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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<美術著作物> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年11月21日金曜日

判例/同じ性描写が要素の文章とイラストの侵害性が争われた事例

 

同じ性描写が要素の文章とイラストの侵害性が争われた事例

▶令和3330日東京地方裁判所[令和1()30833]▶令和3930日知的財産高等裁判所[令和3()10036]

[控訴審]

1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 控訴人の当審における補充主張について

(1) 被告イラストが原告文章の翻案に当たるとの点について

既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案に当たらないことは引用する原判決が説示するとおりである。

本件についてみると,被告イラストは,原告文章と同じく,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,身長差のある同性の2人が,壁に掴まりながら特定の体位で性交渉を行うという描写において,原告文章と同一性を有するにとどまるものであり,こうした描写自体は,アイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分である。

そうすると,原告文章を全体として見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり,被告イラストは,原告文章のうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告文章の翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。

()

(2) 被告文章が原告イラストの翻案に当たるとの点について

被告文章は,原作である「ONE PIECE」に登場するキャラクターの設定に依拠して,原作に登場する2人の人物が性交渉後に,身長の低く若い人物(ルフィ)が失禁したと勘違いし,動揺をしている描写設定において,原告イラストと同一性を有するに止まり,こうした描写設定は,同性間の性交渉を描写するに当たってのアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性があるとはいえない部分である。そうすると,原告イラストを全体として見た場合に一定の創作性が認められる余地があるとしても,前述のとおり,被告文章は,原告イラストのうちアイデアないし着想にすぎないか,表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないのであるから,原告イラストの翻案に当たるものでないことは明らかというべきである。

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2025年11月19日水曜日

判例/猫のイラスト(丸まって眠っている猫を上方から描いたもの)の著作物性が問題となった事例

 

猫のイラスト(丸まって眠っている猫を上方から描いたもの)の著作物性が問題となった事例

平成31418日大阪地方裁判所[平成28()8552]

原告イラストは,丸まって眠っている猫を上方から描くに当たり,円形状の上部に配された猫の顔のあごの下から片前足を出して,その片前足を片後ろ足や尻尾とほぼ同じ場所でまとめて描くことによって,ほぼ全体を略円形状の輪郭の中に収める一方で,輪郭より外の部分等は描いていないため,全体が一個のマーク(原告は家紋と表現する。)であるかのような印象を与える。

原告イラストの基本的輪郭は円形状であるが,耳や片後ろ足が円から若干突出して描かれているほか,猫の後頭部から肩にかけての部位は若干ふくらむように描かれ,機械的な真円ではないことから,猫がきれいに丸まっているという基本的な印象を維持しつつも,柔らかく自然な印象を与える。

略円形状の上半分には,猫の頭部,片前足,片後ろ足及び尻尾が猫と分かるように描かれているのに対し,略円形状の下半分は,雲を想わせる抽象的な紋様となっているところ,略円形状の輪郭に沿って右回りにたどると,猫の顔や首の白黒の模様が徐々に変化して雲を想わせる紋様となり,さらにたどると,猫の片後ろ足と尻尾になるという形で連続的に変化しており,また,猫の片前足の付け根は渦巻状になっているが,これを白黒反転させた紋様が下半分の雲を想わせる紋様の中に三個存在するため,全体として,猫を描いた部分と抽象的な紋様の部分とが,うまく一体化している。

(略)

原告イラストは,前記で述べたとおり,表現上の特徴を有するところ,これらはありふれたものということはできず,創作性が認められるから,原告イラストは,原告がこれを作成した時点で,美術の著作物として創作されたものと認められる。

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判例/ウサギを擬人化したキャラクターのイラスト・動画の著作物性を認定した事例

 

ウサギを擬人化したキャラクターのイラスト・動画の著作物性を認定した事例

▶令和539日知的財産高等裁判所[令和4()10100]

2 争点1(本件ツイートの投稿により控訴人の権利が侵害されたことが明らかであるか)について

(1) 控訴人イラストの著作物性

ア 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいうところ(著作権法2条1項1号)、思想又は感情を創作的に表現したものであるといえるためには、創作者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りると解するのが相当である。

イ これを本件についてみるに、証拠によると、控訴人イラストは、控訴人キャラクターのイラストであるところ、頭頂部からウサギの耳のような形状の耳が生え、左側頭部の三つ編みの上部、右側頭部の三つ編みの下部及び左腰部のポケットにそれぞれにんじんが1本ずつ挟まり、首元にウサギを模したマフラーないしショールを身につけているなど、ウサギを擬人化したような特徴的なデザインとなっているものと認められる。そうすると、控訴人イラストは、創作者の個性が発揮されているということができるから、思想又は感情を創作的に表現したものに該当する。なお、控訴人イラストが美術の範囲に属するものであることは、その内容に照らし、明らかである。

以上のとおりであるから、控訴人イラストは、著作物に該当する。

(2) 控訴人動画の著作物性

証拠及び弁論の全趣旨によると、控訴人動画は、控訴人イラストを映像化したものであると認められるところ、前記(1)において説示したところに照らすと、控訴人動画も、著作物に該当するといえる。

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2025年11月17日月曜日

判例/アルファベット文字を装飾したものの創作性及び侵害性を否定した事例/店舗に使用するピクトグラムの侵害性を否定した事例

 

アルファベット文字を装飾したものの創作性及び侵害性を否定した事例/店舗に使用するピクトグラムの侵害性を否定した事例

令和元年521日東京地方裁判所[平成29()37350]▶令和元年1023日知的財産高等裁判所[令和1()10045]

そこで,これらが,反訴原告の著作権を侵害するものであるかについて検討する。

イ 反訴被告標章1,2及び5の作成,使用等によって,反訴原告標章1,2及び5についての反訴原告の複製権又は翻案権が侵害されるか否かを検討するため,反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分についてみると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「OFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くような装飾が施されていることなどで共通している。

アルファベット文字について著作物性を肯定するためには,その文字自体が鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていなければならないと解するのが相当である。反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字が反訴被告の店舗で使用等をするために様々な工夫を凝らしたものであることは反訴原告が主張するとおりであるとしても,それらの工夫による反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するも のであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,いずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれたものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。

したがって,反訴原告標章1と反訴被告標章1は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても,反訴被告標章1を作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえない。また,上記と同様の理由から,反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。

ウ 反訴被告ピクトグラムの作成,使用等により反訴原告ピクトグラムについての反訴原告の著作権が侵害されるか否かを検討するため,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムが同一性を有する部分についてみると,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そして,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表現が異なる反訴原告ピクトグラム4-01ないし4-03及び反訴被告ピクトグラム4-01ないし4-03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれを表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表している点において共通するにとどまるといえるものである。また,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度,複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これらは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得るありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。また,反訴原告ピクトグラム4-01ないし4-03及び反訴被告ピクトグラム4-01ないし4-03におけるTシャツの形状は概ね同じであるが,これらは極めてありふれたTシャツの形状であり,その形状についての表現に創作性があるとは認められない。

これらを考慮すると,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著作物であるとしても,反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではない。

[控訴審同旨]

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2025年9月30日火曜日

判例/セリフ付の4コマ漫画の侵害性を認定した(適法引用性を否定した)事例

 

セリフ付の4コマ漫画の侵害性を認定した(適法引用性を否定した)事例

令和4721日東京地方裁判所[令和3()32178]

