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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<地図図形著作物> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年11月17日月曜日

判例/方位の吉凶を示す方位盤は著作物か

 

方位の吉凶を示す方位盤は著作物か

▶平成170928日東京地方裁判所[平成16()4697]

本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり,気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えているというのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである。

したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。

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判例/折り紙作品の折り図の著作物性

 

折り紙作品の折り図の著作物性

▶ 平成230520日東京地方裁判所[平成22()18968] ▶平成231226日知的財産高等裁判所[平成23()10038]

() 以上を前提に,本件折り図の著作物性について判断する。

折り紙作品の折り図は,当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが,その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該折り図は,著作物に該当するものと解される。

もっとも,折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。

() そこで検討するに,①「へんしんふきごま」の折り方は,32の折り工程からなるところ,本件折り図は,この折り方について,1ないし10の手順に分解した説明図及び完成形を示した説明図を基に説明したものであるが,32の折り工程のうち,どこからどこまでの折り工程を一つの手順にまとめて何個の説明図を用いて説明するかについては選択の幅があること,②本件折り図は,別紙のとおり,最初の折り工程から完成形に至るまでの折り工程について,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,紙の表と裏を色分け(赤色と無色)した各説明図において,折り筋を付ける手順を示す矢印,折り筋を付ける箇所及び向きを示す点線(谷折り線・山折り線),付けられた折り筋を示す実線,折った際に紙が重なる部分を予測させるための仮想線を示す点線によって折り方を示すことを基本とし,これらの折り工程のうち矢印,点線等のみでは読み手が分かりにくいと考えた箇所について説明文及び写真を用いて折り方を補充して説明したものであること,③本件折り図に従えば,「へんしんふきごま」の折り紙作品を特段の支障なく作成できることによれば,本件折り図を全体としてみた場合,上記説明図の選択・配置,矢印,点線等と説明文及び写真の組合せ等によって,「へんしんふきごま」の一連の折り工程(折り方)を見やすく,分かりやすく表現したものとして創作性を認めることができるから,本件折り図は,著作物に当たるものと認められる。

 

[控訴審]

すなわち,著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法2条1項1号参照)。原告の主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない。

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2025年9月24日水曜日

判例/地質図・柱状図は著作物に当たるか

 

地質図・柱状図は著作物に当たるか

平成141114日東京高等裁判所[平成12()5964]

層序の記載については同一性が認められるものの,この部分に係る被侵害部分の記載に,著作権の保護に値する創作性があるということはできない。それは,この部分が,個々の地層名とそれらが形成された年代を横軸に対比させた上で,その先後関係を縦軸に配置したものであり,その表現方法は,一般的なものであって,同程度の学識経験がある者であれば,同じ体裁の図を作るものと認められるからである。

()

柱状図は,基本的に個々の地層の種類,厚さ,相互の上下関係(これら自体が,自然的事実であることは,事柄の性質上,明らかである。)を柱状に記載するものであり,その書式にも定型性があると認められるから,同程度の観察力と知識を有する者が上記事項についての同じ認識に基づいて作成すれば,同じあるいはほとんど同じ図面となるものと認められる。本件でも,被侵害部分は,柱状図としては一般的な書式で記載されており,そこに作成者の個性が表されているものとは認められない(「v」ないし「レ」印で軽石を表象することも,創作性があることとは認められない。)。このような柱状図を作成するためには,調査と分析に相当の手間と時間がかかるものであり,そこに作成者の思考の結果が現れていることは疑いようがない。しかし,この思考結果そのものは,著作権法による保護の対象となるものではない。

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2025年9月10日水曜日

判例/建築設計図の侵害性

 

建築設計図の侵害性

▶平成120824日大阪地方裁判所[平成11()3635]

設計図の著作物について著作権侵害の成否を判断するに当たっては、まず、創作的な表現と評価できる作図上の表記の仕方が複製判断の対象とされる設計図と原著作物の間で共通しているか否かを基準としなければならず、原著作物である設計図に具現された企画の内容や、そこから読み取り得るアイデアが共通するからといって著作物としての同一性を肯定することはできない。

しかも、建築設計図は、主として点又は線を使い、これに当業者間で共通に使用される記号、数値等を付加して二次元的に表現する方法により作成された図面であり、極めて技術的・機能的な性格を有する上、同種の建物に同種の工法技術を採用しようとする場合には、おのずから類似の表現を取らざるを得ないという特殊性を有することから、複製判断の対象とされる設計図と原著作物との間で、このような表現方法が共通していたとしても、創作的な表現が再製されたものとして同一性を肯定することはできないというべきである。

