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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<著作権の制限> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年11月8日土曜日

判例/法41条の意義と解釈

 

41条の意義と解釈

平成100220日東京地方裁判所[平成6()18591]

3 本件絵画3の平成4122日付け紙面への掲載について

(一) 成立に争いのない(証拠)によれば、次の事実が認められる。

同日付け同新聞朝刊の一面左上部に「幻のバーンズコレクション日本へ」との五段の大見出し、及び「セザンヌなど名画80点公開」、「941月、国立西洋美術館」との小見出しの下に、発信地と執筆記者名が冒頭に付された四段にわたる本記と本件絵画3を含む3点の絵画のカラー印刷の図版からなる記事が掲載された。

右記事の内容は、「セザンヌやマチスなどの第一級の絵画を所蔵するアメリカのバーンズ財団は、画集でも見られない゛幻のコレクション″で知られるが、その中からよりすぐった作品を公開する「バーンズコレクション展」が941月から東京の国立西洋美術館で実現することとなった。主催する読売新聞社と同美術館が、1日までに財団と基本的な合意に達した。財団は現地で3日、日本を含む初の世界巡回展の構想を発表する予定で、国際的に美術ファンの話題を集めるのは必至だ。」との書き出しで、バーンズ財団の紹介、コレクションは極めて質が高いが、公開も週末に人数を限ってで、バーンズの遺言に従って、売却はもちろん、他館への貸出しや画集への掲載も禁じられたことから、名画の実像は明らかにされなかった旨、コレクションが初公開されることになったのは、ギャラリーの老朽化に伴う改修のためであり、来年のワシントン・ナショナル・ギャラリーとフランスのオルセー美術館に続いて、再来年の1月から4月にかけて東京展を開催する旨、バーンズコレクションは、180点のルノワール、69点のセザンヌなど、総数は2500点を超える旨の説明が続き、「このうち今回出品されるのは「カード遊びをする人たち」など20点を数えるセザンヌを筆頭に、ルノワールが「音楽学校生の門出」など16点、マチスが「生きる喜び」など14点のほか、スーラ「ポーズする女たち」、ゴッホ「郵便配達夫ルーラン」、ルソー「虎に襲われた兵士」、A「曲芸師と幼いアルルカン」など計80点。いずれも初めて国外で公開される傑作ばかりだ。」と結ばれている。

また、絵画の図版は、本件絵画3が約98mm×約57mm、セザンヌの「カード遊びをする人たち」が約97mm×約135mm、ルノワールの「音楽学校生の門出」が約85mm×約54mmの各大きさで掲載されている。

(二) 右事実によれば、右記事は、優れた作品が所蔵されているが、画集でも見ることのできないバーンズコレクションからよりすぐった作品を公開する本件展覧会が平成61月から東京の国立西洋美術館で開催されることが前日までに決まったことを中心に、コレクションが公開されるに至ったいきさつ、ワシントン、パリでも公開されること、出品される主な作品とその作家を報道するものであるから、著作権法41条の「時事の事件」の報道に当たるというべきである。そして、本件記事中で、本件展覧会に出品される80点中に含まれる有名画家の作品7点が作品名を挙げて紹介されている中の一つとして本件絵画3が挙げられているから、本件絵画3は、同条の「当該事件を構成する著作物」に当たるものというべきである。

また、複製された本件絵画3の大きさが前記の程度であること、右記事全体の大きさとの比較、カラー印刷とはいえ通常の新聞紙という紙質等を考慮すれば、右複製は、同条の「報道の目的上正当な範囲内において」されたものと認められる。

よって、右記事中の本件絵画3の利用については、時事の事件の報道のための利用の抗弁は理由がある。

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判例/法41条の適用を認めなかった事例(映画のヌードシーンを撮影した写真を週刊誌に載せた事例)

 

法41条の適用を認めなかった事例(映画のヌードシーンを撮影した写真を週刊誌に載せた事例)

平成131108日東京地方裁判所[平成12()2023]