4 争点3(「複製」及び「公衆送信」該当性)について

本件漫画は、作者の分身とされる漫画家のキャラクターがゲームキャラクターの二次創 作に関する主張を展開する「ウマ娘ぜんぜん知らないマンガ家。」と題する4コマ漫画であり、その図柄、背景、吹き出しの配置等は別紙著作物目録のとおりである。また、登場キャラクターによる具体的なセリフは次のとおりである。

「はいどうもー」、「以前は『(省略)』を名のってましたが今は『(省略)』を名のっております(省略)でーす/もちろんペンネームです」、「なんかさー」、「ウマ娘の二次創作ってややこしいことになってんだって?/エロがダメとか/でその理由が/馬主が怒るから?」、「はあ?」、「何素直に言うこと聞いてんだエロ絵描き!!!!」、「これまで公式とか一切ムシしてエロを描いてきたんだろが!!/それが?」、「馬主に怒られるからやめる?/おめーらのリビドーは相手の強さで出し入れすんのかよ」

これらのセリフは、原告が、ゲームキャラクターの二次創作に関する自己の主張を独特の言い回しないし言葉遣い等を選択して表現したものと認められ、本件漫画の表現上の本質的特徴を直接感得させる部分をなすものといえる。

他方、投稿画像1は、本件漫画の構成要素のうち概ねキャラクターの顔部分にのみモザイク処理が施されたものであって、本件漫画と対比すると、キャラクターの表情等は認識できないようになっているが、それ以外のセリフ部分等は、本件漫画の表現がそのまま残されていることが認められる。上記のとおり、本件漫画のセリフ部分は本件漫画の表現上の本質的特徴を直接感得させる部分をなすものであるから、これらを全て表示している以上、投稿画像1は、本件漫画の表現上の本質的特徴を直接感得させるものであり、本件漫画との実質的同一性をなお失っていないものといえる。

そうすると、本件投稿1のインターネット上への掲載は、本件漫画の「複製」及び「公衆送信」(自動公衆送信)に該当する。

したがって、本件投稿1は、原告の本件漫画に係る著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものといえる。これに反する被告 KDDI の主張は採用できない。

5 争点4引用としての適法性)について

著作物を引用した利用が適法といえるためには、引用が、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない(著作権法321項後段)。

前提事実のとおり、本件投稿1は、本文として、「この漫画家崩れに関しては wiki 付けて周知してもらった方が良いと思うよ/しかし成長しないね、絵も中身も/#a」などと記載しているものである。この内容に鑑みると、本件投稿者が本件投稿1に投稿画像1を添付した目的は、本件漫画を批評するに当たって実際に本件漫画の内容を示すことにあったことがうかがわれる。

しかし、本件投稿1の本文のうち本件漫画の内容に具体的に言及する部分は、「しかし成長しないね、絵も中身も」というわずか15文字の簡単かつ概括的な感想のみである(なお、本件投稿1に連続する本件投稿者による投稿も見当たらない。)。そうすると、ツイッターが短文投稿サイトであることを考慮しても、本件投稿1において、投稿画像1全体を画像として添付する必要性があったとはいい難い。また、投稿画像1は、キャラクターの顔部分(本件漫画全体の面積に占める割合は4分の1程度である。)にモザイク処理が施されているものの、それ以外の部分は、セリフ部分を含めて本件漫画の表現がほぼそのまま表示されている。しかも、本件投稿1の表示において、投稿画像1は全体の8割程度を占める。このため、本件投稿 1 における引用部分(本文)と被引用部分(投稿画像1)の情報量等には、大きな差がある。

5 これらの事情に鑑みると、本件投稿1における投稿画像1の引用は、引用の方法及び態様の点で、社会通念に照らし、公正な慣行に合致し、かつ、引用目的との関係で正当な範囲内で行われたものということはできない。

したがって、本件投稿1による投稿画像1の引用は、適法な引用の要件を満たすものとはいえない。これに反する被告 NTT コミュニケーションズの主張は採用できない。

6 小括

以上より、本件投稿1の流通により原告の本件漫画に係る著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたことは明らかと認められ、また、前記3記載のとおり、被告らは、いずれも「開示関係役務提供者」に該当するといえる。

そうすると、その余の点について論ずるまでもなく、原告は、本件投稿 1 による本件漫画の著作権(複製権、公衆送信権)侵害について、被告らに対し、本件発信者情報の開示請求権を有する。

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判例/両目部分に黒の横線が入れられたイラストにつき侵害性を認定した事例

両目部分に黒の横線が入れられたイラストにつき侵害性を認定した事例

令和6130日大阪地方裁判所[令和5()6100]

(2) 本件著作権の侵害について

著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいう。

本件イラストは、P3氏が、ツイッター上の交流において原告を表すためにふさわしいイラストとして制作したものであり、腹ばいになるアザラシの様子をイラストにし、その下部に「(省略)」と記載したものであるところ、全体的に丸みを帯びた輪郭で、頭部を大きくし、ヒレを頭部付近に小さく描くことにより、親しみやすくかわいらしい印象を与えている点、大きな頭部いっぱいに両目、鼻及び口を描くことでアザラシの表情に存在感を与えている点、これらに「(省略)」という表記を欧文字で加えることで、その性格(原告の人柄)を示しつつイラストとしての一体感を感じさせる点において、選択の幅がある中から作成者によってあえて選ばれた表現であるということができる。したがって、本件イラストは、作成者の思想又は感情が創作的に表現された、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えたものであると認められ、「著作物」に該当する。

証拠及び弁論の全趣旨によれば、P3氏は、本件イラストを制作し、原告に対し、本件イラストに係る著作権を譲渡したことが認められ、原告は、本件イラストに係る著作権を有していると認められる。

本件黒塗りイラストは、本件イラストの両目部分に黒の横線が入れられ、「(省略)」という表記が黒塗りされたものであるが、被告がかかる改変を行ったことを認めるに足りる証拠はない。一方、前記改変は、前記目線等を加えたことに限られるから、本件黒塗りイラストは、本件イラストに依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、これに接する者が本件イラストの表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものと認められ、本件黒塗りイラストは本件イラストの複製物又は翻案物であって、原告が著作権を有するものといえる。そうであるところ、被告は、本件各投稿によって、本件黒塗りイラストに改変等を加えることなくツイッター上に投稿して、少なくとも不特定の者に対して閲覧可能な状態にしたことから、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するといえる。

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2025年9月12日金曜日

判例/ジャズレコードの図柄の著作物性を認めた事例

 

ジャズレコードの図柄の著作物性を認めた事例

▶平成110909日大阪地方裁判所[平成9()715]

(証拠等)によれば、原告第二図柄[注:ジャズレコードの図柄]は、原告Aが独自に作成したものであることが認められる。

被告らは、原告第二図柄は創作性を欠き、原告Aの著作物ではないと主張する。そこで検討するに、(証拠等)によれば、原告第二図柄の背景図柄は、楽器(ドラム)を前にした演奏家(本件第二レコード収録曲の演奏家のリーダーであるドラマーのG)の写真であること、右写真の著作者は原告Aではないことが認められるが、前掲各証拠によれば、原告第二図柄は、演奏家の写真を背景図柄として使用しているのみならず、右上部分に黄色のデザイン化された文字で「G」と、また、その下に赤色のやや小さめの文字で「SEXTET」と題名が表示され、さらに、中段右寄りに白色の文字で三列にわたり六名の演奏家の名前等が表記されていることが認められ、題名の構成、題名、演奏家名等の表示の配置、背景写真とこれらの位置関係等において、なお、思想又は感情を創作的に表現したものであって、美術の範囲に属するもの(著作権法211号)ということができるから、原告第二図柄は原告Aの創作した著作物であると認められる。

