実用品(工業製品)は著作物か
▶令和3年6月29日知的財産高等裁判所[令和3(ネ)10024]
本件商品のような実用に供される工業製品であっても,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合には,著作権法2条1項1号の「美術」の著作物として,著作物性を有するものと解される。しかし,そのような美的特性を備えていると認められない場合には,著作物性を有することはないものと解される。以上の点は,著作権法に明文の規定があるものではないが,実用に供される工業製品は,意匠法によって保護されるものであり,意匠法と著作権法との保護の要件,期間,態様等の違いを考えると,「実用的な機能と分離して把握することができる,美術鑑賞の対象となる美的特性」を備えていると認められる場合はともかく,そうでない場合は,著作権法ではなく,もっぱら意匠法の規律に服すると解することが,我が国の知的財産法全体の法体系に照らし相当であると解されるからである。これに反する控訴人の主張を採用することはできない。
▶平成13年10月11日東京地方裁判所[平成12(ワ)2772]
本件磁石は,量産される工業製品であるから著作権法2条1号の「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と認めることはできず,同条の「著作物」に該当しないと解されるので,その再製行為は,そもそも著作権違反の問題になり得ないというべきである。
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