このブログを検索

自己紹介

著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<不法行為全般> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 重要判例<不法行為全般> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年10月28日火曜日

判例(最新)/著作権侵害通知フォームからの通知の不法行為性が問題となった事例

 

著作権侵害通知フォームからの通知の不法行為性が問題となった事例

令和7311日東京地方裁判所[令和5()70125]▶令和71016日知的財産高等裁判所[令和7()10037]

[控訴審]

⑴ 著作権侵害通知フォームについて

ア 原告らは、著作権侵害通知がされると、対象とされた動画は原則として直ちに削除され、却下されるのは例外であるから、通知者は、通知が正確であることを確認した上でこれを行う注意義務を負っており、原判決のように「専ら不当な目的で著作権侵害通知フォームからの通知がされた場合」に限定して違法性を認めるのは合理的理由がない旨主張する。

しかしながら、通知された著作権侵害通知フォームの記載内容についてグーグルが一定の審査をした上で、削除の是非を決定しており、現に被告の著作権侵害を理由とする通知の中にも、削除申請が却下されたものがあることは前記補正の上引用した原判決に説示するとおりである。もとより、不正確な著作権侵害の通知をすることは適切ではないが、ある権利の侵害の疑いがある場合において、通知フォームの選択を誤り、著作権侵害通知フォームから通知したとしても、グーグルにおいては、通知内容に関する一定の審査をしていることを踏まえると、通知フォームの選択を誤ったからといって、直ちに通知の対象者との関係で、通知者の不法行為上の過失を認めることは相当ではない。そもそも、権利の侵害の疑いがある場合に、これをグーグルに通知することは、違法な行為ということはできない。その意味において、通知の違法性を認めるために「専ら不当な目的で著作権侵害通知フォームからの通知がされた場合」であることを要件とすることには合理性があるというべきである。

For more information

2025年8月23日土曜日

判例/他人の研究成果の「横取り(剽窃)」の(一般)不法行為性が争点となった事例

 他人の研究成果の「横取り(剽窃)」の(一般)不法行為性が争点となった事例

▶平成120329日東京高等裁判所[平成11()4243]

不法行為について

控訴人は、他人の研究成果に依拠し、その研究成果をあたかも自己のもののごとく装って発表することは、その発表の仕方が著作権侵害行為になるか否かにかかわらず、不法行為に該当するものであるのに、原判決は、著作権侵害の有無についてのみ判断し、不法行為を審理判断していないと主張する。

しかし、原判決は、争点一及び二において、被告第一論文並びに被告科研費論文及び第二論文が、いずれも原告論文及び原告報告を翻案したものであるか否かを詳細に検討した上、これを否定するに至り、このことを前提として、争点三において、これらの論文等の一部に共通する部分があるとしても、被告第一論文並びに被告科研費論文及び第二論文が原告論文及び原告報告を剽窃したものではなく、これらを発表することに違法性があるとは認められないと明確に判断している。そして、このように他人の論文等を翻案したものと認められない論文等の発表が不法行為を構成することを認めるに足る証拠はないから、控訴人の主張を採用する余地はない。

また、控訴人は、学術論文においては個々の記載の文章上の工夫より、論文の構造、論旨、論理展開が重要視され、先輩研究者といえども、自分がその分野の研究で先行したからといって、後輩研究者の研究成果を横取りしたり、研究論文を剽窃したりすることは許されないから、そのような行為は、研究者の学問的業績に対する権利、利益を奪うものであって、不法行為を構成すると主張する。

このような一般的見解自体は正当なものと解されるが、本件の場合、被告第一論文並びに被告科研費論文及び第二論文が、原告論文及び原告報告を翻案したものでなく、これらを剽窃したものでもない上、被告第一論文と原告論文とは、C論文の紹介を通じて「エスニシティ」を論ずるという基本的性格において共通する面があり、両者を全体として対比すると、その目的、構成、議論の展開、結論がいずれも異なるものと認められ、被告科研費論文及び第二論文と原告報告とを全体として対比しても、その目的、構成、論理展開がいずれも異なるものと認められる以上、その発表行為が不法行為に該当しないのは当然といわなければならない。

判例/「1通の弁護士の意見書を得ていたからといって,過失を免れるものではない」と判示した事例

 

「1通の弁護士の意見書を得ていたからといって,過失を免れるものではない」と判示した事例

平成30920日大阪地方裁判所[平成27()2570]

