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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年9月30日火曜日

判例/両目部分に黒の横線が入れられたイラストにつき侵害性を認定した事例

両目部分に黒の横線が入れられたイラストにつき侵害性を認定した事例

令和6130日大阪地方裁判所[令和5()6100]

(2) 本件著作権の侵害について

著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)をいう。

本件イラストは、P3氏が、ツイッター上の交流において原告を表すためにふさわしいイラストとして制作したものであり、腹ばいになるアザラシの様子をイラストにし、その下部に「(省略)」と記載したものであるところ、全体的に丸みを帯びた輪郭で、頭部を大きくし、ヒレを頭部付近に小さく描くことにより、親しみやすくかわいらしい印象を与えている点、大きな頭部いっぱいに両目、鼻及び口を描くことでアザラシの表情に存在感を与えている点、これらに「(省略)」という表記を欧文字で加えることで、その性格(原告の人柄)を示しつつイラストとしての一体感を感じさせる点において、選択の幅がある中から作成者によってあえて選ばれた表現であるということができる。したがって、本件イラストは、作成者の思想又は感情が創作的に表現された、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えたものであると認められ、「著作物」に該当する。

証拠及び弁論の全趣旨によれば、P3氏は、本件イラストを制作し、原告に対し、本件イラストに係る著作権を譲渡したことが認められ、原告は、本件イラストに係る著作権を有していると認められる。

本件黒塗りイラストは、本件イラストの両目部分に黒の横線が入れられ、「(省略)」という表記が黒塗りされたものであるが、被告がかかる改変を行ったことを認めるに足りる証拠はない。一方、前記改変は、前記目線等を加えたことに限られるから、本件黒塗りイラストは、本件イラストに依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、これに接する者が本件イラストの表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものと認められ、本件黒塗りイラストは本件イラストの複製物又は翻案物であって、原告が著作権を有するものといえる。そうであるところ、被告は、本件各投稿によって、本件黒塗りイラストに改変等を加えることなくツイッター上に投稿して、少なくとも不特定の者に対して閲覧可能な状態にしたことから、本件各投稿は、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害するといえる。

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