また、建築設計図書は、複数の図面から構成されているのが通常であり、本件においても、原告企画書中の建築設計図書は24枚の図面、原告改良企画書中の建築設計図書は7枚の図面から構成され、被告の建築設計図書は18枚の図面から構成されているが、著作物性を有するのは設計図書全体であるから、類否の検討に当たっては、一枚の図面の特定部分とそれに対応する部分を比較するのではなく、その部分が建築設計図書全体に果たしている役割を考慮しなければならない。

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判例/建築設計図の侵害性

 

建築設計図の侵害性

▶平成120308日名古屋地方裁判所[平成4()2130]

三 争点2(被告設計図は、原告設計図を複製したものか。)について

1 著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、本件において、複製の事実が認められるためには、①被告設計図が原告設計図に依拠して作成されていること、②原告設計図と被告設計図との間に同一性が認められることが必要である。

2 証拠によれば、被告I設計代表者は、被告設計図を作成する以前に、被告T建設から原告設計図書を渡されており、原告設計図を横に置いて被告設計図を作成したのであり、被告設計図のうち、原告設計図を見ないで作成したものはなく、外注した設備図面についても、外注先に、原告設計図書と、被告設計図のうち被告I設計代表者が作成したものを渡しているというのであるから、依拠の機会があったことは明らかである。

被告I設計代表者は、原告設計図を見てはいるが、原告設計図を写す意思(依拠の意思)はなく、被告設計図は独自に作成したものである旨供述する。

しかし、被告I設計代表者の供述を全体として見れば、結局、被告I設計代表者は、被告Hフーヅに依頼されたように、本件建物の建築費を8億円まで下げるためには、原告設計図を大幅に改変する必要があったところ、右改変は、設計変更という程度を越えて、独自に設計したと評価できる程度まで達していた旨述べているにすぎない。

そして、本件で著作物とされるのは図面であるから、たとえ被告I設計代表者が独自に本件建物の設計をし直したとしても、それが図面として表現された場合に、原告の表現と同一と認められる部分があれば、原告設計図を見ている(依拠の機会がある)以上、実際にもそれに依拠しているものと認めざるを得ない。

3 ②の要件である同一性の判断にあたっては、複製であると主張されている被告図面と原告図面を比較することになるが、その際、両図面が全く同じであることは必要でなく、原告図面の内容及び形式を覚知させるに足る同一性があれば、②の要件を満たすものといえる。したがって、異なる部分があったとしても、それが、量的あるいは質的に微細であって、図面全体の同一性が損なわれる程度のものでなければ、右部分の存在は、同一性ありとの判断に影響を及ぼすものではない。

逆に、同じ部分があるとしても、異なる部分の存在により、量的あるいは質的に別の著作と観念される程度に至ったものは、複製ということはできない。

よって、被告図面について、原告図面と同一性があるかについて、判断する。

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2025年8月15日金曜日

判例/万年カレンダーの著作物性

 

万年カレンダーの著作物性

▶昭和590126日大阪地方裁判所[昭和55()2009]

本件カレンダーの万年暦と索引表の組合わせ、左右に暦年を配し、上段に各月を配し、その交点に長方形の色彩を配する万年暦の構成は、回転型式やスライド型式で既知のものとなつている万年暦の構想を、索引表と標識体の組合わせによるカレンダー方式に置き換えただけのものであつて、右既知の万年暦の思想を伝達するものとして特に学術的な創作的表現といい得るかどうかには、それが実用新案法上、新規な考案として認め得るにしても、いまだちゆうちよを覚える。

のみならず、本件カレンダーの構成は、本件考案が実施された結果の具体的表現形態そのものであり、本件カレンダーは結局のところ本件考案の一実施例品というべきものである。そうだとすると、考案を考案それ自体として実用化した作品は、たとえその考案が学術的なものであり、新規独創性を有するにせよ、単なる実用品であつて当該思想(考案)を「創作的に表現する」著作物には該らない(考案の内容を説明するための記述や図表は学術思想の表現として著作物性を有するが、考案の実施である作品そのものには著作物性がない)ものと解すべきである。

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判例/実験結果等のデータをグラフ化した図表の著作物性を否定した事例

 

実験結果等のデータをグラフ化した図表の著作物性を否定した事例

平成170525日知的財産高等裁判所[平成17()10038]

3 控訴人は,生のデータをグラフ化する場合には,一様でない表現が可能であるから,データをグラフ化した本件図表は,著作物に当たる旨主張する。

控訴人の指摘するように,実験結果等のデータをグラフとして表現する場合,折れ線グラフとするか曲線グラフとするか棒グラフとするか,グラフの単位をどのようにとるか,データの一部を省略するか否かなど,同一のデータに基づくグラフであっても一様でない表現が可能であることは確かである。

