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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/
ラベル 重要判例<著作者> の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2025年10月30日木曜日

判例/請負契約に基づいて広告写真家が撮影した写真の職務著作性を否定した事例

 

請負契約に基づいて広告写真家が撮影した写真の職務著作性を否定した事例

平成170117日大阪地方裁判所[平成15()2886]

1 争点(1)(本件写真の著作者)について

(1) 著作権法15条1項は、法人等において、その業務に従事する者が、法人等の指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し、これが法人等の名義で公表されるという実態があることに鑑み、同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものであり、したがって、同項により法人等が著作者とされるためには、著作物を作成した者が「法人等の業務に従事する者」であることが要件とされている。ここで、法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが、これが争われ、あるいは直ちに雇用関係があるとはいえない場合には、その者が同項の「法人等の業務に従事する者」に当たるか否かは、法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、その者が、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべきであると解される。

(2) そこで、本件契約に基づく写真撮影及びフィルム引渡しまでの過程について検討するに、(証拠等)によれば、原告が、本件契約に基づいて写真を撮影し、そのフィルムを被告エスピー・センターに引き渡すまでの経過は、概ね、以下のようなものであったと認めることができる。

ア 取材前に、原告が被告エスピー・センターに出向き、取材先の間取り等を元に、打合せを行う。

イ 取材先には、同被告の担当者と原告が赴き、事前の打ち合わせを踏まえ、同担当者と原告が協議をしながら写真を撮影する。撮影枚数は、1軒当たり約180枚程度である。

ウ 撮影したフィルムは、原告が持ち帰り、現像所に依頼して現像した上、原告において、「ツーユー評判記」への掲載に適した写真約20枚を選び出して、そのフィルムを同被告に引き渡す。この選別には、同被告は直接関与しない。

引き渡さなかったフィルムは、原告において廃棄する。

(3) 上記(2)で認定した、本件契約に基づく写真撮影からフィルム引渡しまでの過程を前提として検討するに、これに照らしても、原告が本件契約の履行として行った行為は、写真を撮影した上で、掲載される「ツーユー評判記」に適切なものを選び出し、そのフィルムを被告エスピー・センターに引き渡すというものであって、その性質は、単なる労務の提供というべきものではなく、むしろ仕事の完成とその引き渡しというべきものである(なお、同被告自身、本件契約が請負契約というべきことを争っていない。)。したがって、原告が、同項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たるということはできない。

また、著作物の作成者が、法人等からその作成を依頼され、その指揮命令に従いながらこれを作成し、かつ、その著作権を法人等に原始的に帰属させるという認識を有していた場合には、その作成者を同項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たるということができるとしても、本件において、原告が、撮影した写真の著作権を同被告に原始的に帰属させるという認識を有していたことを認めるに足りる主張も証拠もないから、結局、原告が、同項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たるということはできない。

そして、本件写真を撮影したのが原告であることは当事者間に争いがないから、本件写真の著作者は、原告であるというべきである。

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判例/学習塾で使用するテキストの職務著作物性(公表要件)が問題となった事例

 

学習塾で使用するテキストの職務著作物性(公表要件)が問題となった事例

平成111029日東京地方裁判所[平成9()14979]▶平成121026日東京高等裁判所[平成11()5784]

[控訴審]

6 控訴人は、「教育研究会VERITAS」は、本件塾の名称ではなく、控訴人ら講師グループの名称であり、このことは、被控訴人の発行したパンフレットにも明記されているものであるとして、本件各テキストは、被控訴人の名義の下で公表されていない旨主張する。

しかしながら、控訴人ら講師は、被控訴人の従業員であり、その従業員である講師が遂行する業務が、被控訴人の業務でないはずがなく、その業務に係る名称として「教育研究会VERITAS」を使用しているのであり、その場所も、被控訴人の事業所を使用しているのである。控訴人の主張は、失当である。

また、控訴人は、本件各テキストは、すべて講義の一か月以上前に、表紙、フッダー・ヘッダーなどは全くない状態で、著作物として完成していたものであり、この段階で既に著作権が執筆者たる控訴人に帰属していたのであるのであって、控訴人に著作権が帰属する旨主張する。

しかしながら、法人著作の要件の一つである、公表に当たっての法人名義の有無は、創作の時点において、当該著作物が、法人等の名義で公表されるべく予定されていたかどうかによって決せられると解するのが相当であり、本件各テキストが、被控訴人の名義で公表されるべく予定されていたものであることは前示のとおりである以上、講義に使用する一か月以上前に表紙、フッダー・ヘッダーなどが全くない状態で完成していたことによって、法人著作の成否が何ら左右されるものでないことは、明らかというべきである。控訴人の主張は、失当である。

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2025年10月29日水曜日

判例/二次的著作物の原著作者の権利

 

二次的著作物の原著作者の権利

令和5127日東京地方裁判所[令和5()70139]▶令和7924日知的財産高等裁判所[令和6()10007]

イ 本件テレビ作品は、亡Bの本件小説を原作として制作されたものであり、本件小説を原著作物とする二次的著作物であるところ、原著作物の著作者である亡Bは、二次的著作物である本件テレビ作品の利用に関し、本件テレビ作品の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有し(著作権法28条)、本件テレビ作品については、亡Bの権利と、二次的著作物である本件テレビ作品の著作者の権利とが併存することとなった(最高裁平成13年10月25日第一小法廷判決)。そのため、亡Bは、二次的著作物である本件テレビ作品の原作の著作者として、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利、すなわち、本件テレビ作品についての著作権(複製権又は翻案権、譲渡権、公衆送信権)を専有していたものであり(著作権法28条)、亡B死亡後は、亡Aが遺産分割によりこれを取得し、亡A死亡後は、控訴人X2、控訴人X3及び控訴人X4が遺産分割によりこれを取得したものである。

