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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年8月20日水曜日

判例/リレーショナル・データベースの著作物性及び侵害性を認定した事例

 

リレーショナル・データベースの著作物性及び侵害性を認定した事例

平成140221日東京地方裁判所[平成12()9426]

1 争点1(原告データベースが著作権法にいうデータベースの著作物に該当するか)

(1)著作権法2条1項10号の3は,データベースとは「論文,数値,図形その他の情報の集合物であつて,それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。」と規定し,同法12条の2第1項は「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは,著作物として保護する。」と規定する。このように,データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうのであるところ,前記前提となる事実によれば,原告データベースは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能を持つ「リレーショナル・データベース」と呼ばれるものである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるのであるから,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。

(2)そこで,原告データベースの創作性について検討するに,前記前提となる事実によれば,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等に対する販売を目的とするものであり,同データベースを用いて,新築分譲マンションの平均坪単価,平均専有面積,価格別販売状況等を集計したり,検索画面に一定の検索条件を入力して,価格帯別需給情報等の情報を,表やグラフのような帳票形式で出力したりすることができるものである。そして,原告データベースは,別紙図1のとおりの構造を含むと認められるところ,そのテーブルの項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方について敷衍して述べると,PROJECTテーブル,詳細テーブル等の7個のエントリーテーブルと法規制コードテーブル等の12個のマスターテーブルを有し,エントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,マスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ,期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,効率的に必要とする情報を検索することができるようにしているものということができる。すなわち,客観的にみて,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等が必要とする情報をコンピュータによって効率的に検索できるようにするために作成された,上記認定のとおりの膨大な規模の情報分類体系というべきであって,このような規模の情報分類体系を,情報の選択及び体系的構成としてありふれているということは到底できない。加えて,他に原告データベースと同様の情報項目,体系的構成を有するものが存在するとも認められないことは,原告データベースを含む構造(別紙図1)をMRC社のデータベースが含む構造(別紙図3),不動産月報,不動産の表示規約),株式会社東京カンテイの新築マンション詳細情報(1)等と比較精査しても明らかである。

したがって,原告データベースが含む構造(別紙図1)は,その情報の選択及び体系的構成の点において,著作権法12条の2にいうデータベースの著作物としての著作物性を認めるに足りる創作性を有するものと,認めることができる。

2 争点2(被告データベースが原告データベースの複製であり,その著作権を侵害しているか)

〔争点2(1)被告データベースが原告データベースに依拠して作成されたものか〕

(1)前記前提となる事実に証拠を総合すれば,本件の事実経過として,以下の事実を認めることができる。

()

(2)被告データベースの内容は,上記のとおり,別紙図2のとおりの構造を含むと認められるところ,前記前提となる事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合して,このような被告データベースを含む構造と原告データベースを含む構造とを,テーブルの内容(種類及び数),各テーブルに設定されたフィールド項目の内容,各テーブルの関連付けのあり方について対比すると,その結果は,以下のとおりであると認められる。

()

エ 以上ア~ウによれば,被告データベースは,テーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の名称,テーブル間の関連付けのすべての点からして,原告データベースの構造の一部分とほぼ完全に一致すると認められる。なお,被告らは,被告データベースにあって原告データベースにないものとして,6個のマスターテーブル(LAW4LAW8テーブル,状況マスターテーブル)や,その他いくつかのフィールド項目がある旨主張するが,これをア~ウで認定した一致部分の規模と比較するならば,ごく僅かの相違にすぎないと評価すべきであるから,上記のように,被告データベースが原告データベースの構造の一部分とほぼ完全に一致するといって妨げないというべきである。

(3)また,両データベース間で素材とする情報が重なっているかどうかをみるに,証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告データベースに格納されている具体的なデータについて,以下の事実が認められる。

()

(4)上記の(1)~(3)によれば,被告データベースが素材とする情報が原告データベースと重なっており,制作されたテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに設定されたフィールド項目の内容,各テーブル間の関連付けのあり方のすべての点において共通しているということができる。

(5)以上を総合すれば,被告データベースは,原告データベースに依拠して作成されたというべきであって,原告データベースを含む構造は,被告データベースを含む構造とその内容の点で同一であるといわなければならない。

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