同一性保持権の侵害を否定した事例
▶平成10年7月17日最高裁判所第二小法廷[平成6(オ)1082]
著作権法20条に規定する著作者が著作物の同一性を保持する権利(以下「同一性保持権」という。)を侵害する行為とは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加える行為をいい、他人の著作物を素材として利用しても、その表現形式上の本質的な特徴を感得させないような態様においてこれを利用する行為は、原著作物の同一性保持権を侵害しないと解すべきである(昭和55年3月28日第三小法廷判決参照)。
これを本件について見ると、被上告人B1が執筆した本件評論部分の中段部分冒頭の三行は、前記のとおり、上告人の本件著作部分の内容を要約して紹介するものとして適切を欠くものであるが、本件著作部分の内容の一部をわずか三行に要約したものにすぎず、三八行にわたる本件著作部分における表現形式上の本質的な特徴を感得させる性質のものではないから、本件著作部分に関する上告人の同一性保持権を侵害するものでないことは明らかである。また、論旨は被上告人B1により本件著作部分の改ざん引用及び恣意的引用がされたというが、その趣旨は、いずれも、本件著作部分がE師の談話をそのまま掲載したものであるにもかかわらず、被上告人B1によりこれが上告人自身の判断であるかのように利用されたというものであって、その外面的な表現形式における改変をいうものではない。したがって、被上告人B1の行為が上告人の本件著作部分に関する同一性保持権を侵害しないとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。
0 件のコメント:
コメントを投稿