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2025年10月25日土曜日

判例/弁理士が特許法律事務所に在職中に執筆した原稿の職務著作性を認めなかった事例

 

弁理士が特許法律事務所に在職中に執筆した原稿の職務著作性を認めなかった事例

平成161112日東京地方裁判所[平成16()12686]

(1) 争点1について

本件原稿が原告の執筆によるものであることは当事者間に争いがないところ,被告は,本件原稿の執筆は職務著作に当たるからその著作者は被告である旨を主張するので,まず,この点について判断する。

法人その他使用者(以下「法人等」という。)が著作権法15条1項の規定に基づき著作物(プログラムの著作物を除く。)の著作者となるためには,当該著作物が,法人等の業務に従事する者により職務上作成されるものであることを要する。

ア 原告は,被告の経営する本件特許事務所に在職中に弁理士の資格を取得し,被告との契約により,被告から年俸を支給され,本件特許事務所の仕事に従事する者であるから,原告と被告との間に雇用関係が認められる。

イ 次に,個々の著作物が著作権法15条1項にいう「職務上作成する著作物」に該当するかどうかは,法人等の業務の内容,著作物を作成する者が従事する業務の種類・内容,著作物作成行為の行われた時間・場所,著作物作成についての法人等による指揮監督の有無・内容,著作物の種類・内容,著作物の公表態様等の事情を総合勘案して判断するのが相当である。

これを本件についてみるに,上記1の認定事実によれば,原告は,本件特許事務所在職中に弁理士の資格を取得し,それ以降は,主に特許事務を扱う弁理士として,主として特許,実用新案等の出願手続等の弁理士法4条に掲げる事務に従事していたものであるところ,本件原稿は,被告が「創英知的財産研究所」の名称で科学ジャーナリストであるCと共に出版する知的財産権法の入門書(本件書籍)の一部分をなすものとして作成されたものであり,その執筆者は本件特許事務所の職員の間で任意参加の形式で募集し,これに応じた者から選ばれたものである。そして,各執筆担当者による原稿作成作業については,本件特許事務所の勤務時間外に行うべきことが被告により指示され,本件原稿も,当該指示に従って勤務時間外に作成されたものであり,また,本件原稿の記載内容についても,被告から具体的指示がされたものではない(本件書籍の出版に至るまでの間に,被告及び執筆担当者との間で,数回の執筆者会議が開かれたものではあるが,そこでは,本件書籍全体の章立て,執筆者の分担などを決定したものであり,個別の原稿の具体的記載内容を決定したものではない。)。また,本件書籍においては,その冒頭に,原告を除く執筆担当者の氏名が表示されている。

上記によれば,本件書籍の出版は本件特許事務所の本来的な業務内容に含まれるものではなく,また,本件書籍のための原稿執筆は本件特許事務所において原告が日常担当する業務に直接含まれるものでもない。そして,本件原稿の執筆の行われた状況やその際における被告の関与態様,本件書籍の体裁,公表態様等に照らしても,本件原稿が,著作権法15条1項にいう「職務上作成する著作物」に該当するとは,到底認められない。

ウ この点に関して,被告は,本件特許事務所の研究活動の一環として,「創英知的財産研究所」の名称で,本件書籍以外にも書籍を出版したり,講演会等の活動を行っており,これらの活動は,本件特許事務所の職務の範囲内のものであること,俸給の中に創英知的財産研究所の活動の対価が含まれていると述べ,査定基準等の査定項目に「創英知的財産研究所」の活動が明示され,創英知的財産研究所の活動は,職員が自らその報酬を受け取ることができる外部での講演活動等と明確に区別されているなどと主張する。

しかし,被告の挙げる書証(「勤務弁理士および弁護士の年俸額決定時における査定項目および査定基準の概要と考え方について」と題する書面)には,「経営に関する査定」の項目において,「新規顧客の獲得,営業,事務の改善や管理,新人獲得,各種のプロジェクト,創英知的財産研究所活動,その他,多様な面に着目する。」と記載されているが,そこでは単に「創英知的財産研究所活動」の語が記載されているだけであって,その具体的内容は全く明らかではないし(かえって,「年俸契約の更改に当っての査定に対する自己申告書」における「経営に関する査定に対して」の項目には,「営業,事務管理,新人獲得,プロジェクト,その他,創英の現在の経営,および将来の事務所の発展に協力する姿勢と実績」と記載されているだけであり,「創英知的財産研究所」に関する活動は記載されていない。),被告が職員個人の外部での活動という,大学における知的財産一般に関する学生向け講義と本件書籍の分担執筆行為を何をもって区別するのかも明らかでない。

かえって,原告が退職する際に被告との間で締結した本件覚書の記載に照らせば,本件原稿は,被告の業務として執筆されたものではないことを被告は自認しているといえる。

すなわち,本件覚書においては,本件覚書に添付された別紙著作物目録1(「創英ボイス」-季刊・月刊・英文・臨時増刊号その他一切を含む。)及び同目録2(「事務所ホームページ」-和文・英文その他一切を含む。)の各著作物については,本件覚書2条において,被告の発意に基づいて作成され,原告の職務として作成したものであり,原始的に被告に著作権及び著作者人格権が帰属することを確認しているのに対し,本件原稿が掲載された本件書籍(本件覚書添付の別紙著作物目録3の(1))については,本件覚書3条1項において,「職務に関連して作成したものであること」を確認し,同条2項において,著作権を原告から被告又は被告の指定する者に対し譲渡すること,4項において,著作権の登録について原告が協力することを記載し,原告がその著作権者であることを前提とした形で条項を定めているのである。このような規定の仕方からみても,本件書籍に掲載した本件原稿の執筆活動については,これが本来の原告の業務の範囲内の業務ではないことを,被告自身が認めていたというべきである。

