「シナリオ協力」との表示は妥当か
▶令和6年11月29日東京地方裁判所[令和3(ワ)5411]▶令和7年8月7日知的財産高等裁判所[令和7(ネ)10007等]
(3)
氏名表示権侵害について
前提事実のとおり、本件漫画には、「原作者」として被告のペンネームである「Biii」が、「シナリオ協力」として原告のペンネームである「Ai」が、それぞれ表示されているところ、原告は、このような表示は、二次的著作物の原著作者名の表示とはいえないと主張する。
そこで検討すると、著作権法19条1項は、「著作者は、…その著作物の公衆への提供」又は「提示に際し、その…変名を著作者名として表示…する権利を有する」と規定しているものの、同法は、その具体的な態様について、特段規定していない。そして、原告シナリオと本件漫画とを対比すると、本件漫画の大まかなストーリー展開や場面、出来事については原告シナリオと似通っているといえるものの、登場人物の台詞については具体的表現が異なるところが多いことが認められる(別紙著作物主張対比表参照)。
そうすると、仮に本件漫画が原告シナリオの二次的著作物であるとしても、本件漫画における原告の創作的表現の貢献の度合いに照らせば、「シナリオ協力」として原告の変名が表示されていることが、著作権法19条1項所定の変名としての著作者名の表示に当たらないということはできない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできず、被告が原告の氏名表示権を侵害したとはいえない。
[控訴審同旨]
…… 原告は、本件漫画には「原作者」として表示されるべきであったと主張するが、もともと原告シナリオ自体、被告が作成した本件素案に基づいて作成されたものであるという経緯があることを踏まえると、仮に本件漫画が原告シナリオを原著作物とし、これを改変した二次的著作物であるとした場合でも、「シナリオ協力」という表記が原著作物の著作者の表記として必ずしも不当とはいい難い。したがって、原告の主張を採用することはできない。
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