(2)上記のとおり,被告は,本件記事において,まず最初の位置に「A初ヌード」「『裸乳』シーンも公開で大騒動!」「京都映画祭で『いちげんさん』で古都騒然!」との大見出しを置き,その上で,第2回京都映画祭が大盛況であったこと,その最大の原因となったのが,A主演の同映画祭参加作品である本件映画であったこと,本件映画は,京都の美しい情景の中で繰り広げられる男女の機微を描いた文芸作品であるが,この中で全盲の女性を演じるAの繊細でしかも大胆な演技が評判となり,映画祭期間中に予定されていた7回の上映は,すべて超満員になり,2回の追加上映が決まったほどであること,映画関係者や映画を見たファンは,本件映画におけるAの演技を肯定的に評価していたこと,Aは,ファンから引退を惜しまれており,近い将来の復帰を望む声も絶えないことを記載し,こうしたことを前提として,本件映画には,Aがヌードになっているシーンが3シーンあることや,それぞれのヌードシーンについて具体的に臨場感あふれる文章で記載し,これをより印象づけるための目玉として,同3シーンそれぞれを撮影した本件写真,すなわち,「ラブシーンで全裸になるA」の写真,「雨に降られてずぶ濡れになった彼女の服を,留学生(D)がやさしく脱がすシーン」の写真,「Aの入浴シーン」の写真をそれぞれ掲載したものである。

そこで,本件記事が著作権法41条所定の時事の事件の報道のための利用に該当するかどうかを検討するに,同条所定の利用というためには,本件記事がその構成,内容等に照らして,時事の事件を報道する記事と認められることを要するというべきであるが,本件記事においては,前記認定のとおり,本件映画に関して,「A初ヌード」「『裸乳シーン』も公開で大騒動!」というような各大見出しが付され,本件活版記事にAの3つのヌードシーンを具体的に説明する文章があり,さらに本件写真が本件グラビアの最後の1ページのほぼ全体を使って掲載され「ラブシーンで全裸になるA。」などの記述が付されているのであって,このような本件記事の構成及び内容からみれば,本件記事が主として伝達している内容は,女優Aが本件映画で初めてヌードになっているということに尽きるものであって,本件記事は,読者の性的好奇心を刺激して本誌の購買意欲をかきたてようとの意図で記述されているものといわざるを得ない。そして,本件映画においてAがヌードになっているということが時事の事件の報道に該当しないことは明らかであるから,本件記事への本件写真掲載は,著作権法41条所定の時事の事件の報道のための利用に当たらないというべきである。

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判例/「裁判手続のため」の複製(法42条1項)の適用を認めた事例

 

「裁判手続のため」の複製(法42条1項)の適用を認めた事例

平成291130日東京地方裁判所[平成28()23604]

⑵ 本件訴訟は民事訴訟であって,著作権法42条1項の「裁判手続」であるところ,上記事実関係によれば,原告絵画はいずれも本件訴訟の争点につき被告の主張を裏付ける証拠とするために複製されたもので,争点に関する証拠を提出するために複製されたということができる。争点に関する証拠を提出することは本件訴訟の審理のために必要であるから,上記複製は「裁判手続のために必要と認められる」ものといえる。また,上記③~⑤の認定事実によれば,著作物性が争点となった絵画も原告絵画も筆及びレモンのそれぞれ全部が描かれたものであるということができ,また,筆及びレモンの全部について複製して証拠とする必要性があるといえるから,上記複製は必要と認められる限度の複製であるということができる。

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判例/法42条の意義と解釈(社会保険庁LANシステム中の電子掲示板に雑誌記事が掲載された事例)

 

42条の意義と解釈(社会保険庁LANシステム中の電子掲示板に雑誌記事が掲載された事例)

平成200226日東京地方裁判所[平成19()15231] 社会保険庁

1 争点()(被告は,原告の公衆送信権を侵害したか)について

原告は,選択的請求原因として,公衆送信権侵害を主張するので,まず,争点()について,判断する。

() 本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり,その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。したがって,社会保険庁職員が,平成19年3月19日から同年4月16日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に 本件著作物1ないし4を順次記録した行為,(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。