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2025年8月22日金曜日

判例/布団の絵柄(テキスタイルデザイン)は著作物に当たるか

 

布団の絵柄(テキスタイルデザイン)は著作物に当たるか

令和5427日大阪高等裁判所[令和4()745]

以上の観点から、本件絵柄についてみると、本件絵柄それ自体は、テキスタイルデザイナーであるP1によってパソコン上で制作された絵柄データであり、また、実用品である布団の生地など、量産衣料品の生地にプリントされて用いられることを目的として制作された絵柄であるが、その絵柄自体は二次的平面物であり、生地にプリントされた状態になったとしても、プリントされた物品である生地から分離して観念することも容易である。そして、本件絵柄の細部の表現を区々に見ていくと、控訴人が縷々主張するようにテキスタイルデザイナーであるP1が細部に及んで美的表現を追求して技術、技能を盛り込んだ美的創作物であるということができ、その限りで作者であるP1の個性が表れていることも否定できない。

しかし、本件絵柄は、その上辺と下辺、左辺と右辺が、これを並べた場合に模様が連続するように構成要素が配置され描かれており、これは、本件絵柄を基本単位として、上下左右に繰り返し展開して衣料製品(工業製品)に用いる大きな絵柄模様とするための工夫であると認められる(本件絵柄は、原告商品であるシングルサイズの敷布団では上下左右に連続して約6枚分、掛布団では同様に約9枚分プリントされて全体に一体となった大きな絵柄模様を作り出すよう用いられているから、この点において、その創作的表現が、実用目的によって制約されているといわなければならない。

また、本件絵柄に描かれている構成は、平面上に一方向に連続している花の絵柄とアラベスク模様を交互につなぎ、背景にダマスク模様を淡く描いたものであるが(本件絵柄に用いられている模様が、このように称される絵柄であることは訴訟当初から当事者間に争いがない 。)、証拠及び弁論の全趣旨によれば、アラベスク模様はイスラムに由来する幾何学的な連続模様であり、またダマスク模様は中東のダマスク織に使用される植物等の有機的モチーフの連続模様であって、いずれも衣料製品等の絵柄として古来から親しまれている典型的な絵柄であり、これら典型的な絵柄を平面上に一方向に連続している花の絵柄と組み合わせ、布団生地や布団カバーを含む、カーテン、絨毯等の工業製品としての衣料製品の絵柄模様として用いるという構成は、日本国内のみならず海外の同様の衣料製品についても周知慣用されていることが認められる。そして、本件絵柄における創作的表現は、このような衣料製品(工業製品)に付すための一般的な絵柄模様の方式に従ったものであって、その域を超えるものではないということができ、また、販売用に本件絵柄を制作したP1においても、そのことを意図して、創作に当たって上記構成を採用したものと考えられるから、この点においても、その創作的表現は、実用目的によって制約されていることが、むしろ明らかであるといえる。

そうすると、本件絵柄における創作的表現は、その細部を区々に見る限りにおいて、美的表現を追求した作者の個性が表れていることを否定できないが、全体的に見れば、衣料製品(工業製品)の絵柄に用いるという実用目的によって制約されていることがむしろ明らかであるといえるから、実用品である衣料製品としての産業上の利用を離れて、独立に美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているとはいえない。

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2025年8月15日金曜日

判例/大腿部に施した十一面観音立像の入れ墨の著作物性を認めた事例

 

大腿部に施した十一面観音立像の入れ墨の著作物性を認めた事例

▶平成23729日東京地方裁判所[平成21()31755]▶平成24131日知的財産高等裁判所[平成23()10052]

(3) 本件仏像写真と本件入れ墨との対比

本件仏像写真は,本件仏像の全身を向かって左斜め前から撮影したカラー写真であり,本件仏像の表情や黒色ないし焦げ茶色の色合いがほぼそのままに再現されている。

これに対し,本件入れ墨は,本件仏像写真をモデルにしながらも,本件仏像の胸部より上の部分に絞り,顔の向きを右向きから左向きに変え,顔の表情は,眉,目などを穏やかな表情に変えるなどの変更を加えていること,本件仏像写真は,平面での表現であり,仏像の色合いも実物そのままに表現されているのに対し,本件入れ墨は,人間の大腿部の丸味を利用した立体的な表現であり,色合いも人間の肌の色を基調としながら,墨の濃淡で独特の立体感が表現されていることなど,本件仏像写真との間には表現上の相違が見て取れる。

【さらに,本件仏像写真の仏像と本件入れ墨の仏像のそれぞれの顔を対比すると,両者には,以下のとおりの表現上の相違も認められる。すなわち,本件仏像写真の仏像の顔では,その眼は,中央からゆるやかな弧を描くように上向きに表現されていること,鼻は,直線的に細長く表現されていること,唇は,上唇の中央部を切り結び,引き締まったような表情で表現されていること等の点において特徴がある。

これに対して,本件入れ墨の仏像の顔では,眼は,ほぼ水平方向に描かれていること,鼻は,横に広くふくらみをもった形状に表現されていること,唇は,上唇が厚くふくらみをもって表現されていること,頬や顎は,前記のとおり,墨の濃淡により,丸みを帯びるような表現がされていること等の点において特徴がある。】

そして,上記表現上の相違は,本件入れ墨の作成者である原告が,下絵の作成に際して構図の取り方や仏像の表情等に創意工夫を凝らし,輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ,ぼかしの墨入れ等に際しても様々の道具を使用し,技法を凝らして入れ墨を施したことによるものと認められ,そこには原告の思想,感情が創作的に表現されていると評価することができる。したがって,本件入れ墨について,著作物性を肯定することができる。

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判例/木軸のシャープペンシルの(美術)著作物性を否定した事例

 

木軸のシャープペンシルの(美術)著作物性を否定した事例

令和7728日知的財産高等裁判所[令和7()10014]

2 原判決の補正

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⑸ 原判決…までを次のとおり改める。

「前提事実及び証拠によれば、本件原告商品は、木軸のシャープペンシルであり、木軸の部分は1本ずつ手作業により木材を加工して作られるが、金属の部品は同一の型のものが用いられ、各部分の長さや直径は決まっており(本件形状)、木軸部分が本件形状に合うように木材が加工されて本件原告商品が作り出されることが認められ、この事実によれば、本件原告商品が一品制作の美的実用品であるとは認められない。」

⑹ 原判決…までを次のとおり改める。

「ウ よって、本件原告商品が著作権法2条1項1号の『著作物』に当たるとは認められず、被控訴人による本件被告商品の製作、販売が控訴人の著作権を侵害するとも認められない。」

3 当審における控訴人の補充主張に対する判断

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⑶ 控訴人は、前記のとおり、本件原告商品は著作物である旨主張する。

ア しかし、まず、著作権法2条2項の「美術工芸品」は、一品制作の美的実用品をいうものと解すべきところ、前記のとおり補正の上で引用した原判決のとおり、本件原告商品の木軸は1本ずつ手作業により木材を加工して作られているが、木軸の各部分の長さや直径は本件形状のとおりに決まっており、本件形状に合うように木材が加工されて本件原告商品が作り出されるものであることからすれば、これを一品制作の美的実用品であると認めることはできない。