しかしながら,実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しないものと解すべきである。なぜなら,上記のようなグラフまでを著作物として保護することになれば,事実又はアイディアについては万人の共通財産として著作権法上の自由な利用が許されるべきであるとの趣旨に反する結果となるからである。しかるところ,本件図表は,その個々の正確な意味内容は本件全証拠によっても必ずしも明らかではないものの,その体裁に照らせば,いずれも,C研究室が高硫黄・高金属常圧残油の水素化分解触媒の開発について行った実験の結果等のデータを,一般的な通常の手法に従って,データに忠実に,線グラフや棒グラフとして表現したものであると認められる。したがって,本件図表は,著作物に当たらないものといわざるを得ず,控訴人の上記主張は理由がない。

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判例/丸棒矯正機の設計図の著作物性を認めた事例

 

丸棒矯正機の設計図の著作物性を認めた事例

▶平成40430日大阪地方裁判所[昭和61()4752]

() 原告技術部長他数名の原告従業員が、原告(会社)の発意に基づき、職務上作成した、原告が製作販売するKVS―135型丸棒矯正機(「原告矯正機」)の設計図のことである。なお、「丸棒矯正機」とは、特殊形状の二本以上のロールを用いて、金属の丸棒製作工程中に生じた丸棒材の曲がりを真っ直ぐに矯正するとともに、表面切削後の荒れた表面を磨いてつややかにする機能を有する機械である。

 

原告本件設計図は、原告の設計担当の従業員らが研究開発の過程で得た技術的な知見を反映したもので、機械工学上の技術思想を表現した面を有し、かつその表現内容(描かれた形状及び寸法)には創作性があると認められる。したがって、原告本件設計図はそれぞれ丸棒矯正機に関する機械工学上の技術思想を創作的に表現した学術的な性質を有する図面(著作権法1016号)たる著作物にあたるというべきである。但し、原告の主張中の、ハイドロナットの使用や、サイドフレームを使用した三層構造を採用したこと、クラウンフレーム内における油溝を三条構造としたこと、ベッドフレームにおける油回収に一部開放機構を採用したこと、上ロールの上下調整システムにウォームとウォームホィール方式を採用したこと、ロールの角度調整システムに油圧シリンダーと油圧モーター方式を採用したこと、バイオネット構造において四山を採用したことに関し、それらの構造を採用するという技術的思想そのものは、要件を満たした場合に特許法ないし実用新案法により保護されるべき性質のものであり(その意匠が意匠法により保護される場合もある)、著作物として保護されるのは、その表現(図示された形状や寸法)であると解される。

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判例/建築設計図の著作物性

 

建築設計図の著作物性

▶平成120308日名古屋地方裁判所[平成4()2130]

二 争点1(原告設計図は著作物といえるか。)について

1 著作権法(以下「法」という。)上保護される著作物であるためには、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものでなければならないところ(法211号)、建築設計図は、学識、経験、個性によって決定された設計者の思想が図面として表現されたものであり、学術的な表現であるということができるから、その表現に創作性が認められるものについては、著作物性が認められる。

建築設計図を著作物として保護するのは、建築の著作物(法1015号)のように、建築物によって表現された美的形象を模倣建築による盗用から保護する趣旨ではないから、美術性又は芸術性を備えることは必要ない。

また、法は保護の要件として、創作性があることを要求しているだけであって、創作性が高いものであることは要求していないから、設計する建物はありふれたものでもよく、特に新奇なものである必要もない。そして、図面に設計者の思想が創作的に表現されていれば、著作物性としては十分であり、建物の建築図面として、その図面により建築するについて十分であるかどうかという図面の完全性が要求されるものでもない。

2 原告図面1(公図の写し)について

原告図面1は、本件建物の敷地付近の公図の写しに、敷地の周囲の道路の幅、敷地となる土地の周りの長さと面積を記入した図面と敷地の所有者名と地番、地積を記載した敷地面積表からなるものである。

しかしながら、公図は、登記所に備えられているものであり、原告もそれを写したにすぎないから、公図の写し部分に創作性はなく、著作権は発生しない。

原告図面1には、本件建物の敷地の面積、周りの長さ及び道路幅が記載されており、また、所有者ごとに土地の地番や面積等をまとめた敷地面積表が記載されているが、これらの記載は、客観的な事実であって、何人が記載しても同一となるはずのものであり、その表現方法も同一とならざるを得ないから、右部分は創作的表現ということはできず、原告に著作権は成立しない。

原告は、寸法を入れる位置にしても、分かりやすさなどを工夫した旨主張するが、創作的表現と評価できるものではない。

よって、原告図面1には、著作物性を認めることはできない。

3 原告図面6(現況敷地平面図)について

原告図面6は、本件建物の敷地の現況図であるが、現況図とは、原告が設計を依頼された建物自体ではなく、その敷地について、道路との境界線や、長さ、杭の位置などを、現況どおりに図面化したにすぎないものであり、客観な事実の記載であり、縮尺、方角さえ決まれば、ほぼ同一の記載となるものであって、その記載には創作性を認め難いものである。原告は、段差の表現方法について工夫した旨主張するが、創作的表現と評価できるものではない。

