著作権移転登録の法意
▶平成25年1月31日東京地方裁判所[平成23(ワ)40129]▶平成25年06月20日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10015]
1 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について
(1)
原告は,原告が本件各登録申請を行った際,文化庁長官は,本件担当職員をして,原告に対し,本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに,これを怠った違法があると主張する。
【ア そこで検討するに,法は,著作権は著作物の創作によって発生し,著作権の発生に登録その他の方式の履行を要しないとする無方式主義を採用しており(法17条2項),著作権の発生を登録する制度は存在しない。
一方で,法は,著作権は,その全部又は一部を譲渡することができ(法61条1項),著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)は,登録しなければ第三者に対抗することができないと規定し(法77条1号),著作権の移転を公示する登録制度を設けて,当事者の意思表示によって生じた著作権の譲渡(移転)について登録を第三者に対する対抗要件としている。そして,著作権の移転登録は,申請又は嘱託により,文化庁長官が著作権登録原簿に記載し,又は記録して行うものとし(法78条1項,著作権法施行令15条1項),登録の申請は,原則として登録権利者及び登録義務者が共同で(著作権法施行令16条ないし19条),著作物の題号,権利の表示,登録の原因及びその発生年月日,登録の目的等の所定の事項を記載した申請書を登録の原因を証する書面等の所定の添付資料とともに文化庁長官に提出して行わなければならないとしている(著作権法施行令20条,21条)。
文化庁長官は,①登録を申請した事項が登録すべきものでないとき,②申請書が方式に適合しないとき,③申請書に必要な資料を添付しないとき,④申請書に登録の原因を証する書面を添付した場合において,これが申請書に記載した事項と符合しないとき,⑤登録免許税を納付しないときなどの却下事由(著作権法施行令23条1項各号)の有無を審査し,却下事由が認められないときは,登録の申請の受付けの順序に従って著作権の移転登録を行うものとされているが(著作権法施行令22条),この却下事由には,移転登録の対象とされた著作権の客体が法2条1項1号の「著作物」に該当しないことは含まれていないから,文化庁長官の審査権は,上記「著作物」の該当性に及ぶものではない(なお,文化庁長官官房著作権課が平成23年6月に発行した「登録の手引き」には,「著作権の登録に関するQ&A」の「Q13
文化庁に登録されている著作物は,公的に認められた価値あるものなのでしょうか。」に対する「答」として,「A 著作権に関する登録の審査は,…登録の前提となる事実が行われているか否かを申請書等から形式的に審査するものであり,文化庁は登録されている著作物の内容には関知しておりません。との記載がある。)。
以上によれば,著作権の移転登録は,当事者の意思表示によって生じた著作権の権利変動を公示し,第三者に対する対抗要件となるものではあるが,移転登録の対象とされた著作権が発生していることや,その著作権の客体が法2条1項1号の「著作物」に該当することを公示すらするものでないことは,著作権の移転登録の制度上明らかであるから,文化庁長官は,著作権の移転登録申請があった際に,申請者に対し,その申請に係る登録がされたからといって著作権が発生するものではないとか,著作権の権利者という地位が保証されるものではないなどの説明を著作権の移転登録事務を担当する文化庁の担当職員(本件担当職員)にさせるべき職務上の法的義務を負うものとはいえないし,文化庁長官がかかる法的義務を負うものとする法令の定めや根拠はない。
したがって,文化庁長官がかかる法的義務を負うことを前提に,文化庁長官の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとする控訴人の主張は,その前提を欠くものとして,理由がない。
[控訴審同旨]
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