イ 控訴人は、前記のとおり、美術工芸品に当たらない応用美術であっても、思想又は感情を創作的に表現したものであること(著作権法2条1項1号)を満たせば著作物性が認められると解すべきであると主張する。

しかし、実用的なデザインも含めておよそ何らかの形で美感が表わされていれば著作物に該当するということはできない。実用目的の応用美術であっても、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては、実用目的を達成するための機能とは無関係に自由に創作された表現が客観的に存在するといえるから、「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」に該当するということができる。他方、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できないものについては、実用目的を達成するための機能に制約された形態等が存在するのみであり、機能と無関係に自由に創作された表現が客観的に存在するとは認められないから、「思想又は感情を創作的に表現した美術の著作物」に該当するということはできない。

そうすると、原判決のとおり、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができるものでなければ、著作権法2条1項1号の著作物として保護されないと解すべきである。

したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

ウ 控訴人は、前記のとおり、本件原告商品は、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できると主張する。

しかし、本件原告商品の木軸、ノック機能、口金及びクリップの形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有すると認められないことは、補正の上で引用した原判決及び前記⑴のとおりである。これらについて、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性が備わっているとは認められない。

本件原告商品の木軸について、木材の杢目の美しさを感じることができるとしても、これはシャープペンシルの構成要素である軸を木軸としたことによるものであって、木軸の形状、寸法、材質等は、美感を考慮しつつも、実用目的に必要な構成として決定されていることからすれば、杢目が美感の向上に資する面があるとしても、本件原告商品について、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することはできない。

雑誌やYouTubeにおいて、本件原告商品その他の控訴人の木軸ペンに美しさがある旨の記事や発言があることや、本件原告商品の販売価格が1万円を超えるものであることをもって、本件原告商品について、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できると認められることにはならない。

以上のとおり、本件原告商品について、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められないとの原判決の判断は相当である。

したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

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2025年8月14日木曜日

判例/ワイナリーの案内看板(図柄)の著作物性が否定された事例

 

ワイナリーの案内看板(図柄)の著作物性が否定された事例

▶平成250605日東京地方裁判所[平成24()9468]▶平成251217日知的財産高等裁判所[平成25()10057]

1 争点(1)(Eコースにおける著作権侵害の成否)

(1) 本件図柄の著作物性

ア 著作権法は,著作権の対象である著作物の意義について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定しているのであって,当該作品に思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該作品等は著作物に該当するものとして同法による保護の対象となる一方,思想又は感情若しくはアイデアなど表現それ自体ではないもの,又は表現が平凡かつありふれたものであるなどの理由により,表現上の創作性がないものについては著作物に該当せず,同法による保護の対象とはならない。そして,当該作品等が,「創作的」に表現されたものであるというためには,厳密な意味で作成者の独創性が表現として表れていることまでを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表現として表れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえず,「創作的」な表現ということはできないというべきである。

イ そこで,本件図柄について,上記意味における創作性の有無について検討するに,本件図柄は,【濃紺】の横長の長方形の中に,縦横の長さがそれぞれその3分の2程度を占める大きさの白色のグラスを配置し,上記グラスのボウル内に,背景色と同色で,「シャトー勝沼」の文字を上下二段に分けて横書きし,さらに,グラス上方に,「シャトー勝沼」よりもやや小さい黄色の丸ゴシック文字で,アーチ状に「ワイナリー/工場見学」の文字を横書きしたものである。

ウ 本件図柄は,上記のとおり,背景色の中に,白色のグラスを大きく配置したものであるが,本件図柄が,被告の運営するワイナリー等への案内看板の図柄として制作されたものであることを考慮すれば,その図柄にグラスの形状を採用することはありふれたものというべきである。また,上記グラスの形状は,通常のワイングラスよりもプレート部分がやや大きく,軸が短いものであるということができるが,上記形状は,グラスとして通常見られるものの域を出るものではないというべきであって,このような点に,作成者の個性の表出は認められない。

また,本件図柄は,上記のとおり,グラスのボウル内に「シャトー勝沼」の文字を上下二段に分けて横書きで配置し,グラスの上方に,アーチ状に「ワイナリー/工場見学」の文字を配置したものであり,これらの文字は,見やすく分かりやすいよう配置され,表示されているものということができる。しかし,本件図柄の案内看板としての性質上,本件図柄の中に,被告の社名である「シャトー勝沼」の文字や,「ワイナリー/工場見学」の文字を含むことは当然のことであり,これらを見やすく,分かりやすい位置に配置することも,その性質から当然に要求されるものというべきである。また,文字をグラスのボウル内に配置することや,アーチ状に配置することもありふれたものであり,作成者の個性の表出を感じられるものではない。そうすると,上記文字の配置・表示は,案内看板における文字の配置・表示としてありふれたものというべきであり,創作性は認められない。

なお,上記文字のうち,「シャトー勝沼」部分は,文字の太さや端部の形状に変化を持たせた,毛筆体に近い書体で描かれているものであるということができる。しかし,文字は情報伝達という実用的機能を有することをその本質というべきものであるから,文字の書体に著作物としての保護を与えるべき創作性を認めることは一般的には困難であり,当該書体のデザイン的要素が,見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りる程度の美的創作性を備えているような例外的場合に限り,創作性を認め得るにとどまるものというべきところ,本件図柄における「シャトー勝沼」の文字が,上記程度の美的創作性を有するものとは認められない。また,上記文字のうち,「ワイナリー/工場見学」部分は,丸ゴシック体で描かれているものであり,上記程度の美的創作性を認めることのできないものであることは明らかである。【毛筆体に近い書体と丸ゴシック体の組合せについても,特別な美的感興を呼び起こすような美的創作性を認めることはできない。】

さらに,本件図柄の配色(【濃紺】,白,黄色)については,【補色に近い色を対比して配置することで遠方から見た際に彩度が強調されることから,】他の看板にも見られるものであり,ありふれたものというべきである上,本件図柄が被告の案内看板に採用される以前の被告看板においても,同様の配色が採用されていたことが認められるのであって,上記配色が,本件図柄の作成に当たり新たに創作されたものとも認められない。

【そして,以上のような文字部分を含めた本件図柄の構図,デザイン,配色,全体のバランスを総合的に見ても,特別な美的感興を呼び起こすような美的創作性を認めることはできないことに変わりない。】

エ 原告は,本件図柄は全体として美術性を有し,美術の著作物に該当するとも主張する。しかし,本件図柄におけるグラスや文字の配置,色の選択,字体の選択等の各要素を全体として見ても,本件図柄が,全体として一つのまとまりのある絵画的な表現物として,見る者に特別な美的感興を呼び起こすに足りるだけの美的創作性があるものとは認められず,また,その構成において作者の個性が表れているものとも認められない。

したがって,本件図柄に美術の著作物としての創作性を認めることはできない。

 

[控訴審同旨]

2 控訴人の当審における主張に対する判断

(1) 本件図柄の著作物性について

控訴人は,本件図柄を一体として鑑賞した場合,本件図柄における文字は,思想,感情を表現するものとして,絵柄に融合しており,絵柄の美術性に含まれているし,本件図柄は,画面いっぱいに,大胆にグラスを描き,構図的バランスは,ずしりと重量感を与え,色彩感覚豊かで美的に表現され,見る人の心を惹きつけてやまないのであって,ありふれた平凡な絵柄ではなく,美術性と創作性を兼ね備えていると主張する。

