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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年10月2日木曜日

判例/スクール講座情報誌の分類・インデックス・アイコン一覧等の編集著作物性ないしその侵害性が争点となった事例

 

スクール講座情報誌の分類・インデックス・アイコン一覧等の編集著作物性ないしその侵害性が争点となった事例

平成170329日東京高等裁判所[平成16()2327]

() 控訴人は,各種学校等(以下「スクール」)及びその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(以下「控訴人情報誌」といい,その首都圏版,関西版及び東海版を総称して「控訴人各情報誌」という。)を編集,発行しており,被控訴人は,これと同様の情報を掲載した情報誌「ヴィー・スクール」(以下「被控訴人情報誌」といい,その首都圏版,関西版及び東海版を総称して「被控訴人各情報誌」という。)を編集,発行している。

控訴人は,原審において,被控訴人に対し,(1)被控訴人による被控訴人各情報誌の編集,発行は,①控訴人各情報誌平成14年4月号のモノクロで印刷され,広告主から出稿されたスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類,配列されて掲載されている部分(以下「分野別モノクロ情報ページ」),②同分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセル,③同「学べる内容から探せるスーパーINDEX」(以下「スーパーインデックス」),④同スーパーインデックスの大分類・小分類表示,⑤同「通学アイコン一覧表」(以下「控訴人通学アイコン一覧表」)及び⑥同「通信アイコン一覧表」(「原告通信アイコン一覧表」)の各編集著作権を侵害すると主張して,被控訴人各情報誌の製作,印刷,製本,発売及び頒布の差止めなどを求めた。

原判決は,上記(1)①は,個々の具体的な広告記事を素材としてとらえた場合には,編集著作物に該当するが,被控訴人各情報誌は,控訴人の編集著作権を侵害するものではなく,上記(1)①~④の編集体系自体,⑤及び⑥は,編集著作物ということはできず,また,被控訴人に不法行為に該当する行為も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。

 

2 各著作物の編集著作物該当性及び被控訴人による著作権侵害の成否について

2-1 分野別モノクロ情報ページについて

(1) 分野別モノクロ情報ページの編集著作物該当性について

ア 上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

() 控訴人情報誌東海版平成14年4月号には,モノクロで印刷され,控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載された分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)があり,これらのページは,紙面の前小口の端から約1.5センチメートル内の部分に当該ページに掲載されているスクール・講座情報の内容を端的に示す文言がツメ見出しとして記載され,本文部分は,1ページに1ないし9校の通学講座に関するスクール・講座情報が掲載され,各スクールごとに,①スクール名,②住所,③最寄駅,④スクールの特徴を示すアイコン(「スクール便利ポイント」),⑤カプセル(講座内容を表す分類指標),⑥講座の特徴を示すアイコン(開講時間,受講制度,レベル,講師に関する事項等,講座・コース独自の特長及びメリットに関する「特長アイコン」と,受講料の支払方法及び割引に関する特長,メリットに関する「○得情報アイコン」がある。),⑦資料請求番号,⑧コース名,⑨講座開講日時・費用,⑩入学金・受講料の割引を示すマーク,⑪コース内容,⑫スクール情報,⑬地図,⑭交通案内及びフリースペースから構成され,これらの情報は,「情報の見方」(74頁)の記載に従って配置されている。

() 上記分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)において,スクールは,ツメ見出しの分類により,「英会話」(106頁~121頁),「外国語&語学の仕事」(121頁~126頁),「パソコン」(126頁~139頁),「デジタルクリエイティブ」(140頁~148頁),「エンジニア」(149頁~152頁),「ビジネス資格&スキル」(152頁~158頁),「建築・インテリア・CAD」(159頁~169頁),「フラワー」(170頁~178頁),「マスコミ・ファッション・デザイン」(179頁~180頁),「キレイ」(181頁~190頁),「癒し&健康」(191頁~197頁),「医療&福祉・教育」(198頁~204頁),「専門スキル」(205頁~206頁),「フード&料理」(207頁~212頁),「ミュージック」(213頁~217頁),「絵画・アート・書&クラフト」(218頁~221頁),「文化教養」(221頁~223頁),「スポーツ&乗り物」(224頁~228頁),「ダンス」(228頁~234頁)の順に配列されている。

() 上記ツメ見出し及びカプセルは,読者による各スクール・講座情報の検索や比較検討を容易にするため,控訴人において,上記記載の方針に従って設定したものであり,控訴人情報誌東海版平成14年4月号におけるカプセルの種類は866,ツメ見出しの種類は19である。

イ 上記認定の事実によれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)は,広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,読者の検索及び比較検討を容易にするため,五十音順等の既存の基準ではなく,控訴人の独自に定めた分類,配列方針に従って配列したものであり,その具体的配列は創作性を有するものと認められるから,編集著作物に該当するということができる。しかしながら,上記ア()の配置方針自体は,スクール名,住所,最寄駅,コース名,地図などの読者が当然に必要とする情報を誌面に割り付ける際の方針,すなわち,アイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分である。また,上記ア()の分類自体も,同様にアイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分であると認められる上,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,スクール・講座情報を掲載する情報誌において,読者による検索の便宜のため,同種のスクールをまとめて分類する必要があることは,当然のことであり,その分類項目も,英会話,外国語,パソコン,資格など,実用性の高いスクール・講座情報を先に,音楽,海外,スポーツなど,趣味性の高いスクール・講座情報を後に,かつ,類似するものが近接したページに掲載されるよう19種類のツメ見出しの分類に従って配列したにすぎないものであるから,その選択,配列に表現上の創作性を認めることはできない。