被告は,本件振付けに著作物性があるという確たる認識を有していなかったことを根拠に,本件振付けに係る著作権侵害行為に過失はあったとはいえないと主張し,実際にも,被告は,平成26年10月の時点で,弁護士から,原告のフラダンスの振付けには原則として著作物性はないとの意見書を得ていたと認められる。しかし,被告において本部長を務めていたP3が,クムフラがフラダンス教室において指導することをやめた後にも当該クムフラの創作した振付けを演じることができるか否かということが問題となっていた事例を聞き及んでおり,上記のとおり被告は原告による振付けの著作物性についても問題意識を持っていたことからすると,舞踊の著作物が著作物の一つとして法文上明記される(著作権法10条1項3号)一方,フラダンスの振付けの著作物性を否定する確定判例もない中で,1通の弁護士の意見書を得ていたからといって,過失を免れるものではないというべきである。

For more information

2025年8月16日土曜日

判例/虚偽の著作権侵害申告による人格権侵害に基づく精神的損害の賠償を求めることの可否

 

虚偽の著作権侵害申告による人格権侵害に基づく精神的損害の賠償を求めることの可否

令和6226日東京地方裁判所[令和5()70052]▶令和7219日知的財産高等裁判所[令和6()10025]

⑵ 前提事実及び上記⑴の認定事実を基に、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止された場合、不正競争防止法2条1項21号(虚偽告知)、4条に基づく損害賠償以外に不法行為が成立するかについて検討する。

ア 著作権侵害申告がされると、一定期間YouTubeにおける控訴人各動画の公開が停止されるが、インターネット上で動画配信サービスを提供するウェブサイトはYouTube以外にも存在しており、それらのウェブサイトを通じて動画を公衆の閲覧に供して表現活動を行うことは可能であり、YouTubeでの動画の公開が停止されたことによって、インターネット上で動画を公衆の閲覧に供する手段がなくなるわけではない。

YouTubeはグーグルという私企業が提供する動画配信サービスであり、動画の投稿者は、投稿のためにグーグルに代金を支払う必要はなく、むしろ、動画の閲覧数に応じて、YouTubeで流される広告からの収入の分配を得ることができる。グーグルはYouTubeの動画配信に関する規定、ポリシー及びガイドラインを定めてこれらを公表しており、動画の投稿者は、これらの規定やポリシー等の範囲内で、動画の投稿を行うものとされている。そして、グーグルは、YouTubeにおける動画による著作権侵害への対応として、投稿された動画に対して第三者が著作権侵害による削除通知(著作権侵害申告)を行った場合、当該通知が無効でなければ、動画の投稿者の意見を求めることなく、当該動画を削除(配信停止)し、動画の投稿者は、当該動画の配信の再開を求めるのであれば異議申立てを行うものとしており、このようなYouTubeの著作権侵害に係る制度は、グーグルによるYouTubeの動画配信に関する規定・ポリシーの一つであるといえる。そうすると、YouTubeに動画を投稿する者は、著作権侵害への対応について上記のような制度設計をしているYouTubeを自ら選択して、代金の支払をすることなく動画投稿を行い、閲覧数に応じて広告収入の配分を得ているのであって、著作権侵害申告に対して上記のような対応がとられることを前提として、著作権侵害に関する上記制度を含むものとしてのYouTubeのシステムを利用していると認められる。

そうであるとすれば、YouTubeの著作権侵害に係る制度に則っていることを前提として、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止され、著作権侵害があると考えて著作権侵害申告したことについて過失がある場合、一定期間動画が削除(配信停止)されたことにより、動画の配信がされていれば得られるはずであった収入を得られなかったという経済的損害について不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、4条に基づく損害賠償が認められるとしても、それ以外に動画投稿者の表現の自由その他の権利又は法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立は認められないというべきである。

イ もっとも、著作権侵害がないことを認識しながら、特定の動画投稿者について多数回にわたって著作権侵害申告を行い、動画の公開を妨げるような場合や、著作権侵害がないことを明確に認識してなくとも、著作権侵害申告を行う目的やそれに伴う行為の態様等の諸事情に鑑み、著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合は、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたものとして、例外的に不法行為の成立が認められる場合があるというべきである。

For more information

判例/他人の著作物を利用する者の過失責任の原則/利用許諾を受けようとする者の注意義務

 

他人の著作物を利用する者の過失責任の原則

▶平成16629日東京高等裁判所[平成15()2467]