さらに,本件書籍の原稿の執筆活動が,被告の業務の範囲内のものに当たるのであれば,そもそも,本件書籍には,「創英知的財産研究所」の名称のほかに,執筆担当者の氏名を表示する必要性はないところ,本件書籍の冒頭には,「執筆者」として,「C」,「創英知的財産研究所」のほか,原告を除く執筆担当者の氏名も表示されているのであるから,この点からしても,本件書籍の原稿の執筆活動が,被告の職務の範囲に入らないことを被告において自認していたというべきである(なお,本件書籍において,「創英知的財産研究所」を「創英国際特許法律事務所に併設された組織であり」と説明していることに照らせば,「創英知的財産研究所」が被告個人の変名である旨をいう被告の主張は容易に採用しがたく,本件書籍について,被告が「自己の著作の名義の下に公表」したといえるかどうかも疑問がある。)。

エ 以上のとおり,本件原稿の執筆活動は,原告の業務とは認められず,本件原稿が「職務上作成された著作物」に該当するということはできない。したがって,職務著作であるとの被告の主張は採用できない。

オ そうすると,本件原稿の著作者は原告であり,著作者人格権は原告に帰属する。

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2025年10月24日金曜日

判例/誰が編集著作者と言えるか/『智惠子抄』の編集著作者が誰であるかが争点となった事例

 

誰が編集著作者と言えるか/『智惠子抄』の編集著作者が誰であるかが争点となった事例

▶昭和631223日東京地方裁判所[昭和41()12563]▶平成40121日東京高等裁判所[昭和63()4174]

[控訴審]

著作者が企画案ないし構想を提供する第三者の進言により、はじめて著作を決意し、その協力により著作物を完成するという経過をたどることは、決して稀ではなく、その場合進言をした第三者が当然に著作権者となるものではない。著作物をもととして完成される編集著作物について、第三者が進言した場合でも同様である。

編集物で著作物として保護されるのは、「その素材の選択又は配列によって創作性を有する」ことが必要であるから(著作権法121項)、Aが「智惠子抄」の編集著作権者であるというためには、その素材となったCに関するBの作品を自ら選択し配列したと認められることが必要である。

[控訴審]

編集物で著作物として保護されるのは、「その素材の選択又は配列によって創作性を有する」ことが必要であるから(著作権法121項)、Aが「智惠子抄」の編集著作権者であるというためには、その素材となったCに関するBの作品を自ら選択し配列したと認められることが必要である。すなわち、Aの編集著作というためには、「荒涼たる歸宅」のように後日制作された作品を除き、可能な限り、Cに関する作品全てを認識し把握したうえで、これら作品について必要な取捨選択を経て配列を完成するという作業がA自身によりなされることが何よりも先ず必要であって、それによってはじめて控訴人らが主張するBとCの愛を浮き彫りにした創作性ある編集著作がなされたと認め得る余地があるのであり、かかる作業がなされないまま、Bの作品の一部を集めても、それはBとCの愛を浮き彫りにするという編集著作という観点からは、企画案ないし構想の域にとどまるにすぎないものというべきである。

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2025年9月23日火曜日

判例/共同編集著作物(判例百選)の著作者の認定/著作者の推定(14条)が覆った事例

 共同編集著作物(判例百選)の著作者の認定/著作者の推定(14)が覆った事例

平成2847日東京地方裁判所[平成28()40004]平成281111日知的財産高等裁判所[平成28()10009]

参考平成271026日東京地方裁判所[平成27()22071]

[控訴審]

(2) 前記認定のとおり,本件著作物の表紙には「A・Y・B・C編」と表示され,また,そのはしがきには,本件著作物編者らの氏名が連名で表示されるとともに,「この間の立法や,著作権をめぐる技術の推移等を考慮し,第4版では新たな構成を採用し,かつ収録判例を大幅に入れ替え,113件を厳選し,時代の要求に合致したものに衣替えをした。」とある。

本件著作物のような編集著作物の場合,氏名に「編」と付すことは,一般人に,その者が編集著作物の著作者であることを認識させ得るものといってよい。上記はしがきの表示及び記載も,本件著作物において編者として表示された者が編集著作物としての本件著作物の著作者であることを一般人に,認識させ得るものということができる。また,抗告人のウェブサイトの表示も,「編」の表示が「著者」の表示に相当するものとして一般に理解されることを前提とするものと見られる。

そうすると,本件著作物には,相手方の氏名を含む本件著作物編者らの氏名が編集著作者名として通常の方法により表示されているといってよい。

したがって,相手方については,著作者の推定(法14条)が及ぶというべきである。

これに対し,抗告人は,氏名に「編」と付された者が著作権法上の編集著作者とは異なる場合も少なくないなどとして,相手方につき著作者の推定は及ばない旨主張するけれども,現に氏名に「編」と付された者が編集著作者でない場合があったとしても,そのことをもって直ちに,「編」という表示が氏名に付されることでその氏名が編集著作物の「著作者名として通常の方法により表示されている」と一般人に認識させ得ることを否定するに足りるものとはいえない。その他これを否定するに足りる事情をうかがわせる疎明資料もない。