本件図柄は,あくまでも広告看板用のものであり,実用に供され,あるいは,産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであるところ,応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。かかる観点から見ると,本件図柄のグラスの形状には,通常のワイングラスと比べて足の長さが短いといった特徴も認められるものの,それ以外にグラスとしての個性的な表現は見出せない。また,ワイナリーの広告としてワイングラス自体が用いられること自体は珍しいものではない上に,図柄が看板の大部分を占めている点も,ワイナリーの広告としてありふれた表現にすぎない。そして,本件図柄を全体的に観察すると,上記ワイングラスの大きさや形状に加えて,控訴人の商号及びワイナリーや工場の見学の勧誘文言が目立つような文字の配置と配色がなされていることが特徴的であるが,これも,一般的な道路看板に用いられているようなありふれた青系統の色と補色に近い黄色ないし白色のコントラストがなされているにとどまる。そうすると,本件図柄には色彩選択の点や文字のアーチ状の配置など控訴人なりの感性に基づく一定の工夫が看取されるとはいえ,見る者にとっては宣伝広告の領域を超えるものではなく,純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを肯定することは困難である。控訴人が著作物性の根拠として強調する点は,宣伝広告の効果を向上させるための工夫とも共通するものであって,必ずしも芸術性を高めるものではなく,また,現代における芸術分野の区分の流動化が認められるとしても,上記に判示した純粋美術と同視できる程度の審美的要素への働きかけを否定した判断を左右するものではない。したがって,本件図柄には著作物性は認められないというべきであり,その帰属について判断する必要もない。

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判例/「カスタマイズドール用ボディ素体」の著作物性を否定した事例

 

「カスタマイズドール用ボディ素体」の著作物性を否定した事例

▶平成241129日東京地方裁判所[ 平成23()6621]

() 原告各商品は,カスタマイズドール用ボディ素体である。いわゆる「カスタマイズドール」とは,頭部,胴体及び四肢部分で構成された人の裸体の外観形態を模写したヌードボディである「素体」(頭部を除くヌードボディ単体のものも含む。以下同じ。)に,自らの好みにあわせ,ウィッグ(かつら),衣類等を組み合わせたり,彩色(アイペイント,メイク等),加工,改造等をすることにより作り上げる人形をいう。

 

3 争点3(著作権侵害の成否)について

(1) 争点3-1(著作物性)について

原告は,①カスタマイズドールの需要者は,まず裸の状態のボディ素体の形状を鑑賞して好みのボディを選択し,その上で,好みのボディに,好みのアクセサリーを装着させ,自らの趣向でドールを完成させて鑑賞するという段階を踏むことからすると,ボディ素体自体を鑑賞目的で制作されたものと受け取ること,②ボディ素体は,一品制作のものではないが,卓越した独自の技術を持つ職人が一体一体を丁寧に制作するものであるから,一品制作の美術作品と同等の美的創作性を備え得ること,③原告商品1の販売が開始された平成15年6月当時,「全高約50㎝以上の大型サイズのカスタマイズドール(女性)用ボディ素体」の市場において,原告各商品の形態上の特徴を有するボディ素体は存在しなかったことからすると,その形態上の特徴は,原告の個性が表れ,原告の思想又は感情が創作的に表現されたものということができることを理由に,原告各商品は,「純粋美術」又はこれと同視し得る程度の美的創作性を具備する「応用美術」として,著作権法によって保護される美術の著作物(著作権法10条1項4号)に該当する旨主張する。

ア そこで検討するに,「カスタマイズドール」は,頭部,胴体及び四肢部分で構成された人の裸体の外観形態を模写したヌードボディである「素体」に,自らの好みにあわせ,ウィッグ(かつら),衣類等を組み合わせたり,彩色(アイペイント,メイク等),加工,改造等をすることにより作り上げる人形であることに照らすならば,原告各商品のようなカスタマイズドール用素体を購入する通常の需要者においては,自らの好みにあわせて作り上げた人形本体(カスタマイズドール)を鑑賞の対象とすることはあっても,その素材である素体自体を鑑賞の対象とするものとは考え難く,また,原告が主張するような素体を選択する際に当該素体を見ることは,鑑賞に当たるものということはできない。

また,そもそも,原告各商品は,販売目的で量産される商品であって,一品制作の美術品とは異なるものである。

以上によれば,原告各商品が「純粋美術」として美術の著作物(著作権法10条1項4号)に該当するとの原告の主張は,採用することができない。

イ 次に,原告が原告の思想又は感情が創作的に表現されたものであると主張する原告各商品の形態上の特徴は,原告商品共通形態と同内容のものであるところ,原告商品共通形態(本件原告商品形態)は,前記で認定したように,形態上の独自性を認めることはできず,カスタマイズドール用素体としてありふれたものといわざるを得ないものであり,また,全高約50㎝ないし60㎝という原告各商品の大きさ自体に創作性があるものと認めることもできない。

したがって,原告各商品が純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備しているとの原告の主張は,採用することができない。

ウ 以上によれば,原告各商品が「純粋美術」又はこれと同視し得る程度の美的創作性を具備する「応用美術」として著作権法によって保護される美術の著作物(著作権法10条1項4号)に該当するとの原告の主張は,理由がない。

(2) まとめ

以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,被告による被告各商品の製造が原告各商品について原告が保有する著作権の侵害行為に該当するとの原告の主張は,理由がない。

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判例/各種フィギュアの模型原型は美術の著作物か

 

各種フィギュアの模型原型は美術の著作物か

▶平成161125日大阪地方裁判所[平成15()10346]▶平成17728日大阪高等裁判所[平成16()3893]

ウ 本件模型原型は純粋美術か否か。

() まず,本件模型原型は,前記認定のとおり,いずれも,実在する動物や,絵画に描かれた妖怪ないし人物等を立体的に表現したものである。

本件模型原型は,実在する動物や,絵画に描かれた妖怪ないし人物等を立体的に表現するに当たって,誰が制作しても同じような表現にならざるを得ないような類型的な表現方法を用いたとはいえず,一定の限度で制作者の個性が表れているといえるから,思想又は感情を創作的に表現したものであるということができる(ただし,その創作性の程度には,後記のとおり高低がある。)。

() ところで,菓子製造販売業者が,菓子の需要者(主に子供たち)に人気のある動物,乗り物等を模した小さな玩具や,漫画のキャラクターを描いたシール,カード等をおまけとして付けることで,菓子の需要者のおまけに対する収集欲を刺激し,菓子の販売促進を図ることは,これまでも広く行われてきた。このような菓子等のおまけとなる玩具は,一般に「食玩」と称されている。

本件フィギュアは,従来の食玩に比べて,極めて精巧なものであるとはいえ,その使用目的は,やはり菓子のおまけとして付けられ,菓子の販売促進を図ることにあることに変わりはないと認められる。そして,本件模型原型は,上記のような本件フィギュアを量産するための金型の原型及び彩色用の見本として用いられるものである。

() してみると,本件模型原型は,前記()のとおり思想又は感情を創作的に表現したものではあるけれども,制作者が,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的ではなく,実用目的で制作したものであり,かつ,一般的平均人が,実用目的で制作されたものと受け取るものというべきであるから,純粋美術には該当しないものと解するのが相当である。そして,上記制作目的及び一般的平均人の認識からすれば,本件模型原型は,応用美術に該当するものというのが相当である。