他人の著作物を利用するに当たっては,それが著作権法その他の法令により著作権が制限され,著作者の承諾を得ない利用が許される場合に該当し,著作権を侵害することがないか否かについて十分に調査する義務を負うというべきであり,そのような調査義務を尽くさず安易に著作者の承諾を得なくても著作権侵害が生じないと信じたものとしても,著作権侵害につき過失責任を免れないというべきである。


利用許諾を受けようとする者の注意義務

▶平成23711日東京地方裁判所[平成21()10932]▶平成24228日知的財産高等裁判所[平成23()10047]

(2) 以上に基づいて検討するに,第三者が著作権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有しないのであれば,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできないのであるから,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用したときには,当該第三者に対する不法行為責任を免れないというべきである。

これを本件についてみるに,被告は,本件原版供給契約の締結当時,本件各原版について,原告又は「中国中央電視台等」が著作権を有し,GMG又はプレシャス社が著作権を有しないことを認識していたと認められるところ,被告が,原告又はCCTVに対し,GMG又はプレシャス社の利用許諾権限を確認したことや,それ以外の方法で利用許諾権限を確認したことを的確に認めることができる証拠はない。

そうすると,被告には,本件各原版の利用について過失があると認められるから,被告は,原告に対し,不法行為責任を負うというべきである。

For more information

2025年7月14日月曜日

判例/外国映画の配給会社の注意義務

 

外国映画の配給会社の注意義務

平成30419日大阪地方裁判所[平成29()781]

一般に映画は音楽を初め多数の著作物等を総合して成り立つことから,それらの著作物等の権利者からの許諾については,映画製作会社において適正に処理するのが通常である。また,外国映画の配給会社に,その著作物等の一つ一つについて,本国の映画製作会社が権利者から許諾を受けているか否かを確認させることは,多大なコストと手間を必要とし外国映画の配給自体を困難にさせかねないこととなる。このことからすると,外国映画の配給会社において,配給のために映画を複製する場合に必ずこれに先立って,当該映画に使用されている楽曲等に関する権利処理が完了しているか否かを確認するという一般的な注意義務を課すのは相当ではないというべきである。一般社団法人外国映画輸入配給協会の会長の陳述書において,外国映画の配給業界においては,外国映画における音楽原盤(レコード製作者)の権利処理については,本国の映画製作者等において権利処理済みであるということを前提とし,改めて権利処理の有無等を確認しないという実務慣行が確立しているとされていることは,この意味で肯認することができる。これに反する原告の主張は採用できない。

もっとも,本国の映画製作会社等が,ある楽曲の音源のレコード製作者の権利を有する者から適正な許諾を受けていないのではないかということを合理的に疑わせる特段の事情が存在する場合には,映画を複製することにより当該音源のレコード製作者の権利を侵害するという事態を具体的なものとして予見することが可能であるから,その場合には,これを打ち消すに足るだけの調査,確認義務を負う上,調査,確認を尽くしても上記疑いを払拭できないのであれば,当該音源を使用した当該映画の複製を差し控えるべき注意義務を負うと解するのが相当である。

この点について,被告[注:外国映画の配給会社]は,外国映画の配給会社にはおよそ当該映画に使用されている楽曲の音源に関する権利処理に関する調査,確認義務を負わせるべきではないとの主張をする趣旨にも思われる。しかし,本国の映画製作者等がレコード製作者の権利を有する者から適正な許諾を受けていないのではないかということを合理的に疑わせる事情に接した場合に,そのような疑問が払拭されないまま映画の複製を行うことは,レコード製作者の権利を侵害する可能性が高いのであるから,そのような場合にまで調査確認義務を負わないと解することは,前記のような外国映画の配給における業界の実情を前提としても相当でないというべきであり,被告の主張は採用できない。

For more information

判例/著作権表示(©マーク)がないことは「過失」がなかったことの根拠となるか

 

著作権表示マーク)がないことは「過失」がなかったことの根拠となるか

▶平成27910日大阪地方裁判所[平成26()5080]

被告P2は,原告は,自らの著作権を厳格に管理していたわけではなく,特に著作権の表示をせずに,自由に使用することも認めていたのであるから,被告P2がウェブ検索の結果探した画像をコピーして使用したとしても,その行為には過失は認められないと主張している。