したがって,この点に関する抗告人の主張は採用し得ない。

(3) そこで,相手方につき著作者の推定が及ぶことを前提に,その推定の覆滅の可否を検討する。

ア 著作者とは著作物を創作する者をいい(法2条1項2号),著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。編集著作物とは,編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものであるところ(法12条1項),著作物として保護されるものである以上,その創作性については他の著作物の場合と同様に理解される。

そうである以上,素材につき上記の意味での創作性のある選択及び配列を行った者が編集著作物の著作者に当たることは当然である。

また,本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合,例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであるから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものということができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集著作物の著作者となり得るというべきである。

他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択,配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。

イ もっとも,共同編集著作物の作成過程において行われたある者の行為が,上記のいずれの場合に該当するかは,当該行為を行った者の当該共同編集著作物の作成過程における地位や権限等を捨象した当該行為の客観的ないし具体的な側面のみによっては判断し難い例があることは明らかである。すなわち,行為そのものは同様のものであったとしても,これを行った者の地位,権限や当該行為が行われた時期,状況等により当該行為の意味ないし位置付けが異なることは,世上往々にして経験する事態である。

そうである以上,創作性のあるもの,ないものを問わず複数の者による様々な関与の下で共同編集著作物が作成された場合に,ある者の行為につき著作者となり得る程度の創作性を認めることができるか否かは,

当該行為の具体的内容を踏まえるべきことは当然として,さらに,当該行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程における意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。

これに対し,抗告人は,著作者性の判断に当たっては,当該行為が行われた状況や立場といった背景事情を捨象し,もっぱら創作的表現のみに着目して判断されなければならない旨主張するけれども,複数人の関与の下に著作物が作成される場合の実情にそぐわないというべきであり,この点に関する抗告人の主張は採用し得ない。

ウ 以上を踏まえ,前記認定事実に基づき,以下検討する。

()

エ このように,少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たしたB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求められ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,この点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な関係者との間に共通認識が形成されていたものといえる。しかも,相手方が本件原案の作成作業には具体的に関与せず,本件原案の提示を受けた後もおおむね受動的な関与にとどまり,また,具体的な意見等を述べて関与した場面でも,その内容は,仮に創作性を認め得るとしても必ずしも高いとはいえない程度のものであったことに鑑みると,相手方としても,上記共通認識を踏まえ,自らの関与を謙抑的な関与にとどめる考えであったことがうかがわれる。

これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において,相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。

(4) そうである以上,法14条による推定にもかかわらず,相手方をもって本件著作物の著作者ということはできない。

(5) これに対し,相手方は,自身が本件著作物の著作者の一人である旨主張するけれども,上記のとおり,本件著作物の編集過程全体を子細に検討する限り,その主張を採用することはできない。

なお,相手方は,前記認定事実のほか,平成20年9月頃にD教授に対し収録すべき判例につき具体的に意見を述べた旨や,執筆者候補として3名の実務家の追加を提案した際に,執筆を割り当てるべき判例についてもB教授に対し意見を述べた旨などを主張するけれども,前記のとおり,実務家追加の提案時にそのような意見を述べたことについてはこれを一応認めるに足りる的確な疎明資料はなく,この点は,D教授に対する意見についても同様である。

また,仮にこうした事実が一応認められたとしても,D教授は,A教授の教科書を中心に多様な文献等を比較検討した上で,第4版に収録すべき判例のリストアップを進めたこと,追加の提案に係る実務家3名に割り当てられた判例は相手方が削除を提案した実務家に割り当てられたものや本件原案で既に「候補となり得る裁判例」とされていたものであることなどに鑑みると,相手方による他の関与と同様に,その創作性の程度は必ずしも高いとまでは思われないことから,なお前記と認定及び評価を異にすべきとするには足りないというべきである。

2 以上によれば,相手方は,本件著作物の著作者でない以上,著作権及び著作者人格権を有しないから,抗告人に対する被保全権利である本件差止請求権を認められない。

2025年8月15日金曜日

判例/「映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物」の著作者の権利行使

 

映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物」の著作者の権利行使

▶平成170830日知的財産高等裁判所[平成17()10009]

著作権法16条本文は,「映画の著作物の著作者は,その映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者を除き,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする」と規定しているところ,同規定の趣旨は,映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者(いわゆるクラシカル・オーサー)については,映画の著作物の著作者とは別個に映画の著作物について権利行使することができることをいうものと解すべきである。

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判例/芸能人に対するインタビュー記事を著作したのは誰か

 

芸能人に対するインタビュー記事を著作したのは誰か

平成101029日東京地方裁判所[平成7()19455]

二 争点2(著作者・著作権者)について

1 著作者とは「著作物を創作する者」をいい(著作権法212号)、現実に当該著作物の創作活動に携わった者が著作者となるのであって、作成に当たり単にアイデアや素材を提供した者、補助的な役割を果たしたにすぎない者など、その関与の程度、態様からして当該著作物につき自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価できない者は著作者に当たらない。そして、本件において原告らがその著作物であると主張する原告記事のように、文書として表現された言語の著作物の場合は、実際に文書の作成に創作的に携わり、文書としての表現を創作した者がその著作者であるというべきである。

また、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものについては、別段の定めがない限り、その法人等が著作者となる(著作権法151項)。右の「法人等の業務に従事する者」には、法人等と雇用関係にある者だけでなく、法人等との間に著作物の作成に関する指揮命令関係があり、法人等に当該著作物の著作権を原始的に帰属させることを前提にしている関係にある者も含まれると解される。

2 これを本件についてみるに、《証拠略》によれば、以下の事実が認められる。

()

(三)原告記事は、記事本文のほか、タイトル、見出し、原告個人らの写真、略歴の記載等により構成されており、本文部分は、原告記事⑤及び⑨を除き、原告個人らの発言を主として記載した体裁になっている。