() 被告は,本件著作物については,まず,社会保険庁職員が複製しているところ,この複製行為は42条1項本文により複製権侵害とはならず,その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は,その内容を職員に周知するという行政の目的を達するためのものなので,49条1項1号の適用はなく,原告の複製権を侵害しない,また,複製物を公衆送信して利用する場合に,その利用方法にすぎない公衆送信行為については,42条の目的以外の目的でなされたものでない以上,著作権者の公衆送信権侵害とはならない旨主張する。

しかし,社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかならない。そして,42条1項は,「著作物は・・・行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができる。」と規定しているとおり,特定の場合に,著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを認めた規定であり,この規定が公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む )。を行う権利の侵害行為について適用されないことは明らかである。また,42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである。なお,被告が主張する49条1項1号は,42条の規定の適用を受けて作成された複製物の目的外使用についての規定であるから,そもそも42条の適用を受けない本件について,49条1項1号を議論する必要はない。

被告の主張は採用することができない。

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2025年11月5日水曜日

判例/付随対象著作物利用性を否定した事例

 

付随対象著作物利用性を否定した事例

令和21014日東京地方裁判所[令和2()6862]

3 争点3(本件写真の掲載が付随対象著作物としての利用(著作権法30条の2)に該当するかどうか)について

著作権法30条の2第1項の規定により複製された付随対象著作物の利用が同条の2第2項によって許されるためには,著作物が,写真等著作物に係る写真の撮影等の対象となる事物から分離することが困難で,かつ,当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものでなければならない。

しかし,本件新聞記事2を批評する本件投稿記事を作成するに当たって,本件新聞記事2のみを写真で撮影する,あるいは,本件写真をマスキングして本件新聞記事2及び「聖教新聞」の題字を写真で撮影することは可能であって,本件写真が,本件新聞紙面画像に係る写真の撮影の対象とする事物から分離することが困難であるとはいえない。

また,前提事実及び証拠によれば,本件写真は,本件新聞紙面画像において,本件新聞記事2と同程度の大きさで,中央からやや上部の位置にカラーで目立つように表示されているものと認められ,独立して鑑賞する対象になり得るといえるから,本件新聞紙面画像における軽微な構成部分となるものともいえない。

したがって,本件写真の本件投稿記事への掲載は,付随対象著作物の利用に該当せず,同条を類推適用すべき理由もない。

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判例/出所の明示(法48条の意義と解釈)

 

出所の明示(48条の意義と解釈)

▶昭和510519日東京高等裁判所[昭和47()2816]

思うに、右規定が出所の明示を他人の著作物の自由利用の要件としたのは前示のように著作権者の保護を旨としたものと解されるが、その出所の明示については、利用される原著作物に表示されている著作者名を表示すれば足り、もしその著作物が無名のものである場合には著作者名を調査してまで表示する必要はないと解するのが相当である(現著作権法第48条第2項参照)。けだし、著作者は、その著作物の原作品又は複製品に著作者名を表示する権利のほか、表示しないこととする権利(無名で発行する権利)を有すること(旧著作権法第5条、現著作権法第19条第1項参照)に鑑みると、無名の著作物はその著作者において氏名を表示してないこととする権利を行使したものと考えられるところ、さような場合に、その著作物の利用上著作者名を表示することは、著作者の保護につながらず、また、その必要もないからである。…

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判例/著作権の制限規定と著作者人格権との関係

 

著作権の制限規定と著作者人格権との関係

令和527日知的財産高等裁判所[令和4()10090]

被控訴人新潮社は、本件記事の掲載は時事の事件(本件映画の公開中止)の報道に該当するところ、本件脚本は、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られる著作物であり、被控訴人新潮社は報道の目的上正当な範囲内において本件脚本を引用しているのであるから、本件記事の掲載による本件脚本の引用(公表)は著作権法41条に基づいて許されると主張する。