() なお,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件フィギュアは,その精巧さから,販売後は子供たちのみならず一部の大人たちの間でも人気が出たことが認められ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,菓子の購入者の中には,菓子よりもおまけである本件フィギュアを目当てに購入した者が多かったこと,これらの者の多くは,本件フィギュアを鑑賞の対象として扱っていたことが認められる。

しかし,純粋美術であれば,その巧拙を問わず著作物に該当し,著作権法による保護を受けることになるが,我が国の著作権制度のもとにおいては,著作権の成立には審査及び登録を要せず,著作権の対外的な表示も要求しない一方で,著作権侵害については刑事罰の規定も設けられていることを考慮すると,観る者によって当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作されたものと受け取るか否かの判断が異なるような作品についてまでも,純粋美術として著作権法による保護を与えることは,予測可能性を害するものであって,相当ではない。

そして,上記各証拠をもってしても,本件フィギュアないし本件模型原型について,一般的平均人が専ら鑑賞の対象とする目的で制作されたものと受け取るとまでは認めがたい。

また,制作者が,制作当時は,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的以外の目的で制作した作品が,制作後の事情により美術的な評価が高まり,当該作品が鑑賞の対象として取り扱われるようになったとしても,そのことにより,応用美術が純粋美術に転化し,著作物性を獲得するに至ると解することは,法的安定性を著しく害するものであって相当ではない。

したがって,上記の事情は,前記()の判断を左右するものではない。

エ 応用美術たる本件模型原型は著作物か否か。

() そこで,本件模型原型が応用美術であることを前提にして,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるか否かについて検討する。

() 本件動物フィギュア

前記認定のとおり,本件動物フィギュアは,市販の動物図鑑,鳥類図鑑等をもとに,動物の形状等を,可能な限り,実際の動物と同様に立体的に表現し,色彩も,実際の動物と同様の色,模様が付されたものであり,極めて精巧なものであって,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,相当程度の美術性を備えていると評価されるものといえる。このことは,前記認定のとおり,原告の制作に係る各種フィギュアが各地の美術館等で展示され,高い評価を受けていることからも裏付けられる。

しかしながら,上記のとおり,本件動物フィギュアは,実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現した模型であり,動物の姿勢,ポーズ等も,市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見られるものにすぎず,制作に当たった造形師が独自の解釈,アレンジを加えたというような事情は見当たらない(なお,(証拠)によれば,本件動物フィギュアの中には,あえて実際の動物と異なる形状等を採用しているものも存在するが,これは,美術性を高めるためにデフォルメしたというよりも,主に,型抜きの都合や,カプセルに収まる寸法を確保するなどの製造工程上の理由によるものと認められる。)。したがって,本件動物フィギュアには,制作者の個性が強く表出されているということはできず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない。

してみると,本件動物フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず,著作物には該当しないと解される。

なお,本件動物フィギュアのうち,ツチノコについては,モデルとなる動物の生息が確認されていないため,実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現したものとはいえず,他の本件動物フィギュアに比べれば制作者の個性が強く表出されているということができるけれども,やはり,これまでに描かれた数多くの想像図をもとに制作されたものであって,それらから想像される一般的なイメージの域を超えるものではなく,いまだ純粋美術と同視し得る程度の美的創作性があるとまではいえない。

() 本件妖怪フィギュア

本件妖怪フィギュアは,本件動物フィギュアと異なり,空想上の妖怪を造形したものである。

確かに,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアのなかには,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものもある。

しかし,平面的な絵画をもとに立体的な模型を制作する場合には,制作者は,絵画に描かれた妖怪の全体像を想像力を駆使して把握し,絵画に描かれていない部分についても,描かれた部分と食い違いや違和感が生じないように構成する必要があるから,その制作過程においては,制作者の想像力ないし感性が介在し,制作者の思想,感情が反映されるということができる。

そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,石燕の原画を忠実に立体化したものではなく,随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられていること,妖怪本体のほかに,制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に,前記認定の「鎌鼬」,「河童」や,「土蜘蛛(つちぐも)」が源頼光及び渡辺綱に退治され,斬り裂かれた腹から多数の髑髏(どくろ)がはみ出している場面などは,ある種の物語性を帯びた造型であると評することさえも可能であって,著しく独創的であると評価することができる。),色彩についても独特な彩色をしたものがあることを考慮すれば,本件妖怪フィギュアには,石燕の原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているということができ,高度の創作性が認められる。

また,本件妖怪フィギュアのうち,石燕の「画図百鬼夜行」を原画としないものについては,制作者において,空想上の妖怪を独自に造形したものであって,高度の創作性が認められることはいうまでもない。

そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,極めて精巧なものであり,一部のフィギュア収集家の収集,鑑賞の対象となるにとどまらず,一般的な美的鑑賞の対象ともなるような,相当程度の美術性を備えているということができる。

以上によれば,本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当するというのが相当である。

() 本件アリスフィギュア

前記認定のとおり,本件アリスフィギュアは,テニエルの挿絵を立体化したものである。

本件アリスフィギュアについても,本件動物フィギュア及び本件妖怪フィギュアと同様に,極めて精巧なものであって,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,相当程度の美術性を備えていると評価されるものといえる。

しかしながら,本件アリスフィギュアは,平面的に描かれたテニエルの挿絵をもとに立体的な模型を制作する過程において,制作者の思想,感情が反映されるものであるから,創作性がないわけではないが,前記認定のとおり,本件アリスフィギュアは,テニエルの挿絵を忠実に立体化したものであり,立体化に際して制作者独自の解釈,アレンジがされたとはいえない(この点において,本件妖怪フィギュアとは事情が異なる。)ことや,色彩についても,通常テニエルの挿絵に彩色する場合になされるであろう,ごく一般的な彩色の域を出ていないことを考慮すれば,本件アリスフィギュアには,テニエルの原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているとまではいえず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない(ただし,前記認定のとおり,他にもテニエルの挿絵に彩色したものがあるが,証拠上,これらがどのような色であったかは判然としない。また,一部には背景ないし場面を含めて造型されたものもあるが(例えば「チェシャ猫」の木),これらの背景も,もともとテニエルの挿絵に描かれていたものである。)。

してみると,本件アリスフィギュアに係る模型原型は,極めて精巧なものであるけれども,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,いまだ純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず,応用美術の著作物には該当しないと解される。

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判例/「トントゥ」の人形の美術著作物性を認めた事例

 

「トントゥ」の人形の美術著作物性を認めた事例

▶平成140131日東京地方裁判所[平成13()12516]

() トントゥは,フィンランドやスウェーデン,ノルウェーなどで語り継がれている想像上の生き物であり,森に住む妖精の一種で,クリスマスの時期になるとサンタクロースがクリスマスプレゼントを配るのを手伝うとされている。

 

フィンランド在住の人形作家Aは,フィンランドなどで語り継がれているトントゥの寓話から,トントゥのオリジナル人形を創作した。オリジナル人形は,幅,奥行き,高さ各約3ないし6㎝ほどの石膏製の人形で,1体1体手作りされており,Aが上記のようなトントゥの寓話を基に自らの感覚でその容貌,形状,色彩を具体化して人形としたものである。オリジナル人形は,A自身がトントゥの寓話から受けるイメージを造形物として表現したものであって,その姿態,表情,着衣の絵柄・彩色等にAの感情の創作的表現が認められ,かつ美術工芸品的な美術性も備えているもので,Aが著作権を有する著作物である。

