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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年7月15日火曜日

判例/地図(住宅地図)の侵害性

 

地図(住宅地図)の侵害性

昭和530922日富山地方裁判所[昭和46()33]

1 一般に、地図は、地球上の現象を所定の記号によつて、客観的に表現するものにすぎないものであつて、個性的表現の余地が少く、文字、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例ではあるが、各種素材の取捨選択、配列及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たすものであるから、なおそこに創作性の表出があるものということができる。そして、右素材の選択、配列及び表現方法を総合したところに、地図の著作物性を認めることができる。

ところで、地図における著作権侵害の成否を判断するに際しては、地図における著作物性が右のとおりであることの結果として、著作物性がある部分を個々的に抽出することは困難であり、結局、侵害の成否は全体的に判断せざるを得ないことになる。

2 著作権侵害の成否を判断するに際し、一般に新たに作成された著作が、既に存在する他人の著作物に依存することなく、独自に創作されたものであれば、結果的に他人の著作物と同一になることがあつても、著作権侵害とはならないのであるが、新著作が他人の著作物を基本として作成された場合であつても、そこに独自の創作性が加えられた結果、通常人の観察するところにおいて、旧著作の著作物としての特徴が、新著作の創作性の陰にかくれて認識されないときは、新著作は単なる複製でも二次的著作物でもなく、他人の著作物の自由な利用により創作された独自の著作物であると認められ、著作権侵害とはならないというべきである。この場合、模範として利用された旧著作の独自性が顕著であればあるほど、新著作中に化体さたた精神的業績が高度であることが、新著作を独立の著作物として保護するため必要とされるが、旧著作が個性的表現の僅少なものであれば、これに対する著作権による保護は厳格に限定されねばならないから、新著作の著作物としての独自性は認められ易くなるといえる。

3 いわゆる住宅地図は、特定市町村の街路及び家屋を主たる掲載対象として、線引き、枠取りというような略図的手法を用いて、街路に沿つて各種建築物、家屋の位置関係を表示し、名称、居住者名、地番等を記入したものであるが、その著作物性及び侵害判断の基準については、基本的には先に地図一般について述べたところと同様である。ただ、住宅地図においては、その性格上掲載対象物の取捨選択は自から定まつており、この点に創作性の認められる余地は極めて少いといえるし、また、一般に実用性、機能性が重視される反面として、そこに用いられる略図的技法が限定されてくるという特徴がある。従つて、住宅地図の著作物性は、地図一般に比し、更に制限されたものであると解される。

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