジション(すなわち,その動作の開始時)において負荷を与えた後,その負荷を適切に漸減することで,主動筋の「弛緩→伸長→短縮」の一連過程を促進させると共に,主動筋活動時に,その拮抗筋並びに拮抗的に作用する筋の収縮(共縮)を防ぎながら行う運動・トレーニング方法」の名称として同原告が創作したものであり,「終動負荷」とは,「動作中筋出力が維持され,あるいは高くなるが,同原告は,このような動作終了に向けて負荷が継続ないし徐々に増加するような筋の活動様式による運動・トレーニング方法」の名称として創作したものである。

しかしながら,まず,このような運動・トレーニング方法に関する理論を原告が独創し,その名称を創作したものであるとしても,著作物性は具体的な表現について認められるものであり,理論について認められるものではないから,理論が独創的であるからといって,直ちにその名称に著作物性が認められるわけではない。

 

[控訴審同旨]

自然科学論文における著作者の独創にかかる思想内容については,学問は先人の思想,発見をもとにして発展して行くものであり,その利用を禁止することは文化の発展を阻害することになるから,抽象的な理論体系,思想内容については,アイデアや事実など表現それ自体ではない部分に該当するものと解するのが相当である。

For more information