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判例/書の著作物性

 

書の著作物性

▶平成140218日東京高等裁判所[平成11()5641]

書は、一般に、文字及び書体の選択、文字の形、太細、方向、大きさ、全体の配置と構成、墨の濃淡と潤渇(にじみ、かすれを含む。以下、同じ。)などの表現形式を通じて、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢い、ひいては作者の精神性までをも見る者に感得させる造形芸術であるとされている。他方、書は、本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上、文字の基本的な形(字体、書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず、書として表現されているとしても、その字体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的には困難であるから、書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分は、字体や書体のほか、これに付け加えられた書に特有の上記の美的要素に求めざるを得ない。

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2025年8月12日火曜日

判例/「大判」の(美術)著作物性を否定した事例

 

「大判」の(美術)著作物性を否定した事例

▶昭和451221日大阪地方裁判所[昭和45()3425]

(申請人の大判は著作物に該当するか)

申請人は、その製造にかかる別紙目録(一)記載の大判はいわゆる美術工芸品であり、美術的著作物に該当する旨主張する。

著作物とは思想または感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいうと解すべきである。そして、一回の芸術的活動の成果として止まるものではなく、多量生産を予定している美術工芸品であつても、それが高度の芸術性を備えているときは、著作権の対象となりうる場合があり、申請人の大判も、後述する創作性に関する点を除けば、著作権法にいわゆる美術の範囲に属すると解する余地はあろう。

しかし、申請人の大判は、既に認定したとおり、既に存在した天正菱大判と大きさ、形状共に同一であり、申請人の創作部分は、①天正菱大判の表面中央に書かれている「拾両」の字体を慶長笹大判の「拾両」の字体と差し替えた点、②天正菱大判の上および下にある菱形の枠で囲まれた桐の模様をありふれたものであるが鮮明な桐の模様と差し替えた点、③天正菱大判にはないありふれた桐の模様をその表面両側中間辺に各一個宛書き加えた点のみに過ぎないというべきである。そうすると、全体的にみて、申請人の大判が既存の著作物である天正菱大判の本質部分を基礎とする作品であることは疑いを容れないところであり、既存のものに前記程度の軽微な修正増減を施したからといつて、そのため別個の美術工芸的価値が生ずるに至つたものとは認め難いので、申請人の大判は著作権法第一九条[注:旧著作権法「改作物」についての規定]但書にいう「新著作物と看做さるべきもの」に該当せず、所詮は天正菱大判の模造品の域を出ないものといわねばならない。

従つて、申請人の大判について著作権が成立するものでないことは著作権法第一九条本文の規定に徴して明らかである。

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判例/応用美術と著作物性

 

応用美術と著作物性

▶平成281130日知的財産高等裁判所[平成28()10018]

(1) 応用美術と著作物性について

著作権法2条1項1号は,著作物の意義につき,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定しており,そして,ここで「創作的に表現したもの」とは,当該表現が,厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの,作成者の何らかの個性が発揮されたものをいうと解される。

控訴人らは,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2が,加湿という実用に供されることを目的とするものであることを前提として,その著作物性を主張する(著作権法10条1項4号)から,本件は,いわゆる応用美術の著作物性が問題となる。

ところで,著作権法は,建築(同法10条1項5号),地図,学術的な性質を有する図形(同項6号),プログラム(同項9号),データベース(同法12条の2)などの専ら実用に供されるものを著作物になり得るものとして明示的に掲げているのであるから,実用に供されているということ自体と著作物性の存否との間に直接の関連性があるとはいえない。したがって,専ら,応用美術に実用性があることゆえに応用美術を別異に取り扱うべき合理的理由は見出し難い。また,応用美術には,様々なものがあり得,その表現態様も多様であるから,作成者の個性の発揮のされ方も個別具体的なものと考えられる。

そうすると,応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属するものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作物として保護されるものと解すべきである。

もっとも,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,美的特性を備えるとともに,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があり,その表現については,同機能を発揮し得る範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。そうすると,応用美術について,美術の著作物として著作物性を肯定するために,高い創作性の有無の判断基準を設定しないからといって,他の知的財産制度の趣旨が没却されたり,あるいは,社会生活について過度な制約が課されたりする結果を生じるとは解し難い。

また,著作権法は,表現を保護するものであり,アイディアそれ自体を保護するものではないから,単に着想に独創性があったとしても,その着想が表現に独創性を持って顕れなければ,個性が発揮されたものとはいえない。このことは,応用美術の著作物性を検討する際にも,当然にあてはまるものである。

以上を前提に,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の著作物性を判断する。

平成281221日知的財産高等裁判所[平成28()10054]

ところで,著作権法は,建築(同法10条1項5号),地図,学術的な性質を有する図形(同項6号),プログラム(同項9号),データベース(同法12条の2)などの専ら実用に供されるものを著作物になり得るものとして明示的に掲げているのであるから,実用に供されているということ自体と著作物性の存否との間に直接の関連性があるとはいえない。したがって,専ら,応用美術に実用性があることゆえに応用美術を別異に取り扱うべき合理的理由は見出し難い。また,応用美術には,様々なものがあり得,その表現態様も多様であるから,美的特性の表現のされ方も個別具体的なものと考えられる。

そうすると,応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属するものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作物として保護されるものと解すべきである。

もっとも,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,美的特性を備えるとともに,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があり,その表現については,同機能を発揮し得る範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。そうすると,応用美術について,美術の著作物として著作物性を肯定するために,高い創作性の有無の判断基準を設定しないからといって,他の知的財産制度の趣旨が没却されたり,あるいは,社会生活について過度な制約が課されたりする結果を生じるとは解しがたい。また,応用美術の一部について著作物性を認めることにより,仮に,何らかの社会的な弊害が生じることがあるとすれば,それは,本来,著作権法自体の制限規定等により対処すべきものと思料される。

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判例/応用美術と著作物性/(携帯用)加湿器の著作物性を否定した事例

 

応用美術と著作物性/(携帯用)加湿器の著作物性を否定した事例

▶平成28114日東京地方裁判所[平成27()7033]平成281130日知的財産高等裁判所[平成28()10018]

[控訴審]

(1) 応用美術と著作物性について

著作権法2条1項1号は,著作物の意義につき,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定しており,そして,ここで「創作的に表現したもの」とは,当該表現が,厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの,作成者の何らかの個性が発揮されたものをいうと解される。

控訴人らは,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2が,加湿という実用に供されることを目的とするものであることを前提として,その著作物性を主張する(著作権法10条1項4号)から,本件は,いわゆる応用美術の著作物性が問題となる。

ところで,著作権法は,建築(同法10条1項5号),地図,学術的な性質を有する図形(同項6号),プログラム(同項9号),データベース(同法12条の2)などの専ら実用に供されるものを著作物になり得るものとして明示的に掲げているのであるから,実用に供されているということ自体と著作物性の存否との間に直接の関連性があるとはいえない。したがって,専ら,応用美術に実用性があることゆえに応用美術を別異に取り扱うべき合理的理由は見出し難い。また,応用美術には,様々なものがあり得,その表現態様も多様であるから,作成者の個性の発揮のされ方も個別具体的なものと考えられる。

そうすると,応用美術は,「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に属するものであるか否かが問題となる以上,著作物性を肯定するためには,それ自体が美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えなければならないとしても,高度の美的鑑賞性の保有などの高い創作性の有無の判断基準を一律に設定することは相当とはいえず,著作権法2条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては,著作物として保護されるものと解すべきである。