すなわち、原告記事①ないし④、⑧、⑩ないし⑭は、個人原告らの発言をそのまま文章化した形になっている(このうち原告記事①ないし④、⑧及び⑩の冒頭部分には執筆者のコメントが付されている。)。原告記事⑦は、執筆者の発問を受けて、原告個人らが二人ずつ対談するという形式である(なお、原告記事⑪の後半は、原告Aと原告Eの対話形式になっているが、これは執筆者が右両名に別々にインタビューした内容をまとめたものである。)。原告記事⑥及び⑮は、原告個人らの発言として記載された部分と執筆者の意見や感想とが一体化した文章となっている。原告記事⑯には、原告個人らの発言のみを記載した部分、執筆者の意見や感想が挟み込まれた部分、第三者との対談形式の部分、第三者のコメントを記載した部分等がある。原告記事⑰は、執筆者の原告個人ら全員に対するインタビューの部分、原告個人ら各人への一問一答等から成っている。

これらに対し、原告記事⑤及び⑨は、その記事の対象となる原告個人らに関する第三者の発言を軸に、執筆者自らの意見や感想を交えて文章化したものであり、作成に当たり原告個人らへの取材は行われていない。

(四)原告記事を掲載した雑誌には、原告出版社らの名称がそれぞれ記載されている。また、原告記事⑮及び⑯以外については、当該原告記事を掲載した雑誌の裏表紙に、著作権の帰属を示す「(C)」マーク並びに各原告出版者らの名称及び当該雑誌の発行年の表示がある。

3 右認定の事実を総合すれば、実際に原告記事の文書の作成に携わり、これを創作したのは、各記事の執筆者であるということができるが、各執筆者は、原告出版社らから記事の作成を依頼され、その指揮命令に従いながらこれを執筆したのであり、しかも、原告出版社らに原告記事の著作権を原始的に帰属させるという認識であったのであるから、原告記事は、いずれも原告出版社らの発意に基づきその業務に従事する者がその職務上作成した著作物であると認められる。また、原告記事が原告出版社らの著作名義の下に公表された点は被告らの争うところではなく、原告記事の著作者を誰とするかに関し別段の定めがあったことをうかがわせる証拠はない。したがって、原告主婦と生活社は原告記事①ないし⑩の、原告扶桑社は原告記事⑰の、原告学習研究社は原告記事⑪ないし⑭の、原告マガジンハウスは原告記事⑮及び⑯の著作者であると認められる。

4 原告らは、前述のとおり、原告個人らも原告記事の著作者であり著作権者であると主張するので、この点につき検討する。

(一)原告記事⑤及び⑨は、右2(三)で認定した記事の体裁に照らし、原告個人らがその著作者又は著作権者でないことは明らかである。

(二)右以外の原告記事は、その体裁上、原告個人らの発言を主たる内容として構成されているところ、インタビュー等の口述を基に作成された雑誌記事等の文書については、文書作成への関与の態様及び程度により、口述者が、文書の執筆者とともに共同著作者となる場合、当該文書を二次的著作物とする原著作物の著作者であると解すべき場合、文書作成のための素材を提供したにすぎず著作者とはいえない場合などがあると考えられる。すなわち、口述した言葉を逐語的にそのまま文書化した場合や、口述内容に基づいて作成された原稿を口述者が閲読し表現を加除訂正して文書を完成させた場合など、文書としての表現の作成に口述者が創作的に関与したといえる場合には、口述者が単独又は文書執筆者と共同で当該文書の著作者になるものと解すべきである。これに対し、あらかじめ用意された質問に口述者が回答した内容が執筆者側の企画、方針等に応じて取捨選択され、執筆者により更に表現上の加除訂正等が加えられて文書が作成され、その過程において口述者が手を加えていない場合には、口述者は、文書表現の作成に創作的に関与したということはできず、単に文書作成のための素材を提供したにとどまるものであるから、文書の著作者とはならないと解すべきである。

これを本件についてみるに、原告個人らが、発言がそのまま文書化されることを予定してインタビューに応じたり、記事の原稿を閲読してその内容、表現に加除訂正を加えたことをうかがわせる証拠はなく、かえって、前記認定の原告記事の作成経過からすれば、原告個人らに対するインタビューは、原告出版社らの企画に沿った原告記事を作成するに際して、素材収集のために行われたにすぎないものと認められる。

(三)したがって、原告個人らを原告記事の著作者ということはできない。

5 以上によれば、原告主婦と生活社は原告記事①ないし⑩につき、原告扶桑社は原告記事⑰につき、原告学習研究社は原告記事⑪ないし⑭につき、原告マガジンハウスは原告記事⑮及び⑯につき、それぞれ著作権及び著作者人格権を有すると認められる。

他方、右のとおり、原告個人らが原告記事につき著作権又は著作者人格権を有すると認めることはできないから、原告個人らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、すべて理由がないというべきである。

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判例/著作者は、請負人(法人)と注文主(法人)のどちらか

 

著作者は、請負人(法人)と注文主(法人)のどちらか

▶平成150710日東京高等裁判所[平成15()546]

すなわち、請負契約に基づき外部の独立した請負人によって著作物が作成された場合、その著作者は、特別の事情がない限り、請負人であると解されるのであり、このことは請負人が法人である場合にも妥当するものであるところ、本件において請負人ではなく注文主を著作者とすべき特別の事情は証拠上見いだすことができない。特に、本件においては、本件基本シナリオの作成に関わったのは、もっぱら被控訴人Gが組織した製作スタッフであり、本件基本シナリオの作成に当たって控訴人が製作スタッフに対し指示を与える等の行為をすることもなかったのであるから、控訴人が本件基本シナリオについて著作権法15条1項の規定による著作者となる余地はないというべきである。

