書籍に掲載された中学校学年文集の詩の公表権侵害を否定した事例
▶平成12年02月29日東京地方裁判所[平成10(ワ)5887]
三 争点3(公表権の侵害)について
1 公表権の侵害は、公表されていない著作物又は著作者の同意を得ないで公表された著作物が公衆に提供され又は提示された場合に認められる(著作権法18条1項)。
本件詩は言語の著作物(同法10条1項1号)であるから、これが発行された場合に公表されたといえる(同法4条1項)ところ、右の「発行」とは、その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され、頒布されたことをいい(同法3条1項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとされている(同法2条5項)。
2 これを本件についてみるに、証拠によれば、本件詩は、平成3年度の甲府市立北中学校の「学年文集」に掲載されたこと、この文集は右中学校の教諭及び同年度の卒業生に合計300部以上配布されたことが認められる。
右認定の事実によれば、本件詩は、300名以上という多数の者の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから、公表されたものと認められる。また、本件詩の著作者である原告は、本件詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから、これが右のような形で公表されることに同意していたということができる。
3 したがって、公表権侵害を根拠とする原告の請求は、理由がない。
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