このブログを検索

自己紹介

著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年7月4日金曜日

条文/著作権法第80条(出版権の内容)1/3

 

著作権法第80(出版権の内容)1/3

 

1 出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる権利の全部又は一部を専有する。

() 頒布の目的をもつて、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま前条第1項に規定する方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む。)

() 原作のまま前条第1項に規定する方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利

2 出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版行為又は公衆送信行為(第83条第2項及び第84条第3項において「出版行為等」という。)があつた日から3年を経過したときは、複製権等保有者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物について、全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製し、又は公衆送信を行うことができる。

3 出版権者は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製又は公衆送信を許諾することができる。

4 第63条第2項、第3項及び第6項並びに第63条の2の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第63条第3項中「著作権者」とあるのは「第79条第1項の複製権等保有者及び出版権者」と、同条第6項中「第23条第1項」とあるのは「第80条第1項(第2号に係る部分に限る。)」と読み替えるものとする。」

 

▽ 第1項総論

 

「出版権」とは、その目的である著作物に係る複製又は公衆送信を排他独占的に利用できる権利のことです。「専有」(1項柱書)とは、まさに、出版権が、著作権(著作財産権)同様、排他独占的権利であることを表しています。

なお、今日では、紙媒体による出版に加えて、CD-ROM等による出版やインターネット送信による電子出版も広く普及しているため、平成26年法改正において、出版権の内容として、紙媒体による出版についての複製権に加え、CD-ROM等による出版についての複製権やインターネット送信による電子出版についての公衆送信権についても規定しました。

 

出版権の具体的な内容は、それぞれ「設定行為で定めるところ」によります(1項柱書)。

出版権は、通例、複製権等保有者と著作物を出版行為又は公衆送信行為することを引き受ける者との間の「出版権設定契約」(「(独占的)出版許諾契約」とは異なります。)によって、当事者間の出版権の具体的な内容が取り決められることになります。出版権は設定行為で定められた範囲内で著作物を出版等する「排他独占的権利」ですから、出版権者は、当該出版権の内容と抵触する第三者の無断出版等に対して自らの有する出版権に基づいて発行差止めや損害賠償を請求することができます(当該出版権の内容と抵触する複製権等保有者の出版行為に対しても発行差止めや損害賠償の請求をすることが可能です)。また、設定された出版権の範囲内で複製権又は公衆送信権は制限を受けることになるため、複製権等保有者は、他に出版等を希望する者に対し、当該出版権の内容と抵触する出版権を設定することも、出版等の許諾を与えることもできません。複製権等保有者自ら抵触する内容の出版行為をすることもできません。なお、出版権が設定されている場合で第三者による無断出版等が行われているときは、当該無断出版等に対して、出版権者はもちろん、複製権等保有者も自らの複製権又は公衆送信権に基づいて当該出版等の差止めや損害賠償を請求することができるものと解されます。

 

出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる①又は②の権利の全部又は一部を専有する、とされています(1項)。

① 頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む。)(1号)以下、「1号出版権」という。

② 原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された複製物を用いて公衆送信を行う権利(2号)以下、「2号出版権」という。

 

本項では、1号出版権と2号出版権について、その「全部又は一部」を専有することと規定しています。ここで、「全部又は一部」とは、基本的には、1号出版権と2号出版権の両方を専有する場合、1号出版権のみを専有する場合、2号出版権のみを専有する場合を想定していますが、さらに各号に掲げる権利の一部を専有する余地も認められると解されます。例えば、1号出版権権について、紙媒体による出版についての権利のみを専有する場合やCD-ROM等による出版についての権利のみを専有する場合のように、「利用態様としての区別が明確であり、権利の一部のみを専有することによって実務的・理論的な混乱が生じるおそれがない場合」には権利の一部のみを専有することが可能であると考えられています(もっとも、個別具体的な事案においてどこまでそのような権利の一部専有が可能かという点については、終局的には、裁判所において判断されることになります)。

() 出版権の一部のみを専有することとした場合、当該出版権が及ばない形態の海賊版が流通した場合に出版権者が自ら効果的な海賊版対策を行うことができないため、より効果的な海賊版対策を講ずる観点からは、一般的には、当初から広範な利用を可能とする「全部」の出版権(1号出版権+2号出版権)を設定することが有効であると考えられています。

 For more information

0 件のコメント:

コメントを投稿