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判例/著作権の原始的な帰属主体は誰か

 

著作権の原始的な帰属主体は誰か

▶平成151128日東京地方裁判所[平成14()23214]▶平成160331日東京高等裁判所[平成16()39]

著作権の原始的な帰属主体は著作者であり(著作権法17条),著作者とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属する著作物を創作した者をいう(同法2条1項1号,2号)。原告らは,いずれも本件各書籍の創作には関与していないことを自認している。したがって,原告らが,本件各書籍の著作者であるということはできず,原始的に原告らが本件各書籍の著作権を取得することはあり得ない。

なお,原告らは,本件各書籍に当初シリーズ及び新シリーズについて原告らが案出した有形無形のノウハウが用いられている旨主張するが,仮にそうであったとしても,上記ノウハウは,同法2条1項1号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」ということはできず,著作権法において保護されるものではない。

()

なお,著作権は,著作者が著作物を創作した時点で直ちに著作者に生じる権利であるから,いまだ著作物が創作されておらず,著作物の内容が具体化される前に,あらかじめ合意によって,著作権の原始的帰属を決定することはできないものというべきである。

 

[控訴審同旨]

著作権の原始的な帰属主体は著作者である(著作権法17条)ところ,著作者とは,著作物を創作する者をいい(同法2条1項2号),著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。しかるに,控訴人らは,いずれも本件各書籍の制作自体に関与していないことを自認しているから,控訴人らが,本件各書籍の著作者であるということはできず,控訴人らが本件各書籍の著作権を原始的に取得することはあり得ないというべきである。

これに対し,控訴人らは,「本件各書籍には,控訴人らが当初シリーズ及び新シリーズについて案出した,原判決〔控訴人らの主張〕のノウハウが用いられているから,控訴人らも本件各書籍の共同著作者として共有著作権を有する。」旨主張する。しかしながら,控訴人ら主張のノウハウは,著作権法2条1項1号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」ということはできず,著作権法において保護されるものではない。

()

また,著作権の原始的な帰属主体は,上記のとおり,著作者である(著作権法17条)から,客観的に著作者としての要件を満たさない者について,著作権が原始的に帰属することはあり得ず,仮に,当事者間において,著作者でない者につき著作権が原始的に帰属する旨の合意が成立したとしても,そのような合意の効力を認めることはできないと解さざるを得ない。

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2025年7月29日火曜日

判例/職務著作性(法人等の発意)

 

職務著作性(法人等の発意)

平成220804日知的財産高等裁判所[平成22()10029]

法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があるとすることに異論はないところであるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,「法人等の発意」の要件を満たすものと解すべきである。

 

▶平成200625日東京地方裁判所[平成19()33577]

「発意」については,法人等の使用者の自発的意思に基づき,従業員に対して個別具体的な命令がされたような場合のみならず,当該雇用関係等から外形的に観察して,法人等の使用者の包括的,間接的な意図の下に創作が行われたと評価できる場合も含まれるものと解すべきである。

 

平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]

「法人の発意」の要件を満たすためには,著作物の作成の意思が直接又は間接に使用者の判断にかかっていればよく,著作物作成に至る経緯,業務従事者の職務,作成された著作物の内容や性質,両者の関連性の程度等を総合考慮して,従業者が職務を遂行するために著作物を作成することが必要であることを想定していたか,想定し得たときは,上記要件を満たすと解するのが相当である。

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判例/著作権法15条2項の立法趣旨

 

著作権法152項の立法趣旨

平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]

法は,旧15条及び現行151項を通じて,著作行為をし得るのは,自然人であるとの前提に立ちつつ,著作権取引等の便宜を考慮し,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみ,法人等を著作者と擬制し,所定の著作物の著作者を法人等とする旨規定したものであるが(最高裁平成15411日第二小法廷判決参照),プログラムの著作物については,プログラムの多くが,企業などの法人において多数の従業員により組織的に作成され,その中には,本来公表を予定しないもの,無名又は作成者以外の名義で公表されるものも多いという実態があるなどプログラムの特質にかんがみ,現行152項において,公表名義を問うことなく,法人等が著作者となる旨定めたものと解するのが相当である。

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2025年7月14日月曜日

判例/職務著作の法意

 

職務著作の法意

▶平成19914日東京地方裁判所[平成19()11535]▶平成200730日知的財産高等裁判所[平成19()10082]

[控訴審]

…… そして,著作者が著作物を創作する者であることは,新・旧著作権法において変わりがないものと解され,前記の裁判例にみられるように,「著作者の精神的所産たる思想内容の独創的表現」,「精神的労作の所産である思想または感情の独創的表白」という事実行為としての創作行為を行うことができるのは自然人であることからすれば,旧著作権法において著作者となり得るのは原則として自然人であると解すべきである。