よって、原告図面6には、著作物性を認めることはできない。

4 表について

原告設計図のうち、表の形式で記載されているのは、前記原告図面1の敷地面積表のほか、仕上表、空調機器に関する機器表(1)、換気機器に関する機器表(2)、換気計算書の取入外気量、火気使用室換気量、衛生器具表、スプリンクラー設備計算表及び補助散水・設備計算表である。

表については、記載された事項の内容や数値自体は、表現方法ではないから著作物性はなく、表に著作物性が認められる場合は、表の形式そのものが特別のものであったり、表を構成する項目の選択やその記載の順序などに特別の工夫が見られる場合に限られるものである。

原告は、各項目の記載方法や順序が原告のオリジナルであると主張するが、記載内容でなく、その配列に著作物性があると認められるためには、すなわち、編集著作物であると認められるためには、配列がオリジナルであるだけでは不十分なのであって、配列自体に特に創作性が認められる場合でなければならない。

前記原告図面中の表には、特別の表形式のものはなく、表の構成する項目の選択やその記載の順序に特別の工夫はない。

結局、原告設計図中の表部分については、著作物性は認められない。

5 その余の図面について

原告代表者の供述によれば、設備図面を含め原告図面は、原告代表者がその一級建築士としての知識と技術を駆使して、そのスタッフとともに、あるいは設備業者に依頼して、創作したものと認められ、そこには原告の思想が表現されているといえるから、原告の著作物であると認められる。

被告らは、本件建物が、被告Hフーヅの構想、指示に基づいて作られているとして、原告設計図に著作物性はないと主張するが、著作物として保護されるべきは、著作物から読み取ることのできる建築思想(アイデア)ではなく、その表現形式自体であるから、著作権者がアイデアの発案者である必要はないのである。被告Hフーヅが、本件建物自体について、具体的なイメージを有しており、それを原告に伝えていたとしても、原告は、依頼者である被告Hフーヅの希望を容れて、そのイメージが現実に建築が可能なように、設計図として表現したのであって、そこには、原告の個性が現れ、創作性が表現されていることは明らかである。

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判例/建築設計図の著作物性

 

建築設計図の著作物性

▶平成30409日福島地方裁判所[平成2()105]

建築設計図は、一般に、学術的性質を有する図面にあたり、そして建築家がその知識と技術を駆使して作成したものでそこに創作性が認められる限り、著作権法1016号の著作物性を肯定し得ると解され(る。)

▶平成26117日東京地方裁判所[平成25()2728]

「学術的な性質を有する図面」としての設計図の創作性は,作図の対象である物品や建築物を設計するための設計思想の創作性をいうものではなく,作図上の表現としての工夫に作成者の個性が表現されている場合に認められると解すべきであって,設計思想そのものは,アイデアなど表現それ自体ではないものとして著作権法の保護の対象とはならないというべきである。

▶平成27525日知的財産高等裁判所[平成26()10130]

建築物の設計図は,設計士としての専門的知識に基づき,依頼者からの様々な要望,及び,立地その他の環境的条件と法的規制等の条件を総合的に勘案して決定される設計事項をベースとして作成されるものであり,その創作性は,作図上の表現方法やその具体的な表現内容に作成者の個性が発揮されている場合に認められると解すべきである。もっとも,その作図上の表現方法や建築物の具体的な表現内容が,実用的,機能的で,ありふれたものであったり,選択の余地がほとんどないような場合には,創作的な表現とはいえないというべきである。

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2025年7月15日火曜日

判例/地図(住宅地図)の侵害性

 

地図(住宅地図)の侵害性

昭和530922日富山地方裁判所[昭和46()33]

1 一般に、地図は、地球上の現象を所定の記号によつて、客観的に表現するものにすぎないものであつて、個性的表現の余地が少く、文字、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例ではあるが、各種素材の取捨選択、配列及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たすものであるから、なおそこに創作性の表出があるものということができる。そして、右素材の選択、配列及び表現方法を総合したところに、地図の著作物性を認めることができる。

ところで、地図における著作権侵害の成否を判断するに際しては、地図における著作物性が右のとおりであることの結果として、著作物性がある部分を個々的に抽出することは困難であり、結局、侵害の成否は全体的に判断せざるを得ないことになる。

