モデル小説中への詩の翻訳(誤訳を含む。)引用につき、同一性保持権の侵害を認定した事例
▶平成16年05月31日東京地方裁判所[平成14(ワ)26832]
6 争点(2)イ(同一性保持権侵害の成否)について
(1) 題号の切除について
ア 被告小説において,本件詩②,④,⑥,⑧及び⑨につき,題号を切除してその全文が使用されていることは,前記2認定のとおりである。著作者は,その題号の同一性を保持する権利を有し,その意に反してその切除その他の改変を受けないものとされているところ(著作権法20条1項),被告Eの上記行為は,本件詩の題号についてAの有していた上記権利を侵害するものといわざるを得ない。
イ 被告らは,本件詩を被告小説の主人公の心情描写に必要な範囲において本件詩を引用したものであり,題号の切除も,かかる目的に照らしやむを得ない改変である(著作権法20条2項4号)と主張する。
しかしながら,著作権法20条2項4号は,同一性保持権による著作者の人格的利益の保護を例外的に制限する規定であり,かつ,同じく改変が許される例外的場合として同項1号ないし3号の規定が存することからすると,同項4号にいう「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには,著作物の性質,利用の目的及び態様に照らし,当該著作物の改変につき,同項1号ないし3号に掲げられた例外的場合と同程度の必要性が存在することを要するものと解される。しかるところ,被告ら主張の事情をもってしても,被告小説において本件詩の題号を切除することにつき,上記のような必要性が存在すると認めることはできない。
したがって,著作権法20条2項4号が定める「やむを得ないと認められる改変」に該当するということはできない。
(2) 翻訳による表現の改変について
ア 前記3認定のとおり,被告Eは,著作者であるAの許諾を得ることなく,本件詩を翻訳したものである。しかも,本件詩の訳文のうち,少なくとも,以下のイないしキの箇所は,客観的にみて誤訳であるか,又は翻訳すべき語を翻訳していないものであるか,若しくは意訳の範囲を超えているものであって,これらはいずれも意に反する改変といわざるを得ないから,本件詩についてAが有していた同一性保持権を侵害するものである。
(略)
ク 被告らは,上記改変はいずれも著作権法20条2項4号の「やむを得ないと認められる改変」に当たると主張する。
しかしながら,上記(1)イに述べたとおり,同項4号にいう「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには,著作物の性質,利用の目的及び態様に照らし,当該著作物の改変につき,同項1号ないし3号に掲げられた例外的場合と同程度の必要性が存在することを要するものと解されるところ,誤訳や翻訳すべきものを翻訳しないことがやむを得ないということができないのは明らかであるし,その余の上記改変も,いずれも翻訳として許される意訳の範囲を超えたものであって,被告小説において本件詩に改変を加えるにつき,上記のような必要性が存在すると認めることはできない。
よって,著作権法20条2項4号が定める「やむを得ないと認められる改変」に該当するということはできない。
(3) 以上のとおり,被告小説は,Aが有していた本件詩についての同一性保持権を侵害するものである。
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