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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年9月5日金曜日

判例/RAMへのデータ等の蓄積が著作権法上の「複製」に当たるか

RAMへのデータ等の蓄積が著作権法上の「複製」に当たるか

平成120516日東京地方裁判所[平成10()17018]

RAMへのデータ等の蓄積が著作権法上の「複製」に当たるか否かについて

(一)著作権法における「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」を意味し(同法2115号)、プログラムやデータを磁気ディスクやCD-ROMに電子的に記録し、コンピュータの出力装置等を介して再生することが可能な状態にすることも、右「複製」に含まれることは明らかである。

ところで、RAM(ランダム・アクセス・メモリー)とは、コンピュータにおける作業データ等を保存する集積回路であり、一般に「メモリー」と称されるものである。通常、コンピュータ上でデータ等を処理する際には、ハードディスク等のファイルからデータ等がRAMに移され、作業時にはコンピュータの中央演算処理ユニット(CPU)によってRAM上のデータ等が処理され、処理が終了してファイルが閉じられると右データ等はRAMから元のハードディスク等に再び移されることになる。このように、RAMにおけるデータ等の蓄積は、一般に、コンピュータ上での処理作業のためその間に限って行われるものであり、また、RAMにおけるデータ等の保持には通電状態にあることが必要とされ、コンピュータの電源が切れるとRAM内のデータはすべて失われることになる。右のような意味において、RAMにおけるデータ等の蓄積は、一時的・過渡的なものということができ、通電状態になくてもデータ等が失われることのない磁気ディスクやCD-ROMへの格納とは異なった特徴を有するものといえる。

そこで、RAMにおけるデータ等の蓄積について、右のような特徴を踏まえた上で、著作権法上の「複製」に当たるか否かについて検討することとする。

(二)著作権法は、著作物を利用する行為のうち、無形的な利用行為については、公になされるものに限って、著作者が右行為を行う権利を専有するものとし(同法22条ないし26条の2)、他方、有形的な再製行為(複製)については、それが公になされるか否かにかかわらず、著作者が右行為を行う権利を専有するものとしている(同法21条)。すなわち、著作権法は、著作物の有形的な再製行為については、たとえそれがコピーを一部作成するのみで公の利用を予定しないものであっても、原則として著作者の排他的権利を侵害するものとしているのであり、前記のような著作物の無形的な利用行為の場合にはみられない広範な権利を著作者に認めていることになるが、これは、いったん著作物の有形的な再製物が作成されると、それが将来反復して使用される可能性が生じることになるから、右再製自体が公のものでなくとも、右のように反復して使用される可能性のある再製物の作成自体に対して、予防的に著作者の権利を及ぼすことが相当であるとの判断に基づくものと解される。

そして、右のような複製権に関する著作権法の規定の趣旨からすれば、著作権法上の「複製」、すなわち「有形的な再製」に当たるというためには、将来反復して使用される可能性のある形態の再製物を作成するものであることが必要であると解すべきところ、RAMにおけるデータ等の蓄積は、前記(一)記載のとおり一時的・過渡的な性質を有するものであるから、RAM上の蓄積物が将来反復して使用される可能性のある形態の再製物といえないことは、社会通念に照らし明らかというべきであり、したがって、RAMにおけるデータ等の蓄積は、著作権法上の「複製」には当たらないものといえる。

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