2 著作権侵害の成否を判断するに際し、一般に新たに作成された著作が、既に存在する他人の著作物に依存することなく、独自に創作されたものであれば、結果的に他人の著作物と同一になることがあつても、著作権侵害とはならないのであるが、新著作が他人の著作物を基本として作成された場合であつても、そこに独自の創作性が加えられた結果、通常人の観察するところにおいて、旧著作の著作物としての特徴が、新著作の創作性の陰にかくれて認識されないときは、新著作は単なる複製でも二次的著作物でもなく、他人の著作物の自由な利用により創作された独自の著作物であると認められ、著作権侵害とはならないというべきである。この場合、模範として利用された旧著作の独自性が顕著であればあるほど、新著作中に化体さたた精神的業績が高度であることが、新著作を独立の著作物として保護するため必要とされるが、旧著作が個性的表現の僅少なものであれば、これに対する著作権による保護は厳格に限定されねばならないから、新著作の著作物としての独自性は認められ易くなるといえる。

3 いわゆる住宅地図は、特定市町村の街路及び家屋を主たる掲載対象として、線引き、枠取りというような略図的手法を用いて、街路に沿つて各種建築物、家屋の位置関係を表示し、名称、居住者名、地番等を記入したものであるが、その著作物性及び侵害判断の基準については、基本的には先に地図一般について述べたところと同様である。ただ、住宅地図においては、その性格上掲載対象物の取捨選択は自から定まつており、この点に創作性の認められる余地は極めて少いといえるし、また、一般に実用性、機能性が重視される反面として、そこに用いられる略図的技法が限定されてくるという特徴がある。従つて、住宅地図の著作物性は、地図一般に比し、更に制限されたものであると解される。

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判例/地図の著作物の複製・翻案の判断枠組み及び判断手法(検討手順)

 

地図の著作物の複製・翻案の判断枠組み及び判断手法(検討手順)

令和5414日東京地方裁判所[令和3()17636]▶令和51012日知的財産高等裁判所[令和5()10059]

[控訴審]

1 当裁判所も、被控訴人各地図は控訴人各地図を複製、翻案したものとはいえず、控訴人主張の著作権及び著作者人格権の侵害は認められないと判断する。

その理由は、以下のとおりである。

2 争点1-1(控訴人地図1に関する著作権侵害の成否)について

(1) 総論

ア 地図の著作物の複製・翻案の判断枠組みについて

地図は、自然の地形、土地の利用状況、人工の造営物の種類・位置・形状、国境・行政区画等の境界、住所表示その他の地理情報を、図形、記号、文字、配色等を組み合わせて表現するものである。そして、地理情報自体は万人が共有すべき客観的な情報であるから、地図の著作物としての創作性は、地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現方法に求められると解される。もっとも、地図の実用的な用途を踏まえると、地図の利用者が地図に求める情報は常識的に自ずと一定の範囲に定まると考えられる上、地理情報としての客観性を保ちつつ、その内容を一見して認識可能な態様で示す必要から来る表現上の内在的制約も想定されるところである。その結果、地理情報の取捨選択にせよ、その配置等の具体的な表現方法にしても、選択の幅は狭く、創作的表現の余地は大きくないものと解される。こうした点を踏まえると、地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現に係る特徴が、上記のような常識的な選択の幅の範囲内にとどまり、従来の地図に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えるに至らない場合には、そのような個別の特徴の部分的な一致のみから直ちに創作的表現の同一性を導いて広く独占を認めてしまうような判断は適切でなく、相違点も含めた総体としての全体的な考察により、その表現上の本質的部分の特徴を直接感得できるかどうかを検討する必要がある。

イ 判断手法(検討手順)について

ところで、控訴人と被控訴人は、複製又は翻案の有無を検討する手法としての2段階テストと濾過テストの採否についてそれぞれの立場で主張しているが、要は、創作性のある表現部分について同一性があるといえるかどうかの判断がされれば足りるのであって、その判断に至る過程で、最初に両著作物の共通部分の抽出を行うか、創作性の認められる表現上の特徴にまず着目するかという検討手順に関しては、合理的・効率的な判断に資するための合目的的な観点から、事案に応じて適切に使い分ければ足りる。

本件では、控訴人の主張する手法(控訴人のいう2段階テスト)に沿って(部分的に濾過テストの手法を併用する。)、以下、検討することとする。

(2) 控訴人地図1の表現上の本質的特徴について

ア 控訴人は、控訴人地図1の表現上の本質的特徴として、別紙2記載の本質的特徴①~⑦を主張するところ、別紙の各控訴人地図1に照らして、控訴人地図1がその主張する特徴を備えていると認めることはできる。

そして、上記(1)アで述べたところに照らすと、上記本質的特徴①~⑦は、それぞれを個別に取り上げれば、地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現につき、上記のような制約の下での狭い幅での選択が示されているにとどまるものであり、従来の地図に比して顕著な特徴を有するといった独創性が含まれているとまでは認められない。

