カエルを擬人化した図柄(キャラクター)の侵害性が問題となった事例
▶平成13年01月23日東京高等裁判所[平成12(ネ)4735]
(3)オ 上記のとおり、独自の創作性を認めることができる本件著作物の形状、図柄を構成する各要素の配置、色彩等による具体的な表現全体に関して、本件著作物(1)、(2)、(3)①ないし⑥、(4)①及び②と、被控訴人図柄①、④及び⑤を、それぞれ個別的に対比してみると、輪郭の線の太さ、目玉の配置、瞳の有無、顔と胴体のバランス、手足の形状、全体の配色等において、表現を異にしていることが明らかであり、このような状況の下で、被控訴人図柄を見た者が、これらから本件著作物を想起することができると認めることはできないから、被控訴人図柄を、そこから本件著作物を直接感得することができるものとすることはできないというべきである。
(4) 控訴人は、基本となるキャラクターが共通していれば、このキャラクターに特徴を持たせて差別化を図り、それにより個性を出すことが行われたとしても、同じキャラクターであると認識することができる限り、複製権又は翻案権の侵害に当たるという趣旨の主張をする。
しかし、著作権法によって保護されるのは、「表現したもの」、すなわち、現実になされた具体的表現を通じて示された限りにおいての創作性であり、その意味では、著作権法によって保護されるのは、現実になされた具体的な表現のみであるというべきである。ただし、現実になされた具体的な表現に創作性が認められる場合に、次に問題となるのは当該著作物の保護の範囲であり、具体的な保護の範囲を検討するに当たって、本来それ自体としては著作権法上の保護の対象とならない思想又は感情自体、あるいは、表現手法ないしアイデアの創作性、その延長上で、キャラクターの創作性が影響を及ぼすことがあることは否定できないところである。そして、キャラクターとして把握されるもの及びその創作性のいかんによっては、当該キャラクターを創作し、それを現実に具体的な図柄として表現した者は、その図柄を著作物とする保護の範囲として、当該キャラクターを現実化した図柄すべてを主張することが許されることもあり得るであろう。
しかしながら、前述したとおり、カエルを擬人化するという手法が広く知られた事柄であることは明らかであり、カエルを擬人化する場合に、顔、目玉、胴体、手足によって構成されることになることも自明である。そして、本件著作物の基本的な表現に着目してみる限り、前述のとおり、それは、通常予想されるありふれた表現といい得る範囲に属するものであるから、これ自体を保護に値するキャラクターの構成要素とすることはできず、細部の表現によって構成されるところから抽象化されるものを本件著作物のキャラクターと把握する場合には、被控訴人図柄を同一のキャラクターの具体化とみることができないものであることは、前述したところから明らかである。
そうすると、本件著作物の具体的表現を捨象した抽象的概念と考えられるキャラクターをいかなる内容のものとして把握するとしても、それを考慮することにより、前記(3)の判断が左右されることはあり得ないことになる。
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