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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年12月8日月曜日

判例//メモリーカードの使用がゲームソフトの著作者の有する同一性保持権を侵害するとされた事例

 

メモリーカードの使用がゲームソフトの著作者の有する同一性保持権を侵害するとされた事例

平成11427日大阪高等裁判所[平成9()3587]

(三) 原告は、本件ゲームソフトにつき、「ゲームソフトに固有の内容」すなわち「ゲームバランス」と「インタラクティブ性」も著作物として保護の対象となると主張する。

(1) 原告は、この「ゲームバランス」こそゲームソフトの面白さを決定する鍵ともいうべき核心的な要素に他ならず、右の「ゲームバランス」によってゲームの進行・構成に関する制作者の表現上の工夫がなされており、直接目には見えない表現上の工夫という意味で、内面的表現形式のひとつということができると主張する。

これに対し、被告は、原告の主張は劇映画や小説と異なりストリーの展開が完全に固定されていないというシミュレーションゲーム著作物の特質、種類、内容を完全に無視している、原告の主張する「予め予定されたゲーム展開の幅」は第三者が客観的に認識できず、このようなものは著作権による保護の対象になじまないし、原告の主張はプログラムの実行に関して作成される単なるセーブデータについてまで著作権性を認めることになり不当であると主張する。

(2) 原告のいう「ゲームバランス」とは、表パラメータの特定の数値を上昇させるとそれに連動して他の数値が上下するように設定された本件ゲームソフトにおいて、プレイヤーは勉学・運動・容姿等を表す数値間にバランスをとり、かつ、表パラメータと隠しパラメータとの連繋を考えながらコマンドを選択しなければならないこと、あるいはゲームの進行がそのように構成されていることを指すものと解される。

右のようなバランスは、本件ゲームソフトのプログラムがプレイヤーの選択したコマンドの内容を読み取り、指示内容に従って、予め設定された各パラメータの変動値を主人公のパラメータに追加する方法によって実現しているものと認められる。

しかし、右のような「ゲームバランス」それ自体は、本件ゲームソフトの制作者が、ゲームのスタートから終結にいたる様々なストーリー展開を設定し、コマンドの選択におけるプレイヤーの操作判断を複雑困難に構成し、そこにプレイヤーの知的活動における面白さを醸成させるというゲームの設計、ゲームのアイデアであって、制作者として知的に最も苦労する場面であるということができるとしても、これが直接著作物として著作権法上保護の対象となるものとはいい難い。本件において著作物として保護されるべき思想又は感情の創作的表現は、工夫された「ゲームバランス」に従って具体的にモニター画面に展開されるところの、本件ゲームソフトに内包された(多数ではあるけれども限定的に設定された)ストーリー(バーチャルな恋愛模様の表現)とその影像にあるというべきである。

また、原告のいう「インタラクティブ性」とはその概念が必ずしも明確でないところであるが、原告の主張によれば、プレイヤーの入力行為がなければゲームが進行せず、プレイヤーの選択によって具体的なゲームの進行・展開が対話的、双方向的に決定されるという側面を指すものとされるところ、ゲームにそのような特性があるからといって、ゲームの進行・展開は、予めプログラムないしデータに保存された内容から選択されるに過ぎず、右にいう「インタラクティブ性」とは、シミュレーションゲームに独自の操作方法ないしは操作と反応との関係を抽象的に表した技術的な概念というに止まり、それ自体をゲーム展開や登場人物に関する制作者の思想又は感情の創作的な表現ということは困難である。

(三) しかしながら、本件ゲームソフトのプログラムは、主人公の能力に関する初期設定を固定し、その設定を基盤とした上で、プレイヤーが選択した行動(コマンド)に対する能力項目の数値を創作的に加減させ累積させてストーリーが展開するという構造になっているから、プレイヤーによって作り出され蓄積されるセーブデータは、プログラムとは別個独立に截然と区別されて存在する単なる数値ではなく、制作者が初期設定の数値によって表した主人公の人物像(能力値)を変化させ、それに応じたゲーム展開を表現するための密接不可分な要素として構成されているものというべきである。

従って、その初期設定は勿論、コマンドの選択に関連付けられた各能力項目の数値の加減は、本件ゲームソフトの本質的構成部分となっているもので、これを改変し無力化することは、それによる表現内容の変容をもたらすものというのが相当であり、本件ゲームソフトの著作物としての同一性保持権を侵害するものと解せられる。

 

[参照:最高裁]

平成13213日最高裁判所第三小法廷[平成11()955]

本件ゲームソフトの影像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるものであるところ,前記事実関係の下においては,本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。けだし,本件ゲームソフトにおけるパラメータは,それによって主人公の人物像を表現するものであり,その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ,本件メモリーカードの使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになるからである。

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