イ この点、控訴人は、特に本質的特徴①、同③、同④、⑤について、従来の常識にとらわれない素材の取捨選択を行うなどしたものであって、その一部の組み合わせだけでも独創性のある表現が認められる旨主張する。

しかし、まず、本質的特徴①に関していえば、後述するとおり、そもそも被控訴人各地図と共通するとは認められないものである(この点は濾過テストの手法を用いた。)。そして、本質的特徴③については、控訴人地図1の作成当時、建物及び住宅の真上から見た形状を影なしのポリゴンで記載した地図は複数存在したと認められ、本質的特徴④、⑤については、控訴人地図1の作成当時、建物の名称及び住宅の番地が、建物及び住宅のポリゴンの中央付近に、(番地についてはアラビア数字で)折り返すことなく横書きされた記載を含む地図は複数存在したと認められ、いずれもありふれた特徴にすぎない。

なお、控訴人は、上記証拠の地図は、新旧番地を対照するという特殊な背景の下で作成されたものが含まれているなどと主張するところ、確かに、「番地」の取捨選択において、控訴人の主張する事情は重要な意味を有するといえるが、上記の証拠の中には、住居表示新旧対照図以外のものも含まれているし、「番地」の取捨選択以外の要素に関しては、従来のありふれた表現を示す証拠としての適格性を失うものではない。

控訴人の上記主張は採用できない。

ウ 以上に述べたところを踏まえると、控訴人地図1は、別紙2の本質的特徴①~⑦を備える総体として表現上の創作性を認めることができるものであり、その表現上の本質的部分の特徴を被控訴人各地図から直接感得できるかどうかも、これを断片的、部分的に捉えるのではなく、相違点も含めた総体としての全体的な考察により検討する必要があるというべきである。

(3) プロアトラス地図との比較検討

ア 各別紙のプロアトラス地図と控訴人地図1とを、控訴人主張の本質的特徴の項目ごとに比較すると、以下のとおり認められる。

()

イ 以上のとおり、控訴人地図1とプロアトラス地図とを比較検討すると、地理情報の取捨選択、その配置等の具体的な表現方法における共通点は、断片的・部分的なものにとどまり、控訴人の主張する本質的特徴とされる点の多くは重要な点で一致しておらず、かえって、地図情報を表現する際の創作性に強い影響を及ぼす要素につき有意な相違点が多数認められるのであって、これらを全体的にみた場合、控訴人地図1の表現上の本質的部分の特徴がプロアトラス地図から直接感得できるとは、到底認めれないというべきである。

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2025年7月8日火曜日

判例/ゼンリン住宅地図の著作物性を認めた事例

 

ゼンリン住宅地図の著作物性を認めた事例

令和4527日東京地方裁判所[令和1()26366]

1 争点1(原告各地図の著作物性)について

(1) 一般に、地図は、地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号によって、客観的に表現するものであるから、個性的表現の余地が少なく、文学、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例である。しかし、地図において記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表れ得るものということができる。そこで、地図の著作物性は、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して判断すべきものである。

(略)

(4) 前記によれば、本件改訂[注:住宅地図をデジタルデータ化するための改訂作業のこと]により発行された原告各地図は、都市計画図等を基にしつつ、原告がそれまでに作成していた住宅地図における情報を記載し、調査員が現地を訪れて家形枠の形状等を調査して得た情報を書き加えるなどし、住宅地図として完成させたものであり、目的の地図を容易に検索することができる工夫がされ、イラストを用いることにより、施設がわかりやすく表示されたり、道路等の名称や建物の居住者名、住居表示等が記載されたり、建物等を真上から見たときの形を表す枠線である家形枠が記載されたりするなど、長年にわたり、住宅地図を作成販売してきた原告において、住宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により表示したものということができる。したがって、本件改訂により発行された原告各地図は、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたもの(著作権法2条1項)と評価することができるから、地図の著作物(著作権法10条1項6号)であると認めるのが相当である。

また、前記のとおり、本件改訂より後に更に改訂された原告各地図は、いずれも本件改訂により発行された原告各地図の内容を備えるものであるから、同様に地図の著作物であると認めるのが相当である。

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2025年6月23日月曜日

判例/土地宝典の著作物性を認めた事例

 

土地宝典の著作物性を認めた事例

平成200131日東京地方裁判所[平成17()16218]▶平成20930日知的財産高等裁判所[平成20()10031]