もっとも,応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,美的特性を備えるとともに,当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があり,その表現については,同機能を発揮し得る範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については,このような制約が課されることから,作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。そうすると,応用美術について,美術の著作物として著作物性を肯定するために,高い創作性の有無の判断基準を設定しないからといって,他の知的財産制度の趣旨が没却されたり,あるいは,社会生活について過度な制約が課されたりする結果を生じるとは解し難い。

また,著作権法は,表現を保護するものであり,アイディアそれ自体を保護するものではないから,単に着想に独創性があったとしても,その着想が表現に独創性を持って顕れなければ,個性が発揮されたものとはいえない。このことは,応用美術の著作物性を検討する際にも,当然にあてはまるものである。

以上を前提に,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の著作物性を判断する。

(2) 著作物性について

ア 検討

控訴人加湿器1の形態は,本判決別紙4「控訴人加湿器1構成目録」に記載のとおりであり,控訴人加湿器2が控訴人加湿器1と実質的に同一のものであることは前述のとおりであるから,著作物性の検討に当たっても,両者は実質的に同一のものとみてよいといえる。

そこで,控訴人加湿器1についてみると,控訴人加湿器1は,加湿器を試験管様のスティック状のものとし(さらに,下端は半球状とし,上端にはフランジ部を形成する。),本体の下端寄りの位置に吸水口を設け,キャップの上端の噴霧口から蒸気を噴出するようにしたものであり,水の入ったコップ等に挿して使用することにより,ビーカーに入れた試験管から蒸気が噴き出す様子を擬するようにしたものである。この観点からみると,リング状パーツ5は,試験管に入った液体の上面を模したものとも理解され,このような構成自体は,従来の加湿器にはなかった外観を形成するものといえる。しかしながら,前述のとおり,著作権法は,表現を保護するものであって,アイディアを保護するものではないから,その表現に個性が顕れなければ,著作物とは認められない。加湿器をビーカーに入れた試験管から蒸気が噴き出す様子を擬したものにしようとすることは,アイディアにすぎず,それ自体は,仮に独創的であるとしても,著作権法が保護するものではない。そして,ビーカーに入れた試験管から蒸気が噴き出す様子を擬した加湿器を制作しようとすれば,ほぼ必然的に控訴人加湿器1のような全体的形状になるのであり,これは,アイディアをそのまま具現したものにすぎない。また,控訴人加湿器1の具体的形状,すなわち,キャップ3の長さと本体の長さの比(試験管内の液体の上面),本体2の直径とキャップ3の上端から本体2の下端までの長さの比(試験管の太さ)は,通常の試験管が有する形態を模したものであって,従前から知られていた試験管同様に,ありふれた形態であり,上記長さと太さの具体的比率も,既存の試験管の中からの適宜の選択にすぎないのであって,個性が発揮されたものとはいえない。

したがって,著作物性を検討する余地があるのは,上記構成以外の点,すなわち,①リング状パーツ5を用いたこと,②吸水口6の形状,③噴霧口7周辺の形状であるが,いずれも,平凡な表現手法又は形状であって,個性が顕れているとまでは認められず,その余の部分も同様である。

したがって,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2には,著作権法における個性の発揮を認めることはできない。

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2025年7月15日火曜日

判例/博多人形を美術の著作物と認定した事例

 

博多人形を美術の著作物と認定した事例

昭和4827日長崎地方裁判所佐世保支部[昭和47()53]

本件人形「赤とんぼ」は著作物に該当するか。

著作権法の対象となる著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものでなければならないが、前記認定のとおり本件人形「赤とんぼ」は同一題名の童謡から受けるイメージを造形物として表現したものであつて、検甲一号証によればその姿体、表情、着衣の絵柄、色彩から観察してこれに感情の創作的表現を認めることができ、美術工芸的価値としての美術性も備わつているものと考えられる。

また美術的作品が、量産されて産業上利用されることを目的として製作され、現に量産されたということのみを理由としてその著作物性を否定すべきいわれはない。さらに、本件人形が一方で意匠法の保護の対象として意匠登録が可能であるからといつても、もともと意匠と美術的著作物の限界は微妙な問題であつて、両者の重量的存在を認め得ると解すべきであるから、意匠登録の可能性をもつて著作権法の保護の対象から除外すべき理由とすることもできない。従つて、本件人形は著作権法にいう美術工芸品として保護されるべきである。

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判例/木目化粧紙(原画)の著作物性を否定した事例

 

木目化粧紙(原画)の著作物性を否定した事例

▶平成2720日東京地方裁判所[昭和60()1527]▶平成31217日東京高等裁判所[平成2()2733]

[控訴審]

著作権法は、第2条第1項第1号において著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定した上、同条第2項において「この法律にいう美術の著作物には、美術工芸品を含むものとする。」と規定している。右第2項の規定は、いわゆる応用美術、すなわち実用品に純粋美術(専ら鑑賞を目的とする美の表現)の技法感覚などを応用した美術のうち、それ自体が実用品であって、極少量製作される美術工芸品を著作権法による保護の対象とする趣旨を明らかにしたものである。著作権法は、応用美術のうち美術工芸品以外のものについては、それが著作権法による保護の対象となるか否かを何ら明らかにしていないが、応用美術のうち、例えば実用品の模様などとして用いられることのみを目的として製作されたものは、本来、工業上利用することができる意匠、すなわち工業的生産手段を用いて技術的に同一のものを多量に生産することができる意匠として意匠法によって保護されるべきであると考えられる。けだし、意匠法はこのような意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする(同法第1条)ものであり、前記の品の形状、模様、色彩又はそれらの結合は正に同法にいう意匠(同法第2条)として意匠権の対象となるのに適しているからである。もっとも、実用品の模様などとして用いられることのみを目的として製作されたものであっても、例えば著名な画家によって製作されたもののように、高度の芸術性(すなわち、思想又は感情の高度に創作的な表現)を有し、純粋美術としての性質をも肯認するのが社会通念に沿うものであるときは、これを著作権法にいう美術の著作物に該当すると解することもできるであろう。

この点に関連して、控訴人は、木目化粧紙は実用的機能は求められておらず、専ら高級感のある美感を与えることを企図して製作されるのであり、同一天然木目材料を使用してもデザイナーの個性によって全く異なる原画が製作されるから、原判決が実用品特有の制約があることを理由に本件原画の著作物性を否定したのは誤りである旨主張する。

しかしながら、本件原画の製作過程は原判決…記載のとおりであって、これらの工程には、実用品の模様として用いられることのみを目的とする図案(デザイン)の創作のために工業上普通に行われている工程との間に何ら本質的な差異を見いだすことができず、その結果として得られた本件原画の模様は、まさしく工業上利用することができる、物品に付せられた模様というべきものである。そして、(証拠)を子細に検討しても、本件原画に見られる天然木部分のパターンの組合わせに、通常の工業上の図案(デザイン)とは質的に異なった高度の芸術性を感得し、純粋美術としての性質を肯認する者は極めて稀であろうと考えざるを得ず、これをもって社会通念上純粋美術と同視し得るものと認めることはできない。したがって、本件原画に著作物性を肯認することは、著作権法の予定していないところというべきである。

以上のとおりであるから、本件原画は著作物性を有するという控訴人の主張は採用できない。

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