しかしながら、著作権法41条は、著作権の制限に関する規定(同法第2章第3節第5款)であり、現に、同法50条は、「この款の規定は、著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。」と定めるところであるから、本件脚本が報道の目的で利用される場合であっても、本件脚本に係る控訴人らの公表権が制限されると解することはできない。したがって、仮に、本件記事の掲載が時事の事件の報道に該当し、本件脚本が当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られる著作物であり、かつ、本件週刊誌において、本件脚本が報道の目的上正当な範囲内で利用されたものであったとしても、本件脚本を控訴人らに無断で本件週刊誌に掲載する行為は、本件脚本に係る控訴人らの公表権を侵害するものである。

以上のとおりであるから、被控訴人新潮社の上記主張を採用することはできない。

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2025年10月30日木曜日

判例/法30条1項(私的使用のための複製)の意義

 

301(私的使用のための複製)の意義

▶平成261022日知的財産高等裁判所[平成25()10089]

著作権法30条1項は,個人の私的な領域における活動の自由を保障する必要性があり,また閉鎖的な私的領域内での零細な利用にとどまるのであれば,著作権者への経済的打撃が少ないことなどに鑑みて規定されたものである。そのため,同条項の要件として,著作物の使用範囲を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」(私的使用目的)ものに限定するとともに,これに加えて,複製行為の主体について「その使用する者が複製する」との限定を付すことによって,個人的又は家庭内のような閉鎖的な私的領域における零細な複製のみを許容し,私的複製の過程に外部の者が介入することを排除し,私的複製の量を抑制するとの趣旨・目的を実現しようとしたものと解される。そうすると,本件サービスにおける複製行為が,利用者個人が私的領域内で行い得る行為にすぎず,本件サービスにおいては,利用者が複製する著作物を決定するものであったとしても,独立した複製代行業者として本件サービスを営む控訴人Dが著作物である書籍の電子ファイル化という複製をすることは,私的複製の過程に外部の者が介入することにほかならず,複製の量が増大し,私的複製の量を抑制するとの同条項の趣旨・目的が損なわれ,著作権者が実質的な不利益を被るおそれがあるから,「その使用する者が複製する」との要件を充足しないと解すべきである。

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2025年10月4日土曜日

判例/社内での内部的利用は「私的使用」に当たらないとした事例

 

社内での内部的利用は「私的使用」に当たらないとした事例

▶昭和520722日東京地方裁判所[昭和48()2198]

以上の事実によれば、被告T舞台の被用者であるC及び被告F工業の代表取締役であるDは、昭和452月頃、共同して、原告に無断で第一設計図と同一の図面を複製した図面を作成したものであるから、第一設計図を複製したものというべきである。

そこで、被告らの抗弁について、検討するのに、被告らは、第一設計図の複製図面は被告らにおいて、自社用資料として、使用する目的のものであつたから、その複製については、原告の許諾を得る必要がない旨主張する。ところで、著作権法第30条によれば、著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、その使用する者が複製することができる旨が規定されているが、企業その他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為は、その目的が個人的な使用にあるとはいえず、かつ家庭内に準ずる限られた範囲内における使用にあるとはいえないから、同条所定の私的使用には該当しないと解するのが相当である。

しかして、本件においては、すでに判示したところからすれば、被告らは、会社における内部的利用のために第一設計図の複製をしたことが明らかであつて、その複製行為は、同法第30条所定の私的使用には該当しないから、原告の許諾を得る必要がないということはできない。したがつて、被告らの抗弁は、理由がない。

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2025年7月17日木曜日

判例/動画からキャプチャした静止画の投稿を適法引用と認めなかった事例

 

動画からキャプチャした静止画の投稿を適法引用と認めなかった事例

▶令和5713日知的財産高等裁判所(令和5()10001)

() 本件は、原告が、被告の管理するブログに原告が著作権を有する各動画(「本件各動画」)をキャプチャした静止画が投稿され、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された旨を主張して、被告に対し不法行為(民法 709 条)に基づき所定の損害賠償金等の支払を求めた事案の控訴審です。