() 土地宝典は,個人又は出版社が法務局等に備え付けの旧土地台帳附属地図(「公図」)に旧土地台帳の地目・地積等の情報を追加し,編集したもので,索引図としての全図と対象地域を数枚に納めた切図とで構成され,関東を始め中部,関西,九州,東北地方の一部などで,原則として市町村ごとに1冊が発行されている。土地宝典の発行は,明治初期から開始され,現在も刊行が続いている。その発行者も多数名にのぼり,明治初期から現在までに確認された発行者として帝国地図を含む41名が指摘された文献もある。土地宝典に使用される原図は,①明治前期以降実施された壬申地券交付,地租改正,地押調査,地籍編成の諸事業で調整された地籍図類,②昭和26年の国土調査法の施行に伴う地籍調査事業による地籍図,③市区改正区画整理,耕地整理事業などにより新調された公図の3種類に大別されるものの,変更後の訂正が速やかにされる法務局の公図が優先して使用される。

 

1 争点1(本件土地宝典の著作物性)について

(1) 地図の著作物性について

本件土地宝典は,地図の一種であると解されるので,まず,地図の著作物性について検討する。

一般に,地図は,地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号によって,客観的に表現するものであるから,個性的表現の余地が少なく,文学,音楽,造形美術上の著作に比して,著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例である。しかし,地図において記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては,地図作成者の個性,学識,経験等が重要な役割を果たし得るものであるから,なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そこで,地図の著作物性は,記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して,判断すべきものである。

(2) 本件土地宝典の著作物性について

本件土地宝典は,民間の不動産取引の物件調査に資するという目的に沿って作成されるものであり,次のような特徴を備えている。

ア 本件土地宝典は,公図を主要な素材の一つとするものではあるものの,地域の特徴に応じて,隣接する複数の公図を選択した上でこれらを接合して一葉内に収録し,より広範囲の地図として一覧性を高めて公図に記載された情報を表示するものであり,そのため,素材とされた公図の縮尺を変更し,また,複数の公図を接合する際に,公図上の誤情報があれば,必要な補正を施して,これを接合している。

例えば,公図の縮尺は一般に600分の1であるが,本件土地宝典の一部である甲29号証においては,一葉内に収録する範囲が各地域ごとに選択され,複数の公図が接合された結果,その縮尺としては,6000分の1, 5000分の1, 2500分の1という三つの縮尺が用いられている。

また,例えば,甲45号証は,本件土地宝典の一部とそれに対応する公図とを比較対照した原告A作成の報告書であり,その4頁以下には,右方に本件土地宝典,左方に公図(本件土地宝典に対応する地域の公図が複数枚にまたがる場合にはこれを接合した後のもの)という形で比較対照がなされ,34頁以下には,公図と本件土地宝典の表現との主要な相違点が具体的に記載されているものであるが,これによれば,公図が必ずしも整合せず,一部の土地が重なり合ってしまうような場合も,本件土地宝典においては,適宜整理して表示されており,また,公図の東西南北の向きも適宜修正されて接合されている。

さらに,例えば,本件土地宝典の一部である甲4号証の2,その中に含まれる土地の登記簿である甲4号証の1,その中に含まれる地域の公図である甲4号証の3及び甲4号証の4によれば,甲4号証の2の右方上部に記載されている富士宮市大中里字西ノ山2151番2の土地と2151番10の土地については,時期を異にする2枚の公図(甲4の3及び甲4の4)において, 土地の位置(地番の表示)が入れ替わって表示されており,公図上は地番表示情報が混乱しているのに対し, 本件土地宝典(甲4の2)の作成にあたっては,この異なる地番表示情報のうち,登記簿上の地積情報に適合する地番表示情報が取捨選択されて表示されている。

イ 本件土地宝典においては,素材とされた複数の公図が単に接合されているにとどまらず,公図記載の情報のうち,道路,水路,河川など公有地で民間取引の対象外となる土地やJRの鉄道敷地などについては,公図上の土地境界情報を記載せずに,白色ないし黒色等で一体的に連続して表示されている。また,本件土地宝典においては,地目や地積など登記簿に記載された情報の一部が取捨選択されて,地番についてはアラビア数字横書きで,地積については漢数字縦書きで,地目については独自の記号で表示されている。さらに,公共施設の位置情報など不動産物件調査の便に資する情報も適宜追加されて記載されている。