イ もっとも,新著作権法は,法人等における著作物の創作の実態等から,一定の要件の下に法人等の被用者が職務上作成する著作物についてその著作者を当該法人等とする職務著作の規定(15条)を設け,前記原則[注:「著作者となり得るのは原則として自然人である」という原則]の例外を規定している。すなわち,法人等において被用者が職務上作成する著作物には多種多様なものが含まれ,様々な創作態様のものがあるところ,被用者が雇用契約等に基づく指揮監督の下に作成する著作物には,作成に関与した個々の被用者の個性の表出が乏しいうえ,その中には創作行為に関与した者の特定が必ずしも容易ではなく,また,仮にその特定ができた場合であっても複数の作成関与者の創作行為の範囲や寄与の程度等を明らかにすることが困難なものが多数あり得ること,そのため,それが法人等の名義で公表されることが予定される場合には,公表により法人等が当該著作物に対する社会的な責任を負うと同時にこれに対する社会的な評価をも受けることとなるため,個々の作成関与者については当該著作物に関する人格的利益の保護を考慮することを要しないものと考えられること,法人等の経済的な負担において作成されたそれらの著作物を当該法人等が利用するに当たり,当該著作物の権利関係を集中し,明確にしなければ,その円滑な利用に支障を来す場合が少なくないものと考えられること,それゆえそのような著作物については,法人等と作成に関与した被用者との間において,当該著作物の著作権を法人等に原始的に帰属させるとするのが当事者の意思に沿うものと推測されること等の法人等における著作物の創作の実態や当該著作物の利用の便宜の必要性等を考慮し,新著作権法は,一定の要件の下に法人等が著作者となることを認めている。

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2025年7月8日火曜日

判例/座談会形式で仕上げた文章は共同著作物か

 

座談会形式で仕上げた文章は共同著作物か

▶平成170701日東京地方裁判所[平成16()12242]

上記座談会は,原告が複数の三坂小学校関係者に対して,個々人の文章や手紙又は電話による質問をもとに,異なる時点,異なる場所でされた回答等をあたかも同一の場所で座談会を開いたかのような体裁の文章に仕上げたものである。

そうすると,上記座談会については原告の個性が表れており,同原告の創作的関与がされたもので,同文章につき原告は少なくとも共同著作物の著作者の権利を有するものということができる。

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判例/原典(「平家物語」)の翻訳作業に関与した者の共同著作者性が争点となった事例

 

原典(「平家物語」)の翻訳作業に関与した者の共同著作者性が争点となった事例

▶昭和5295日京都地方裁判所[昭和50()577]▶昭和550626日大阪高等裁判所[昭和52()1837]

二 そこでまず原告が、本件「英訳平家物語」の共同著作権者であるか否かについて検討する。

翻訳とは「ある国語で表現された文書の内容を他の国語になおすこと(広辞苑)Websterにはrending into another language express the sense of in the words of another language interprete explain or recapitulate in other words.とある」をいうから翻訳者とは特定の国語で書かれた原典の意味を理解した上で、その原典を他の国語で表現できる者をいい、ある翻訳がなされた場合、その翻訳物の著作権は、特段の意思表示なき限り、そういうことをなし遂げた人に帰属することはいうまでもない。しかして原典の翻訳作業に複数の者が関与した場合、誰が翻訳者であるのか問題となるが、翻訳作業に関与した者の中から翻訳者を決定するには、関与者が基本となる翻訳、校訂、再校訂、完訳と続く一連の翻訳作業の中で如何なる役割を担なつたかという質的面と関与者が翻訳された書物の全体の如何なる分量の翻訳作業にたずさわつたかという量的面とを相関的に評価して決定すべきである。特に関与者の翻訳作業の中での役割を評価するにあたつては、翻訳には、原典に対する正確な理解と移し換える国語への精通が必要であるから、右関与者の原典の理解力、移し換える国語の精通性の程度が重要な要素となる。

 

[控訴審]

() 共同著作者性なしと認定した原審に対して、控訴審では原審と異なる認定がされた。

 

3(一) 右認定に基づけば、本件「英訳平家物語」は、著作権法上の翻訳著作物に該当するというべきところ、翻訳の定義はさて置き、右「英訳平家物語」作成の過程において控訴人が果した役割およびその成果に着目するならば、右「英訳平家物語」の創作には、控訴人独自の、被控訴人と対等の立場よりする、創意工夫や精神的操作が存在する、というべく、しからば、この点において、同法上、控訴人は、右「英訳平家物語」につき、共同著作者としての地位を有する、と認めるのが相当である。

()

(二) ただ、控訴人が本件英訳に関与した分量については前叙認定のとおりであつて、右認定からすると、形式的には、控訴人が右英訳の全部にわたつて関与していないこと、明らかである。

しかしながら、前叙認定にかかる、本件「英訳平家物語」の原典たる平家物語そのものが前叙各巻から成り、その各巻が独立の内容を持ちながら相互に密接に結びつき合つて一貫した一つの物語を構成しているとの点、右「英訳平家物語」も又、原典たる平家物語の右構成に相応する構成をとつている点、したがつて、右「英訳平家物語」の内控訴人の関与した部分を分離しては、右「英訳平家物語」が一貫した一つの物語として成立たない点、のみならず、控訴人が関与した部分自体についても、その性質上、控訴人と被控訴人の寄与度が明確に分離計量できない点、現に、本件「英訳平家物語」は、控訴人の関与した部分を含め一体として、一つの英文学作品としての評価を受けている点、特に、東大出版会が本件英訳原稿を審査した際の、同出版会担当者の、右原稿の内平家物語巻の一ないし巻の六に相当する分とそれ以後の巻に相当する分の間に内容的差異はない、と評定している点、控訴人以後本件英訳に協力した人々が、当時の職業、専攻科目等からみて控訴人と同等の英文学的素養および詩才を持つていたとは認め得ない点、を総合勘案すると、控訴人の本件英訳に関する創意工夫は、被控訴人の本件英訳における創造的精神的活動に作用し、それが、控訴人の関与なしに行われたその後の本件英訳にも引継がれ、あるいはこれに強い影響をおよぼした、と推認することができ、この点からすると、本件においては、控訴人が本件英訳に関与した部分を単に機械的形式的に分離し、その計量から、控訴人の右英訳に対する寄与度を評価することはできない、というのが相当である。

