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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年6月26日木曜日

条文/著作権法第61条(著作権の譲渡)1/3

 

著作権法第61(著作権の譲渡)1/3

 

1 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。

2 著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」

 

以下、「▽総論」「▽著作権の一部譲渡の範囲」「▽著作権の譲渡のやり方と契約の書面化」「▽「特掲」(2)の意義」の順で、解説していきます。

著作権の譲渡を巡ってはさまざまな論点があり、実務上もしばしば問題となるところですので、少々長くなりますが、根気強くお読みください。

 

▽総論

 

▶全部譲渡と一部譲渡

 

著作権は、その全部又は一部を譲渡することができます(1)。つまり、著作権は、それを構成しているすべての権利を一括して譲渡(これを、「全部譲渡」と呼んでいます。)できるほか、所定の範囲(次記参照)に限定して譲渡(このような譲渡を、「一部譲渡」と呼んでいます。)することもできます。著作権が財産権である以上譲渡できることは当然のこととしても、「一部」の譲渡とはどのような単位(範囲)での譲渡を言うのか、著作物の利用形態や期間、地域による細分化が認められるのか、また、認められるとしてどの程度の細分化が許容されるのかについては議論があります。

 

「著作物」と言ってもその種類はさまざまで(211号、101項各号参照)、その利用形態(21条~28)も多様です。技術進歩により、新しい利用形態が生まれる可能性もあります。そして、そのような利用形態のそれぞれについて独立の経済的効用を図ることが可能であり、当事者もそのような経済的効果を期待して、さまざまな事態を想定した契約を結ぶ必要性があります。かかる事情の下で、著作物の利用に係る物権的な権利を第三者に移転する場合に、著作権の全部を譲渡するか、全く譲渡しないかの二者択一しかないとすれば、著作権者及びその著作物の利用を欲する者の双方にとって非常にやりにくい事態になります。著作権の一部譲渡を認める意義は、まさにこのような事態に対応して認められると解されます。著作権の一部譲渡を可能にすることにより、著作権者はその時々の状況に応じて柔軟な内容の排他的権利を第三者に移転できることになります。

 

▶著作権の譲渡と利用権の許諾

() 「利用権」とは、「著作権者の許諾に係る、著作物を当該許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において利用することができる権利」(633項参照)を意味します。

 

わが国の著作権法は、著作権の譲渡及び出版権(801項参照)の設定以外に、著作物の利用について第三者が「物権的な権利」を得るための制度を設けていません。著作権者が第三者に著作物の利用を許諾する制度(631項参照)はありますが、利用許諾に係る権利(「利用権」)はすべて「債権的な権利」であるため、許諾を受けた側で、当該利用許諾の範囲で他人が当該著作物を利用する行為に対して、当然にそれを差し止めることはできません。これは、被許諾者(ライセンシー)が「独占的」利用許諾契約のもとにある場合でも、事情は同じです。

 

著作権を譲渡することと、その著作権の目的である著作物について独占的な利用許諾を与えることは、区別して考えなければなりません。前者は、権利自体の移転であり、ひとたび適法に著作権が移転されると、著作者(もともとの著作権者)はもはや当該著作権の権利者ではなくなります。一方、後者の場合、独占的ではあっても、あくまでライセンス(利用権)が認められるだけの話ですから、著作権は著作者に帰属したままであり、ただ、著作者(著作権者)は、ライセンシーに対して著作物を独占的に利用させるべき契約上の義務(債務)があるだけです。

 

▶著作権の譲渡と所有権の移転

 

「著作権」という無体財産権の譲渡と、その著作権が化体している作品(有体物)の譲渡とは区別して考えなければなりません。例えば、「絵画」(原作品である有体物)を売っても、通常、その絵画の「著作権」まで売ったことにはなりません。

著作権と所有権の関係について、最高裁(昭和59120日最高裁判所第二小法廷[昭和58()171])は、次のように述べています:

『美術の著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているものというべきところ、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当である。』

 

▶著作権の予約譲渡は可能か

 

まだ完成していない著作物について、著作権の譲渡契約を結ぶこともできると解されます。ただし、将来作成されるべき著作物について、契約締結の段階である程度特定しておく必要があると思われます。

まだ完成していない(将来作成される)著作物について、その著作権の譲渡契約が結ばれる場合、契約締結時においては著作物は存在せず、したがって著作権が存在していない以上、その時点での著作権の移転ということはありえないのですが、「…の著作物が完成したら(著作権は移転する)」という条件が成就すれば、その条件の成就と同時に当該著作権の移転が有効に生ずることになると解されます(民法1271項参照)

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