2 争点(1)(引用の抗弁の成否)について

(1) 他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要である(法32条1項後段)。

(2) これを本件についてみるに、証拠によると、本件動画1ないし7は、三十数分ないし五十数分の動画であるところ、本件記事1ないし7は、いずれも30枚ないし70枚程度の本件静止画を用い、これらをそれぞれ本件動画1ないし7における時系列に従って貼り付けた上、各静止画の間に、直後の静止画に対応する本件動画1ないし7の内容を1行ないし数行でまとめた要約を記載し、最後に、動画閲覧者のコメント及び本件動画1ないし7に対する控訴人の概括的な感想ないし批評を記載したものであると認められる。そうすると、本件記事1ないし7については、本件動画1ないし7に対する控訴人の感想ないし批評を述べる目的で本件動画1ないし7を引用したという側面を有することは否定できないものの、30枚ないし70枚程度にも及ぶ本件静止画の貼付けは、各静止画の間に記載された要約ともあいまって、本件記事1ないし7の閲覧者において、本件記事1ないし7の内容を見ただけで三十数分ないし五十数分の本件動画1ないし7の全体をほぼ把握できるようにするものであるといえ、本件記事1ないし7における本件動画1ないし7の引用の方法ないし態様は、本件動画1ないし7に対する控訴人の感想ないし批評を述べるとの目的との関係で、社会通念上合理的な範囲内のものであるということはできない。

(3) また、証拠によると、本件動画8は、四十数分程度の動画であるところ、本件記事8は、冒頭部分で、本件動画8の出演者(「虎」と呼ばれる投資家に対して投資を依頼する「志願者」と呼ばれる者)の属性、同出演者と被控訴人代表者との関係等を紹介した上、これらに関して本件動画8に係る静止画3枚を貼り付け、次いで、本件動画8の終盤部分に関して本件記事1ないし7と同様の記載及び静止画4枚の貼付けをし、最後に、本件動画8に対する控訴人の概括的な感想ないし批評を記載したものであると認められる。そうすると、本件記事8についても、本件動画8に対する控訴人の感想ないし批評を述べる目的で本件動画8を引用したという側面を有することは否定できないものの、少なくとも同出演者の属性、同出演者と被控訴人代表者との関係等に係る静止画の貼付けは、本件動画8に対する控訴人の感想ないし批評を述べるとの上記目的との関係で必要なものではなく、この点で、本件動画8の引用の方法ないし態様は、本件動画8に対する控訴人の感想ないし批評を述べるとの目的との関係で、社会通念上合理的な範囲内のものであるということはできない。

(4) この点に関し、控訴人は、本件各動画の引用は①主従関係の明確性、②明瞭区分性、③引用の必要性、④出典の明示、⑤改変しないことの5つの要件を満たすから適法であると主張するが、前記(2)及び(3)のとおり、本件各動画の引用は、引用の目的上正当な範囲内で行われたものではないから、仮に控訴人の主張を前提としても、本件各動画の引用については引用の必要性を欠くというべきである。

(5) 以上のとおりであるから、控訴人による本件各動画の引用が法32条1項により許されるということはできない。

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2025年7月14日月曜日

判例/ドキュメンタリー映画への報道機関作成の映像の利用(資料映像としての使用)を適用引用と認めなかった事例

 

ドキュメンタリー映画への報道機関作成の映像の利用(資料映像としての使用)を適用引用と認めなかった事例

▶平成30823日知的財産高等裁判所[平成30()10023]

引用の抗弁について

控訴人は,本件映画において,本件使用部分においても,エンドクレジットにおいても何ら出所表示をすることなく本件各映像を利用したことが「公正な慣行」に合致しないとして引用の抗弁(著作権法32条1項)を認めなかった原判決の認定判断に誤りがあると主張する。