しからば、控訴人の本件英訳の関与量が形式的には全体の約50パーセント相当であつても、同人の本件英訳における創意とその精神的労力は、右関与部分を超え、残余の約50パーセントの部分にもおよんでいる、と評価し、控訴人の本件英訳の関与量は、著作権法上、控訴人に本件「英訳平家物語」の共同著作者としての地位を認めるにつき、何等妨げとならない、というべきである。

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判例/大学教授の「エスキース」の著作権の帰属(法人著作性)が問題となった事例

 

大学教授の「エスキース」の著作権の帰属(法人著作性)が問題となった事例

▶平成130918日東京高等裁判所[平成12()4816]

2 法人著作の成否について

(1) Dが,早稲田大学理工学部建築学科に教授として在職している間に,本件記念館及び桃華楽堂の各建築設計を行ったこと,本件エスキース[注:「エスキース」とは、建築家が建築物を設計するに当たり、その構想をフリーハンドで描いたスケッチである。]が,上記各設計における具体的な設計図面作成に着手する前に,出来上がる予定の建築物の構想を表現したもの(エスキース)の一部であることは,当事者間に争いがない。

(2) 控訴人は,本件エスキースについての著作権も著作者人格権も,いわゆる法人著作として当初から早稲田大学に帰属するものであり,Dには帰属していなかったと主張するが,採用できない。

() まず,ある著作物につきいわゆる法人著作が成立するためには,当該著作物が法人等の「発意に基づき」作成されたものでなければならないのに(著作権法15条1項),本件エスキース自体についてはおろか,本件記念館や桃華楽堂の設計図書についても,早稲田大学の「発意に基づき」作成されたものであることに該当する事実は,控訴人自身主張しておらず,また,本件全証拠によっても認めることができない。なお,仮に,早稲田大学が,Dがこれらを作成することにつき,種々の形で協力したり援助を与えたりしたことがあったとしても,これらが同大学の発意に基づき作成されたことになるわけでないことは,いうまでもないところである。

控訴人主張の法人著作の主張が採用できないことは,この点からだけでも,明らかというべきである。

() 次に,いわゆる法人著作が成立するためには,当該著作物が「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」でなければならないのに(著作権法15条1項),本件エスキースが,早稲田大学の著作の名義の下に公表するものであったことに該当する事実は,控訴人自身主張しておらず,また,本件全証拠によっても認めることができない。

この点について,控訴人は,早稲田大学は,本件記念館及び桃華楽堂の設計図書を「早稲田大学D研究室D」の名で公表した旨主張する。

しかし,仮にこれが事実であるとしても,社会通念に従えば,「早稲田大学D研究室」の部分は,これに続く「D」の肩書きにすぎないものであり,この記載をもって早稲田大学の著作の名義の下の公表であるということは,到底できない。しかも,本件エスキースは,具体的な設計図面を作成する前の段階で描かれたものの一部であったのであり,設計図書とは別の作品であるのに,なにゆえに,設計図書を「早稲田大学D研究室D」の名で公表したことで,本件エスキースまでその名で公表したことになるのか明らかでない。

控訴人は,本件エスキースが,本件記念館及び桃華楽堂の設計図書という巨大な作品の形成途上で生れたものであるとして,あたかも,本件エスキースが設計図書に付随するものとして存在し,独立の著作物としての存在が認められないものであるかのように主張しているが,本件エスキースは,上記のとおり,設計図面作成に着手する前に,出来上がる予定の建築物の構想を表現したものの一部であって,設計図面でないことは明らかであり,設計図書とは別の独立した著作物としての存在が否定されなければならない理由はない。

法人著作についての控訴人の主張が採用できないことは,この点からも明らかというべきである。

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2025年6月19日木曜日

判例/著作権法16条の立法趣旨

 

著作権法16条の立法趣旨

平成170830日知的財産高等裁判所[平成17()10009]

著作権法16条本文は,「映画の著作物の著作者は,その映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者を除き,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする」と規定しているところ,同規定の趣旨は,映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者(いわゆるクラシカル・オーサー)については,映画の著作物の著作者とは別個に映画の著作物について権利行使することができることをいうものと解すべきである。

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2025年6月18日水曜日

判例/誰が「著作者」か

 

誰が「著作者」か

▶平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]

法は,211号において,「著作物」とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義し,これを受け,同項2号において,「著作者」とは,「著作物を創作する者をいう。」と定義しているところ,思想又は感情を創作的に表現し得るのは自然人のみであるから,元来,著作者となり得るのは自然人である。

 

▶平成160331日東京高等裁判所[平成16()39]

著作権の原始的な帰属主体は,著作者である(著作権法17条)から,客観的に著作者としての要件を満たさない者について,著作権が原始的に帰属することはあり得ず,仮に,当事者間において,著作者でない者につき著作権が原始的に帰属する旨の合意が成立したとしても,そのような合意の効力を認めることはできないと解さざるを得ない。

 

▶平成160218日東京地方裁判所[平成14()27550]

著作者とは「著作物を創作する者」をいう(著作権法212号)。創作する者とは,当該作品の形成に当たって,その者の思想,感情を創作的に表現したと評価される程度の活動をすることをいう。当該作品の形成に当たって,必要な資料を収集,整理をしたり,助言,助力をしたり,アイデア,ヒントを提供したり,できあがった作品について,加除,訂正をしたりすることによって,何らかの関与をした場合でも,その者の思想,感情を創作的に表現したと評価される程度の活動をしていない者は,創作した者ということはできない。

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