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著作権コンサルタントをしています。クリエーターの卵から世界的に著名なアーティストまで、コンテンツビジネスや著作権にかかわる法律問題について、グローバルに支援しています。 カネダ著作権事務所 http://www.kls-law.org/

2025年8月16日土曜日

判例/虚偽の著作権侵害申告による人格権侵害に基づく精神的損害の賠償を求めることの可否

 

虚偽の著作権侵害申告による人格権侵害に基づく精神的損害の賠償を求めることの可否

令和6226日東京地方裁判所[令和5()70052]▶令和7219日知的財産高等裁判所[令和6()10025]

⑵ 前提事実及び上記⑴の認定事実を基に、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止された場合、不正競争防止法2条1項21号(虚偽告知)、4条に基づく損害賠償以外に不法行為が成立するかについて検討する。

ア 著作権侵害申告がされると、一定期間YouTubeにおける控訴人各動画の公開が停止されるが、インターネット上で動画配信サービスを提供するウェブサイトはYouTube以外にも存在しており、それらのウェブサイトを通じて動画を公衆の閲覧に供して表現活動を行うことは可能であり、YouTubeでの動画の公開が停止されたことによって、インターネット上で動画を公衆の閲覧に供する手段がなくなるわけではない。

YouTubeはグーグルという私企業が提供する動画配信サービスであり、動画の投稿者は、投稿のためにグーグルに代金を支払う必要はなく、むしろ、動画の閲覧数に応じて、YouTubeで流される広告からの収入の分配を得ることができる。グーグルはYouTubeの動画配信に関する規定、ポリシー及びガイドラインを定めてこれらを公表しており、動画の投稿者は、これらの規定やポリシー等の範囲内で、動画の投稿を行うものとされている。そして、グーグルは、YouTubeにおける動画による著作権侵害への対応として、投稿された動画に対して第三者が著作権侵害による削除通知(著作権侵害申告)を行った場合、当該通知が無効でなければ、動画の投稿者の意見を求めることなく、当該動画を削除(配信停止)し、動画の投稿者は、当該動画の配信の再開を求めるのであれば異議申立てを行うものとしており、このようなYouTubeの著作権侵害に係る制度は、グーグルによるYouTubeの動画配信に関する規定・ポリシーの一つであるといえる。そうすると、YouTubeに動画を投稿する者は、著作権侵害への対応について上記のような制度設計をしているYouTubeを自ら選択して、代金の支払をすることなく動画投稿を行い、閲覧数に応じて広告収入の配分を得ているのであって、著作権侵害申告に対して上記のような対応がとられることを前提として、著作権侵害に関する上記制度を含むものとしてのYouTubeのシステムを利用していると認められる。

そうであるとすれば、YouTubeの著作権侵害に係る制度に則っていることを前提として、著作権侵害がないにも関わらず著作権侵害申告がされて一定期間YouTubeにおける動画の公開が停止され、著作権侵害があると考えて著作権侵害申告したことについて過失がある場合、一定期間動画が削除(配信停止)されたことにより、動画の配信がされていれば得られるはずであった収入を得られなかったという経済的損害について不正競争防止法2条1項21号(虚偽表示)、4条に基づく損害賠償が認められるとしても、それ以外に動画投稿者の表現の自由その他の権利又は法律上保護される利益が違法に侵害されたとは認められず、不法行為の成立は認められないというべきである。

イ もっとも、著作権侵害がないことを認識しながら、特定の動画投稿者について多数回にわたって著作権侵害申告を行い、動画の公開を妨げるような場合や、著作権侵害がないことを明確に認識してなくとも、著作権侵害申告を行う目的やそれに伴う行為の態様等の諸事情に鑑み、著作権侵害を防ぐとの目的を明らかに超えて動画投稿者に著しい精神的苦痛等を与えるような場合は、動画投稿者の法律上保護される利益が違法に侵害されたものとして、例外的に不法行為の成立が認められる場合があるというべきである。

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