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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年7月4日金曜日

条文/著作権法第80条(出版権の内容)2/3

 

著作権法第80(出版権の内容)2/3

 

1号出版権

 

「頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利」とは、従前の出版権の内容と同様であり、紙媒体による出版(複製)についての権利を想定しています。一方、かっこ書で規定している権利は、CD-ROM等による出版(複製)についての権利であり、紙媒体による権利と同様に、「頒布の目的をもって」複製する権利として規定されています。

「頒布の目的をもって」とは、有償・無償を問わず、著作物の複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することを目的として、という意味です(2119号参照)。出版権の設定を受けた者(出版権者)は、設定行為で定められた範囲内で、著作物を単に「複製」するだけでなく、その複製物(印刷物・CD-ROM等)を公衆に譲渡する権利(一連の出版行為を可能ならしめる権利)を有することが当然に予定されています。

「原作のまま」とは、著作物をそのまま再現複製することをいい、翻訳による出版や翻案による出版など、二次的著作物として複製することを含めない趣旨です。したがって、出版権者が当該出版権の目的である著作物を翻訳・翻案等した二次的著作物についても出版等を希望する場合には、著作権者(翻案権者)と別段の契約をしておく必要があります。

 

2号出版権

 

平成26法改正において、出版権の内容として、著作物を記録したHDD等の記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利が新たに規定されました。これにより、2号出版権の設定を受けた出版権者は、公衆送信を行う権利を専有し、ネット上での出版物の違法利用(無断送信)を自ら差し止めることができるようになりました。

「原作のまま」と規定しているのは、紙媒体等による出版の場合と同様に、翻訳や翻案して公衆送信することは認めない趣旨です。

() 例えば、漫画等で絵の部分には翻案がされておらず、台詞部分のみが翻訳されているような海賊版については、少なくとも絵の部分について出版権侵害が成立しうるものと解されます。

「前条第1項に規定する方式」とは、「電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式」をいい、「公衆送信」とは、「放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む」ものを意味します(791項かっこ書参照)。

なお、電子出版においては、通常、著作物を公衆送信目的で複製し、公衆送信を行うという一連の行為が行われますが、2号出版権の内容として複製権は規定されていません。これは、公衆送信権を専有すれば、通常の場合、有効な海賊版対策に支障はないものと考えられるからである。この点について、2号出版権のみを専有する出版権者が、違法配信目的で複製を行ったがいまだ配信(送信可能化を含む。)を行っていない者に対して対応することができるかが一応問題となりますが、万一そのような海賊版を発見した場合には、出版権者は、そのような公衆送信目的の複製に対しては、公衆送信権の侵害予防のための差止請求(1121項)で対応できると解されるため、本号において公衆送信目的の複製権が含まれないとしても、海賊版対策に支障はないと考えられます。

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