営業戦略のマネジメント書籍の侵害性が争点となった事例
▶平成19年8月30日東京地方裁判所[平成18(ワ)5752]▶平成20年02月12日知的財産高等裁判所[平成19(ネ)10079]
[控訴審]
当裁判所の判断は,当審における当事者の主張につき,以下のとおり付加するほか,原判決のとおりであるから,これを引用する。
1 争点1(被告書籍が原告書籍等の複製又は翻案であるか)について
(1)
被告著作物追加目録4(被告書籍131頁,134頁,135頁)について
原告著作物追加目録4の230頁には,「たった1枚の名刺でキーマンを虜にする」という見出しがあって,その見出しに続いて,本文において名刺の活用が記載されている。被告著作物追加目録4には,「やっともらった『たった1枚の名刺』でキーマンを虜にするには」と語句が記載され,その全体が四角の枠で囲まれ,その下方に矢印が記載され,矢印の下方に,「何をすれば…『もう,まいった!』と言わせられるか」との語句が記載されている。
上記原告著作物追加目録4と上記被告著作物追加目録4において共通するのは,「たった1枚の名刺でキーマンを虜にする」との表現であるが,これは平凡な表現によりなる短文であり,これに創作性を認めることはできない。
また,原告著作物追加目録4の232頁には,四角の枠内の上部に「たった1枚の名詞の活用で…」と大きく書かれ,その下方に,四角の枠で囲まれた「キーマンをマイッタ!と唸らせる術」との語句が記載され,その周りに,「今のライバルのサービスに満足」,「来てもムダ」などの語句が記載されている。被告著作物追加目録4には,上記のとおり,矢印の下方に,「何をすれば…『もう,まいった!』と言わせられるか」との語句が記載されている。
上記被告著作物追加目録4と上記原告著作物追加目録4において共通するのは,「まいった」という表現で,これは,キーマンをまいったと言わせるという意味であると認められるが,このような語句に創作性を認めることはできない。
控訴人らは,たった1枚の名詞でキーマンをとりこにするとの部分は,必ずしも通常の使用例とは異なり,また,まいったとの表現も通常の使用例と異なり,通常の用語でないものを組み合わせて創作したものであり,創作性として十分である旨主張するが,いずれの使用例も日常普通に経験するものであり,このような短い表現,語句を2つ組み合わせたという程度では,これに創作性があると認めることはできない。
(略)
(3)
被告新規著作物目録5(118,119頁)について
原告新規著作物目録5の1には,顧客のキーマンの心理の変化として,「(1) オヤ,この営業マンは『違う』……『でも売り込みだから』」,「(2) アラ,『彼は一味違うな』……『でも買う意思はないよ』」,「(3) ウム,『そこまで気配りが』……『彼はなかなかいいセンスだ』」,「(4) エ!『サスガだよ』……『彼に会うのが楽しみだ』」,「(5) ムムム……『まいった!』……「何かお礼してあげないと……』」,「(6) ウソー……『凄い』……『ともかくサンプル発注を……』」との記載があり,同著作物目録5の2,3にも,類似の記載がある。
被告新規著作物目録5(118頁)には,「お客様の反応の変化を知る」との表題のもと,客の反応をステップ1ないし6として記載し,それぞれ,「注意を引く」,「興味をもつ」,「欲しい」,「記憶する」,「行動する」,「満足する」というものであり,「アレ?」,「オヤー」,「アラ」,「ウムー」,「スゴイ!」,「マイッタ!!」というものであると記載し,また,被告新規著作物目録5(119頁)には,「お客さま」として示された人の形をした図の横に,6個の吹き出しが記載され,その吹き出しの中に,上から順に,「マイッタ!!」,「スゴイ!」,「ウムー」,「アラ」,「オヤー」,「アレ?」と記載されている。
原告新規著作物目録5の1ないし3は,顧客の心理の変化を6段階で示し,それを感嘆詞と顧客の心理の具体的内容とともに描写するものであるのに対し,被告新規著作物目録5は,顧客の心理の変化を6段階で示し,それを簡単な感嘆詞で表現するものである。顧客の心理の変化を6段階で示すことや,それを簡単な感嘆詞で表現すること自体は着想であって,著作権法で保護されるものではない。そして,被告新規著作物目録5は,6種の感嘆詞を用いて心理の変化を表現しているが,原告新規著作物目録5の1ないし3には存在する,顧客の心理の具体的内容の描写がないことに,原告新規著作物目録5の1で使用されている感嘆詞と,感嘆詞自体やその順序において異なることから,被告新規著作物目録5は,原告新規著作物目録5の1ないし3の複製又は翻案には当たらない。
控訴人らは,被告新規著作物目録5の感嘆詞や顧客の反応のステップは被告著作物目録1に現れる感嘆詞やステップに対応すること,被告著作物目録1は原告著作物目録1の1,2の1,3の1・2の複製に当たることから,被告新規著作物目録5は,原告新規著作物目録5の1(原告著作物目録1の1と同じ),同5の2(原告著作物目録2の1と同じ),同5の3(原告著作物目録3の1と同じ)の複製又は翻案とすべきである旨主張する。
しかし,被告著作物目録1は,原告新規著作物目録5の1ないし3と同様,顧客の心理の変化を6段階で示し,それを感嘆詞と顧客の心理の具体的内容とともに表現したものであり,顧客の心理の具体的内容についての表現において,被告著作物目録1と原告新規著作物目録5の1ないし3は実質的に同一といえるものであるが,被告新規著作物目録5は,顧客の心理の具体的内容は記載せず,被告著作物目録1と被告新規著作物目録5は,仮に感嘆詞などの一部が共通であったとしても,全体として異なった表現といえるものである。したがって,被告著作物目録1が,控訴人らの著作物の複製であることを理由として,被告新規著作物目録5が,控訴人らの著作物の複製となるものでない。また,控訴人らは,被控訴人の著作物での感嘆詞の使用順序が,原告著作物目録1と共通するとも主張するが,一般的に使用される短い感嘆詞について,その使用順序の一部が共通するだけであり,使用されている感嘆詞が異なることからも,上記を理由として,被告新規著作物目録5を控訴人らの著作物の複製又は翻案と認めることはできない。
(以下略)
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