実演家人格権の一身専属性等▷第101条の2 ▷第101条の3
著作権法第101条の2(実演家人格権の一身専属性):
「実演家人格権は、実演家の一身に専属し、譲渡することができない。」
著作権法第101条の3(実演家の死後における人格的利益の保護):
「実演を公衆に提供し、又は提示する者は、その実演の実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該実演家の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。」
▶実演家人格権の一身専属性
第101条の2は、実演家人格権の一身専属性、すなわち、実演家人格権がその性質上一身専属権であること、及びその不可譲渡性を定めたものです。
実演家人格権は、実演家の一身に専属することから、実演家の死亡によってそれと同時に消滅し、相続の対象となることはありません。もっとも、実演家が死亡した後であっても、その実演家が生存しているとしたならば実演家人格権の侵害となるべき行為については、一定の要件の下で禁止されていて(後述)、この実効性を担保するための規定も設けられています(116条)。
▶実演家の死後における人格的利益の保護
第101条の3は、実演家人格権が実演家の死亡とともに消滅することとなるため(101条の2)、実演家の死後におけるその人格的利益の保護について規定したものです。
「実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為」とは、氏名表示権(90条の2・1項)、同一性保持権(90条の3・1項)を侵害する行為のみならず、法113条(1項・8項)に該当して「侵害とみなされる行為」を含むと解されます。
本条の実効性を担保するために、実演家の死後におけるその人格的利益を保全できる者が定められています(116条)。このように、実演家人格権は実演家の死亡と同時に消滅するのですが、本条及び116条の規定によって、実演家の死後におけるその人格的利益の保護は、実演家死亡後も相当長期にわたって続くことになりますので注意してください。
但書き中「行為の性質」とは、「実演家人格権の侵害となるべき行為」が主体的か、付随的か、また、その行為が積極的か、消極的かということを意味し、「行為の程度」とは、「実演家人格権の侵害となるべき行為」によって作成された侵害複製物の部数やその頒布領域、当該侵害行為の頻度等を意味すると解されます。「社会的事情の変動」とは、社会的価値観の変化や社会的制度の推移等を意味しています。
実演家の死後においてその人格的利益を侵害する行為は「犯罪」であると捉えられており、本条に違反した場合には、刑事罰として罰金(「500万円以下の罰金」)が科せられますので注意してください(120条)。
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