控訴人は,上記具体的なスクール・講座情報及び具体的な編集物である控訴人情報誌東海版平成14年4月号を離れ,分類,配列体系の項目である「学ぶ内容」ないし編集体系を構成する分類項目を素材とし,編集体系を表現としてとらえるべきであると主張する。しかしながら,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),アイデアなど表現それ自体でない部分は,著作権法の保護の対象ではないと解すべきところ,控訴人の主張する具体的な編集物を離れた編集体系自体は,上記のとおり,選択,配列のアイデアにすぎないというべきであり,また,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,その選択,配列に表現上の創作性を認め得ないものであるから,これを著作権法の保護の対象と解することはできない。したがって,控訴人の上記主張は,いずれにしても採用することができない。

(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について

 ア 控訴人は,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害すると主張するので,検討する。

上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。

()

イ 上記認定の事実によれば,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号)のカテゴリー別スクール情報ページは,被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,上記ア()()の配置方針及び分類により掲載したものであるところ,その配置方針及び分類は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)の配置方針及び分類と類似しているものの,これらの点は,いずれも上記控訴人情報誌の表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分である。

そこで,進んで,スクール情報・講座情報の具体的配列について見ることとし,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌とも,スクール・講座情報は,スクールごとに掲載されているから,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるスクールの配列と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号におけるスクールの具体的配列を対比する。

() 控訴人情報誌東海版平成14年4月号において,スクールは,例えば,「英会話」(106頁~121頁)の分類中では,「CROSSROADS」(106頁上段),「NOVA」(同頁中,下段),「ECC」(107頁)・・・「YHG英語セミナー」(121頁上段中)の順に,「パソコン」(126頁~139頁)の分類中では,「きりゅうパソコン教室」(126頁下段左),「日本パソコン学院アビバ」(127頁),「Winパソコン塾」(128頁上段),「NECパソコンファミリースクウェア名駅校/新岐阜校」(同頁中,下段)・・・「おさや総合スクール」(139頁上段右),「パソコンカレッジガリレオ」(同段左),「中部大栄教育システム」(同頁中,下段)の順に配列されている。

() これに対し,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号において,スクールは,上記「英会話」に対応する「英語,英会話をマスターしたい!」(174頁~185頁)の分類中では,「ルクス」(174頁上段左),「NOVA」(同頁中,下段),「KTC英会話名古屋校」(175頁)・・・「REDWOODS ACADEMY」(185頁上段右)の順に,上記「パソコン」に対応する「パソコンを自由に操りたい!」(187頁~200頁)の分類中では,「ももたろうパソコン教室矢場校」(187頁上段左),「ももたろうパソ

コン教室昭和橋校」(同頁中段右),「ももたろうパソコン教室春日井校」(同段左),「中部コンピュータ学院本校」(同頁下段)・・・「アルファ・インストラクタ・アカデミー」(200頁)の順に配列され,その配列が上記()の配列と同一性又は類似性があると認めることはできず,他の分類に係る配列についても,両者の配列に同一性又は類似性があると認めることはできない。そして,このことは,被控訴人情報誌東海版同年11月号及び同12月号について見ても同様である。

ウ 以上対比したところによれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページは,配置方針及び分類は類似しているものの,その具体的配列は,同一性又は類似性があると認めることはできず,上記類似性を有する部分は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって,上記各カテゴリー別スクール情報ページから上記分野別モノクロ情報ページの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,上記各カテゴリー別スクール情報ページは,上記分野別モノクロ情報ページを複製ないし翻案したものということはできない。

また,控訴人は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおける素材が,特定のスクール講座の広告記事であるとしても,そこに掲載される広告の広告主と,被控訴人情報誌東海版各号のカテゴリー別スクール情報ページに掲載される広告の広告主は,多くが一致していること,被控訴人が,被控訴人情報誌東海版の対象とする地域を,控訴人情報誌東海版と同一の東海地方に設定し,控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を見て,その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであることなどを挙げて,素材であるスクール・講座情報に関する依拠性も明らかであると主張する。しかしながら,被控訴人が控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を対象に営業を行ったとしても,そのこと自体は,何ら違法ということはできず,また,広告主の多くが一致していたとしても,当該広告主から控訴人に出稿されたスクール・講座情報と被控訴人に出稿されたスクール・講座情報は,別のものであるから,控訴人主張の上記事実をもって,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページが控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに依拠しているということはできない。

エ 以上検討したところによれば,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。

(以下略)

3 被控訴人の不法行為の成否について

控訴人は,被控訴人は,被控訴人各情報誌において,控訴人各情報誌の広告記事・インデックスの配列方法,アイコン一覧表,レイアウト及びFAXシートを模倣し,また,控訴人の運営する控訴人サイトの手法を模倣し,被控訴人サイトを運営して,被控訴人各情報誌を発行する行為は,控訴人の獲得してきた媒体としての信用にただ乗りし,控訴人の顧客を奪取するという不正競争的意図を有するものであって,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を違法に侵害するものとして,不法行為を構成すると主張する。

しかしながら,控訴人各情報誌の配列方法,アイコン一覧表,レイアウト及びFAXシート並びに控訴人の運営する控訴人サイトの手法は,著作権法上の保護を受けるものではなく,控訴人がその独占的使用を主張し得る筋合いのものではないから,被控訴人においてこれらのノウハウを使用する行為は,それがデッド・コピーに当たるなど自由競争の範囲を逸脱したものと認められる特段の事情がある場合を除き,何ら違法性を帯びるものではないところ,被控訴人各情報誌及び被控訴人サイトは,控訴人各情報誌及び控訴人サイトをデッド・コピーしたものであると認めることができないことは,以上の判示に照らして明らかであり,他に,上記の特段の事情の存在をうかがわせるに足りる証拠はない。

したがって,被控訴人に控訴人主張のような不法行為に該当する行為を認めることはできないから,控訴人の不法行為に基づく請求も,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。

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