「自然科学上の学術的見解」は著作権法によって保護されるか
▶平成28年4月28日東京地方裁判所[平成27(ワ)18469]▶平成28年11月10日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10050]
1 争点(1)(本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか)について
原告は被告による本件被告記載1及び2が本件原告記載に係る原告の複製権等を侵害すると主張するので,以下検討する。
著作権法において保護の対象となるのは思想又は感情を創作的に表現したものであり(同法2条1項1号参照),思想や感情そのものではない。本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであるが,この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであり,原告の思想そのものということができるから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらないと解するのが相当である。
したがって,被告による複製権侵害を認めることはできず,また,これを前提とする同一性保持権侵害の主張も採用することができない。
[控訴審同旨]
以上を前提に,本件控訴人記載の著作権侵害の成否を判断するに,本件においては,本件控訴人記載と本件被控訴人記載1及び2とは,表現上「重力波と想定される」,「波動による(もの)」との部分が共通性を有するといえる。そして,上記共通性を有する部分は,EMの効果に関する控訴人の自然科学上の学術的見解を簡潔に示したものであり,控訴人の思想そのものであって,思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらないと解するのが相当である。
したがって,本件被控訴人記載1及び2は,著作物の複製に当たらないから,複製権を侵害するものとはならないし,また,被控訴人による複製権侵害を前提とする同一性保持権の侵害も認められず,控訴人の著作者人格権を侵害することにもならない。
控訴人は,「EMの効用は,従来の常識である横波の波動とは異なる別の波動が要因となっている」との思想(学術的見解)を「重力波が縦波であること」との例を用いて,「私はEMの本質的効果は,A先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」と創作的に表現したものである旨主張する。
しかし,本件被控訴人記載1及び2が複製に該当するためには,本件控訴人記載と本件被控訴人記載1及び2の共通性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であることは前記のとおりであり,そうである以上,両者の共通性を有する部分ではない本件控訴人記載の「縦波の」という部分に創作性があるという控訴人の上記主張はその前提を欠くものであるといわざるを得ない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
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