書の著作物性
▶平成14年02月18日東京高等裁判所[平成11(ネ)5641]
書は、一般に、文字及び書体の選択、文字の形、太細、方向、大きさ、全体の配置と構成、墨の濃淡と潤渇(にじみ、かすれを含む。以下、同じ。)などの表現形式を通じて、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢い、ひいては作者の精神性までをも見る者に感得させる造形芸術であるとされている。他方、書は、本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上、文字の基本的な形(字体、書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず、書として表現されているとしても、その字体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的には困難であるから、書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分は、字体や書体のほか、これに付け加えられた書に特有の上記の美的要素に求めざるを得ない。
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