実験結果等のデータをグラフ化した図表の著作物性を否定した事例
▶平成17年05月25日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10038]
3 控訴人は,生のデータをグラフ化する場合には,一様でない表現が可能であるから,データをグラフ化した本件図表は,著作物に当たる旨主張する。
控訴人の指摘するように,実験結果等のデータをグラフとして表現する場合,折れ線グラフとするか曲線グラフとするか棒グラフとするか,グラフの単位をどのようにとるか,データの一部を省略するか否かなど,同一のデータに基づくグラフであっても一様でない表現が可能であることは確かである。
しかしながら,実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しないものと解すべきである。なぜなら,上記のようなグラフまでを著作物として保護することになれば,事実又はアイディアについては万人の共通財産として著作権法上の自由な利用が許されるべきであるとの趣旨に反する結果となるからである。しかるところ,本件図表は,その個々の正確な意味内容は本件全証拠によっても必ずしも明らかではないものの,その体裁に照らせば,いずれも,C研究室が高硫黄・高金属常圧残油の水素化分解触媒の開発について行った実験の結果等のデータを,一般的な通常の手法に従って,データに忠実に,線グラフや棒グラフとして表現したものであると認められる。したがって,本件図表は,著作物に当たらないものといわざるを得ず,控訴人の上記主張は理由がない。
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