しかしながら,著作物に著作権者の表示がなされていなくとも,当該著作物は著作権法上保護の対象となるのであり,現に,著作権表示のない著作物は多数存在している。そして,原告イラストは,美術の著作物として著作権の対象となることは明らかなものである。そうすると,仮に原告のホームページにおいて,原告イラストについて©マークによる著作権表示がなかったとしても,著作権放棄である旨の表示がない限り,原告イラストは著作権放棄ではないと考えるのが自然であり,(証拠)の記載からすると,被告イラスト1の作成当時も,原告のホームページに著作権放棄の表示があったとは認められない。したがって,被告P2は,実行委員会に提供するための改変行為が原告の著作権及び著作者人格権に牴触するものであることを,容易に認識し得たというべきである。

以上より,被告イラスト1を作成し,それが写った写真をブログにアップした行為が原告の著作権及び著作者人格権を侵害することについて,被告P2には過失があったと認められる。

For more information

2025年7月9日水曜日

判例/不法行為(著作権侵害)における侵害者の過失責任

 

不法行為(著作権侵害)における侵害者の過失責任

▶平成231031日知的財産高等裁判所[平成23()10020]

控訴人は,被控訴人が本件写真の著作権を有することを知らないか,又は本件写真の芸術的若しくは商業的価値を認めていないから,無許可で使用しても著作権侵害の意図がなく,損害賠償責任を負わないと主張する。

しかし,著作権侵害につき不法行為に基づく損害賠償請求権が成立するためには,行為者に自己の行為が他人の著作権を侵害するものであることにつき故意又は過失があれば足り,また,故意又は過失が認められるためには対象となる著作物が他人の著作物であることを認識し又は認識し得れば十分であって,著作権の帰属に関する行為者の認識の有無,行為者が著作権侵害の意図を有していたか否か,さらには対象となる著作物に対して行為者が芸術的若しくは商業的価値を認めていたか否かは不法行為が成立するための要件ではない。

For more information

判例/廃墟を作品写真として取り上げた先駆者としての利益は法的保護に値するか

 

廃墟を作品写真として取り上げた先駆者としての利益は法的保護に値するか

▶平成221221日東京地方裁判所[平成21()451]▶平成23510日知的財産高等裁判所[平成23()10010]

() 本件は,原告が,原告が撮影した「廃墟」を被写体とする写真(「廃墟写真」)と同一の被写体を,被告において撮影して写真を作成し,それらの写真を掲載した各書籍(「被告各書籍」)を出版及び頒布した行為が,原告の有する写真の著作物の著作権(翻案権,原著作物の著作権者としての複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害し,また,被告が「廃墟写真」という写真ジャンルの先駆者である原告の名誉を毀損したなどと主張して,被告に対し,著作権法112条1項,2項に基づく被告各書籍の増製及び頒布の差止め並びに一部廃棄,著作権侵害,著作者人格権侵害,名誉毀損及び法的保護に値する利益の侵害の不法行為による損害賠償などを求めた事案である。

 

[控訴審]

当裁判所も,控訴人の本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

()

3 法的保護に値する利益侵害について

控訴人が原告各写真について主張する法的保護に値する利益として,まず廃墟を作品写真として取り上げた先駆者として,世間に認知されることによって派生する営業上の諸利益が挙げられている。しかし,原告各写真が,芸術作品の部類に属するものであることは明らかであるものの,その性質を超えて営業上の利益の対象となるような,例えば大量生産のために供される工業デザイン(インダスリアルデザイン)としての写真であると認めることはできない。廃墟写真を作品として取り上げることは写真家としての構想であり,控訴人がその先駆者であるか否かは別としても,廃墟が既存の建築物である以上,撮影することが自由な廃墟を撮影する写真に対する法的保護は,著作権及び著作者人格権を超えて認めることは原則としてできないというべきである。そして,原判決の「3 法的保護に値する利益の侵害の不法行為の成否(争点5)について」に記載のとおり,「廃墟」の被写体としての性質,控訴人が主張する利益の内容,これを保護した場合の不都合等,本件事案に表れた諸事情を勘案することにより,本件においては,控訴人主張の不法行為は成立しないと判断されるものである。控訴人が当審において主張するところによっても,上記判断は動かない。

For more information

判例/懲罰的損害賠償請求の可否

 

懲罰的損害賠償請求の可否

▶昭和601114日東京高等裁判所[昭和59()1446]

なお、控訴人は、以上の財産的損害及び精神的損害とは別個に、被控訴人Aに対し、懲罰的損害の賠償を請求しているが、我が国の法制度においては、民事責任と刑事責任とが峻別されており、民事責任は現実に生じた損害の填補を目的とするものに限られていて、懲罰的損害賠償請求なるものは認められていないから、控訴人の右請求は理由がない。

For more information