よって検討するに,本件映画において,被控訴人が報道用として編集管理する本件各映像がその著作権者である被控訴人の名称を全く表示することなく,無許諾で複製して使用されている事実は当事者間に争いがないところ,もともと出所の明示は引用者に課された著作権法上の義務(著作権法48条1項1号)である上に,本件の場合,本件映画中の控訴人製作部分と本件使用部分とは,原判決が指摘するとおり,画面比や画質の点において一応区別がされているとみる余地もあり得るとはいえ,映画の中で,これらの部分が明瞭に区別されているわけではなく,その区別性は弱いものであるといわざるを得ないから,本件使用部分が引用であることを明らかにするという意味でも,その出所を明示する必要性は高いものというべきである。また,本件のようなドキュメンタリー映画の場合,その素材として何が用いられているのか(その正確性や客観性の程度はどのようなものであるか)は,映画の質を左右する重要な要素であるといえるから,この観点からしても,素材が引用である場合には,その出所を明示する必要性が高いものと考えられる。他方,本件においては,引用する側(本件映画)も引用される側(本件各映像)も共に視覚によって認識可能な映像であって,字幕表示等によって出所を明示することは十分可能であり,かつ,そのことによって引用する側(本件映画)の表現としての価値を特に損なうものとは認められない。これらのことに,原判決が指摘する「公正な使用(フェア・ユース)の最善の運用(ベスト・プラクティス)についてのドキュメンタリー映画作家の声明」の内容等を併せ考えると,適法引用として認められるための要件という観点からも,本件映画において本件各映像を引用して利用する場合には,その出所を明示すべきであったといえ,出所を明示することが公正な慣行に合致し,あるいは,条理に適うものといえる。そして,このことは,本件映画の総再生時間が2時間を超えるのに対し,本件各映像を使用する部分(本件使用部分)が合計34秒にとどまるといった事情や,本件各映像が番組として編集される前の映像であるといった事情によっては左右されない。

したがって,控訴人が何ら出所を明示することなく被控訴人が著作権を有する本件各映像を本件映画に引用して利用したことについては,(単に著作権法48条1項1号違反になるというにとどまらず)その方法や態様において「公正な慣行」に合致しないとみるのが相当であり,かかる引用は著作権法32条1項が規定する適法な引用には当たらない。よって,これと同旨をいう原判決の認定判断に誤りがあるとは認められない。

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判例/法30条1項(私的使用のための複製)の意義/書籍の電子ファイル化の代行業者の複製は「私的使用のための複製」に当たるか/「手足理論」

 法30条1項(私的使用のための複製)の意義/書籍の電子ファイル化の代行業者の複製は「私的使用のための複製」に当たるか/「手足理論」

平成261022日知的財産高等裁判所[平成25()10089]

(注)以下、「本件サービス」とは、控訴人○○が行っていた,第三者(顧客、利用者)から注文を受けて,小説・エッセイ・漫画等の様々な書籍をスキャナーで読み取り,電子ファイル化するサービスのことです。控訴人○○は,顧客から電子ファイル化の依頼があった書籍について,著作権者の許諾を受けることなく,スキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し,その電子ファイルを顧客に納品していました。

 

著作権法301項は,個人の私的な領域における活動の自由を保障する必要性があり,また閉鎖的な私的領域内での零細な利用にとどまるのであれば,著作権者への経済的打撃が少ないことなどに鑑みて規定されたものである。そのため,同条項の要件として,著作物の使用範囲を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」(私的使用目的)ものに限定するとともに,これに加えて,複製行為の主体について「その使用する者が複製する」との限定を付すことによって,個人的又は家庭内のような閉鎖的な私的領域における零細な複製のみを許容し,私的複製の過程に外部の者が介入することを排除し,私的複製の量を抑制するとの趣旨・目的を実現しようとしたものと解される。そうすると,本件サービスにおける複製行為が,利用者個人が私的領域内で行い得る行為にすぎず,本件サービスにおいては,利用者が複製する著作物を決定するものであったとしても,独立した複製代行業者として本件サービスを営む控訴人○○が著作物である書籍の電子ファイル化という複製をすることは,私的複製の過程に外部の者が介入することにほかならず,複製の量が増大し,私的複製の量を抑制するとの同条項の趣旨・目的が損なわれ,著作権者が実質的な不利益を被るおそれがあるから,「その使用する者が複製する」との要件を充足しないと解すべきである。