例えば,本件土地宝典の一部である甲4号証の2,その中に含まれる土地の登記簿である甲4号証の1,その中に含まれる地域の公図である甲4号証の3及び甲4号証の4によれば,甲4号証の2の右方上部に記載されている富士宮市大中里字西ノ山2151番2の土地について,土地の形状及び「-2」と表示されている地番といった公図(甲4の3及び甲4の4)に記載されている情報に加えて,地積(264平方メートル)及び地目(原野)という登記簿(甲4の1)記載の情報が取捨選択されて表示されている。また,公図(甲4の3及び甲4の4)によれば,この2151番2の土地と2151番10の土地の間には,2151番11の土地が存在するものと認められる。これに対し,本件土地宝典(甲4の2)においては,2151番11の土地は,これに隣接する2151番9の土地や2151番13の土地などとともに,単に帯状に白地化され,一体的に道路として表示されており,地番表示も土地境界表示もない。そして,本件土地宝典においては,この白地化された帯状の道路は,公図(甲4の4)において,「道」と表示された部分(右方下部の2158番6の1の土地と2158番13の土地との間において分岐し,2158番9の2の土地や2158番9の3の土地に接しつつ上方に伸びる「道」と表示された部分)と,右方上部の2152番4の土地に接する地点において,白地化された帯状の道路としてつながっている。すなわち,本件土地宝典(甲4の2)においては,公図上「道」と表示されたものはもちろん,公図上は「道」と表示されていない土地(例えば,上記の2151番11の土地,2151番9の土地,2151番13の土地など)についても,現況が「道路」であれば,道路の敷地となっている土地同士の境界情報を記載しないことを選択し,白地化された帯状の道路として表現しているものである。

また,例えば,前掲甲45号証において,本件土地宝典には,公図上は単に分筆された土地として表示されていても,現況が「水路」や「道路」ないし「JR鉄道」である場合は,黒塗りされた「水路」や,白地化された「道路」ないし「線路」として表示されている(なお,本件土地宝典では,公図上「鉄道用地」とされている土地についても,これと隣接する複数の土地とともに「線路」としての表示がされているものもある。また,本件土地宝典においては,公図にはない「公園」という情報や,公図の地番区域欄に表示されている「字」の情報が,地図上に表示されているなど,公図とは視覚効果の異なる表示方法が用いられている。

さらに,本件土地宝典の一部である甲6号証の1によれば,凡例として,「農協」,「郵便局」,「駐在所・派出所」,「警察署」,「学校」,「支所」,「役場」,「寺院」,「神社」,「墓地」,「橋梁」,「私鉄」なども列挙されており,実際に,本件土地宝典においては,公図に記載されている情報に加え,このような現地踏査の際に目印となりそうな公共施設の一部についてその所在情報が取捨選択されて,表示されているものである。

なお,凡例として挙げられている「同一親番」の情報は,公図に記載された情報ではあるものの,本件土地宝典においては,筆界に独特の記号を付すことで,公図とは視覚効果の異なる表示方法を用いていることが認められる。

ウ 以上によれば,本件土地宝典は,民間の不動産取引の物件調査に資するという目的に従って,地域の特徴に応じて複数の公図を選択して接合し,広範囲の地図として一覧性を高め,接合の際に,公図上の誤情報について必要な補正を行って工夫を凝らし,また,記載すべき公図情報の取捨選択が行われ,現況に合わせて,公図上は単に分筆された土地として表示されている複数の土地をそれぞれ道路,水路,線路等としてわかりやすく表示し,さらに,各公共施設の所在情報や,各土地の不動産登記簿情報である地積や地目情報を追加表示をし,さらにまた,これらの情報の表現方法にも工夫が施されていると認められるから,その著作物性を肯定することができる。

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2025年6月17日火曜日

判例/地図の著作物性

 

地図の著作物性

昭和530922日富山地方裁判所[昭和46()33]

一般に、地図は、地球上の現象を所定の記号によって、客観的に表現するものにすぎないものであつて、個性的表現の余地が少く、文字、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例ではあるが、各種素材の取捨選択、配列及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たすものであるから、なおそこに創作性の表出があるものということができる。そして、右素材の選択、配列及び表現方法を総合したところに、地図の著作物性を認めることができる。

平成130123日東京地方裁判所[平成11()13552]

一般に、地図は、地形や土地の利用状況等を所定の記号等を用いて客観的に表現するものであって、個性的表現の余地が少なく、文学、音楽、造形美術上の著作に比して創作性を認め得る余地が少ないのが通例である。それでも、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験、現地調査の程度等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そして、地図の著作物性は、右記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して、判断すべきものである。

そこで、原告著作物に掲げられた地図について検討すると、例えば「竜源寺」の地図では、全体の構成は、現実の地形や建物の位置関係がそのようになっている以上、これ以外の形にはなり得ないと考えられるが、読者が最も関心があると思われる「近藤勇胸像」や「近藤勇と理心流の碑」等を、実物に近い形にしながら適宜省略し、デフォルメした形で記載した点には創作性が認められ、この点が同地図の本質的特徴をなしているから、著作物性を認めることができる。他方、たとえば「関田家及び大長寺周辺」の地図などは、既存の地図を基に、史跡やバス停留所の名前を記入したという以外には、さしたる変容を加えていないので、特段の創作性は認められない。

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