『アメリカの著作権制度の解説/著作者人格権 2/3』
▽ 著作者人格権の対象
すでに述べたように、アメリカ連邦議会は、1990年、建国以来はじめて、著作者に係わる人格権についての法律(VARA)を制定しました。もっとも、その射程範囲は「制限された」(limited)もので、立法された人格権は、日本風に言えば、「氏名表示権」(moral
rights of attribution)と「同一性保持権」(moral rights of
integrity)で、しかも、これら2つの人格権がすべての著作者に認められるわけではなく、厳密に定義づけられた(narrowly defined)「視覚芸術著作物」の著作者のみに認められる建前となっています。
以上2つの人格権(氏名表示権及び同一性保持権)は、ベルヌ条約で示されている典型的なもので、ほとんどの先進国で採用されており、アメリカもそれにならったものとされています。
▶「視覚芸術著作物」とは
アメリカにおいて、著作者人格権が認められるのは、「視覚芸術著作物の著作者」に限られます(106A条(a))。そして、「視覚芸術著作物」の中身については、定義規定(101条)でその射程範囲がまさに“厳密に”(narrowly)定義づけられています。
当該定義規定によれば、「視覚芸術著作物」とは、次のいずれかをいうものとされています:
〇「絵画、素描、版画又は彫刻であって、1点のみで存在するもの」
〇「絵画、素描、版画又は彫刻であって、当該著作者によって署名がなされかつ続き番号が付されている200点以下の限定版で存在するもの」
〇「彫刻の場合には、当該著作者によって続き番号が付されかつその著作者の署名その他作者を特定するマーク[記号・印]のある、鋳造され、彫られ若しくは組み立てられたものが200点以下で存在するもの」
〇「展示のみを目的として制作された静止画写真[スチール写真画像]であって、当該著作者によって署名されている1点のみで存在するもの」
〇「展示のみを目的として制作された静止画写真[スチール写真画像]であって、当該著作者によって署名がなされかつ続き番号が付されている200点以下の限定版で存在するもの」
一方、「視覚芸術著作物」には、次のものを含まないとされています。
×「ポスター、地図、地球儀、海図、技術的な図面、図表、模型、応用美術品、映画その他の視聴覚著作物、書籍、雑誌、新聞、定期刊行物、データベース、電子情報サービス、電子出版物、若しくは同様の出版物」(ここに掲げられる物品[品物]の一部又は部分を含む。)
×「販売品[商品]又は宣伝広告用、販売促進用、説明用、表紙用若しくは包装用の物品[材料]若しくは容器」(ここに掲げられる物品[品物]の一部又は部分を含む。)
×「職務著作物」(注) 例えば、1点ものの彫刻であっても「職務著作物」に該当すれば「視覚芸術著作物」に当たらない(したがって、106A条に基づく著作者人格権による保護を受けることができない)点に留意してください。
×「連邦著作権法の下で著作権による保護の対象とならない作成物」
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