(略)

著作権法301項は、①「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」こと、及び②「その使用する者が複製する」ことを要件として,私的使用のための複製に対して著作権者の複製権を制限している。

そして,控訴人○○は本件サービスにおける複製行為の主体と認められるから,控訴人○○について,上記要件の有無を検討することとなる。しかるに,控訴人○○は,営利を目的として,顧客である不特定多数の利用者に複製物である電子ファイルを納品・提供するために複製を行っているのであるから,「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」ということはできず,上記①の要件を欠く。また,控訴人○○は複製行為の主体であるのに対し,複製された電子ファイルを私的使用する者は利用者であることから,「その使用する者が複製する」ということはできず,上記②の要件も欠く。

したがって,控訴人○○について同法301項を適用する余地はないというべきである。

「手足理論」

▶平成261022日知的財産高等裁判所[平成25()10089]

一般に,ある行為の直接的な行為主体でない者であっても,その者が,当該行為の直接的な行為主体を「自己の手足として利用してその行為を行わせている」と評価し得る程度に,その行為を管理・支配しているという関係が認められる場合には,その直接的な行為主体でない者を当該行為の実質的な行為主体であると法的に評価し,当該行為についての責任を負担させることがあり得るということができる。

しかし,既に前記で説示したとおり,利用者は,控訴人Dが用意した本件サービスの内容に従って本件サービスを申し込み,書籍を調達し,電子ファイル化を注文して書籍を送付しているのであり,控訴人Dは,利用者からの上記申込みを事業者として承諾した上でスキャン等の複製を行っており,利用者は,控訴人Dの行うスキャン等の複製に関する作業に関与することは一切ない。

そうすると,利用者が控訴人Dを自己の手足として利用して書籍の電子ファイル化を行わせていると評価し得る程度に,利用者が控訴人Dによる複製行為を管理・支配しているとの関係が認められないことは明らかであって,控訴人Dが利用者の「補助者」ないし「手足」ということはできない。

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2025年7月9日水曜日

判例/わが国で「公正利用(フェアユース)の法理」は一般的に認められるか

 

わが国で「公正利用(フェアユース)の法理」は一般的に認められるか

▶平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]

著作権法1条は、著作権法の目的につき、「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と定め、同法30条以下には、それぞれの立法趣旨に基づく、著作権の制限に関する規定が設けられているところ、これらの規定から直ちに、わが国においても、一般的に公正利用(フェアユース)の法理が認められるとするのは相当でなく、著作権に対する公正利用の制限は、著作権者の利益と公共の必要性という、対立する利害の調整の上に成立するものであるから、これが適用されるためには、その要件が明確に規定されていることが必要であると解するのが相当であって、かかる規定の存しないわが国の法制下においては、一般的な公正利用の法理を認めることはできない。


▶平成1527日名古屋地方裁判所[平成14()2148]▶平成1634日名古屋高等裁判所[平成15()233]

法1条は,法の目的につき,「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作権者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と定め,法30条以下には,それぞれの立法趣旨に基づく,著作権の制限に関する規定が設けられているところ,これらの規定から直ちに,我が国においても,一般的に「公正な利用(フェア・ユース)の法理」が認められると解するのは相当でない。著作権に対する公正利用の制限は,著作権者の利益と公共の必要性という,対立する利害の調整の上に成立するものであるから,実定法主義を採る我が国の法制度の下で,これが制限されるためには,その要件が具体的かつ明確に規定されていることが必要であると解するのが相当であって,かかる規定が存しない以上,一般的な「公正な利用の法理」を認めることはできないことはもちろん,明文の規定を離れて著作物の公正な利用となる場合があることを認めることはできないというべきである(東京高等裁判所平成6年10月27日判決参照)。

 

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